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【剣も魔法も】ヘヴィファンタジーTRPGスレ【重厚】 [転載禁止]©2ch.net

1 :レヴィ ◆6aWspnxs8w :2015/11/10(火) 19:29:39.54 0
重厚なファンタジースレです。
楽しく、積極的にいきましょう!

2 :レヴィ ◆6aWspnxs8w :2015/11/10(火) 19:31:26.12 0
キャラクタテンプレート

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
スリーサイズ:
種族:
職業:
性格:
利き手:
魔法:
特技:
武装1:
武装2:
武装3:
武装4:
防具:
他所持品:
容姿の特徴・風貌:
将来の夢(目標):
簡単なキャラ解説:

3 :レヴィ ◆6aWspnxs8w :2015/11/10(火) 19:41:06.42 0
名前:レヴィ・エリスタ・ヤコンネン
年齢:19
性別:女
身長:189cm
体重:76kg
スリーサイズ:114/79/102
種族:ライカンスロープ(狼人間)
職業:傭兵
性格:丁寧、しかし戦闘中は変わることも
利き手:右
魔法:氷の遠距離系、補助魔法などまんべんなく
特技:グングニル(氷の魔法と投げ槍のあわせ技)
武装1:鋼鉄の長槍
武装2:ジャイアントクロスボウ
武装3:氷魔法の大剣
武装4:鋼鉄のガントレット
防具:鋼鉄の全身鎧、軽装ビキニ鎧、兜
他所持品:薬草、発火剤
容姿の特徴・風貌:狼人間だが、普段はほぼ人間。月を見ると完全に狼と化す。
将来の夢(目標):平和な世界にする。
簡単なキャラ解説:真面目系な狼少女。フル装備に身を固めている。かなり北の方の出身。


【一緒に戦ってくれるお仲間を募集します。】

4 :レヴィ ◆6aWspnxs8w :2015/11/10(火) 19:55:28.70 0
ヘヴィファンタジースレ ルール

・重厚な世界観でファンタジーがしたい方歓迎です!
・世界観は中世風のファンタジー世界です。金属武器と魔法の文化が非常に栄えています。
・キャラをする方は必ずトリップを付け、自己紹介をすること。世界観を投下する方もそうです。
・長く空ける場合、抜ける場合は必ず報告しましょう。(最低限の報告は【】付きで)
・sage進行、荒らしは徹底無視。過度な設定の押しつけ合いなどは自重すべし。
・鎧とか白兵戦や魔法を主流に戦うが、多少は過激な描写もありとします。
・ギスギスするのが好きな方は歓迎。展開によっては容赦はいりません。
・ここがヘヴィファンタジースレである意味を考えてください。
・敵役も募集しています。
・越境は禁止です。
・ストーリーのみを投下できるのはキャラハン、もしくはスレで認められたトリップ付きのGMのみ。
・避難所については現在のところ検討中です。
・ほのぼのした展開よりシリアスに。
・展開は多少速くても構わないが、あくまで空気を読む感じで。

5 :レヴィ ◆6aWspnxs8w :2015/11/10(火) 20:02:09.45 0
導入部分

――ここは…鉄と魔法の王国。
資源には恵まれているが環境は悪く、王国は軍事力をもって今まさに海へと支配地域を伸ばそうとしている…。

あなたたちは今、王国から離れた街にいる。
気候は王都に比べればだいぶ暖かいが、決して豊かな大地ではない。
王国軍の動向、海と豊かな大地はあなたたちにとって非常に興味深い内容だ。

さぁここに武器と魔法はある。戦力は揃った。
酒場が併設された冒険者協会が、スタート地点。
物語が、始まる…――


レヴィは兜を脱ぐと、重厚な鎧のまま酒と飲み物を注文した。
さて、今日はどんなお仲間が来るのだろう。

6 :名無しになりきれ:2015/11/10(火) 20:16:48.92 0
良いぞ
部位破壊とかのシステム取り入れてハクスラ要素入れると尚よし

7 :名無しになりきれ:2015/11/10(火) 21:53:03.40 0
>>1-5
お前ユリウスだろ?

8 :名無しになりきれ:2015/11/10(火) 21:53:45.80 0
http://goo.gl/pDuxLY
http://goo.gl/t41ywY

9 :名無しになりきれ:2015/11/10(火) 22:55:01.11 0
>>7
ユリウスはもっと文才あるし
設定組む才能持ってる

10 :名無しになりきれ:2015/11/11(水) 01:22:14.56 0
こりゃ俺が指揮を取るっきゃねーな!

11 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/11(水) 01:22:18.02 0
名前:ラウテ・パユ
年齢:14歳
性別:女
身長:142cm
体重:37kg
スリーサイズ:74-52-75
種族:人間
職業:吟遊詩人
性格:いつも眠たげではあるが、音楽を奏でるときは人が変わる
利き手:右
魔法:音楽魔法
特技:楽器演奏と歌、踊り
武装1:魔笛「アムドゥスキアス」
武装2:二振一対の聖属性ダガー
武装3:何本あるか分からない投げナイフ
武装4:煙玉数種
防具:簡素で軽さを重視した軽鎧
他所持品:使い込まれたリュート
容姿の特徴・風貌:腰まである銀髪に紅眼、まだあどけない風貌の少女
将来の夢(目標):宮廷楽師
簡単なキャラ解説:旅を続ける吟遊詩人の少女。魔笛の力で動植物を操る事が出来る。

12 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/11(水) 01:23:42.77 0
「聞いたか、リュースの港の話。沖に巨大な海魔が出たんだってよ」

「軍か冒険者が追い払うまで船は出せないらしいな。今度はどれくらい掛かるんだか」

街はざわめいている。不穏な噂と憶測が渦巻いているのを感じた。
この国の王は近年では辺境の開拓と海洋への進出を狙っているらしいが、あまり芳しくないらしい。
辺境はそもそも開拓の旨みがないから開拓されなかった訳だし、海には強大な海魔が住んでいるのだ。
藪を突いて何とやらとはこの事だ。王国軍ははっきり言って無駄に疲弊していた。
辺境に住み着いていた亜人種達の縄張りを荒らすのもまた、その原因のひとつだろう。
国王が開拓だ何だと言い出すまではそこそこ平和だったのが、今じゃ火種だらけだ。
そのうち国が転覆するんじゃないかと、まことしやかに囁かれているのが現状である。

ラウテはそんなざわめきをすり抜けながら、冒険者協会を探して歩いていた。
この街は賑やかだ。フロンティアラインに位置するここでは、様々な文化が入り混じっている。
ここなら楽師としての仕事も捗りそうだし、冒険者向けの案件もあると思われる。
冒険者としてはまだまだ駆け出しのラウテだが、腕に覚えがない訳ではない。
使い手を選ぶ魔笛「アムドゥスキアス」に選ばれるだけあって、そこそこ腕は立つのだ。

「ふあぁ……ねぇおじさん、冒険者協会……どっち?」

などと、欠伸混じりに道を尋ねているのは、もちろん彼女が迷子だからである。
この街は彼女にとって少々賑やか過ぎる。もっと皆のんびりしていればいいのに。
そんなことを思いながら道を尋ねること五回、ようやくラウテは冒険者協会に辿り着いた。
古めかしいスイングドアを通り抜け、彼女はまずカウンターに陣取りマスターに一言。

「……ミルク」

とりあえず喉が渇いていたのだ。もちろん幼い彼女は酒を注文したりはしない。
少なくとも16になるまでは酒を飲んではいけないと、親に諭されているからだ。
そういえば両親が死んで一年、墓があるあの村からはどれだけ離れた事だろう。
幸いにももしもに備え一人で生きていく術は教わっていた。
それを正しく実践出来たのは、彼女が聡明故である。そして、何より音楽の才に秀でていた。
運ばれてきたミルクを一息に飲み干すと、ラウテはマスターに「ここで演奏して良いか?」と尋ねる。
演奏は大した儲けにはならないが、彼女は新しい街では必ず演奏で日銭を稼ぐ事にしている。
より人々の心に響く演奏を会得し、やがては舞台を任される楽師に、そして宮廷楽師にまで上り詰めるのが野望である。
まぁさすがに宮廷楽師は無理にせよ、著名な演奏家になれれば良いと彼女は思っていた。

「んじゃ……一曲弾くね」

背負っていた古いリュートを取り出した瞬間、ラウテの表情が変わった。
色素の薄い彼女の風貌は、まるで深窓の令嬢の如く人々の目に映ったはずだ。
リュートを奏で、小鳥のように澄んだ声で歌い始める。
店内の空気が変わるのが肌にはっきりと感じられる、そんな演奏だった。
やがて演奏が終わり、店内は静まり返る。その静寂を破ったのは、割れんばかりの拍手喝采だ。
美しい演奏と歌声への賛美の言葉を浴びながら、彼女は深々と礼をした。

【よろしくお願いします】

13 :名無しになりきれ:2015/11/11(水) 08:01:15.07 0
オォォォォ…!!

酒場でギリギリと鎧をこすりあわせながら、重装備の冒険者たちがラウテに拍手喝采を送る。
彼らは日頃の戦闘や鍛練で目が血走っている。珍しく軽装の彼女を珍しそうに見ている。

「コフタ…いや、キョ、キョ、キョフテを彼女に」
キョフテと呼ばれるご当地料理がラウテの前に運ばれた。

14 :名無しになりきれ:2015/11/11(水) 08:02:29.38 0
オォォォォ…!!

酒場でギリギリと鎧をこすりあわせながら、重装備の冒険者たちがラウテに拍手喝采を送る。
彼らは日頃の戦闘や鍛練で目が血走っている。珍しく軽装の彼女を珍しそうに見ている。

「コフタ…いや、キョ、キョ、キョフテを彼女に」
キョフテと呼ばれるご当地料理がラウテの前に運ばれた。

15 :名無しになりきれ:2015/11/11(水) 15:09:09.81 0
キョフテ
トルコ料理か

16 :名無しになりきれ:2015/11/12(木) 01:14:02.06 0
支援

17 :名無しになりきれ:2015/11/12(木) 07:59:39.54 0
>>13
カチャ…



バン!
(キョフテ野郎がいきなり射殺される)

これでゴミが一匹減ったな…

18 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/13(金) 01:01:21.84 0
歌も演奏も評判は上々だった。客たちは盛り上がり、ラウテの差し出した箱に銅貨が溜まっていく。
演奏も一区切りつき客席で一息吐いていると、目の前に料理が運ばれた。
湯気を上げる美味しそうなキョフテだ。しかし、こんなものを注文した覚えはない。
ふと横を見ると、彼女の演奏に聞き入っていた客の一人が手を振っていた。

「…おじさんがくれたの? ……ありがと、いただきます」

ラウテはありがたくキョフテを頂くことにした。冷めてしまっては勿体無い。
この地方のキョフテとは挽肉を練り、焼いたものだ。早い話がハンバーグのようなものである。
一口食べると、口の中に肉汁とスパイシーな味と香りが広がる。
お子様味覚なラウテでも、美味しく食べられる料理だ。
彼女は一心に、しかし非常にゆっくりとキョフテを食べる。

そんなのんびりと食事を楽しんでいた最中、一発の銃声が空気を凍らせた。
振り向いてみると、先程キョフテを奢ってくれた冒険者が脳天に銃弾を受け死んでいた。
撃ったのは、何事かぶつぶつと呟きながら立ち尽くす一人の男だった。
よく見ると目が血走り、顔色は青褪めている。薬物中毒の症状だ。
王都で出回っていた新型の薬物が、ここまで流通しているのだ。
薬物を摂取し続けるとやがて精神が崩壊し、狂人となってしまうらしい。
しかしそんなことは一切知らないラウテは、怒りに身を震わせていた。

「いい人だったのに……殺すなんて、ひどい。報いを受けるがいい!」

彼女が腰の革製の筒から取り出したのは、緻密な模様が彫られた白銀の横笛だった。
それを構え、流麗な音色をほんの一節だけ奏でる。
一瞬の静寂。それを破ったのは、店内を黒く染め上げる暴風の群れだった。
否、暴風のように思えたのは、店に飛び込んできた鴉の群れである。
鴉の一群はまるで完璧な統制を持って銃を持った男に襲い掛かり、押し倒す。

「痛い? 苦しい? …でも殺さない。一生後悔して」

襲い掛かられた男の悲鳴が響く。しかし、鴉たちは意に介さず男の全身を突き続ける。
やがて男の顔に群がっていた二羽の鴉が高々と掲げたのは、男の両の眼球だった。
それを床に吐き捨てると、鴉たちは店から潮が引くように出て行った。
すべてはほんのひと時の事だった。圧倒的な現象の前に、冒険者たちは身動きひとつ取れずにいた。
両目を抉られて悶え苦しむ男だけが、その場に残されていた。

「…殺人の現行犯。もう安全…だから、コレはどこに引き渡せはいい…?」

19 :名無しになりきれ:2015/11/13(金) 07:57:26.44 0
>>18
カチャ…


ガチン…




パァン!
(男がかろうじて探り寄せた銃を手に取ると
自分の脳を撃ち自殺)

20 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/13(金) 13:29:39.89 O
名前:ドラクマ・ヴァン=グリオン
年齢:38才
性別:男
身長:190cm
体重:120kg
種族:人間
職業:酒場の用心棒(バウンサー)/元アーマーナイト
性格:豪快
利き手:右手
特技:力づく。痩せ我慢
武装1:はがねのつるぎ
武装2:ナイトランサー
武装3:戦斧(ハルバート)
武装4:戦鎚(ウォーハンマー)
防具: 鋼の兜、鋼の重鎧(ヘヴィアーマー)
他所持品:
容姿の特徴・栗毛、ベビーフェイス、カイゼルヒゲ
風貌:渋い筋肉質の巨漢
将来の夢(目標):明日の飯の種。小銭を手に入れること。
簡単なキャラ解説:脳筋体質。「かかる困難は力づくでぶっ飛ばす!」がモットー。
田舎貴族の出。国軍に属する超重騎士団の一員だったが、嫌味でムカつく上司が天下りで赴任した際にも力づくでぶっ飛ばしてしまった。(物理的)
お陰で国軍を追われ、今では怪しい酒場の用心棒。
かつては妻子もいたようだが、現在は不明。。知り合いの間では例の事件の際に逃げられたのではないかと噂されている。
勘違いしないよう予め言っておくが、ベビーフェイスでカイゼルヒゲのおっさん。アゴヒゲはもじゃもじゃ。
けっして主役を張れるような男ではない。
正義漢ではなく小悪党。
思考回路はむしろ敵サイド。
痩せ我慢が得意で大物ぶったやたら偉そうな口をきく。
何も考えてなどいないので非常に楽観的。
酒をたしなむ。酔うと豪快さが増す。
ただし、酒が切れてくると荒れ狂う難儀なおっさん。
小悪党なので即死ぬ予定。

21 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/13(金) 14:34:43.52 O
吟遊詩人の彼女がジャンキーの両目をえぐり>>19が自決した瞬間店内に野次が飛んだ。

「いいぞー美人のねぇちゃん!」「景気いいねぇ」「やるねぇ!」「俺にもヤらしてー」「ヒューヒュー!」

無責任な賑やかしが数人煽りを入れた。
だが、それだけだった。それだけですぐにまた酒場の賑やかな喧騒が戻ってきた。
それは彼らにとって些細な日常の出来事の範囲内だったからだ。
だが、ゴリゴリと金属が床を擦るような音がしてきたとたん、辺りは瞬く間に静まりかえった。
誰かが唾を飲む声がした。
床をゴリゴリと擦る金属音は暫く続き、店の奥から太い金属の棒を握った巨漢が黒服を纏い現れた。
―――開口一番。

「困りますなぁ吟遊詩人のお嬢さん。店内でこのようなゴミを散らかされたままでは……」

190cmはあろう黒服の巨漢は床を引き摺ってきた自分の倍の長さはある巨大な戦槌(ウォーハンマー)を金属の擦過音をさせながらゆっくりと持ち上げ肩へと背負った。
黒服の巨漢はこの店の用心棒兼雑用係だった。

「掃除するのが大変じゃねーかよっ!」

「フンガッ!」
巨漢は栗色の顎髭を左手小指で弄ると戦槌(ウォーハンマー)を両手で持ち直す。
かざしたハンマーヘッドをゆっくりと頭上で振りかぶる。
すると死体に向かって容赦なく叩きつけた。
固い金属に死体が骨ごと潰され、血や肉片が辺り一面に飛び散る。
巨漢は構わずそのまま二度三度と叩き続け、しまいには死体を元の形も分からぬ程にグシャグシャの肉塊へと代えてしまう。
そしてそのまま箒と塵取りを使い、袋詰めにしてしまった。

―――これには流石に遠巻きで見ていた荒事に馴れてる客たちもひき気味だった。
なぜかといえば、この店の肉には死体のミンチが使われてるという噂が絶えずあったからだ。

【短い間でしょうがよろしくお願いします。ドラクマは出落ちキャラなのですぐに倒されても構いません。
むしろ隙あらばすぐにでも殺っちゃって下さい。】

22 :名無しになりきれ:2015/11/13(金) 18:30:32.25 0
明日にでも支援するわ

23 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/13(金) 21:51:14.42 0
鴉たちに両の目玉を抉られた男は、あろうことか自らの銃で自殺してしまった。
まぁ、ジャンキーな上に目も潰れてしまっては、今後の生活はままならないだろう。
その苦労を思えば、自殺はある意味彼にとって救いだったのかも知れない。

「…つまらない、せっかく奪ってあげたのに」

歓声の中、ラウテはそう呟いてため息をついた。
さて、この死体をどうしようかと思案していると(犬でも召還して食わせようかと悩んでいた)店の奥から一人の巨漢が現れた。
その男は手にした戦槌で死体を肉塊にまで押し潰し、それを片付けてしまった。
なるほど、そういう方法もあるのかとラウテは感心する。非力な彼女では思いもしない方法だったからだ。
男の作業がひと段落付いたところで、彼女は男に声を掛けた。

「店、汚してごめんなさい。……掃除、手伝う」

そう言ってラウテは、置いてあったモップを手に取ると床の血を掃除し始めた。
掃除の手際はあまり良くない。というより、明らかに緩慢だった。
基本的にラウテは音楽と戦闘以外では器用な方ではない。それに、お腹一杯で眠い。
それでも何とか掃除を済ませ、彼女は深々と礼をした。

「…ラウテは、ラウテ。おじさんは?」

そう名を尋ねる。どうやらラウテは巨漢の彼に興味を持った様子だ。
荒くれ者の集う、冒険者協会が擁する酒場の用心棒だ。さぞ腕も立つのだろう。
彼女は冒険者として仕事を引き受ける際は滅多に一人では戦わない。
前線で戦う事も可能だが、彼女の能力を生かせるのは後衛についたときだ。
魔笛アムドゥスキアスは悪魔を封じた横笛、その能力は既に示したものと、あと一つの能力を持つ。。
しかしその絶対的な力と引き換えに、演奏中は無防備になりやすいと言う欠点を抱えている。
だからこそラウテは後衛で援護に徹する事を望む。優秀な前衛がいれば心強いのだ。

「…ラウテ、仕事欲しい。出来ればおじさんと一緒に…駄目?」

冒険者協会は彼ら冒険者に仕事の斡旋をし、統括する事を目的とした組織だ。
仕事の内容はモンスター退治や用心棒など、基本的に戦闘を伴うものがほとんどである。
仕事は難易度からランク付けされているため、身の丈に合った仕事を探す事が可能だ。
ラウテはその中から主にA〜Bランクの仕事を人数次第で引き受けている。
銀貨十枚以上の報酬が見込めるため、相方には事欠かない。まぁ腕の立つ者しか引き入れないが。
身の丈に合わない仕事を引き受けた者は勝手に死ぬだけだろう。
今回もラウテは、そういった仕事を引き受けるために冒険者協会へ来た次第だった。

24 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/14(土) 13:25:42.76 O
「吟遊詩人の少女よ。殊勝であるな。感心感心!」
(ふん?物好きな小娘だ。……まぁいい。俺の手間も省けるしな)

―――モップ掛けする少女を一瞥するドラクマ。
少女は危なっかしい手つきだが気にはならない。
何故ならドラクマ本人も充分不器用だからだ。

―――ひとつ、いい忘れてたことがある。
ドラクマには周囲に聞こえる声で呟く奇妙な癖があった。
会う者は皆、本人の考えが声に出てるのだとは気付かず、単なる嘘のつけぬ正直者だと思い込む。
結果、誰も癖を指摘をしないので本人は全く無自覚のままなのであった。

―――暫くして、ラウテから仕事の誘いがきた。

「そうか少女よ。ラウテというか。
正体をばらすつもりはなかったのだが、先に名乗られた以上は仕方あるまい。
礼を尽くされれば礼として返さねばならぬ。
俺は今、黒服の用心棒風情に甘んじておるが、これは世を忍ぶ仮の姿!」

「何を隠そうっ!俺さまは誉れある国軍が誇る超重騎士団がひとりっ!
アーマ-ナイト、ドラクマ・ヴァン=グリオン本人であるっ!」

「ガーッハッハッハッ!
初対面で俺さまの実力を見抜くとは面白いぞ小娘っ!実に面白いっ!
連日連夜、酒と薬に溺れた弱き者の相手ばかり……ちょうど退屈しておったところだ。
俺さまと組みたいと望む気持ち、わからんでもない。
いいだろう……ただし、条件が2つある!」

「まず、ひとつめは……」

「俺と戦えっ!ひと太刀なりとも浴びせてみろっ!
見事、力づくで俺さまを認めさせてみるがいいっ!」

いうが否や、友好的な態度で油断していたラウテの腰に腕を回しいきなり抱え上げる。
セクハラではない。
そのまま客席に向かいブン投げたのだ!
「てやっ!」

―――無防備な少女を投げるなどおよそ正気の沙汰ではない。
だが、荒事に馴れ親しんだドラクマからすれば武器を使わぬだけ優しい計らいといえよう。
客席に投げつけたのも椅子やテーブルは当たれば壊れるのでショックが和らげると思っての配慮だった。
無論、ここで基準となるのは頑丈な身体をもつ自分本位である。
相手がか弱き少女の身であることや、他に客が居ることすら全く考慮してない辺りが脳筋野郎である所以と言えよう。
―――いつ客を巻き込んでも仕方のない、危険な状況ではあった。

25 :名無しになりきれ:2015/11/14(土) 14:45:16.24 0
今からでも参加おkかな

26 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/14(土) 15:11:20.97 0
>>25
【どうぞどうぞ。順番は私の前と後ろ、お好きなほうでどうぞ】

27 :名無しになりきれ:2015/11/14(土) 15:42:00.51 0
今からテンプレ等を用意するので
後を希望しておきます

28 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/14(土) 15:47:17.89 O
>>27
【亀レスですが私も了解です。よろしくどうぞ!
あと最初にも言いましがあなた方の演出上、御必要ならドラクマはどのような残酷な目に合わされても結構ですからね
すぐに殺しちゃってくれても構いませんので】

29 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/14(土) 16:31:36.72 0
「……面白い」

ドラクマに投げられる瞬間、ラウテはそう呟いていた。
そして投げられながらも空中で姿勢制御、見事にテーブルの上に着地をした。
その両手にはいつの間に取り出したのか、二振のダガーが握られている。
聖なる紋章が刻まれたそれは、モンスター退治に特化した代物だ。
大抵のモンスターは聖属性に弱いため、この手の武器は重宝されるのである。

ラウテはそのダガーを構え、勢い良くドラクマの懐に向かい駆け出した。
重鎧全盛期の今日において、あえて脆弱な軽鎧を纏うのは彼女の戦闘スタイル故である。
決して筋力的に着る事が出来ないという訳ではなく、スピードと回避に重きを置いている為だ。
そのスピードはまさに疾風の如し、一瞬でドラクマの懐へ潜り込む。

「…っ!」

初撃は分厚い籠手によって阻まれる。しかし、その場で宙返りをし顎に一撃蹴りを入れる。
よろめいたところを更に追撃するが、決定打には至らない。
だが、ラウテのラッシュには別の意味が隠されていた。
ダガーの柄にはボタンが付いており、それを押すと蓋が微かに開くように出来ている。
その隙間から零れ落ちたのは、小さな植物の種。これといって何の変哲もない。
それが撒かれたのを確認したラウテは、再び牽制の蹴りを入れて距離を取った。

「…これで決めるわ。お願い、アムドゥスキアス」

素早く持ち替えられていた魔笛を静かに吹く。変化はすぐに現れた。
床に撒かれた種が急速に発芽成長し、丈夫な蔦となってドラクマに襲い掛かったのだ。
蔦は意思があるかのように彼の手足に絡み付き、その自由を奪う。
彼ほどの筋力を以ってしても、その蔦を引き千切ることは不可能だった。
魔笛の魔力により、その蔦は強化されているのだ。
やがて完全に身動きの取れなくなったドラクマにラウテはゆっくりと近づくと、ダガーを喉元に当てる真似をしてみせた。

「これでチェックメイト。…ラウテの勝ち、で大丈夫?」

ラウテは再び笛を吹くと、蔦は瞬く間に枯れてしまった。

「……ラウテは強いんだよ、きっと力になれる…」

そう呟くように言うと、彼女はドラクマに握手を求めた。

30 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/15(日) 06:06:18.13 0
名前:ヴィクトル・シャルフリヒター
年齢:25
性別:男
身長:154cm
体重:61kg
種族:エルフ
職業:元処刑人/現魔女狩り
性格:八方不美人/皮肉屋
利き手:訓練による両利き
魔法:主にサバイバル用
特技:魔女狩りの戦闘術/拷問
武装:瑞鉄(みずがね)の細剣
   瑞鉄の戦鎚
   瑞鉄の弓
   瑞鉄の盾
防具:瑞鉄の帷子/肘当て/膝当て
他所持品:矢筒と矢
容姿:恵まれたエルフの容姿/ドブ川のような眼つき/長いコート
将来の夢:決して自覚はしないけど幸せになりたい

簡単なキャラ解説
王国が辺境の開拓を進める際のいざこざに紛れて誘拐され、奴隷化されたエルフ
の産んだ子供。つまり正確にはハーフエルフ。その事を指摘されたら命のやり取りになる
エルフらしからぬ低身長は幼少期の生育環境が悪かった為
流石の王国も亜人達の奴隷化は推奨していない為、彼を所持していた奴隷商はやがて捕まり死刑になった
際してヴィクトルはその刑を執行した処刑人の養子となり、20歳まで育てられた
だが故あってその家から遁出
以後は魔女(ここでは魔法を犯罪に用いる者全般を指す)狩りを主な収入源として生きている

31 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/15(日) 06:09:54.91 0
「……店主、ビールを二つ」

酒場のカウンターの隅、類稀な美貌とドブ川のような眼を備え持つ男が呟いた。
どう見ても大酒飲みといった風貌ではない。
ろくでもない事を考えているのは明白。

だが店主は何も言わず錫製のジョッキを二つ差し出した。
こういう時に制止を掛けて自分が被害を肩代わりするほど損な事はないからだ。

男はそれを両手に取って立ち上がると、背後を振り返り――まずは黒服の大男に一つ、投げつけた。

「頭は冷えたか、この馬鹿野郎め」

その行為に、憂さ晴らし以上の意味は無い。
彼――ヴィクトル・シャルフリヒターは粗野な男が大嫌いだった。
己の過去の境遇を思い出させるからだ。

ヴィクトルの手中にはジョッキがもう一つ残っている。
彼はそれを目の前の少女へ向けて――軽く放った。

「お前もだ」

容器と、ぶち撒けられた液体が彼女の視界を占めるように。
そして――銀光が閃く。

レイピアの鋭い切っ先がジョッキを貫いて、少女の目の前に突き付けられていた。

「いいか、二度と酒場にあの薄汚い鴉共を招き入れるんじゃない」

ヴィクトルは潔癖症と言うほどではないが、汚れた空間が大嫌いだった。
それもやはり、己の過去の環境を思い出させるからだ。

「次同じ事をしてみろ。疫病の蔓延を目論む魔女として処刑してやる。
 お前があの男にしたように、両の眼を抉った後でな」

そう命令するヴィクトルの言葉は、ただの虚仮威しではない。
彼は魔女狩り――魔法を犯罪に用いる者を問答無用に処刑する権利を有している。
気に食わない人間を殺してから、この者は魔女だったと主張する権利も。

しかし彼は偏屈な男だったが、その腕前は一級品と言えた。
剣閃は鋭く、初動の隠し、足捌きも洗練されている。
加えて彼が手にしている細剣は、瑞鉄と呼ばれる金属特有の光沢を帯びていた。

瑞鉄は特殊な鍛造法を用いる事で、複数の形を与えられる金属である。
鍛造の際持ち主となる者の血を混ぜる事で、その者の意思に呼応して形を変化するようになるのだ。

その性質上、瑞鉄を用いた金属器は完全な特注品となる。
瑞鉄自体も希少な金属である為、ただの魔女狩り風情が手に出来る品ではない。

つまり――彼は訳ありだし偏屈だが、仕事の連れ合いとしては悪くない。

32 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/15(日) 16:29:47.74 O
―――少女の体重は非常に軽く、まるで小石を放ったような感覚だった。

投げた瞬間。少女の体が激突し壊れたテーブルや椅子を弁償することを想像して、一瞬思わず頭を押さえる。
だが、その心配はすぐに杞憂と消えた。
少女の体はテーブルに叩きつけられず、空中で円を描きながら猫のように器用に着地を決めたのだ。
―――思わず、ほくそ笑む。

「面白いっ!そうでなくてはなっ!」

―――だが瞬間、少女の体がテーブルの上からいきなりかき消えた。
いや、違う!テーブルを蹴り、こちらへ向かって一足跳びに翔んできたのだ。

「させんっ!」

―――抜き打ち気味に懐刀を薙ぎ払う。
迫る少女にカウンターで合わせたのだ。
狙いはドンピシャリ!
少女の体を鋼の刀身が捉え……る事はなかった。
代わりに、何故か籠手から金属を弾く音が聞こえた。

「な……にィッ!?」

―――抜いた筈の刀身が……消えた?
いや、違う。これは相手の思わぬ素早い反撃に対し、体が無意識に反応してしまっただけの事。
最初から帯剣などしていなかったのだ。
それすらうっかり忘れていた。うっかり忘れる程の速度だったのだ。
反射的に前に踏み込もうとしたその瞬間!全身に鞭のようなものが巻き付いてきた。

「!」

―――気付けば全身拘束され、喉元へと刃が向けられていた。
思わず顎髭から汗が滴り落ちる。
少女が得意げに勝利を語る。

―――少女は知るまい。アーマーナイトは喉元にも鋼鉄製の防具を付けていることを。
―――少女は知るまい。アーマーナイトは蔦をも引き千切り、前進する剛力をもっていることを。
―――少女は知るまい。アーマーナイトは致命傷をおってさえ尚、前に進む気力を誇ることを。

―――なので、敗れたなどとは微塵も思ってはいない。
だが、己れがアーマーナイトでなければ敗北を認めていただろう事も確かだ。
そのことが妙に小気味よかった。
気が付くと自然と口許が緩んでいた。
「クックックッ……!」

「ガーッハッハッハッ!面白い……気に入った!
いいだろう。ラウテ。お前の仲間になってやってもいい!」

「ただし、もう1つだけ条件がある。……それはだな……」

―――その瞬間だった。水を掛けられたのは。
【続く】

33 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/15(日) 16:51:11.83 O
―――リアルな意味で水を注された。
そのおかげでやっと、ここがどこで、自分がどういう立場なのかをやっと思い出した。
ここにいるのは自分とラウテだけではないのだった。
見るとひとりのエルフの客自分たちに向けて非常に立腹している。
だがドラクマには、このエルフが腹をたてている理由がさっぱりわからなかった。

(???……何を言っとるんだコイツは?)

―――自分はこの酒場の用心棒の黒服だ。
なんとか客の苦情処理をしないといけないだろう。
見るに、他の店員たちは客たちの苦情処理に追われている。
それに、「手のあいてる奴ァ、猫でも使え!」がここの糞店主の口癖の1つだ。

―――ドラクマはエルフに向かって何かを言いだしそう……もしくは既に言ってたのかも……を察知し、目の前に手を出しラウテを静止する。

「待て待て!今のでお前さんの実力はわかった。
だが、ここは俺さまの店。
客の小娘なんぞの出る幕じゃねぇ!
ここは俺さまに任せて大人しくひっこんでな!」

「それにちょうどいい!華麗なるプロの苦情処理能力ってもんを見せてやろうではないか!」

―――そういうが否や、エルフの前に立つ。
心理的に先ほどの敗北を引き摺っていたので、ここらでいいところを見せ付け少しでも優位に立ちたかったのだろう。
本人には全くそういう意識はなかったのだが。

「―――失礼ですがお客様?うちの店に何か糞文句でもおありで?
糞不味い水がお口に合わなかったんですかい?」

―――そこまで言ってから、首を傾げる。

「―――ふむ?しかし、妙な話だ……」

「先ほどうちの糞店主が、すかした田舎者のエルフ野郎の飲み水にカエルのしょんべん混ぜといてやった!とか言って、裏でゲラゲラと笑い転げてやがったんだが……?」

「エルフ野郎は森に住む田舎者だからカエルが好きなんだよなぁ?
まさか口に合わないなんてわけ……ねぇよなぁ?」

―――ドラクマは客のエルフの顔をじっと覗き込んだ。
しかしそれは、ふと疑問に思ったからであり、客を小馬鹿にする意図では決してなかったのだが……。
正直といえば正直だが、聞いてる方がどう思うかまでは全く考慮していない。
困った事に、そういう細かなことには一切気が回らないのが脳筋体質の特徴なのだ。

34 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/15(日) 22:30:14.18 0
戦いの中で、ドラクマが明らかに手を抜いていたことは気付いていた。
だが、これは殺し合いではない。本気を出す理由もないという訳だ。
もちろんラウテもまた、本気で戦っていた訳ではなかった。
蔦で絞め殺すもよし、剣技のスピードを更に上げて圧倒する事も出来たはずだ。
しかし彼にも、また酒場やそこに集う人々にも怪我をさせる訳には行かない。
かくして、ラウテとドラクマの戯れのような戦いは幕を閉じたのである。

二人が戦いを終え互いの協力を結んだそのとき、思わぬ方向から水を差す者がいた。
妙に小柄なエルフの男性だ。長身な者が多いエルフの中では珍しいと思われる。
どうやら酒場で暴れていたのが気に食わない様子で、ラウテに剣を向けてきた。
……素早い剣捌きだ。決して見切れない速さではないが、ビールの幕でうまく隠している。

>「いいか、二度と酒場にあの薄汚い鴉共を招き入れるんじゃない」

しかし、本気でないのは見て取れた。それでもドラクマにビールをかけたのは許せない。あと鴉。
文句をつけようと一歩踏み出そうとしたのを、ドラクマ本人に制された。

>「それにちょうどいい!華麗なるプロの苦情処理能力ってもんを見せてやろうではないか!」

「…プロ? ところでおにいさんは、鴉嫌いなの? …可愛いのに」

まだ血が昂ぶっているのだろう、ドラクマはエルフの男に挑発をし始めた。
稚拙ではあるが実に効果的な挑発をラウテは聞き流しながら、ひとり思案に耽っていた。

「…鴉、可愛いと思うのにな。目とか羽根とか、黒くてつやつやで…」

あの鴉たちは、ラウテが魔笛の力で契約を結び、使い魔として召還出来るように仕立てたものである。
離れていてもいつでもすぐそばの空間に召還出来るため、準備さえ怠らなければ非常に便利なのだ。
彼女は旅の途中で出会った野生動物を片っ端から使い魔に仕立てているため、その数は膨大だったりする。
動物を可愛がる事に目がないラウテにとって、この能力は非常にありがたいものなのだ。
ちなみに制限として、モンスター系の生き物の契約は非常に難しい。
戦って怪我をなるべくさせず打ち負かした上で、双方の合意の上契約を結ばなければならないためだ。
ごく小さな動物たちなら、戦わずとも契約するのは容易いのだが。

さて、エルフの男に安っぽい挑発を仕掛けているドラクマを、そろそろ止めねばならないとラウテは考えていた。
ここで喧嘩になるのは、少なくともエルフの男にとっては好ましくないだろう。
でなければ他人の喧嘩に口を挟むような真似はしないはずだからだ。

「ふわぁ…二人とも、そこまで。それ以上はラウテ、許さない……」

あくび混じりでの宣言ではあるが、既に魔笛を構えている。
魔法でこの場を収めようという意思表示に他ならない。きっと騒ぎになるだろう。

35 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/16(月) 14:57:30.89 0
>「―――失礼ですがお客様?うちの店に何か糞文句でもおありで?
  糞不味い水がお口に合わなかったんですかい?」

「あぁそうだ。ついでに虫ケラ同然の脳みそしかねえ用心棒も気に入らないし、知恵足らずのガキも俺は大嫌いだ」

>「―――ふむ?しかし、妙な話だ……」

>「先ほどうちの糞店主が、すかした田舎者のエルフ野郎の飲み水にカエルのしょんべん混ぜといてやった!とか言って、裏でゲラゲラと笑い転げてやがったんだが……?」

>「エルフ野郎は森に住む田舎者だからカエルが好きなんだよなぁ?
  まさか口に合わないなんてわけ……ねぇよなぁ?」

大男の告発に、しかしヴィクトルが取り乱す事はない。
奴隷の時分、小動物や昆虫の類は貴重な食料だったのだ。今更抵抗など覚える訳もない。
もっともその忌まわしい過去を思い出させられた事に、眼光の険を更に深めはしたが。

「心遣いには深く痛み入るが、生憎生まれも育ちもこの国なものでね。
 まぁ、気にするなよ。鎧も着てない重装騎士ドン・キホーテ様にまともな認識なんざ求めてないさ」

ヴィクトルは大男の呟きを挑発と捉え皮肉を返した。
が、その言葉は奇しくも、大男に自らの悪癖を気付かせるものではなかった筈だ。

「だが……口は災いの元だ。なぁ、アンタもそう思うだろ」

ヴィクトルが店主を振り返る。
右手の細剣を手慰みのように緩やかに振り回し――銀閃。
店主の口端が切り裂かれた。

実戦を考慮して得物を選ぶ際、細剣の優先順位は決して高くない。
速く振る事は出来ても切断力に欠け、防御に用いる事も出来ないからだ。
そもそも元は護身用、決闘用の武器だ。

斬撃は言うまでもなく、刺突も急所を突かなければ、殺傷力を発揮出来ない。
腕のない者同士の決闘では、全身が刺傷と刃傷だらけになった挙句、失血死による相討ちになる事が多かった。

だが裏を返せばそれは、上手く使えば相手に最大限の苦痛と恐怖を与えられるという事だ。
逆に一瞬の内に、苦しみを感じる時間すら与えず命を奪う事も。
それはまさしく、処刑人の剣だった。

大男の言葉が冗談や嘘の類であるかは、ヴィクトルには関係なかった。
不快な思いをしたから憂さ晴らしをした。彼が人を傷つける理由など、それだけで十分なのだ。

36 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/16(月) 15:06:05.96 0
「そして災いを呼ぶのは、つまり魔法だな。処刑の対象だ」

言葉と同時、ヴィクトルが再び身を翻し――細剣の切っ先を大男へ。
彼の剣速は、お客様対応の気分で反応出来るものではない。

見据えるは頭部――大男の両眼が剣閃に撫でられ、血飛沫を散らした。
切断されたのは彼の眼球――ではない。瞼のみだ。
だがその事を的確に認識出来る者は、例え戦闘者であっても一握りだ。
大抵は痛みと出血から、眼をやられたと思い込む。

両眼を切られたと錯覚させ、然る後に改めて本当に切り裂く事で、二度の恐怖を与える処刑人の技法である。
そしてその「二度目」までに、どれほどの、致命傷には成り得ない手傷を負わせるかはヴィクトルの気分次第だ。

>「ふわぁ…二人とも、そこまで。それ以上はラウテ、許さない……」

精緻を極める切っ先が――剣閃と化して迸る直前、少女が警句を発した。
口元には――魔笛。

「許さない?何をどう許さないつもりだ。そのチャチな笛を吹く暇があると思っているのか?
 知らないなら教えてやるよ、クソガキ。魔女狩りに裁判は必要ないんだぜ」

ヴィクトルは少女を睥睨し――しかし苦虫を噛み潰したような表情で剣を下ろした。

「……だが、ここでお前を殺しちまったら、報告の為に時間を取られる事になる」

見逃してやるよと言って、ヴィクトルは細剣を鞘に収めた。

「おい、店主。最近この辺りで良くない『噂』が囁かれているそうじゃないか。
 デカい『仕事』があるんだろう?話すんだ。お前が、その口でな」

口の端を切り裂かれた状態で言葉を述べるのは言うまでもなく苦痛を伴う。
食事の際に嫌でも動かさなくてはならない関係上治りも遅い。
ヴィクトルが好む傷つけ方の一つだった。

37 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/17(火) 02:04:22.00 O
―――ここは不法のまかり通る天下の裏街道辻。
この狂人の集う界隈に住まう者に、まともな神経の者など皆無。
人死にがでようが何をしようが、外界とは違い、気にする者は誰もいない。
異端審問官……たしかに風変わりで面白い逸材なれど。
外界では、彼を怖れ憎む者も多いであろう。
だが、ここは異常者の吹き溜まり。
野次馬たちは怖れることも逃げだすことも、まして痛みで転げ回る店主を助けることすらせず。
ただただ、怠惰に。そして無責任に、賭け事に興じていた。
賭けの対象は、次は誰が死ぬかだった。
真っ先に槍玉に挙げられたのは酒場の店主、次に両瞼を切られたドラクマ、三番目がラウテだった。ヴィクトルは不人気。
しかし、思った程圧倒的大差というわけではなく、なぜか僅差であった。

―――不意に、原因不明の鋭い痛みとともに、真っ暗闇に閉ざされたドラクマ。

「……う゛ッ!?」

―――思わず悲鳴を声に出しそうになるのをぐっと堪える。
痛いものは痛い。
だが、決して痛いとは口にしない。
そう訓練されていたからだ。
そして、場違いでユーモラスな声を出す。

「何だ、こりゃあ?蚊でもとまったか?」

―――昔っから痩せ我慢だけは得意だった。
貴族とはいえ田舎者である彼が、エリートである超重騎士団に抜てきされた大きな理由のひとつだ。
だが、部隊の一員になってからの訓練や実践を経て、その傾向はより顕著となった。

―――彼の属していた超重騎士団は、常に前線に立つことで有名な部隊。
数ある騎士の中でも、特に分厚く頑丈な鎧を着込み、自ら攻撃の矢面に立ち背後の味方を護るのが主な任務。
彼らは通常より重い鎧を身に纏うことから、重(ヘヴィ)、もしくは、超重(スーパーヘヴィ)と分類される鎧の騎士だ。
要は、味方を護る堅固な壁役である。
剣技などは二の次。
鎧の中の者には、何よりも頑丈さと精神の忍耐強さが必要とされた。

―――なので、ドラクマは確かに慌てはしたが、大したパニックには陥らなかった。
訓練により一般人よりも幾分か恐怖に対して耐性が高かったのだ。
それに生来より彼は、非常に大雑把な性格なのである。
自身の命にせよ、怪我にせよ、関心薄いのは同じ事。
それは彼が、既に人生の大半を戦場で過ごしてきた事にも由来していた。

38 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/17(火) 04:07:16.47 O
―――ドラクマは思った。どうやら先程の自分の声は、緊張でか細かったらしく、誰にも聞こえてはいなかったようだ。
ちょっとホッとした。
今やっと気付いたのだが、聞かれてたらエルフにとどめをさされていた所だった。
―――それにしてもひとつだけ疑問がある。

(アイツ、今なんで俺を切ったんだ?わけわかんねぇ……)

―――実は彼にはまだ、エルフが何故怒ったのかが今ひとつ理解できていなかったのだ。
何故なら、ドラクマは田舎生まれの田舎育ちで、騎士時代には、「臭い田舎者風情が生意気いうな!」と都会育ちの同僚によく褒められていたからだ。
何故かそのうち誰も言わなくなってしまったが。
それにカエルも、自分の田舎の名物食材で、騎士時代には、野戦で転戦し野宿も多かったドラクマにとっては手軽にとれるたんぱく源のひとつであった。
カエルのしょんべんも泥水すするよりはよっぽど綺麗だったから場所によっては飲み水にしてた。どっかの国では高級な香水の材料だとの噂まで聞いたことがあるので、かなり清潔なイメージだ。
これらの事を踏まえても、困った事にまるでエルフの客が怒った問題点が見つからないのだ。

(まぁ、誰に聞いても、大概、エルフは気難しいっていうしな。突然キレても別に不思議は無ぇか……)

―――自己完結したところで、声が聞こえた。
どうやらラクテに庇われたらしい。
心の中で感謝はしたものの、同時に、あんな年端もいかない小娘に庇われたという屈辱感の方が大きかった。

―――先程のエルフはというと、店主の脅迫へと興味が移ったようだ。
取り敢えず先程から手で触ってみて、瞼を切られた事に気付いてはいたので何とかしなければと思う。

(取り敢えず消毒か。消毒さえすれば何とかならーな!)

―――エルフに気取れぬよう、小声でラウテのいるであろう辺りを予想し囁く。
店内の広さはだいたい把握してるし、先程聞き耳を立ててたお陰でどこに誰がいるかはだいたいわかるのだ。

「おい、小娘。いや、ラウテ。こっちだこっち!」

「悪いが。そこらに酒のボトルが転がってんだろ?
うるさ方のエルフの客には内緒で、一丁こっちに持ってきてくんねぇか?大至急頼むわ」

39 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/17(火) 15:59:10.81 0
敵役として参加したいと思います。
街に蔓延っている、正気を失わせる危険な薬物(>>18)を振りまいている魔女、というキャラです
問題ないでしょうか



名前:リタリン・(剥奪済)・フェニデート
年齢:21
性別:女
身長:162cm
体重:46kg
スリーサイズ:80-58-77
種族:ドルイド
職業:無職
性格:自堕落でとても胡散臭い女
利き手:左
魔法:形容魔法(対象に別の性質を付与させる魔法。Ex."鉄塊"と形容→鉄の硬度と重量に。低燃費)
    普通の魔法(魔導書をカンニングしながらの魔法。強力だが時間がかかる。高燃費)

特技:ハーブの栽培と調合と使用(意味深)
武装1:モーニングスター(普段は魔法の杖に偽装)
武装2:魔導書(様々な魔法が記載され、未習得者でも時間さえかければ発動可能)
武装3:吹き矢(各種ハーブ毒完備・主に狩猟用)
武装4:薬草袋(自家製ハーブとその調合道具一式)
防具:ローブ(ドルイド伝統。濃緑で鎖帷子を織り込んである)
   とんがり帽(古典的な魔女風帽子。防刃性があり、小物を隠しておける)

他所持品:ハーブ栽培セット、魔法使いギルド会員証
容姿の特徴・風貌:半眼で儚げな顔立ち。長い黒髪を両肩のところでおさげにしてある
将来の夢(目標):今度こそバレないようにハーブの販路を確保する

簡単なキャラ解説:
『堕廃の魔女』。かつて里を追放されたドルイドの成れの果て。
彼女の里は伝統として他の人里に見習いを派遣し、魔法を福祉に役立てることで修行と外貨の獲得を両立する習慣があるが、
怠け者故の効率化を極めた結果、皆を幸せにするには不安がなくなるハーブと気分が高揚するハーブを振りまくのが一番と考え実行。
村一つを廃人の巣窟に変えてしまい、通報を受けた魔女狩り達に堕廃の魔女として討伐される。
その煽りで出身の里までとんでもない風評被害に晒され、両親からも絶縁状を叩きつけられた。
しばらくの社会奉仕と恩赦によって釈放されてからは、里にも頼れず怪しいハーブ売りとして各地を転々としていた。
当局に面が割れているのでまっとうな職にありつけず、出入りできる街が年々減っているのが悩み。
魔法についてはまともに修練を積んでおらず魔導書をチラ見しながらでないとまともに呪文も唱えられない。
ついでに魔力も少ない為、常用できるのは燃費の良い形容魔法ぐらい。
その為魔法使いらしからぬ肉弾戦闘(杖を強化して物理で殴る)を強いられている。
また自家調合したハーブでよくラリっている。
好きなものは焼いた獣肉とよく冷えたエール。
嫌いなものは魔女狩りと定職に就いてないことを説教してくる連中。

40 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/17(火) 23:22:13.02 O
――私個人と致しましては、早期参入ちょっと待ったと言いたいですね。
GMもいない現状。タイミングを図らず、次々と新規さんが参加なさるとなると、話がグダグダになりそうで怖いのです。
新規キャラがひとり加わればプレイヤー環境も結構変わりますしね。
具体的には書く順番が替わりそうだ待ち時間が長くなります。
場合によっては、設定も変えねばならないだろうし、書き溜めも廃棄しなければなりません
なので新規参入なさるならば、シーンが変わる時か話の区切りになる場面がよろしいのではないでしょうか?

むろん、私は>>1さんではありませんので、あなたに強制は致しません。
他の参加者の方もこれとは別の御意見を御持ちならば、それも考慮の上、尊重致しますよ。

41 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/17(火) 23:47:09.56 0
過程はどうあれ、とりあえずはとりあえずエルフの男が剣を引っ込めた事に安堵する。
店の被害など知った事ではないが、せっかく見つけた”壁”をこれ以上傷付けさせる訳にはいかない。
ラウテも傷を見て目をやられたのではないかと思ったが、ドラクマの様子からして瞼を浅く切られたらしい。
とりあえず治療をと思った矢先、そのドラクマから呼び止められる。

>「悪いが。そこらに酒のボトルが転がってんだろ?
>うるさ方のエルフの客には内緒で、一丁こっちに持ってきてくんねぇか?大至急頼むわ」

酒、と聞いて理由を瞬時にはじき出す。傷の消毒をしたいのだろう。
ラウテは辺りを見渡すと、先ほど死んだ男のテーブルにまだ酒が残っているのを見つけた。
この種類はかなりきつい酒だ、消毒には十分使えるだろう。
酒を回収しとてとてと近づいたラウテは、エルフに悟られぬように酒瓶を渡した。

「…あとこれ、血止めの軟膏…」

小さなケースに入った軟膏だ。数種の薬草を粘りが出るまですり潰したものである。
戦場において止血の手段は必ず必要になる。かと言って、いちいち包帯も巻いてはいられない。
そんなとき便利なのがこの軟膏だ。ちょっとした刀傷程度なら、これで何とかなる。
これはただ止血するばかりでなく、傷に良い薬草を混ぜる事で治癒効果も望める。
失血による戦闘不能を回避出来るこの薬は、冒険者の間では必需品であった。

酒と軟膏を渡してエルフの男の様子を見ると、店主に仕事がないか聞いている様子だった。
それならばいくつか心当たりがある。ラウテは店主に代わり語る事にした。

「…仕事の話、いくつかある、ラウテ知ってる。ひとつ、海魔の討伐…」

海魔とは海によく出没する巨大生物の事だ。
巨大なイソギンチャクにも似たそれは船の運航を阻害するため、出没したら討伐が最優先される。
ただしこの案件は少人数で挑むものではない。数十人規模のパーティを募って行われる大捕り物だ。
実際に海魔を討伐するのが目的ではなく、とりあえず追い出す事が出来ればそれで良い。
多人数による仕事のため正直なところ収入は期待出来ないが、今募集されている最も大きな仕事だった。

「…ふたつ、森に現れた抵抗民族の排除…」

こちらはもっと分かりやすい仕事だ。
王国が国土を広げるに当たって邪魔になる少数民族、部族を蹴散らす事である。
村を焼き、女を捕らえ、その土地のすべてを乗っ取る。実に分かりやすい。
報酬とは別に捕らえた女を売り捌いたりも出来るので、収入はかなり期待出来るだろう。

「……そしてみっつ、街に蔓延する危険な薬の販売元の調査、討滅」

実はこの案件はあまり良いとは言えない。この街のダークサイドに触れる事になるからだ。
公然の秘密ではあるが、この依頼をしたのは街を裏から取り仕切る連中によるものだ。
連中にとっては、シマで好き勝手商売をされてはたまらないのだろう。
薬を派手に売りながらも巧妙に姿を隠し続けているのは、相手が魔法使いだからとも言われている。
確かに古典的な魔女なら薬を作る事も可能だろう。そして身を隠すことも。
少々厄介な仕事なため引き受ける者は非常に少ないが、成功報酬はおそらく最も高いだろう。

「お勧めは薬売り探し。仕事をするならラウテたちと一緒は、どう…?」

【仕事のお誘い、誘いに乗るかはご自由に】
>>39よろしくお願いします。私としては任意のタイミングで構わないと思います。空気を読んでくださるなら】
【問題なければGMを引き受けても構いませんが、どなたか我こそはという方はおりますか?】

42 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/18(水) 00:55:34.59 0
俺としては一緒に遊びたいと言ってくれる奴を歓迎したいし長く待たせるのは心苦しいと思う

ドラクマが警句を発したのは恐らくリタリンが「敵役参加」だからだろう
単純に四人目の参加者と言うなら、丁度今仕事の話が始まろうとしている
参加するタイミングとしては問題ないし、待ち時間も……まぁ俺は許容出来る

だが敵役参加となると少し事情が違ってくる
自堕落で怠惰な魔女が、自分が狙われているかどうかの情報収集をちゃんと行うだろうか
脅威に対して先手を打とうと暗躍しようとするだろうか。あまり期待は出来ないな
つまり、状況がリタリンを持て余し気味になってしまう可能性が高い

それは誰にとっても不幸な事で、だからこその待ったなのだろうと俺は察した

それともう一つ、TRPGにおいて、敵役というのは物語の主導権を握りがちだ
これは決してリタリン嬢を見くびる発言じゃないんだが
途中乗車のプレイヤーに主導権を委ねるのはやはり不安が残る

敵役が「海の向こうに黒幕配置したから」と言ったのなら
敵の敵たる俺達はそれを倒しに行こうと努力するか……或いは一人のプレイヤーを切り捨てる決断をしなきゃならない

それもやっぱり誰にとっても不幸な事だ
空気を読んで欲しいというのは、そうなる事を避けたいが故だろう

つまり……結局言う事はラウテと殆ど変わらないな
アンタの事を心より歓迎するし、参加するタイミングはいつでも構わない
が、俺が勝手に想像したドラクマの意図も少しは汲む余地があるだろうから、それについて一考してもらえれば最高だって所か

43 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/18(水) 05:04:32.16 0
「おいどうした。早く喋れよ。俺の言う事が聞けないのか?えぇ?」

カウンターを飛び越え、内側で痛みに転げ回る店主を見下ろし、ヴィクトルは尋ねる。
無論、答えなど求めてはいない。彼はただ他人を責め、傷つける口実が欲しいだけなのだ。
狭いカウンターの内側で、しかし細剣の切っ先は自在に瞬き、店主を切り刻む。

「まさか……喋れないのか?傷のせいで声が出せない?」

ふと、ヴィクトルは静かな――穏やかとすら言える声音を発した。

「加減はしてやったつもりだったが……少し深く切り過ぎたか?」

店主と目を合わせ、依然静やかな声で尋ねる。
その眼には未だ怯えの感情が浮かんでいたが――それでも縋るように、彼は何度も頷いた。
ヴィクトルはその様を見て、ふっと笑うと、

「そうか……そりゃつまり、俺の腕が悪かったと、そう言いたいんだな?」

言うや否や、細剣が酒棚を通り抜ける。
幾つかの酒瓶が切断され――その中身が店主へと降り注ぐ。
高濃度のアルコールが彼の全身に刻まれた刃傷を舐める。
けたたましい悲鳴が上がった。

「なんだよ、声出るじゃねーか。人を騙すのは魔女の典型的な特徴だが……」

ヴィクトルの眼光と細剣の切っ先が、店主の首を睨み――

>「…仕事の話、いくつかある、ラウテ知ってる。ひとつ、海魔の討伐…」

しかし視界の外から少女の声が聞こえた。

>「…ふたつ、森に現れた抵抗民族の排除…」

店主に代わってめぼしい仕事を述べ始める少女に、ヴィクトルは眉を顰めた。
彼とて異端審問所に募られた『密告』を元にこの町を訪れたのだ。

密告とは即ち、殆ど仕事の依頼のようなものだった。
魔女狩りは、かつては教会が執り行っていた。
だが魔法を犯罪に用いる、卑しくも賢しらな者達と渡り合うには、討滅者もまた外道に足を踏み入れる必要がある。
その戦いは名誉からかけ離れていて、神に仕える者には相応しくないものだった。
故に、やがて異端審問所は教会から独立した組織となり――『密告』さえあればどんな仕事でもこなす狩人の集いと化したのだ。

44 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/18(水) 05:05:41.47 0
>「……そしてみっつ、街に蔓延する危険な薬の販売元の調査、討滅」

ともあれ、ヴィクトルは細剣を店主の服で拭うと、少女を振り返った。
店主への嗜虐心は既に冷め切って、失われていた。
彼の『憂い』は己の人生、生命そのものに対して抱かれている。
故にどれだけ憂さ晴らしを重ねても晴れる事などなく――彼も半ば無意識に、その行為の虚しさを知っているのだ。

>「お勧めは薬売り探し。仕事をするならラウテたちと一緒は、どう…?」

その提案に、ヴィクトルは改めて少女と大男を品定めするように睨んだ。
少女の魔法と身のこなしは先程も目撃している。
大男の方も、巨大な戦鎚を何度も振り回しながら、その体幹にはまるでぶれが無かった。

「あぁ、俺もその仕事が目当てでここまで来たのさ。弾除けが増えるのは大歓迎だ」

結果、傍に置いて損はないと判断――少女の提案を受け入れる。

「ただし、報酬は俺が半分、残りの半分がお前達だ」

付け加えた条件に関しては、彼の慢性的な憂さ晴らしの意味合いが強い。
と言うのも彼はそもそも異端審問所に所属している。
つまり仕事をこなせば、そちらから報酬が得られるのだ。
二重取りを禁じる規約はないが、特別金に固執する必要もない。
単純に、不公平な分配率を吹っ掛け、相手を不快にしたいだけだった。



【一つ言い忘れた事があるんだが……ラウテ嬢のGMを正式なものとする事も俺は歓迎する】

45 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/18(水) 11:52:10.77 O
【私は、前言通り、他のお二方の御意見を尊重しますね。
リタリンさんの任意のタイミング、“早期”での御参加をお待ちしております。】

【ヴィクトルさんの私の意見に対する考察は、大筋において正しいです。
あの時点でこのスレにはGM不在でした。
そこに敵役で参入し物語を引っ張っていくとなると、準GMとも言うべき存在となりますよね。
リタリンさんがGM宣言をなさるのであれば何ら問題はありませんでした。
木に枝葉がたくさんあるのはよいのですが、幹はひとつの方が望ましい。
つまり、そういう事(=考えすぎ)です。】

【準GMといえば、このスレを最初期から引っ張ってこられたラウテさんがそんな立ち位置でした。
個人的にGMをやるのに一番相応しいのはスレ立て主の>>1さんで、その次に理想的なのは悪役だと思います。
しかし、それ以上にGMに相応しいのは、やはりやる気のある方でしょう。
私も、ラウテさんのやる気を尊重します。
否定する理由は全くありません。こちらこそよろしくお願いしますね。
(しかし、どうしてもやりたいという風でもないですので、同時にリタリンさんGMも推薦しておきましょう)】

【白状します。実は私は、ドラクマがヴィクトルとパーティを組む理由が見つからずに悩んでいました。
なので仲間となる為の仕込みに入る予定でした。
そんなタイミングだからこそ、待ったをかけたわけです。
つまり、ヴィクトルさんが仰るほど私の考えはクリーンなどではなく、少なからず私のエゴも入っていたわけですね。
誤解せぬよう言っときますが、これは既に私の中では既に解決した事案ですので、いっさい気にしないで下さい。
寧ろ、ごめんなさい。】

【それと私は、ラウテさんとヴィクトルさん、お二方のシナリオアイデアも見てみたかった。
その為に必要なのが、1〜2ターンの猶予でした。
それも私が待ったをかけた理由のひとつです。(=結局、考えすぎ)
魔女キャラが気に入らないとか、そんな理由でないのは確かです。
個人的には寧ろ、強くて悪い魔女、大好物ですので。
リタリンさんは、好きにはっちゃけちゃって下さい。
ドラクマを本気で潰しにかかって下さるとありがたいです。
参加に際し、初めからケチをつけてしまったようで申し訳ないです。
これからの一層の御活躍、期待しております。】

46 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/18(水) 13:16:24.51 O
―――揺れる液体の音がする。ラウテが酒瓶を差し出したのだ。
それを手探りで受けとめる。

「おうっ、恩にきる」

―――受けとるや否や、蓋を開けるのさえもどかしく、テーブルの端に叩き付けて割り、一気に目の傷口辺りにぶちまける。

「――――ッ!!」

―――声にならない悲鳴を必死で抑えつける。
どうも度数が高い酒だったようで、染みるというより傷口が灼けた。
切られた時よりもよっぽど痛い。
だが声には出さず、無言で呻きながらのたうち回る。

―――渡された軟膏を大雑把に塗った。
それから、ゆっくりと薄目を開ける。
そう重い傷ではないのは指で触れて解ってはいたが、見えてホッとする。
するともう、目の事は頭の隅から消えた。

(そういや、あのエルフ野郎はどこいった?
小娘は?)

キョロキョロと店内を探ると、どうやら奥の方で誰かが話してるようだ。
どうやらラウテが、エルフ野郎を仕事へと勧誘しているらしい。
正直なところ、仕事の内用はどうでもよかった。
どうせ何処に行っても自分のやる事はひとつだけなのだ。

>「あぁ、俺もその仕事が目当てでここまで来たのさ。弾除けが増えるのは大歓迎だ」

(なんだぁ?アイツ、俺さまの事を誉めてやがんのか?)

>「ただし、報酬は俺が半分、残りの半分がお前達だ」

そこで、ラウテの前にしゃしゃり出る。

「―――ああ、俺さまはそれで構わん。金額なんざ最初ッから期待してねーからな。
俺さまは飯が食えて、酒さえ飲めりゃいーんだ。
明日の小銭さえ入りゃ、文句はねぇ」

―――実はドラクマは、細かな計算が苦手だった。全く出来ないわけでもないのだが。
金の支払いはいつも誰かに任せてた。
騎士団時代には付き人もいたし、妻もいた。
田舎では一応貴族の子息だったので、召し使いにやらせてた。
それで今まで何の問題もなかった。
それに何より、生来より大雑把な性格なのだ。

―――次いで、憐れなボロ雑巾と化した店主を見下し、冷ややかな目で一瞥。

「ちょうど職場も無くなったとこだしな。断る理由なんざねーよ。
……だが、ひとつきいてもいーか?」

「お前、さっき何で俺にキレた?……あ、別に言わなくていーや。
どうせ賢い奴の説明なんざ、聴いても耳が痛くなるだけだ」

47 :名無しになりきれ:2015/11/18(水) 19:38:58.82 0
避難所立てたほうがいいと思う

48 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/18(水) 22:50:08.11 0
>「あぁ、俺もその仕事が目当てでここまで来たのさ。弾除けが増えるのは大歓迎だ」

「目的が同じなら共闘、歓迎……ラウテはラウテ、よろしく」

>「ただし、報酬は俺が半分、残りの半分がお前達だ」

「…それじゃ割に合わない。6対4、それ以上はまけられない」

正確には分割して3対3対4、およそ現実的な数値だと思われる。
実のところラウテには、そこまで焦って金策に走る理由はない。
食べるだけなら吟遊詩人の仕事だけで賄える。
……冒険者として仕事をするならもう少し掛かるが。
だが、仕事のパートナーとなる相手と立場の差が広がり過ぎるのは良くないことだ。
パートナーとは助け合うのが習わし、立場の差はそこに亀裂を生む事になる。
潤滑に仕事を進めるためには、出来るだけその差を埋めたかった。
ドラクマは彼の配当に不満はないようだが……まぁ、駄目なら駄目でそのとき考えればよい。

今まで仕事を共にしてきた連中には、色んな者がいた。
調子に乗る者、自信過剰な者、勇猛な者……皆死んでいった。
生き残るのはいつも、冷静な者か臆病な者だけだ。
そう考えると今回のパーティはちょっと微妙だが、最悪自分だけ生き残れればそれで良い。
ラウテが冒険者になって最初に覚えたのは、逃げる事だった。
危機的状況を察し、息の続く限り逃げ続ける。生きるためには必要な事だ。
魔笛の悪魔が必要な事を教えてくれたが、悪魔が教えるのは専ら魔法の使い方だけだ。
むしろ持ち主を殺すため、狡猾に騙そうとする事すらある……ラウテは他人を信じない事を学んだ。
だが今回の仲間だけは、不思議と信じて良いような気がした。
力強く頼りがいのあるドラクマ、冷静で狡猾なヴィクトル……うまくやれると良い、そう思う。

「とりあえず必要なのは情報…どこで聞くが良い?」

ラウテが知るのは、街で聞いた噂話程度の知識……冒険者向けの求人情報だけだ。
これから街で情報収集をして売人を特定するとなると、相当な時間が掛かると予想される。
こんな事ならジャンキーの男から情報を……そこまで考えたところで、ラウテは思い出した。

「あ、ちょっと死体に聞いてみる…ドラクマのおじさん、さっきの死体、出して」

取り出すは魔笛。死体を目の前に、厳かな旋律が流れる。
その音色に呼応して空間に小さな歪が出来て、中から小さな毛玉……のようなものが現れた。
毛玉は死体に取り付くと、その死肉に食らいつき始めた。

「…これはネクラファジー、死体の声を届けてくれる…教えて、薬はどこで買ったの?」

「キィ! ニニニ西区画ノノ裏路地!ジ!ジ!23時ジジジ! キキィ!」

ネクラファジーはその名の通り、主に人間の死肉を主食とする小型のモンスターだ。
その副産物として、死体の生前の声を真似する事が出来る。ある程度の意思疎通も可能だ。
基本的に人間に懐く事がないので飼い慣らすのは不可能だが、魔笛の力があれば別である。
ラウテはネクラファジーが十分に食べたのを確認してから、再び笛を吹き帰らせた。

「たぶん正確な情報……待ち伏せ、する?」



【ではあくまで代表として行動しようかと思います。避難所は必要ですか?】

49 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/19(木) 03:41:45.00 0
【ご意見ありがとうございます。ではラウテさんの動きに合わせる形で敵役をやらせてもらいます。】
【あくまで最初の小ボスみたいな感じでいきます】

西区画、ここはこの街でもとくに治安が悪い。
人口の実に八割がごろつきで、残りは浮浪者とその子供だ。
街役場の帳簿上に記された人数よりも遥かに多くのもの達が、決まったすみかも持たずに不法滞在している。
そんな西区画においても、特に危険な場所というのが存在する。
街灯の光も届かぬ、裏路地だ。

路地に入ってまず目につくのが、道端に倒れこむ人影とその異臭。
見開かれ光を失った双眸は死体か生者か判別がつかない。
辛うじて胸が上下しているので生きてはいるのだろう。
ある者は虚空を見つめて微動だにせず、あるものは幻覚にうなされてまともに発音できない言葉を垂れ流している。
ある者はニタニタ笑いながら失禁し、路上に落ちている明らかに人間のものと思しき糞尿を野良犬が狂ったように貪り食っている。
これらは、最近この街のごろつきの間で流行っているハーブに侵された者達の症状だった。
ごり、ごりと石をすり合わせる音が路地の奥から響く。
闇の中、灯りも着けずに一人の人影が机に向かっていた。
机=作業台の上には乾燥したいくつかのハーブと水差し、それをすりつぶす薬研が置いてある。
玉のように額に汗しながら薬研を擦りあわせているのは、黒髪に儚げな線の細い顔立ちをした若い女だ。
濃緑のローブにトンガリ帽、闇のように艶のない黒の長髪は、物語の世界から這い出てきたような古典的な魔女。
傍にある水差しの中身を薬研に注ぎ、ついでに自身の唇にも添えて白い喉を鳴らして嚥下する。
休憩とばかりに汗を拭うと、図ったように足音が近づいてきた。

「り、り、り、リタリン・・・!またあのハーブくれよ・・・切れちまって汗が止まらねえんだよぅ」

やってきたのは禿頭に痩けた頬の男だ。
目の焦点があっておらず、なめらかな頭頂部から滝のように汗をかいている。
リタリンと呼ばれた女は半眼で愛想笑いを返した。

「あいよぉ〜、毎度あり〜。一袋で銀貨一枚だよぅ」

差し出された袋を男は引っ手繰るようにして奪い取ると、代わりに一枚の銀貨を落とした。
袋から粉状のハーブを一摘み、手の甲に乗せて鼻から吸い込む。
粘膜に刷り込むように鼻をつまんでしばらく、男の汗が止まって目に光が戻ってきた。

「フゥ〜生き返ったぜ。ったく、毎回一袋なんてケチくさいこと言わずにまとめ買いさせろよリタリン」

「ごめんね〜。みんなにハーブ試してもらいたいからね」

嘘である。本当は大量購入して転売でもされたら商売上がったりだからだ。
リタリンは販路の確保に慎重だった。
彼女にとってハーブは金儲けの手段に過ぎない。

「そういや聞いたか?この街に今凄腕の"魔女狩り"が逗留してるんだってよ。
 酒場でいざこざを起こしてるのを仲間がみかけたらしいが・・・。
 もしかしてあんたのお客かい?あんた魔女なんだろ」

ごろつきの話を聞いた途端、リタリンはつっかけた靴の中に毒虫の潜んでいたような叫びを上げた。
その白すぎる首筋には、いつもローブで隠しているそこには、奇妙な文様が刺青で施されている。
これは烙印だ。逮捕歴のある、つまり前科者を識別する為に魔女狩り当局が捕縛した魔女に刻むのである。
何を隠そう、このハーブ売りことリタリン・フェニデートは魔女だった。
それも、四年くらい前に一回魔女狩りに遭って捕縛され、実刑判決を受けいる。
人呼んで【堕廃の魔女】。それが魔女狩り当局によって認定された魔女としてのリタリンの銘だ。
その後刑罰をくらって釈放されたが、フダ付きの魔女に世間の風は冷たかった。
まともな職に就こうと様々な門戸を叩いたが、誰もが首筋の烙印を見ると態度を変えた。
時には街からも追い出されること数度、やむなく露天商の真似事をして今日を生きながらえている。
この街は、そんなリタリンがようやく安定して顧客を確保できた最後の砦なのだ。
フロンティアラインに位置するこの街には活気があり、多くの若い働き手が地方からやってくる。
しかし人が集まれば、悩みや問題も発生する。
リタリンはそこに漬け込んで、精神を侵すハーブを売りつけることで生計を立てていた。

50 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/19(木) 03:42:28.95 0
「やばいよぉー。どこでアシ着いちゃったのかなあ。慎重にバレないようにやってるつもりだったのになあ」

リタリンはここでの商売に細心の注意を払ってきた。
地元の裏稼業従事者達とは商圏がかぶっているからいざこざは避けられない。
だから表立って商売は行わず、移民のごろつきを中心に口コミだけでやってきた。
少しでも嗅ぎ回られている気配を感じたらすぐに場所を移したし、魔法で姿を隠蔽したりもした。
ごろつき達も地元の裏組織から高い金を払って薬を買うよりもリタリンのハーブの方が安い為、
喜んで秘密を守り情報共有にも協力してくれた。WINWINの関係だったのである。
ことここに至って、ベストな判断はとっとと荷物を纏めて街を去ることだ。
魔女狩りと言えども街の出入りまで監視し続けることはできまい。
夜中のうちにこっそりと抜け出せば見つからずに脱出することは可能だろう。
しかし、ここを出てどこへ行くというのか。
築き上げた販売ルートも人脈も一度に失えば、生活基盤を取り戻すのには大変な困難が伴うだろう。
もう一度やりなおす体力や気力が自分にあるとは思えなかった。
ならば次善策をとるしかあるまい。それはすなわち、迎撃だ。
リタリンは心配そうにこちらを見下ろすごろつきに、歪んだ笑みを見せながら言った。

「ハーブもう一袋あげるからさ。ちょっと頼まれてくれない?」

しばらくして、ごろつきが帰ってきた時、彼は5人の男を連れて来ていた。
体型はばらばらだが、一様に柄の悪い、いわゆるごろつきの仲間達である。
冒険者崩れらしく、それぞれ剣や槍などで武装している。

「言われたとおり集めたぜリタリン。こいつらに何をさせたいんだい」

「ハーブ売り、つまり私のことを嗅ぎまわってる連中がいたらね。
 二、三発小突いてもう近づきたいと思わないようにしてあげてー」

リタリンは私兵を雇った。
報酬はもちろん彼女が売り歩いているハーブだ。
既に依存症になりかけていたごろつき計6人は諸手を掲げて快諾してくれた。

「あ、ちょっと待ってその剣貸して」

リタリンはごろつきから武器を借り受けると、自分の杖で刀身を叩いて呪文を唱えた。

『形容する――"豪炎"と』

すると大振りである以外なんの変哲もない蛮刀が熱を帯び、空気中の塵を燃やして炎を生じた。
これは彼女が得意とする『形容魔法』。
対象を他のものに形容することでその性質を付与する、エンチャントに属する魔法だ。
火の玉や稲妻のような現象を喚起するものではなく、既存の物品を媒介とする為、
魔力消費が少なく長持ちするのが特徴だ。こうして他の者に貸し与えるという使い方もできる。
リタリンはそれを鞘に納めると、持ち主へと差し出す。

「鞘から出して空気に触れたら熱くなるから気をつけて。他の人の武器にも魔法かけるね」

差し出された6つの武器に、リタリンはそれぞれ豪炎、氷雪、稲妻を2つづつ付与して貸し与える。
このような魔法武器は、即席でないちゃんとしたものを一揃え入手しようとすれば、
カジノで一晩勝ち続けなければならないぐらい高価なものだ。
リタリンのものは一日しか保たないインチキみたいなものなので話は別であるが。
報酬のハーブを約束された6人のゴロツキは、息巻いて酒場街の方へ繰り出していく。

「さあて、迎え撃つ準備をしないとね・・・まずは魔導書を引っぱり出さなきゃあ」

濃緑の衣を翻して、リタリンは再び路地裏の闇の中へ消えた。

51 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/20(金) 04:12:20.59 0
>「―――ああ、俺さまはそれで構わん。金額なんざ最初ッから期待してねーからな。
俺さまは飯が食えて、酒さえ飲めりゃいーんだ。
明日の小銭さえ入りゃ、文句はねぇ」

「……金勘定も出来ねえのか」

ヴィクトルは顔を顰める。
大男は粗野で、乱暴だが、その事を自覚もしていないし、故に微塵も厭うていない。

>「お前、さっき何で俺にキレた?……あ、別に言わなくていーや。
  どうせ賢い奴の説明なんざ、聴いても耳が痛くなるだけだ」

「そう言うなよ。簡単な話だぜ。お前が馬鹿で、俺は馬鹿が嫌いだからだ」

彼とは大違いだ。彼は生まれと環境に歪んでしまった自分を知っている。
こんな自分になりたくなかったと思う自分がいる。
その自分から必死に目を背けている自分がいる。
そして無意識の中には、その自分を自覚している自分がいるのだ。

だから彼は、自分よりも気楽な――幸せな馬鹿が嫌いだった。

>「…それじゃ割に合わない。6対4、それ以上はまけられない」

「おっと、六割も持って行っちまっていいのか?……冗談だよ。荒んだガキは嫌いだぜ」

それだけではない。
彼は賢く冷静な者を見れば、真っ当な自己を保っていられるその精神を嫌う。
純粋な子供を見れば、自分が決してなり得なかったその姿を嫌う。
そうでない子供を見れば、かつての自分を思い出しかねないその存在を嫌う。

彼は何もかもを嫌っていた。
そうしていないと、もう二度と正常な形には戻らない自分の人生を思い出してしまうからだ。

>「とりあえず必要なのは情報…どこで聞くが良い?」

「蛇の道は蛇……なら冒険者の仕事は、冒険者だ」

ヴィクトルは酒場の面々を見渡す。
魔女狩りは実入りのいい仕事だ。目をつけるのがたった三人と言うのは、幾らなんでも少なすぎる。
面倒な裏があるとは言え、冒険者は危険を冒すから冒険者なのだ。
最終的に手に余るかどうかが確信出来るまで、試しに踏み込んでみようという者は必ずいる。

ならば話は早い。
まずはそこらにいる冒険者の足を切り裂き、そして善意の協力を求めるのだ。
仮にその男が魔女狩り自体に興味はなくても、それなら魔女狩りに興味のある者を聞き出せばいい。
それすら知らないと言うなら、最近酒場に顔を出さなくなった者を聞く。
独自の調べものをしているであろう者をだ。

先ほど、逃げるように酒場から去っていった男がいたのをヴィクトルは見ていた。
銃声や喧嘩が原因ではない。自分が魔女狩りである事を示唆した直後の事だった。
少なくともあの男の情報は得られる筈――

>「あ、ちょっと死体に聞いてみる…ドラクマのおじさん、さっきの死体、出して」

「……なんだと?」

先ほどの男がいた席の周囲を見回していたヴィクトルが、怪訝そうな顔で少女を見た。
少女は笛を吹き――空間が歪む。召喚魔法の前兆だ。
現れたのは――手のひらほどの大きさの毛玉のような何かだ。

52 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/20(金) 04:13:23.23 0
>「…これはネクラファジー、死体の声を届けてくれる…教えて、薬はどこで買ったの?」
>「キィ! ニニニ西区画ノノ裏路地!ジ!ジ!23時ジジジ! キキィ!」

「……お前が眼を抉って死に追いやったその男が、尋ねたくらいで真実を吐くのか?」

>「たぶん正確な情報……待ち伏せ、する?」

「まぁ……嘘なら嘘で、その情報には意味がある。いいだろう、確かめに行くぞ」

ヴィクトルがコートの裾を翻し出口へと向き直り――同時に、その扉が勢いよく開かれた。
押し入ってきたのは、都合六人のごろつき達。
彼らの視線が酒場の中を見渡し、そして自分を捉えた所で止まるのを、ヴィクトルは見た。

魔女狩りの服装は、魔法を相手取る関係上、軽装である事が多い。
そして軽鎧すら身に纏わない冒険者など、殆どいない。
彼が魔女狩りである事をこの場において察するのは、薬物に侵された脳でも難しくなかっただろう。

「……その前に追加の情報源がやってきたみたいだな。今度は「俺向き」だ」

ごろつき達は各々の武器を抜いて、ヴィクトルを睨む。

「手出しするのは自由だが、せめて二人は生かしておけ」

彼は不遜な口振りと態度で、目の前の男達を見下すように目を細めた。

「それにしても……その格好、元冒険者か。惨めだな。
 ろくに仕事もこなせず、軟弱な心を一人前に病んで、薬に溺れ……
 そして走狗に成り果ててここに戻ってきたって訳だ」

そして嘲笑うように彼らを詰る。

「薬で縮んじまった脳みそで少しでも考えられなかったのか?
 冒険者になり損なったお前達が、俺達のような「本物」に勝てる訳がないだろう?
 困るぜ。俺は報酬さえ良ければ大抵の仕事には手を出すが、無償で社会の寄生虫を駆除する趣味はない――」

その粘着質な声に堪えかねて、一人の男が爆ぜるように動いた。
紫電を帯びた槍による刺突。

言うまでもなく、剣と槍では間合いが違う。
槍の長さは、剣の届かない遠間から相手を一方的に攻める事が出来る。
だが――それは双方の使い手の実力が同等ならばの話だ。

重心移動が明け透けだったその突きを、ヴィクトルは体を半身にする足捌きのみで躱した。
そして、細剣を左手に持ち替え、切り払う。

剣と槍では間合いが違う。
しかし攻撃を放つには敵へと踏み込み、更に得物を持つ手を前に伸ばす必要がある。
槍ならば、左手を大きく前に――精緻極める斬撃は、その指を狙い過たず斬り落とした。

剣を持ち替えたのは、半身の状態になる事で自身の間合いを大きく伸ばせるが故だった。

つまりその一撃は、殆ど上半身の動きのみで放たれていた。
下半身は半身の姿勢を取る為に極僅かな動きを取っただけ――まだ大きく動く余地がある。

ヴィクトルが床を蹴り、大きく一歩踏み込む。
そして剣閃――指を斬り落とした男と、もう一人、殆ど同時に膝の腱を切り裂いた。
薬物による痛覚の鈍麻が働いていようとも、構造的に動けなくなれば足掻きようもない。

「おっと、もう二人確保出来ちまった。やっぱり殺していいぜ、コイツら」

53 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/20(金) 04:14:15.86 0
【俺としては避難所の必要性はさほど感じていない。あくまで現時点では、だが。
 それと、改めてよろしくリタリン】

54 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆RSR/QIrjbxbW :2015/11/20(金) 12:22:58.81 O
>「そう言うなよ。簡単な話だぜ。お前が馬鹿で、俺は馬鹿が嫌いだからだ」
「そうかぁ?ガーッハッハッ!
お前それ、誉めすぎだろ!照れるじゃねーか」

―――ドラクマは思った。コイツ、案外良い奴だなと。
エルフは何やら目を潜めたが、照れたのだろう。

―――その後、エルフとラウテが仕事の打ち合わせに入ったようで何やら言い争っていた。
最初こそ話合いに参加しようとするが、すぐ諦めた。
仕方ないのでそこらの椅子を引き腰を掛け、適当な酒を気付け薬がわりに軽く引っ掛ける。
椅子から足を伸ばし、時々組み換えたりしつつ、ぼんやりと聞いていた。
そのうち、話の余りの退屈さに睡魔が刺し、思わず欠伸をし、指で鼻をほじりそうになったタイミングでラウテから声が掛かる。

>「…ドラクマのおじさん、さっきの死体、出して」

「おっ!おう。さっきのてーと、あの“元お客さま”のだな」

―――ドラクマは慌ててそこらのテーブルの下に転がしてあった“ずだ袋”を引き摺り出した。
中身は死体……というか、2、3度しかハンマーで叩いてなかったから一部形状は残っているものの、既にミンチ状態で折り畳まれてはいたが。
まぁ、半分潰れてるとはいえ死体には違いない。
ドラクマが血肉の詰まったずだ袋を床にぶちまけると、得も言えぬフローラルな薫りが辺り一面に拡がる。
この店に日頃から常備されている、“元お客さまを処理する用”の、臭み止めの香水の匂いだ。

「うげぇ!コイツだけは慣れねぇや。ゲロ吐きそうな香水の匂いがプンプンしやがる」

―――思わず眉をしかめ鼻を摘まむ。過度な香水の匂いは嫌いだ。あの時の妻を思い起こすから。
嗅ぎ慣れてるぶん、死体の匂いのがよっぽど好きだった。

―――死体を目の前にラウテが笛を奏でだす。
吟遊詩人としての実力はあるようだ。思わず聞き惚れてしまう。
そしてラウテが弔いでもしてるのかと思い込み、珍しく空気を自ら読んで、目を瞑り片手を腹に添え頭を垂れた。
暫く黙祷していると、カサコソと妙な音がする。
思わず薄目を開けると、死体に何やらたかっているではないか。
思わず目を疑う。
だが、似たのを何度も見たことあるのを思いだし、自己完結で納得する。
―――精霊か悪霊、もしくは東方の小鬼の類いか何かなのであろう。
【続く】

55 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/20(金) 13:23:43.47 O
>「…これはネクラファジー、死体の声を届けてくれる…教えて、薬はどこで買ったの?」
>「キィ! ニニニ西区画ノノ裏路地!ジ!ジ!23時ジジジ! キキィ!」
「???……よくわからんが、よく見ると愛嬌あるよな……コイツら」

>「たぶん正確な情報……待ち伏せ、する?」
―――今のはどうやら何かの情報だったらしい。
適当に頷いておく。

>「まぁ……嘘なら嘘で、その情報には意味がある。いいだろう、確かめに行くぞ」

―――その時いきなり、派手に店の扉が開かれた。
と同時に、エルフがコートの裾を翻し出口へと向き直るのを見た。
まるで、それを予知していたかのような動きだ。
押し入ってきたのは、都合六人のごろつき達。
―――ドラクマは見た。
彼らの視線が酒場の中を見渡し、そしてエルフを捉えた所で止まるのを。
コイツら、異端審問官であるエルフを狙っているなと、直感的に感じた。
ラウテの方を見ると、一瞬目が合う。
思い込みかもしれないが、その様子から、どうやら彼女もその事に気付いているように見えた。

―――ごろつきどもが一斉に駆け出す。
二人のごろつきがエルフに向かうのを見た。
しかし、他の奴らはなぜかこちらに襲い掛かってきた。
エルフと一緒にいたので仲間と勘違いされたのだろう。
まぁ、これから仕事仲間となる予定だったのだから間違いでもあるまい。
手助けするのは構わないが、とりあえず実力的にエルフは放っておいても大丈夫そうだ。
ラウテも本当は助けが必要無いんじゃないかという気もするが。まぁいいだろう。
とりあえず契約したも同然なので庇うことに。
―――ドラクマは咄嗟にラウテの前に滑り込み、腰を落として両腕の籠手をクロスさせ二人同時の剣を下から受ける。
さらに、受け止め身動きできない間、脇から二人同時に刺し込んできたごろつきどもの剣は黒服の下に着込んだ鋼のアーマーで受ける。
派手に破ける黒服!響き渡る金属の反響音。
瞬間!二人の頭をそれぞれの手でわし掴みにし、胸の前で容赦なくかち合わせた。
頭の骨と骨がぶつかる冷酷なる響きが辺り一面に冴え渡る!
ふたりのごろつきの身体はそのまま力を喪い床に崩れ落ちる。
すぐさま立ち上がり、ラウテを護るべくそのまま壁となって待機!
それはまさに、一瞬の出来事であった。

56 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/20(金) 13:48:50.12 O
【―――閑話休題―――このレスは、最後までヘヴィ本編の物語には一切関係ありません。
中の人の個人的な呟きですので、興味ない方は飛ばしちゃって下さい。】

【まず、>>54は酉間違えちゃいました。ゴメンなさい。原因はコピペでなかった為です。】

【ラウテさん。ヴィクトルさんの言うように、避難所の必要性は感じられませんね。
私が言うのも何ですが。
あっても無くても、どちらでも構いませんよ。】

【リタリンさん来て下さってありがとうございました。私からもよろしくお願いしますね】

【皆さんには、私の長文が過ぎたが為にスレが見苦しくなっていた事をお詫びしておきますね。】

【私ごとですが……ネットに書き込んでたツールであるガラケーが遂にぶっ壊れちゃいました。
その後、何とか中古で同じブツを手に入れたんで現状書き込めてはいますがね。
一時は、皆さんにお別れの挨拶もできずにいきなりFOしてしまう危機でした。】

【前兆はあったんですよ。書きながら携帯から火花音がバチバチいってましたからね。
私がドラクマを早く殺したがっていたのはその焦りからです。】

【今のガラケーも中古品でそう状態が良いわけでもないので、先に言っておきますね。
今後私がいきなりFOしたりしても、アイツ逃げたなと思う前に、まず同じ要因を疑って頂きたいですね。
その時が来たら、同僚の皆さんには、決して焦らず、ドラクマを壁役として利用するなり、いつの間にやら話からFOさせたり、最悪、殺してちゃっも構いません。
残りの皆さんでスレを続けて頂ければこれ幸いです。】

【まぁ、びっくりさせたかもしれませんが私には今のところFOする予定はありませんので。とりあえず、心配しないで下さい。】

57 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/20(金) 22:21:19.53 0
「…殺し屋…じゃない、でもラウテたちを襲いに来たのね」

都合六人もの男たちが、店内へと武器を掲げて押し寄せてくる。
握った武器にはある者は炎を、ある者は紫電を纏わせている。
魔法によるエンチャント、インスタントの形容魔法に違いない。
魔法を扱う者として、ラウテには簡単な魔法に対する知識があった。
そうでなくても、戦いの中で悪魔がラウテに色々な情報を囁いてくれる。
悪魔に授けられた膨大な知識は、彼女にとって頼れる武器となるのだ。

簡単な魔法であるのなら、ラウテもそれなりには使える。
魔法の知識のない相手が振るうエンチャント武器、それなら対策は簡単だ。
ラウテが吹き鳴らした音色は、空間の魔素を固定する魔法だった。
それにより何が起こるか……振り回した武器のエンチャントが、空中に張り付いたかのように剥がれる。
本来は飛来する魔法を防御するための魔法なのだが、そういった使い方もあるのだ。
ただし音楽魔法は、音色を奏でている間しか発動しない。
空間に固定されたエンチャントは、笛の音が止むと共に床に落ちて消えた。

「これで大丈夫……ラウテも戦えるよ」

笛を仕舞い取り出したのは一対のダガーナイフ。それを構えると、ラウテは駆け出した。
相手の攻撃を文字通り体で受け止めたドラクマの小脇を滑るように潜る。
一瞬で懐に潜り込んだラウテは、それに反応される前にダガーを振るった。
正確に心臓を刺突された男が、声を上げることもなく床に崩れ落ちる。
それを見届けもせずに、ラウテはもう一振りのダガーを投げつけていた。
その刃を喉に受けた男もまた、悲鳴を上げることも出来ないまま息絶える。

ラウテはゆっくりと二人の男に刺さったダガーを回収し、血を相手の服で拭った。
斬撃より刺突に特化したダガーは、力のない彼女でも簡単に扱うことが出来る。
ただし一度刺してしまうと抜くのに力が必要とされるため、隙の多い武器でもある。
だからラウテは、確実に仕留められる相手にしかダガーを振るわない。
念のために複数の小さな投げナイフを懐に忍ばせているが、威力が低いのが難点だ。
だから彼女は一人ではあまり戦わない。仲間の援護があってこそ、その真価が発揮されるのだから。

戦いもあっという間にかたが付き、一行はヴィクトルの捕まえた男に尋問を行う事にした。
ネクラファジーに死体から情報を聞き出すのは、生憎ネクラファジーがお腹一杯な為不可能だったりする。
まぁ、知性の低いネクラファジーを用いるより、生きた人間に情報を聞き出すほうが遥かに効率的だ。
拷問に最適なモンスターにあてがない訳でもないが、ここは手馴れているヴィクトルに任せたほうが良いだろう。
何故手馴れているのか……そんな疑問を覚えながら、ラウテはカウンターを乗り越え使えない店主をまたぎ、ミルク瓶を探すことにした。

58 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/20(金) 22:23:24.72 0
【避難所に関しては現時点では必要ないと判断しました。必要なら声を掛けてください】

59 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/21(土) 04:53:10.05 0
「……略式ではあるが、これより異端審問を開始する」

生け捕りにした二人を椅子に縛り付け、酒場の中央に配し、ヴィクトルはそう宣言した。

「お前達は魔女ではない。だが魔女の齎す大罪をその身に受け入れ、溺れ、神より賜りし魂を穢れさせた。
 その穢れは到底、この現世においては拭い去れるものではない。
 お前達を清め浄化出来るのは地獄の炎に他ならない。故に、死罪が相応しい」

宣告と同時、細剣が閃く。
縛り上げられた男達の脚の皮膚が削ぎ落とされる。
薬物によって多少は痛覚が鈍化しているとは言え、耐え難い痛みが二人を襲う。

と、ヴィクトルがコートの内側に左手を潜り込ませた。
潜ませてある余剰分の瑞鉄が拷問器具を形作る。
首を完全に固定し、同時に口を強引に開かせる為の器具だった。

ヴィクトルは二人にそれを取り付けると、削ぎ落とした皮膚を細剣の先で掬い上げる。
そして何が起こるかを察して藻掻く二人の口へと押し込んだ。

「よく味わうんだな。これがお前達の最後の晩餐となる」

細剣は更に男達を切り刻み、皮膚を削ぎ、その口へと押し込んでいく。
二人は必死に吐き出そうと抵抗をするが、首を固定されていてはそれにも限界がある。
下手に逆らっても、より多くの皮膚を口に詰め込まれ、息を詰まらせる事になるだけだった。

「さぁ、次はどこを食べたい?さっき斬り落とした指か?
 目玉か?それとも陰部か?慌てるなよ、全部食わせてやる」

男達は初めはヴィクトルに対して憎しみと怒りの視線を向けていた。
だがすぐに、それらは恐怖によって塗り潰された。
やがては懇願――殺してくれとせがむような目で彼を見つめるようになる。

「おっと、すまない。肉に火を通してやるのを忘れていたな」

しかし、ヴィクトルはそれすら許さない。
エルフは魔法と狩りに強い適性を持った種族である。
彼は左手に炎を灯すと、細剣の刀身をそれで炙る。

そして二人の傷口にそれを押し付ける。
喉の裂けるような悲鳴と、肉の焼ける音がして――傷口の止血が完了した。
痛みは倍増し、しかし死という逃げ道は塞がれた事になる。

「……恨むなら、お前達を誑かした魔女を恨め。これは浄化であり、仕事だ。
 お前達は虫ケラだが、だからこそ、俺だって虫ケラの手足をもいで楽しむ趣味はない」

嘘である。彼は人を甚振る事に静かな愉悦を覚えている。
だがその嘘には意味があった。

拷問は更に続いた。
男達は既に声にならない呻き声と共に、涙を流してすらいた。

「……いいか。もう一度言うぞ。恨むなら、魔女を恨め。
 下らん薬物でお前達を冒険者から飼い犬に貶めたのは、堕廃の魔女だ」

と、不意にヴィクトルが彼らの口枷を外す。
そして男達の前に膝を突き、彼らの眼を見据えてこう続ける。

「犬になるべきは奴の方だと、そう思わないか?」

60 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/21(土) 04:54:07.26 0
稚児のように泣いていた二人が、呆けた表情でヴィクトルを見返した。

「俺の目的は堕廃の魔女だ。決してお前達じゃあない。
 分かるか、俺はお前達を殺そうが生かしておこうが、どっちでもいいんだ。
 お前達はどうだ?……堕廃の魔女がどうしても生きていないと困るのか?」

親が子を諭すような穏やかな声音だった。

「違うだろう。お前達は薬が欲しいだけだ。だから選ばせてやる。
 魔女の犬としてここで死ぬか。それとも俺達に手を貸して、魔女をお前達の犬にするか」

剣閃――二人を拘束する縄が切り落とされた。

「勿論、最終的には俺が魔女を殺す。それは決定事項だ。
 だが……その前にお前達が、魔女に何をさせるのかは自由だ。
 過労死するまで薬を作り置きさせてもいいし、製法そのものを吐かせてもいい」

提示されたのは、死か、薬物か。
極大のデメリットと、無限のメリット――男達がそれを受け入れない理由はなかった。
そして――



「――おおい!リタリン!リタリン!帰ってきたぞ!約束のハーブをくれよ!」

西区画の裏路地で、魔女狩りに屈した男達が魔女の名を呼ぶ。
彼らは姿の見えない彼女に見せつけるように生首を掲げている。
少女に胸を刺され死んだ男のものだ。
炎で炙られ、一見しただけでは同一人物だとは分からないよう偽装されている。

ヴィクトルは路地を形成する建物の屋上に位置取り、魔女が動く瞬間を待っていた。
もし魔女が現れたなら、男達は彼女を取り押さえようと動くだろう。
もし魔女が現れなかったのなら――それは即ち、魔女の動きを制限出来ているという事だ。
それならそれで、やりようはある。

61 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/21(土) 05:34:17.74 0
「魔法武器で武装した6人が・・・全滅・・・」

酒場での攻防の一部始終を監視していたリタリンは背中にびっしりと汗をかいた。
覗き込んでいるのは杖の先端に配置された水晶球。
索敵用の千里眼の魔法で、ごろつきの一人の視界を投影しているのだ。
送り込んだ私兵たちは、冒険者として大成できずこの街で燻っていたごろつきだ。
一線で活躍する冒険者や正規の兵士、魔女狩りのような法執行者には練度において比べるべくもない。
しかし彼らとてその辺の魔物程度なら始末できる技量はあるし、なにより今回は武器が違う。
インスタントとは言え、エンチャントのかかった魔法武装を全員が装備。
さらに人数比で言えば実に倍する戦力で襲撃をかけたにも関わらず、ものの数秒で片づけられてしまった。

「魔女狩りって一人だけじゃなかったのね・・・」

敵は三人。そのいずれも恐ろしく手練だ。
レイピアを装備した短足エルフはいち早く襲撃を察知し、言葉巧みに挑発して相手に抜かせて後の先をとった。
己よりも遥かにリーチに長じる槍を相手取って、手指を切り落とすその剣閃は精緻にして無比。
重装甲の大男に至っては物理攻撃がまるで通用しちゃいない。それは単に鎧が分厚いからというだけが理由ではない。
自身のどの部位がどんな種類の攻撃をどこまで耐えられるかを把握し、信頼し、適切なダメージコントロールが不可欠。
何も考えていないように見えて、その立ち振る舞いは戦闘センスの塊だ。
そしてなにより厄介なのが一味で最も小柄な若い少女。おそらくかなり高度な魔法使いだ。
未熟とは言えリタリンの最も得意とするエンチャント魔法を容易くディスペルし果せたあの笛魔法は脅威の一言。
その上乱戦の中で投擲した短剣を喉笛という小さく動き回る的に二度も正確に命中させた。
昔魔女狩りに遭ったときは、すぐに投降した為攻撃されることはなかったが・・・
あのとき徹底抗戦を選んでいたら、今頃あの世でハーブでも栽培していたことだろう。

「迎撃とか言ってないでまじに逃げたほうがいいかもねこりゃ」

真面目に夜逃げの算段をたてていると、水晶の中の景色に動きがあった。
短足エルフが私兵の生き残りを拘束して拷問を始めたのだ。
たまらず一人、禿頭の男が悲鳴じみた声を上げる。

『は、話が違ぇぞリタリン!こんなに強くて残虐な連中が相手なんて聞いてねえ!
 ハーブ一袋なんかで割に合うか!おいどうせ魔法で聞いてんだろリタリン!おい!』

「げえっ!お馬鹿・・・!」

逆上したごろつきが怒り心頭と言った様子でリタリンの名を呼んだ。
まあ彼からしてみれば裏切られたも同然なので気の毒ではあるが、こちらも冗談じゃない。
魔法、特に呪術に長ける者は相手の名前だけでも呪いにかけることができると言う。
転じて索敵の魔法や探査の魔法においても、個人名は重要な手がかりになり得る。
魔女狩りなんて人探しの専門家みたいなものだから、その手の魔法を習得していても不思議はない。
そうでなくとも、リタリンという名を知る者を芋づる式に手繰れば早晩彼女まで辿りつく。
一刻もしないうちにこの隠れ家を見つけ出すだろう。これで逃げ果せるという線はなくなった。

「落ち着くんだよ・・・防衛戦なら守るほうが有利・・・」

『わかった!話す、なんでも話す。雇われたんだ、あんたらを襲えって・・・。
 頼んだのはリタリンっていう魔女だ。西区のスラムでハーブ売りをやってる。
 苔みたいな色のローブと死神みたいな黒い髪をした冴えない女だ。肉付きも悪い。
 なあ、これだけ話したんだ、もういいだろ帰らせてくれよ――』

ごろつきが好き勝手べらべら喋るのを水晶越しに聞きながら、リタリンは陣地の構築にとりかかった。
拠点となるのは裏路地を30メートルほど行ったつきあたりに位置する廃屋だ。
二階建てで、少し前まで無許可の私娼が客としっぽりする為のヤり部屋だった。
流れ者の冒険者が持ち込んだ性病が流行って娼婦は壊滅してしまったが、その時の名残で家具などは残っている。
その二階に上がったリタリンは、杖で半径3メートルはある巨大な魔法陣を描いた。
何年も開いておらずすっかり黴臭くなった魔導書を開き、目的のページを探し当てる。
ろうそくのおぼつかない灯りの下、呪文を訥々と読み上げる。

62 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/21(土) 05:34:45.47 0
「えーと・・・『黄昏の中に在りし凍える不幸よ、形となりて願う。
 汝の力、要塞を持って愚かなるものに罰を与えよ。我は従う。汝の力による制裁を。
 ――城塞と化せ、我が封土』」

魔法陣が昏い輝きに満たされ、魔力の線が無数に床を奔って廃屋を覆っていく。
ひび割れた壁は鉄板に覆われ、窓は鉄格子と有刺鉄線を纏い、屋根には無数の棘が生える。
内装も『城塞』として再構築され、吊り天井や落とし穴のような罠が生み出されていく。
極めつけは、裏路地の入口から廃墟へ向かう人影へ自動で発射されるクロスボウだ。
これが五段十列の計50発が生成され、接近者へ文字通り矢の雨を降らして撃滅する構えである。
さらに路地の道中には触れると爆発する魔法が無作為に敷き詰めてある。

「つ、疲れたぁ・・・」

軍隊が遠征に出た際に現地で防衛拠点を構築する為の『城塞化』の魔法。
本来なら従軍魔導師が数人がかりで行う大魔法だ。
廃屋一つだけとは言えもともと多くないリタリンの魔力は殆ど空になってしまった。
しかしこれは絶対に負けられない戦いだ。彼女も奥の手を使う。
ローブの中から取り出した、小さな袋に入ったハーブの粉。
リタリンはそれを親指の爪の上に耳かき一杯分ほど取り出して、鼻で吸い込んで投与した。

「あ"あ"ー効いてきたああああああ」

肩をぶるぶると震わせながらリタリンはうめいた。
今摂取したのは一時的に魔力を引き上げる効力を持ったハーブだ。
向こう何日かの魔力を前借りする形になるので、効果が切れた後はしばらく無能になり下がる諸刃の剣。
だがこうでもしなきゃまともに戦えないのがリタリンであるし、この一戦で魔女狩り連中を撃滅してやれば問題ない。

「『冷たき闇を滅する縋るものよ、この音に応え従う。我は願う。汝の力による安らぎを。
  ――獣よ、汝の疾走を歓迎する』」

召喚の魔法。
呼び出したのは身の丈2メートルを超す人型の妖獣、狼にも似た頭部の下は闇色の無音甲冑。
宵闇に紛れ、その鼻で獲物をどこまでも追跡し音もなく狩り殺す地獄の猟犬だ。
艶消しで染め上げられた弩と山刀を持ち、近遠双方に対応可能な先兵である。
名を『黒狼』。
そこまで準備を終えたところで、路地の外に動きがあった。
ごろつきが帰ってきたのだ。

>「――おおい!リタリン!リタリン!帰ってきたぞ!約束のハーブをくれよ!」

二階の窓からバレないように外を伺うと、禿のごろつきが生首を手にこちらを呼んでいた。
首はご丁寧に顔を焼いてあり、人相の区別がつかないようになっている。
偽装工作が見え見えだ。騙される堕廃の魔女ではない。
リタリンは自堕落な女だ。自堕落故に、二度手間という非効率の極みが許せない。
首検めなどしなくとも、魔法で監視すればちゃんと仕事してきたかどうかは瞭然だ。

(陽動・・・かな?どこかから監視してるとすれば、下手に顔出すのは下策・・・)

魔女狩りと言えど本人確認するまでおいそれと殺しはできないだろうから、狙撃の心配は薄い。
非殺傷系の魔法が飛んでくるかもしれないが、曲がりなりにもリタリンは魔女、魔法耐性には自信がある。
まずは敵の狙いを確認する必要がある。そこで、黒狼に取りに行かせることにした。
地雷魔法に引っかからないルートを歩いて妖獣がごろつきへと近づいていく。
屋根に偽装された50連クロスボウは廃屋から離れていく者には反応しないようになっている。
黒狼には前進しながら索敵を指示してある。怪しい人影を見つけた瞬間、禿を無視してそちらに弩を放たせる。
敵は三人、相手取るには三重に策を弄さねばなるまい。


【書き溜め中に投稿があってびっくりしましたが、軌道修正なしでいけそうです。】
【魔法での監視は書き溜め範囲内だったので、ヴィクトルさんの策が不発になってしまう形になりすみません・・・】

63 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/21(土) 10:37:58.89 0
>>62
単純に三人が動いた後に敵役が動く、の構図の方がリタリン、ラウテ共にやりやすいだろうと思ったんだ
勿論俺自身も
だから素早く済ませて「勘違い」って事にするつもりだったんだが――面食らっちまったならすまないな

64 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/21(土) 12:01:11.68 O
―――ドラクマの目の前で、エルフが生け捕りにした二人を手早く椅子に縛り付ける。見事な手際だ。
「手伝おうか?」
―――一応言ってはみたものの、言外に却下された。
異端審問官さまには異端審問官さまなりのやり方があるのであろう。
だが、二人を酒場の中央に配する際には少々手伝う事となった。
椅子やテーブルの配置換えには、明らかに人手が必要だったからだ。
運んでる最中、ドラクマとしては珍しく、少々エルフの様子に疑問点を感じた。
何故なら、これまで見てきた異端審問官らはみな、独りきりでは行動していなかったからだ。
それは異端審問官さまは、職業柄、大掛かりな残酷ショーを大衆に見せ付けるためで、町から町へ、大掛かりな拷問器具などの仕掛けを運ばねばならないという事情のせいであった。
道具を運ぶ為には、最低でも助手が1人は必要な筈だ。
独りでいる異端審問官など前代未聞のこと。
だが、その疑問は処刑が開始されるや否や、頭の隅から綺麗さっぱり吹き飛んだ。

―――エルフの異端審問官さまが処刑開始を宣告する。
ドラクマは、以前から異端審問官さまの仕事には興味津々だったもので、これは一瞬足りとも見逃せまいと、テーブルと椅子を配置し、観覧を決め込んだ。
少し手伝ったせいか、仲間と認めたからか、はたまた単に面倒なだけなのかは知らないが、エルフの異端審問官さまは、決して現場からの観客の退出を求めなかった。
騎士団で転戦を繰り返していると、自然とあちこちに行く事となる。
ドラクマの騎士人生に於いて、異端審問官に出くわした事は一度や二度どころではない。
だからこそ、ドラクマは心の中で思った。

「異端審問官さまってのは、どいつもこいつも目立ちたがりしかおらんのか?」

―――騎士道の慣習で、自分が座るよりも先に椅子を引き、少女に着席を勧める。
レディファーストっていう奴だ。

「よぉ小娘!飛びっきりの残酷ショーの特等席を用意しといてやったぜ。よけりゃあ座んな。
店員連中は逃げちまったようだから、ちゃんとした飯は出せんがな。
なぁに、酒とつまみならたんまりあるさ」

―――一瞬、どこからか奇妙な視線を感じた。
だが、それが何を意味するかまでは解らないし、取り敢えず殺意は無いようなので、特に気にせず放っておく事にした。
【続く】

65 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/21(土) 14:25:04.64 O
「懐かしいな、おい。
かつて俺さまも、戦場で敵にとっ掴まり手酷い拷問をうけたものだ。
それも、一度や二度ではない。
中でも印象的だったのはだな……」

―――視線を感じる。
今度は流石に、その視線が誰ので、そして何を意味するかに気付いた。
目の前のエルフがこちらを、殺意を込めた目付きで睨んできたからだ。

「うむ、申し訳ない。不粋な水を差したようだな。
愉しいショーはこれからだってのに、この場を追い出されては敵わんからな。
……以後、大人しく観覧に徹することを、我が騎士道にかけ誓おうではないか」

―――騎士の儀礼に乗っ取り、胸に手を当てエルフに一礼をするドラクマ。

―――何だかんだで、エルフの異端審問官さまによる拷問ショーが始まる。
エルフは二人に拷問器具を取り付けると、肉を切り削ぐ音と共に二人の口へとグイグイ押し込んでいく。
受刑者の、声にならぬ悲鳴があがる。

「うげぇー!痛そうだ。あんなの見ちまったら、食事もろくに喉を通らんぞ」

―――と、手にした食料をバクバク食いながら、椅子から出した足を組み換え、感想を述べるドラクマ。
拷問を見るのに夢中な為に、何を手にしてるか口に入れるまでは本人ですら判らなかった。
……かと思えば、

「おい、小娘!蜂蜜酒がお奨めだぞ。甘いし、喉に良いそうだ」

「おい、小娘!火ねずみのジャーキーが意外とイケるぞ。騙されたと思って食ってみろ」

―――と、ラウテに立て続けに食い物を薦めたりした。

―――そうこうしてるうちに、エルフの拷問ショーは突如終わりを告げた。
急に優しい声音になったエルフの異端審問官さまが、二人に何やら語りかけるや否や、ロープを一刀両断し解放してしまったのだ。
酒場からふらふらと出ていく二人の受刑者。
それを見て思わず椅子から立ち上がってしまうドラクマ。

「―――お、おい貴様!あれで良いのか?せっかく捕まえたのに。
このままではあやつら、みすみす逃がしてしまうぞ」

―――すぐ、エルフに質問を投げつける。
それはドラクマからすると、至極まともで当然な、疑問の帰結点だった。

【遅ればせながらラウテさん。
暫定的とはいえGM就任おめでとうございます。
どういった形になるか私には全く予想できませんが楽しみにしてますね】

66 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/21(土) 21:12:56.64 O
―――魔法を使えぬドラクマとしては、新たに仲間となったエルフとラウテに、ただ、ついていく他はなかった。
それはまさに、究極の受け身行動。
だが、一見そうは見えぬ。
ドラクマは見栄っ張りで自己主張が激しいので、そうは見えぬのだ!

―――それは実によくある話だった。
騎士団の形を成しているとはいえ、超重騎士はあくまで敵の攻撃を引き受けるための人の盾。
国からすれば、超重騎士団は、いつ死んでも構わぬ人材ばかりを集めた、ある意味、人材の墓場なのである。
魔法を使える貴重な人材など、基本的に団内には居やしない。
味方の……他の騎士団の同志や、外部の魔法使いや聖職者の魔法や加護を受け、行動する。
それは超重騎士団の基本理念であり、実に当たり前のことだったのである。

―――前に、ドラクマが言った、馬鹿は誉め言葉という意味。
それは単に彼がトロいからとか、脳筋だからとか、それが理由ではない。
仲間同士でお互い馬鹿と呼びあうことは、古くから超重騎士団内で徹底されてきた慣習だったのである。
彼ら全てに知恵が無いわけではない。
騎士団内では余計なことは考えぬことこそが美徳とされてきたのだ。

―――超重騎士団に求められるは、タフさと腕力、それと覚悟と忠誠心のみ。
賢さは隊長格だけが持っていればよい。
それも最小限、作戦を遂行するに値するレベルで十分。
何故かと言えば、頭の良い輩は敵わぬとなったら絶望して逃げだすからである。
それでは最後まで人の盾は務まらない。
ならば賢くて尚、死にたがりの奴等に任せればよいと思うかも知れぬが、そういう輩は死ねと言われれば無駄に特攻し自らさっさと散ってしまう。
国からすれば、それでは長く使えない。せっかく金と手間暇かけて訓練してもコストの無駄なのだ。
人の盾が至上任務である超重騎士団としては、少しでも長持ちし人を庇い続け得る人材を常に求めていた。
だからこそ、大した根拠もなく自分は無敵で死なないと本気で信じ込んでいるような勇猛果敢馬鹿野郎や、命よりも金が大事な俗物馬鹿野郎、命令は聞くが後は何も考えない本物の馬鹿、のようなだいぶ欠陥人間の方が騎士団内で尊ばれたのである。
……ついこの間までは。
ドラクマもそうだったのである。
だが既に、ドラクマはその騎士団の一員ではないのだ。

67 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/21(土) 22:17:53.22 0
ラウテはドラクマと共に椅子に腰掛け、ヴィクトルの行う拷問の様子をのんびりと見物していた。
なるほど、なかなかの手際である。ここに至ってラウテは、彼が異端審問官であることを把握する。
魔法による罪を裁く者。旅の途中で何人か見かけたが、そのいずれもヴィクトル程強そうには見えなかった。
敵に回せば苦労するだろうが、味方であれば安泰だ。対魔法使いとしてはうってつけだろう。
ジョッキに注がれたミルクをちびちびと飲みながら、ラウテはそんな風に思考を巡らせていた。

>「おい、小娘!蜂蜜酒がお奨めだぞ。甘いし、喉に良いそうだ」

「…ごめんなさい、お酒はお母さんに止められているの。まだ若いからって…」

>「おい、小娘!火ねずみのジャーキーが意外とイケるぞ。騙されたと思って食ってみろ」

「そっちは欲しい……はぐ、おいしいね」

そんな具合に、ドラクマはラウテに次々と食べ物を薦める。
ラウテは思った、この人は私を太らせて食べる気なのだろうかと。
そんな事を思いつつも、薦められるがままに食べ物を口にするラウテ。
そろそろお腹一杯になってきた頃に、ヴィクトルの拷問のほうに動きがあった。

>「違うだろう。お前達は薬が欲しいだけだ。だから選ばせてやる。
>魔女の犬としてここで死ぬか。それとも俺達に手を貸して、魔女をお前達の犬にするか」

その言葉と共に、連中を拘束していた縄が断ち切られる。
拷問の最中に解放されたのだ。驚いたが、ラウテにはその意図がすぐに理解出来た。

>「―――お、おい貴様!あれで良いのか?せっかく捕まえたのに。
>このままではあやつら、みすみす逃がしてしまうぞ」

「ううん、あの人は連中を駒として使うつもり…だから逃がしたのね?」

その答えは的中していた。ヴィクトルは男たちに、死んだ男の生首を焼いて持たせている。
おそらくは囮として使うつもりなのだろう。もし騙せなくとも、相手の戦力を計る駒にはなるはずだ。

「それじゃあ、ラウテたちも行こう…。待たせるのも悪いものね」

三人が目指すのは、闇の蔓延る西地区の裏路地。
リタリン、と言ったか。彼女はおそらく逃げられない事を悟り、陣を構えて待ち伏せているに違いない。

68 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/21(土) 22:19:36.71 0
位置を悟られないよう生首を持った男を尾行し付いて来た一行。
ヴィクトルは屋根の上から、ラウテは地上から追跡していた。
闇深き路地なら、隠れる場所には事欠かない。追跡は実に容易であった。

>「――おおい!リタリン!リタリン!帰ってきたぞ!約束のハーブをくれよ!」

男は大声で魔女の名を呼ぶ。目的地は裏路地の行き止まりにある建物だろう。
傷だらけの足を引きずるように歩く男の前に現れたのは、漆黒の鎧を纏う狼のような怪物だ。
あれは黒狼だ、と魔笛が囁く。魔法により生成される召還獣の一種だ。
戦闘力は大したことはないが、魔法生物の特徴としてなかなかにタフらしい。

ラウテの用いる召還魔法と、一般の魔法使いが用いる召還術は根本から異なる。
連中が用いるのは多元世界より魔力で構成された生物を招く召還術であるが、ラウテは全く違う。
ラウテが召還出来るのは、自ら刃を交えた野生のモンスターだけだ。
彼女はこの数年間で膨大な数のモンスターを狩って来た。そして契約を行うのだ。
契約を交わし魔笛の力で配下となったモンスターは、それ単体を自由に召還出来るばかりではない。
そのモンスターの子々孫々に至るまで、契約は有効となるのが特徴なのだ。
今はまだ殖えたモンスターは少数だが、時が経つにつれて無限のモンスターを使役出来る恐ろしい魔法である。

そんなモンスターの中から、ラウテは一匹の一つ目蝙蝠を召還した。
もちろん笛の音は極力抑えた上でだ。この程度の芸当は簡単である。
一つ目蝙蝠は戦闘能力は皆無だが、索敵能力と魔法の解析に優れた能力を持つ。
相手が魔女であるなら、何らかの工作をして待ち伏せているに違いない。
それを見越した上での召還だった。早速周囲を飛び回らせ、魔法の気配を探知させる。

「…この辺り一帯、魔女のテリトリになってる……むやみに近づくのは危険かも」

城塞の魔法を解呪する方法は、今のところこれといって策はない。罠をひとつひとつ潰すのも面倒だ。
推定される相手の魔法は何であるか、彼女は考える。迎撃の魔法か、それともトラップか。
いや、今最も優先されるのは黒狼の対処だ。おそらくこっちの居場所が見つかるのも時間の問題だろう。

「黒狼の視界を一時的に潰すね……あとは何とか倒して」

そう言ってラウテが投げたのは煙玉だった。発するのはただの煙ではない。
目や鼻に作用する刺激性の強い薬草を混ぜ込んだ煙幕だ。
煙として視界を覆うことはないが、吸い込む事で効果を発揮する。
それを吸い込んだ黒狼は、悲鳴を上げてもがき苦しむ。
それを見届けたところで、ラウテは小さく風を起こし突撃の道を作り出した。

【投稿順を変えたい場合は、前以って申告をお願いします。私としては特に順序を変えても構いません】

69 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/21(土) 23:15:44.34 0
【>>ヴィクトルさん  ターン回りどうされますか?元の順番で私の番にしますか?】

70 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/21(土) 23:37:45.74 0
【いや、俺に先に行かせて欲しい
 無断で先行したのは重ねて申し訳ないと思っているが
 GM→敵役→その他の順番が今後もスレを続けていく上で一番やりやすいんじゃないか……と俺は思っているんだ。すまないな】

71 :リタリン♯1456:2015/11/22(日) 00:09:04.48 0
>>70
【仰る通りだと思うのですが、
それだとGM様→私→各PL様という順番になりませんか?
 つまり次が私ということに…】

72 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/22(日) 00:12:22.07 0
【……その通りだ。悪い風邪でもひいたんだろうか。
 傲慢なエルフの渾身のギャグだったと思っておいてくれ。先にお願いする】

73 :リタリン♯1456:2015/11/22(日) 01:57:42.23 0
【了解いたしました】

74 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 01:59:49.59 0
>>73
酉、割れてる割れてる

75 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/22(日) 02:40:52.59 0
【すみません!こうですね】

76 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/22(日) 05:29:20.76 0
「来た。・・・使い魔による斥候だねえ」

水晶に描かれる新たな魔力の反応をリタリンは確認した。
『城塞化』はいくつかの魔法を複合したパッケージになっており、
外壁強化や迎撃兵装の生成と並んで範囲内の反応を探る索敵の魔法も標準搭載されている。
ちなみに籠城用に拠点居住性を上げる浄水や煮炊きの魔法も一揃い配備済みだ。
とりわけ軍用魔法というのは特定の状況における要求事項を包括的に自己完結できるようなデザインが主流だ。
その分魔力消費も大きいのだが、開発した王都の才気溢れる宮廷魔導師にそのあたりの配慮を求めるのは酷であろう。
御託が長くなったが、つまりリタリンは戦闘前の情報戦において遅れをとっていないということである。
警戒網が捉えたのは小型の飛行型使い魔・・・存在構成が召喚獣のものではない。在野の魔物を調伏して使い魔とするタイプか。
索敵魔を飛ばしている以上、迎撃装置については看破されていると見ていいだろう。
しかしタネが割れているのと無効化されているのとは別問題、おいそれと近づけない現状に変わりはない。

黒狼が禿のもとへ辿り着く。その瞬間。
警戒範囲外の物陰から何か小さな物体が黒狼の前に投げ込まれた。
それは小気味いい音を立てて破裂すると、薄い煙のようなものを吐き出した。

「しまっ・・・煙幕!」

いや、それにしては色が薄い。
しかしそれを吸い込んだ黒狼が激しくむせて苦しみ始めた。
催涙作用を持つ煙のようだ。黒狼はもがきながら一歩後退。
その動きを迎撃装置が『接近者』として感知し、クロスボウが一発屋根の下から発射された。
それは黒狼の肩口を掠めて禿の持っていた生首に突き刺さり、男の手から弾き落とす。
頭蓋骨を矢で貫かれた生首。禿は悲鳴を上げて後ずさる。
抜け目なくエンチャントされていた炎熱魔法により脳味噌が沸騰しピーっと吹きこぼれた鍋のような音を立てる。
あたりに肉の焼ける匂いとも違う、脳漿の蒸発した汚臭が漂った。

「でも・・・居場所はわかった!」

眼と鼻を潰された黒狼であるが、まだ耳がある。
更に禿にかけた千里眼の魔法と組み合わせてリタリンが手動で指示を与えることも可能だ。
そして、この攻防で煙玉の出処、すなわち敵の潜伏位置はわかった。
息を止め眼を閉じることでなんとか動けるようになった黒狼に行動の指示を送る。
煙玉の出処に対し装備した弩で射撃しながら音を頼りに接近して山刀での斬撃。
もちろん黒狼の装備にはそれぞれエンチャントが仕込んである。
まず弩の矢には触れたものを凍らせる氷雪の魔法。
これは仮に的を外したとしても突き刺さった地面を中心に凍らせ、敵の足を止める効果がある。
矢へのエンチャントは明らかに笛使いの少女への対策を意識している。
ディスペルされるまえに撃ち放ってしまえば問題ないという考え方だ。
そして山刀の方には稲妻の魔法をエンチャント。
これは鎧男への対抗策。鎧で防御しようとも、あるいは回避しようとも、鋼は稲妻を集めて通す性質がある。
加えてあれだけの重装甲、動くだけでも音が出て黒狼には戦いやすい相手だろう。

黒狼を突破されても、まだ地雷の魔法と49連となったクロスボウの迎撃装置は健在だ。
しかしリタリンは未だ敵の全容を把握できていない。
黒狼の索敵器官を潰されたことで、認識外の伏兵――例えば短足エルフの所在は分かっていないのだ。
敵方の索敵魔も優秀らしく、こちらの警戒網を把握し察知できないぎりぎりのところに潜んでいる。
追加で索敵魔法を使う余裕は、リタリンにはなかった。

77 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/22(日) 06:18:05.05 O
【まず、私の番では無いのにここに私的意見を投下した事をお詫びします】

>>75リタリンさん、>>74さんが酉割れてると騒いでらっしゃるのは、悪意ある“成り済まし”が出る可能性があるからですよ?】

【トリップは名無し掲示板での、所謂、国民マイナンバーや、銀行の暗証番号のようなものです。
悪用される可能性も考慮して下さい。あなたは如何にも無防備過ぎます】

【実は昨夜、私もROMりながら気付き、あなたに忠告しようか悩みました。
ですが、御自分で既に気付かれてる場合、変にプライドを傷付けてしまうといけないと思い黙ってました。】

【次にあなたがレスをするまで様子を見ようと思ってるうちに眠ってしまい、名無しの親切な方に(良い意味で)先を越されてしまいました】

【同僚なのに、気付いていたのに、早めに指摘せずにごめんなさいね。
出来ればあなたのトリップは早めに変えた方が良いと思われますが、如何でしょうか?】

78 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 07:14:16.98 0
…避難所建てれば?

79 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 09:48:00.28 0
なんでこう高圧的な言い方しか出来んのかね
【】内でもなりきりしてるなら感じ悪くなってるだけだよ

80 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 10:36:07.72 0
はい、続きはマボダイでどうぞ

81 :リタリン:2015/11/22(日) 13:26:57.89 0

>>77ドラクマさん
ご忠告ありがとうございます
たしかに仰る通りですね…
携帯からの投下に慣れていなくて焦ってしまいました
シャープを打ってるのにトリップが発動しないんですよね
次パソコンから書き込む時にトリップキー(シャープの後の文字列)を変えておきます
お気遣い痛み入ります


82 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 13:52:10.59 0
シャープが全角なだけ、半角で打て

83 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 14:05:42.31 0
全角と半角を打ち間違えただけでここまで言われる野なw

84 :リタリン ◆UIxKy8r6BM :2015/11/22(日) 14:26:45.59 0
【出来ました!ありがとうございます!!】

85 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 14:36:20.50 0
出来てねぇwwww

86 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 17:09:25.79 0
いや酉変えたんだから正解だろ

87 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 17:13:38.92 0
>>リタリンさん

もう一度トリップ変えてみてください
上のは騙りです

88 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/22(日) 17:39:19.04 0
【すみません、あまりスレ汚しになってはいけないのでこれを最後にします
 そもそもトリップキー(シャープの後の文字列)を間違えていたみたいです
 パソコンの方は自動で保存されるので自分で覚えていなかったのが原因です
 本当のトリップキーは秘密のままなのでこれを使用します
 大変失礼致しました!】

89 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/23(月) 00:19:36.01 O
【リタリンさん。あなたを謝らせたりしてごめんなさい。
あなたは別に悪くありません。
ですからどうか、頭をおあげ下さい。
あなたはただちょっとしたミスをし、通常の対応をしただけの事。
あなたは何も悪くはないのです。
今回誰かが悪かったとすれば、それは間違いなく私でしょうね。
私はあくまで善意のつもりでしたが、後から考えると結構あなたに酷い仕打ちをしたのですね。
酉を間違えるぐらい誰でもよくある事だというのに、私は必要以上に騒ぎ立て、上から目線の講釈を……しかも長文で、一気に垂れ流してしまいました。
お恥ずかしい限りです。
そのせいで、リタリンさんには、本来不要な、罪の意識まで持たせてしまった……同僚としてはあるまじき行為でした。
最初からあなたを迷う事なく信じるべきでした。
というか、それ以前に、決して騒がず見守るのが最良の策でしたね。
場をかき乱し、変な空気にしたのは完全に私がテンパったせいです。
重ね重ね、ごめんなさい。
私はあなたに嫌悪されても仕方がない立場ですが、できればこれからもともに物語を作っていく仲間でいて下さると、嬉しい限りです。】

【それと、名無しの方たちへ。
まずは、丸く納めようとして下さった名無しの方。
あなたの面目を私が即効潰してしまったようで申し訳ありません。
私は鈍いので、その事に後から気付きました。
あとは全て、あなた方の仰る通りです。
返す言葉も御座いません。
どう考えても、私が全面的に悪かったです。
ごめんなさい】

【そういうわけですので、同僚の方々、ごめんなさい】

【皆さん、手前勝手かもしれませんがこの件に関しまして、これで手打ちとさせて頂ければ有難い限りです。
決して強制は致しませんが、納得頂けるならば、この場での更なる返レスの類いは不要ですので、どうか御了承の程を】

90 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/23(月) 00:32:10.97 0
ごろつきの呼びかけに、魔女が応える気配はない。

「遠見の魔法か……まぁ、想定の範囲内だな」

ヴィクトルは瑞鉄で長弓を形成し、矢を番え、その鏃の先にごろつきを捉える。
短期かつ簡潔に仕事を済ませる術として採用した男だったが、こうなっては不要だ。
大した戦力にもならない不確定要素は排除してしまった方がいい。
屋根の上から射掛けられた矢は、取り落とした生首に怯み硬直していた男の頭部を貫く。

糸の切れた人形のように倒れた男の更に奥に、甲冑を身に纏う『影』が見えた。

「……召喚魔法に、迎撃装置か。足止めのつもりか、それとも迎え撃つ気か」

恐らくは後者だろうと判断。
異端審問所は教会から独立しているが、その威信までもを失った訳ではない。
魔女狩り達は教会からの――あくまで暗黙の了解ではあるが――指示、認可の下で異端審問を行っているのだ。
その気になれば交通の封鎖くらい容易く話を通せる。
一度異端として魔女狩りの世話になっている魔女がそれを知らない訳はあるまい。
野党や魔物が跋扈する荒野へ、一人きりで、ろくな準備もなしに飛び出すのは、それこそ自殺行為だ。

実際、西区画の奥へ目を凝らしてみると、明らかに外装の異なる二階建ての家屋が見えた。

「だが愚かだな。それでもお前は逃げるべきだった」

戦闘の前に「準備」を行うのは何も魔女の専売特許ではない。
むしろ逆。強大な魔法に立ち向かう魔女狩りこそ、本来なら準備を強いられる側なのだ。

西区画の主要な出入り口には、既に瑞鉄の糸が張り巡らされていた。
脱出を図れば少なくともその動きを感知され、最悪の場合、体の一部を失う事になる。

魔力の枯渇は、術者の技量と才能にもよるが、体力よりもずっと早い。
陣を敷いて戦えば、補給の難もある。
限られた戦闘区域に留まる魔女は、ヴィクトルにとっては得手とする相手だった。

まさしくスラム街といった風情の西区画は立ち入る者も、出て行く者も少ない。
何も知らない哀れな子羊達への事故も「最小限」で済む。
それが零である必要は、ヴィクトルにはなかった。

前方には妖獣、黒狼が闊歩している。
魔女を追い詰めるにあたって邪魔になる存在だ。

回避するか、始末するか。
一人で仕事をするなら前者を選んでいたが、今回は二人の同行者がいる。
自分へのリスクは最小限に、不確定要素を削り取る事は可能だった。

「まずはそこの犬畜生を始末するぞ」

エルフは魔法と狩りに長けた種族である。
彼は風魔法の応用で己の気配を隠し、また逆に自分の声を風に乗せて遠くへ届ける事が出来た。

「『城塞』の方はどうにでもなる」

魔女狩りであるヴィクトルは、少女とは『城塞』に対する認識が違っていた。
勿論、攻め落とすのが困難である事は言うまでもない。
だが魔女を相手に、相手の領域で、正面から戦いを挑む事自体が彼からすれば下策なのだ。

91 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/23(月) 00:33:20.43 0
ヴィクトルは長弓に再度矢を番え、黒狼を見据える。
眼と鼻を機能不全にされながらも黒狼は少女達へと距離を詰めていく。

「はっ、馬鹿な飼い主に首輪を繋がれて可哀想にな」

ヴィクトルは黒狼が遠隔操作を受けている事を察していた。
魔女の魔力を感知したからではない。
その行動があまりに非合理だったからだ。

魔女側は勝負を急ぎ過ぎている。
城塞化の魔法を用いているのなら、戦闘力の低下した黒狼を一時撤退させるという選択肢があった筈なのだ。

少しでも脅威を近づけたくないという思考故に抗戦の指令を出したのだろうが――下策である。

目も鼻も利かない状況で察知し、防御出来るほど、エルフの征矢は鈍くない。
盲目の状態で歩みを進める黒狼目掛け、銀閃が奔る。
狙いは脚だ。妖獣相手では、頭部への小さな損傷が致命傷になるかは分からない。
足を止め、大男の手で大質量による完全な破壊を援助するのが最適を判断した。

更にヴィクトルは新たな矢を三本用意。
鏃に左手を近づけ――魔法による炎が灯された。
それを同時に弓に番え、『城塞化』された家屋へと射掛けた。

三本同時の発射でありながら、火矢は的確に窓の鉄格子の隙間を抜け、屋内へと突き刺さる。
石造りの建物であっても、自重の関係上、屋根や床まで石材を使う事は少ない。
教会などの公共施設は総石造りの物が殆どだが、スラム街の建物がそうである可能性は低い。

『城塞化』されているとは言え、建造物の組成を一から十まで鉄材に置き換えるのは無駄が過ぎる。
木材部分は十分に残されているだろう。
全焼に至らずとも、基礎となる木材が燃えれば多くの仕掛けは露呈するか、崩落による機能不全を起こす筈だ。

放火は死罪に相当する大罪だが、魔女狩りならばそれが許される。
文字通り、魔女を炙り出す為の術だった。

「……間違っても焼け死んでくれるなよ、堕廃の魔女。
 呪法で本人特定を行うには時間も手間も金も掛かる。
 それに……出来る事なら、お前は生け捕りが好ましい」

92 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/23(月) 11:02:30.96 O
―――意識覚醒。
酒場での虚から、戦場の実へと、一気に飛ぶ。
筋肉が鳴動し、生きているという実感がひしひしと湧いてくる。

>「まずはそこの犬畜生を始末するぞ」
「OKボス」

―――遠方のエルフの声が間近に聴こえたので、指をたて、短く頷く。
すぐに魔法による遠話だと気付いた。
綿密な事前の打ち合わせをする時間などはなかったが、遠話により連携行動を執ることは、戦場ではそう珍しくない。

―――前にも言ったが、彼が属していた騎士団の主な任務は要人警護である。
要人警護は警護対象者にべったりくっつき行動するのが当然と思われがちだが、そうでもない。
要人の中には、自身が始終警護されるのを忌む者も多いのだ。
その対策として、一定の距離を保ち、可能な限り気付かれぬよう警護するという作戦も必要となってくる。
その際、出来る限り遠巻きに警護するわけだが。作戦遂行時は指先と首ふりによるサインで仲間どうし会話する事となる。
しかし、視界の塞がれた場所での作戦行動を強いられる事もままある。
その際には外部から遠話の魔法を使える術者を雇い入れ、連絡をとるのが必須なのだ。

―――ところで、鎧は動くと金属の音擦れで目立つ。
しかし作戦行動に於き、鎧の音を最小限度までに抑える事は、ベテランにならば充分可能なのである。
無論、気配を完全に絶つアサシンや盗賊などと比肩するまでには至らぬ。だが、余程警戒してる者でもなければ対処に遅れる。

―――ましてや現在のドラクマは、事前に施されたエルフの魔法により、鎧を鏡とし風景と同化する付与が与えられていた。
これはエルフによりほんの短い合間に与えられた、簡素な作戦に依るものだった。

―――無論、相手が魔女ならば、すぐに位置を看破されたであろう。
しかし、現在相対するは魔女本人ではない。
魔女に使役されしファミリア、若しくはサーヴァントの類いだ。しかも、遠隔操作。
例え、位置を看破されたにしても、遠隔で操るには一定の齟齬が生まれる。
そこに賭けたのであろう。
無論、ドラクマの行動など、猜疑心の塊であるエルフの異端審問官にとっては、単なる保険の一環に過ぎぬのだろうが。

【ヴィクトルさん。
勝手にステルスかけて頂いた事にしました。
一応、謝っておきますね。ごめんなさい】
【続く】

93 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/23(月) 15:39:03.14 O
―――前方に二人の影。
まず禿頭が、もんどりうって倒れた。
エルフの攻撃に違いない。
次いで、奥にいた獣人が警戒、武器を身構えた瞬間、視界上空から何かが落下。
突如爆発的に煙が発生し、吸い込んだ黒狼が激しくむせび始める。
これは上の道を行くラウテの仕業だろう。
更なる、エルフの矢が放たれる。
矢が黒狼の足に突き立つのとほぼ同時に、不可視の術式から解き放たれた。
突如、獣人の目前に姿を現すドラクマ。
ドラクマは複雑な細かい動きは苦手だが、大雑把な直線上の動きでなら他の二人にも負けない速さで動ける自信がある。
なのでエルフをいつでもカバーリング出来るよう、円形範囲内に陣どっていたのだ。

―――背には、城塞攻略用の破壊槌。
先程酒場で使ったウォーハンマーの事だ。
腰には分厚い両刃のバスタードソードをぶら下げていた。
刀身は、はがねでできている。
これは両手でも片手でも使える優れもので、使いやすいが為に、騎士の標準装備となっている武器だ。

―――黒狼目掛け、土煙を巻き上げ突進する!
接敵するや否や、天空高く剣を掲げ、竜巻の如く激しく回転!
その勢いのまま、袈裟懸け気味に剣を打ち下ろす!
鎧袖一触!
真っ向から真っ二つに、叩き斬った!
……いや、少し違う。
斬ったというよりも、回転のうねりを活かして分厚い鉄塊で叩き潰したというのが正しいのであろう。

―――回転は停まらず。鎧とハンマーの重さのせいでよろけ、倒れかかるドラクマ。
そこでいきなり、バスタードソードの刃先をいきなり地面へと突き刺す!
剣から激しく火花が散り、急激にブレーキが掛かる。おかげでようやく停まった。

「ガーッハッハッハッ!拍子抜けしたぞ、コラッ!単なる見掛け倒しかキサマ」

―――しかし、黒狼はまだ死んではいなかった!
背後に脈打つ心臓の音が聴こえる。
伝説の魔獣・人狼は、満月の時期には不死だという。
そういえば、そろそろ満月期だった筈。
この黒狼も、きっと月の加護を受け生命力に溢れているのであろう。
下手をすれば、人狼の如き不死者なのやもしれぬ。
だがそうだとて、最早何もできまい。
黒狼は既に背後で体真っ二つの上、接断面は潰され、手酷い損壊状態なのだから。

94 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/24(火) 00:38:59.64 0
連携はうまく取れた。ラウテが目鼻を潰し、ヴィクトルが足止めし、ドラクマがとどめを刺す。
ドラクマが突入した際、おそらく侵入者迎撃用だろう、矢が数本飛んできたが、鎧に身を包んだドラクマは意に留めていない様子だった。
と、まだ黒狼に息があることにラウテは気付く。
再生能力は低いようだが、もし復活されたら厄介だ。
ラウテはダガーに魔力を込め、半分肉塊と化した黒狼に投げつける。
刺さった部位から、肉の焼けるような音が響く。魔力体が浄化されているのだ。

ラウテの持つダガーは強力な聖属性を帯びている。
柄に彫られた聖なる紋章、刀身に刻まれた聖句、込められた膨大な祈りの力。
これらはほんの少し魔力を流し込むだけで息を吹き返し、その効果を発揮する。
そして多くのモンスターや召還獣は、この聖属性に対して非常に相性が悪いのだ。
こと闇色に染められた黒狼には相当効くのだろう。刃を受けた黒狼は、やがて消滅した。
纏っていた鎧や剣、弓は地面に当たり軽く音を響かせると、同じく消滅する。
それにしてもこちらが三人程度だと分かっているはずなのに召還獣一体で対応させるだなんて、魔力でも枯渇しているのだろうか?

ふと見ると、暗くてよく見えなかった奥の建物から微かに火の手が上がっていた。
ほんのり薄紫にも見える、魔術特有の焔。ヴィクトルが放ったものだろう。
こんなところで火災が発生したら、死傷者は多数出るだろうが……魔女狩りの権限でもみ消せるのだろうか?
魔術による焔は、通常の消火手段ではほとんど効果がないことが知られている。
水や氷雪系の魔法でなら相殺出来るが、おそらくかなり消耗するだろう。
はっきり言って、火消しに奔走するくらいなら逃げ出したほうがマシなレベルだ。
火災に乗じて突入するか、それとも燻り出されて現れるのを待つか。
そこまで考えたとき、ラウテはドラクマに注意を促していない事を思い出した。

「おじさん、そこ……多分前に進むと射られるよ」

と、一応言うべきことを話してから、ラウテは笛の音を奏でる。
召還したのは三体のスケアクロウ、文字通り案山子に化けたモンスターだ。
ほとんど動かず近寄った生物を捕食する程度の脅威だが、特別な特徴を備えている。
それは、ほぼ不死であること。斬っても燃やされても死ぬことはない。
教会の尼僧による聖歌はよく効くほうなのだが……それでも消滅しないのが特徴だ。
これを捕まえるに至ったのは本当に難儀したのだが……まぁ、コツを掴めば簡単だった訳で。

ラウテは魔笛を奏で、三体のスケアクロウをゆっくりと前進させる。
たちまちそれを狙って降って来る矢の雨、しかしそんなものは意にも介さない。
ケタケタと笑いながら矢を受け前進する様は、非常に不気味な光景だった。
……少し進んだ辺りで、様子が変わった。敵の用意した地雷を踏んだのだ。
辺りに爆発音が轟き、煙が上がる。スケアクロウは弾き飛ばされたが、全く問題はなかった。
しかし地雷とは、相手もずいぶんと用意に気合を入れてくれたものだと感心する。
そんな罠を徹底的に潰され、しかも火まで射掛けられるとは災難な話だ。
しかし魔女狩りともなると手加減は出来ない。プロとしては当然の心構えだ。

矢も尽き、地雷の音も完全に止んだのを確認し、ラウテはスケアクロウを帰した。
地雷が残っている可能性はあるが、スケアクロウの足跡を辿れば問題ないだろう。
さて、これで突入の用意は整った。相手も死に物狂いで掛かってくる……そう思うと嬉しくなった。

「…ところで、魔女は殺しちゃっていいの? 生け捕り?」

笛の音に指向性を持たせて声を飛ばす。相手はもちろん屋根から見下ろすヴィクトルだ。
ネコがネズミをいたぶるように、ゆっくり虐めてから殺せれば良いな、とラウテは思った。

95 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/25(水) 09:02:12.86 0
黒狼による音だよりの吶喊。
しかしそれは、第一歩目から出鼻を挫かれた。太もものあたりに一閃の矢が突き刺さる。
短足エルフの矢だ。黒狼の甲冑は消音性を確保する為に通常よりも薄く、矢はたやすく貫通した。
治癒や障壁の援護魔法を――そう判断して実行するより速く、黒狼の眼前の景色がブレる。
闇を引き剥がすようにして現れたのは、三人の魔女狩りの一人、重装甲の大男。

「隠匿魔法――!?」

これほど目立つ巨体なら、動きがあればすぐわかる。
そう高をくくっていた・・・リタリンの鼻っ柱が真っ向からブチ折られる。
鎧男はその分厚い装甲から想像できないほど静かに、なめらかに、そして迅速に、大剣を振りかぶった。
接近を感知した城塞から放たれる無数の矢、しかしその一本たりとも男の鎧を貫けはしない。
金属がぶつかり合い小さな閃光に包まれながら、男は斬撃を敢行する。
捻りを加えた回転はさながら竜巻の如く、その一撃はまさしく鋼の大瀑布。
脳天から股下まで、斬撃というにはあまりに鈍くそして重たい破壊の線が駆け抜ける。
火花を散らしながら大男が停止した時、頭から二分割された黒狼は真っ黒な血反吐と臓物を撒き散らして石畳に沈んでいた。

>「ガーッハッハッハッ!拍子抜けしたぞ、コラッ!単なる見掛け倒しかキサマ」

大男の勝鬨が冷たい路地裏に響き渡る。
黒狼が見かけ倒しと言うならば、この大男こそはまさに見た目通りの看板に偽りなしだ。
見かけどおりに、タフで、力があり――ただただ強い。
真っ二つになった黒狼、しかし完全に消滅したというわけではない。
もともとこの軍用召喚獣は、戦火のさなかや過酷な環境での偵察斥候を目的に設計されたものだ。
本来の頑健さに加え、防御力や治癒力、おしなべて言えば生存能力に特化した改造を施されている。
スタンドアロンでも不死身に近いタフさを誇るが、従軍魔導師が帯同し支援を行えば継戦能力においても折り紙付きの実力を持つ。
ドーピングで魔力の底上げを行っているリタリンなら、もう一度戦闘可能な状態まで瞬時再生することも可能なはずだ。
魔導書のページを手繰り、呪文を詠唱しようとしたその瞬間。
言ってみればリタリンが戦況から眼を離したほんの一瞬の隙間をついて。
窓から火矢が飛び込んできた。

「(声も出ないほどの愕然)」

打ち込まれた矢は三射。
鉄格子の合間を縫うという神業じみた狙撃によって送り込まれた三本の矢は、いずれも炎を纏っていた。
魔法使いのリタリンにはそれが魔法によるものだとすぐにわかった。
次いで理解できる事実は、この火は魔法故に通常の手段では鎮火できないということだ。
木製の床や机に突き刺さった矢からほとばしる炎、一気呵成に燃え広がる。

「信じらんない・・・この密集した街中で民家に火を放つなんて!」

ここは廃屋だが、隣接している民家には普通に人が住んでいる。
しかも現時刻は夜半、住民のほとんどは眠っている時間帯だ。
このまま炎が燃え広がり、延焼すれば、計り知れない犠牲者が出ることになる。
故にリタリン自身の安全はともかく、この火を消し止めることは第一優先の急務だ。
しかし魔法の火はただ水をかけるだけでは消せない。
炎を構成している魔素を中和する一般的な解呪は、リタリンには使えない(勉強不足で)。
しばしの逡巡のあと、堕廃の魔女は苦肉の選択をした。

『形容する――"鉄塊"と!』

床と机、火が燃え移った家具へ向けて形容魔法を行使。対象は鉄塊と同質に変化し、故に炎は燃え広がらない。
依然として種火は燃え上がったままだが、延焼するよりかはずっとマシになった。
しかし、それでほっと一段落というわけにはいかない。
ミシミシと小気味の悪い音とともにリタリンの立つ床が軋み始めた。
家具やら床やらを鉄塊化した為に、木造建築の梁が重みに耐え切れなくなって崩壊を始めたのだ。
形容魔法は原理が単純で燃費に優れる反面、細かいところで融通の効かないデメリットがある。
具体的には、対象を形容したものの性質に丸々置き換える為、
今回のように不燃の性質が欲しいだけなのに付随して鉄塊の持つ硬度や重量もエンチャントされてしまう点だ。
ごろつきに手配した豪炎の剣も空気を遮断すると燃えなくなるのはこれが原因である。

96 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/25(水) 09:02:43.33 0
木材の砕ける音と共に、床が傾き沈んでいく・・・リタリンは窓枠にしがみついて必死に堪えた。
被害は二階の床が抜けて一階に崩れ落ちたところで収束した。
おかげで一階部分に構築していた迎撃トラップのほとんどが駄目になってしまった。
なんのことはない、城塞攻略に火計は非常に有効な手であるという当然の帰結だった。

「まだ・・・まだ外側の迎撃装置がある・・・!」

屋根のクロスボウと地雷原だけでも十分に防衛能力は発揮できる。
籠城を続け、時間を稼いで更に大規模な魔法を行使できれば逆転のチャンスはある。
どうにか残った床部分に這い登ったリタリンは、水晶球を確認。
禿にかけていた千里眼は禿の死亡と同時に解除されている。さすが魔女狩り、抜け目がない。
そして黒狼とのコネクトも切れてしまっていた。
何事かと外から見えない死角に位置どって窓の外を覗くと同時、宵闇の向こうで爆音が轟き、火柱が上がった。
地雷魔法の爆発だ。

「かかった・・・?」

地雷原のどまんなかで炎に包まれた三つの人影が爆風に煽られ踊っている。
接近感知したクロスボウの連射に晒され、人影は瞬く間にハリネズミのように変わっていく。
しかし魔女でるリタリンは、それが人間の魔力構成でないと判別できた。
やがて炎が消え、その向こうの人影が明らかになる。
地雷を踏んだのは三体のスケアクロウ。人型器物擬態系の魔物だ。

「新手の使い魔!」

スケアクロウ達は地雷原を前進する。
一歩二歩ごとに爆炎に包まれるが、その歩みを止めることはない。
クロスボウに至ってはすでに上半身の原型がわからないほどに矢が突き立てられているが、なお止まらない。
スケアクロウの種族特性・・・それは黒狼よりも遥かに完全な『不死身』である。
不死身の肉体に任せ、地雷原を強引に踏破しているのだ。

「いや、来ないで、止まれ止まれ止まれ止まれ!」

必死の抵抗を嘲笑うかのように、無表情な案山子達は陣地を蹂躙し、縦断していく。
この段階に及んで新たな使い魔、それも城塞攻略に誂えたような魔物の召喚は想定外であった。
リタリンが迎撃の尖兵に直接戦闘力で劣る黒狼を選んだのは、黒狼が戦闘だけでなく索敵にも秀でた召喚獣だからだ。
逆に言えば、対峙する魔女狩り達のように戦闘専門・索敵専門の使い魔をそれぞれ用意する余裕がなかったのである。
ブーストした魔力リソースの殆どを城塞化に割いたリタリンが、必死に捻出してようやく召喚できた一体なのだ。
状況に応じて最適な使い魔を選択し逐次投入できる、敵の魔力量は底が知れない。
ことここに至り、リタリンの脳裏に鮮明な死のイメージが固着を始めた。
地雷は発動を続け、爆音が連続して轟き、多少の騒音では我関せずを貫くスラムの住民達も何事かと起きだしてくる。
路地のさらに小道から、路上生活の子どもたちが煤に包まれながら逃げ出していく。
そして、不死身の案山子はとうとう地雷原を突破し城塞の入り口へ辿り着いた。

「城塞が・・・こんな方法で・・・」

黒狼は討滅され、屋敷には火が放たれ、迎撃兵装は突破された。
十重二十重に構築していたすべての防衛戦が亡き者となり、もうリタリンには何ものこっていない。
何も。己の五体以外の何もだ。もう引き返せない、直接戦闘だけが彼女に残された最後の隘路だ。
静かに、魔法の火の玉を5,6発生成し、いつでも発射できるよう左手にまとわせるように滞空させる。
そして己を空気と形容することでステルスをかけ、二階の窓の桟上に潜む。
廃屋に突入した魔女狩り達は、倒壊して落ちてきた二階の床とその上で燃え上がる炎を見るだろう。
露呈した落とし穴、不発の吊り天井、破壊された忍び矢なども見て取れるはずだ。
魔女狩り達が屋敷に入ってきた瞬間、リタリンは爆発魔法を仕込んだ火の玉を叩き込む。
これは瓦礫の影や下を経由させて出処がわからないように工夫をしてある。
彼女が倒壊した二階の窓枠にしがみついて隠れていることなど、そう簡単にはわかるまい。

97 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/26(木) 03:05:39.13 0
>「おじさん、そこ……多分前に進むと射られるよ」

「……黙ってりゃいいものを。何の為の壁だってんだよ」

エルフの鋭敏な聴覚で少女の制止を聴きとったヴィクトルは忌々しげに呟いた。
ともあれ少女が召喚した案山子によって罠の数々が無力化されたのを確認。
屋根から屋根へと飛び移り、二人の付近にまで前進する。

>「…ところで、魔女は殺しちゃっていいの? 生け捕り?」

「生け捕りだ。もし殺したら報酬は六対四だ。俺が六で、お前達が四。分かったな」

実際の所、異端審問所の意向として魔女を生け捕りにする必要は全くない。
ないのだが、そんな事は少女も大男も知る由もない。ヴィクトルは平然と無理難題を提示した。
さておき一行は魔女の砦の前まで辿り着いた。
ヴィクトルは屋根から降りて二人と合流――大男にドアを破るよう、顎の仕草で示す。

「なかなか洒落たインテリアだな」

二階の床の殆どが抜け、一階の仕掛けを押し潰している惨状を見て、ヴィクトルは笑う。
延焼は既に止まっているが、効果は十分だった。
そして直後、彼の視界外から火球が迫る。ヴィクトルは気流と熱気、魔力の気配によってそれを察知。
細剣が閃光と化して煌めき――火球の軌道が歪んだ。

それは恐ろしい剣速と、刀身が帯びた風魔法による空気の断層が生み出した現象だった。
屈曲した火球は大男の脇腹に命中――爆音と共に業火が爆ぜる。
決して悪意のみによる行動ではない。
魔女狩りの戦闘において、敵の攻撃を『受ける』という行為は下策なのだ。
接触時にどんな魔法を付与されるかも、その攻撃はどのような性質を秘めているのか。
それらは完全に未知数なのだから。
実際、もし瑞鉄の盾を形成し火球を受け止めていたら、ヴィクトルは猛烈な勢いで壁へと叩き付けられていただろう。

「……おいおい、どうした。隠れんぼのつもりか?こりゃ困ったぜ。なぁクソガキ」

魔女狩りは軽薄な笑みを浮かべて少女を見下ろした。
彼女にもまた、魔女を燻り出す術があると知った上で。

エルフは魔法と狩りの種族である。
彼らは例え裸一貫で迷いの森に放り出されても、自活が出来るほどの能力がある。
即ち魔物ですら逃げ切れない俊敏性と、狩りと生活を成立させるだけの魔法の才が。

二階に揺れる残り火は気流を――風を生み出している。
エルフにとってそれは、獲物を探し出す為の道具として、必要十分だった。

「いやぁ、困っちまうなぁ。一体どこにいんのかさっぱり検討が付かねえぞ。仕方ねえなぁ」

ヴィクトルは粘り気を帯びた声音で二階を見回す。

「聞こえてんだろ、堕廃の魔女。降りてこいよ。降伏しろ。お前には生きる価値がある。
 殺すよりも、生かした方が金になる。お前だってそうだろ?」

そして酒場での拷問の時と同じように、静やかな声でそう呼びかけた。

「死ぬよりも、最悪な事なんてありゃしねえ。そうだろ?二階にいるぞ。揺さぶり落とせ」

最後の一言は、少女と大男にしか聞こえなかっただろう。風魔法による遠話の応用だ。
魔女への説得は嘘ではない。生かしておけるなら、そのようにして利用した方が好ましい。
だがそれは、何も説得によってのみ成立しなければならない事象でもなかった。
力ずくで制圧して、意のままにしてしまえるなら、彼はそれで構わないのだ。

98 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/27(金) 23:41:34.15 O
―――ドラクマが黒狼相手に勝利の雄叫びをあげたとたんに、続けて風切り音がした。
誰かが矢を放ったに違いない。目前の城塞が天蓋から燃え出す。
あれはどう見ても尋常な焔ではない。魔法の焔だ。
「今のは、エルフか?」
―――疑問を感じる。

「はて?妙な?今の音は明らかに上からだ。
アイツは、俺さまの横に並んでいたはず」

―――だが、実際にはそんな事実はないのだ。

>「おじさん、そこ……多分前に進むと射られるよ」

―――考えながら前進すると、不意に背後から声をかけられ意識が戻される。
「おっと!?」

―――城塞より放たれたクロスボウの矢は強力な軍隊相手を想定してのものと見え、非常に長く太かった。
だが、超重騎士の鎧は単なる鋼の塊ではない。
全体的に丸みを帯びており、殆んどの物理的な攻撃の威力を減じるのだ。
角度を考え、うまく当たりに行きさえすれば、攻撃を反らす事も可能だ。

―――ドラクマは背後にいるのが誰であるか気付くと首を傾げた。

「小娘、いつの間に降りた?」

―――何故か今までラウテは上にいると思い込んでいたドラクマ。
しかし、不意に飛んできた矢の前にその疑問は霧散する。
無造作に手を伸ばし、飛んできた矢を目前で掴みとる。

「カッカッカッ!
忠告傷みいる。一応礼は言うぞ、小娘!」

「だが、覚えとけ!
この程度の矢、我が無敵のアーマーの前には、かすり傷ひとつ負わせる事すらかなわねぇよ!」

―――ドラクマは手にとった矢をへし折り、ゆっくりと着実に前進する。
矢継ぎ早に矢が飛んでくるが、丸みと光沢を帯びた分厚い金属の装甲が、それら全てを跳ね返していく。
だが、衝撃を完全に殺せてる訳でもなく、痛いには痛い。
しばらく前進するうち、背後から美しい旋律がついてきた。
ラウテの笛の音だ。
背後から何らかの気配が迫り来るのも感じたが、決して振り向くことはない。
酒場での出来事から、だいたい予想がついたからだ。
背後から迫りきた気配はすぐにドラクマを抜き去り、身代りに矢を受け始めた。
それは田舎育ちのドラクマには馴染み深い、三体の案山子だった。
案山子を先頭にしての、時間的にそう長くはない、奇妙なパレードが、まさに今、幕を開けた。
【続く】

99 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/27(金) 23:43:41.89 O
―――実はドラクマは、先程から意識が朦朧としていた。
黒狼に突撃する際、嗅覚鋭い妖獣の勘により、至近距離で山刀の一撃を喰らい胸の辺りを火傷していたのだ。
斬撃そのものは、鋼の装甲で弾いて防いではいたがエンチャントされていた雷撃は素通しだった。
黒狼に対し回転したのも、斬撃に対し角度をずらしていなすという長年の経験にて培われた動きを体が反射的にしたのがひとつ。
もうひとつは、雷が半身を麻痺させてしまったので片足が痺れてしまい、踏切らざるを得なかったからである。
回転力を殺す時に自重を自力で踏ん張りきれなかったのも、麻痺がとれず半身がうまく動かなかったから。
剣を地面に突き刺したのも、単なるブレーキではなく、体に帯電した雷エネルギーを地面に逃す為でもあった。

―――ドラクマの怪我はそれだけではない。
酒場での魔女の刺客に両脇から差し込まれたエンチャントされた武器により、両脇腹の表皮が酷く焼け焦げていた。
エルフにより受けた瞼の傷も、ラウテのくれた軟膏により一応血が流れずにはいるが、何らかの衝撃を受ければ今一度破れる可能性もある。
それに、戦場を含め、以前から受けてきた数えきれない古傷もある。
あの酒場でも、無法者の客相手に今まで完全な無傷でいられたわけではなかったわけで、実は完治してない傷も多いのだ。

―――とはいえ、彼自身の肉体じたいは実は人間の肉体の範疇だし、魔法の素養すら無い。
そんな彼が、不死身と見間違う程のタフネスぶりを周囲に示しているのは事実。
だがその理由は、単に彼が痩せ我慢が得意というだけではなかった。
それは彼が超重騎士団で長く騎士を努めてきた事にも秘密があった。

―――騎士団時代に精神的なマインドコントロールを施されてる事がその最大の理由であるのは確かだ。
だが、それだけではない肉体的な理由もある。
それを完全に理解をするには少々複雑な説明を要するわけだが、一言で言えば、様々な種類の薬剤の投与や魔法付与を長年受け続けてきたせいで、彼の体は複合型ジャンキーそのものとなっていたのである。
あの非合法な酒場で黒服として働いていたのも決して偶然ではない。
ドラッグ或いは魔法薬を入手し、採り続ける為だったのだ。
一端、それが途切れてしまえば、どんな副作用が襲ってくるのかさえ想像するだに恐ろしかった。
【続く】

100 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/27(金) 23:45:24.05 O
―――矢の雨が尽きた後もしばらくパレードは続いた。
案山子とのラストを飾るイベントは地雷源通過だった。
矢には鉄壁さを誇るドラクマ自慢のアーマーでさえ、地雷をまともに、しかも連鎖的に食らえばひとたまりもない。
いや、より正確に言えばアーマーは無事であろうが、肝心の中身の人間が無事では済まないであろう。
―――しかし、にも関わらず、ドラクマ達の行進は止まることがない。
後から来てほぼ横並びに並んだラウテの笛の演奏も、気のせいか熱を帯びてきたように感じる。
地雷は、前方の三体の案山子たちが全て代わりに引き受けてくれた。
つまり、あの案山子たちには、見掛けによらず、地雷が反応するだけの自重があったのだろう。
爆発という派手な花火が次々とあがっていく。
その全てを踏破した後、ラウテの笛の演奏終了と共に、案山子たちは役割を終え、消えていった。

>「…ところで、魔女は殺しちゃっていいの? 生け捕り?」
>「生け捕りだ。もし殺したら報酬は六対四だ。俺が六で、お前達が四。分かったな」

「うむ。覚えておこう」
(……ふむ?お優しいこって)

―――二人の遠話内容に実は内心、ホッとしていた。
酒場のマスターによる搾取っぷりはこんなもんじゃ無かったからだ。
エルフは自身の辛辣さを際立てたいと思ったのかもしれないが、劣悪な環境を見てきたドラクマにとってはまだまだ常識の範疇だった。
だが、わざわざエルフにそんな余計な話を降って自分から進んで貰える額を減らす事もあるまい。
だから敢えて口を挟まずにおいた。
その程度の処世術はあった。

―――ラウテと並び、城塞の前まで辿り着く。
炎と煙に包まれてるとはいえ、立派な佇まいだ。
魔法に一切素養のない自分にとっては不思議で仕方がない
城門を上から下へ右へ、左へと、しげしげと眺める。
この場所にあったのはごく普通の廃屋に過ぎなかった筈だ。

「魔女の力恐るべし……と言ったところか」

―――しきりに感心していると、屋根からエルフが飛び降り、合流してきた。
【続く】

101 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/28(土) 00:06:23.05 O
―――エルフが顎で門扉を暗に示す。
それに対し、やはり顎で了解したと返す。
するといきなり、破壊槌を大きく振りかぶり、思いっきり城門に叩きつけた。
あれだけ堅固そうに見えた城門が、たったの一撃で崩れ墜ちる。

―――破壊された城門をどかし侵入すると、中は既に鎮火しつつあった。
一応、煙を吸い込まないよう息を潜める。
どうやら火事の影響により、二階部分が床ごと抜け落ちてるようだ。

―――しかし、何かがおかしい。
あんなに燃えていたのに、煙もろくにない。
とはいえ、濡れてはないし蒸気も上がってはいないので、水で消火されたわけでも無さそうだ。
魔法の焔だから特殊なんだと説明されてしまうとそこまでなのだが、とにかく何かがおかしかった。

―――エルフは後ろを気にせずどんどん先へと行ってしまう。

「フン。勝手な野郎だ。軍隊ではとても勤まらんな」

―――仕方なく、ラウテを警護しつつ、上から垂れ下がっている二階の床材を破壊槌の棒の先でつついてみる。
木目調なのに、金属的な音がする。やはり、何かがおかしい。

―――次に、警戒しながらエルフの後を追い、奥へと進む。
すると、さっき前方に行ったとばかり思っていたエルフが横に居て、思案顔だった。
不意に、こちらを見て冷笑したような気がした。
……とても嫌な予感がした。
次の刹那!不意に何処からかエルフ目掛け火球が飛んだのが見えた!
……かと思えば、その火球は不意にエルフの斬撃に弾かれ、急遽進路を変え、凄まじいスピードでこちらに向かってきた!
全く予測してなかったのでこれは避けられそうにない!
防御の薄いわき腹部分に直撃した!
火球は爆発し、そのまま壁まで吹き飛ばされる!

(野郎ーッ!油断したッ!まさか、いきなり味方から攻撃を食らうとは……!?)

―――爆発の勢いで弾き飛ばされ、まともに壁に叩きつけられてしまう。
これはまず、即死コースだろう。
ドラクマは人形の如く倒れた後、口からあり得ないくらいの大量の血反吐を吐き、そのままいっさいの動きを止め

102 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/28(土) 00:49:23.44 O
―――だが、少し休むとあっさりと起きあがる。

―――見ると、エルフは魔女に優しげに語りかけている。
御存じ、“飴と鞭作戦”に違いない。

「フン……。いかにもゲスな野郎のやり口だな。気に食わねぇ」

―――そう呟きながらも、ドラクマは口許に笑みを浮かべている自分に気付いていた。
こういう頭のいいやり方は自分からはできないが、作戦としては決して嫌いではないのだ。

>「二階にいるぞ。揺さぶり落とせ」

「イエッサー!」

―――エルフの命令を受け、生き生きとしだすドラクマ。
途端にそこらの壁や柱を片っ端からハンマーで殴り付けはじめた。
揺れる館全体。パラパラと落ちてくる砂埃。
これだけでも魔女の心拍数はかなりあがったことだろう。
しかし、それだけでは済ませない。

―――ある程度館を揺さぶり終えると、今度はおもむろに背中からもう一本の武器を抜き出す。
これはハンマーと同じく、城塞攻略にはとても役に立つ武器だ。
長い槍の先に斧のついたポールウェポンの一種、ハルバードである。
この武器にはさまざまな種類があり、一概には言えないが、大抵は斧の逆側にカギ爪が付いており、これらを応用すれば、館の解体作業などに最適な道具と言えよう。

―――ドラクマは、城塞の柱という柱を、ハルバードで切りつけ倒しつつ、木製の壁は槍で突き刺し穴を開け、カギ爪を引っ掛け壁をグイグイと引っ剥がしていく。

―――無論、石や金属でできている部分は、破壊槌で破砕する。
そうして、短時間のうちに魔女の潜んでいる場所以外の殆んど全てを解体していった。

―――魔女の居場所を敢えて残したのは、もちろん、性格の悪いエルフの作戦指示を受け、尚且つ、わざとであった。

103 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/28(土) 22:09:37.43 0
どうやら魔女は殺してはいけないらしい。まぁそれはそれで良いのだが。
ラウテは幼いながらも、その身に潜む残虐性を開花させつつあった。
魔笛の継承者として幼い頃からそう育てられ、命を屠ることに何の抵抗もない。
魔笛の本質は、そこに封じられた悪魔だ。悪魔は人の心に悪意を植えつける。
果たして魔笛がその原因かは不明だが、ラウテの精神が悪魔に影響を受けたのは間違いない。

敵の罠を突破するために三体ものモンスターを召還したが、ラウテに疲れは見えなかった。
ラウテの生まれ持っての魔力量も大したものだが、彼女の使う召還魔法は低コストなのだ。
多元世界から魔素を抽出して魔物の形を形成する面倒な方法は用いない。
魔笛のテリトリーである空間にモンスターを封じるか、野生そのままに放置する場合もある。
魔力によって形成されたタグを頼りに、空間転移で呼び出すだけなのだから簡単なのだ。
もっとも大量のモンスターを保存出来るだけの空間を用意するのは容易ではない。
魔笛の特殊性故による大規模な魔法が構築されているには違いない訳だ。
ラウテの魔笛に封印されたモンスターの数は、一個小隊を軽く飲み込めるまでに成長していた。

トラップも解除しいざと飛び込んだ廃屋の中は、無残な有り様であった。
二階部分はほぼ崩れ去り、一階に仕掛けられていたのであろう罠が露見している。
ラウテはそこに魔法の気配を感じ取る。何らかの中規模の魔法により、鎮火と崩壊が同時に起こったのだろう。
爆発による消火か、それとも重力系の魔法か……ラウテは不思議そうに首を傾げた。
その答えはすぐに分かった。ドラクマが二階の床材を突いてくれたからだ。
見た目は木材なのに金属音……今回の魔女が得意とする形容魔法によるものだろう。
二階の延焼しそうな木材を全て金属に変換したのなら、崩壊した理由も分かる。
そしておそらくは、これまでの仕掛けや召還獣などから考えて魔女の魔力は枯渇寸前だと言う事だ。
魔力に余裕があるのだったら召還獣ももっと大量に用意しただろうし、床が崩壊するような魔法の使い方もしない。
魔力の枯渇した魔女は最早敵ではない。おそらくまだ反撃の手段は持っているだろうが、その質は期待出来ない。
可哀想に、とラウテは呟き、くすくすと笑ってみせた。

周囲を一応警戒していたところ、瓦礫の間から火球が飛び出し、こちらへ迫る。
その数六発。この手の魔法は珍しいものではないため、セオリー通りに対処出来る。
奏でたのは魔笛ではない、先程まで背負っていた古びたリュートだ。
音楽魔法は、フルートのような単音ではなくギターのような和音の方がより効果を発揮する。
召還魔法を扱うなら魔笛でなければならないが、ただの音楽魔法ならリュートのほうが効果的なのだ。
かき鳴らした一節で、四箇所の空間そのものの魔素を空中に固定し、飛来する火球を止める。
次の一節で火球を弾き飛ばし、廃屋の天井にぶち当て爆発させた。
二発は見逃したが、ヴィクトルが剣捌きでどうにか……あ、ドラクマに当たった。
見事に弾け飛んだドラクマであったが、少ししたら普通に起き上がってきたところを見るに大丈夫らしい。
あとで治癒の魔法を掛けてあげようと思いながら、更なる攻撃がないかと警戒していた。しかし。

>「二階にいるぞ。揺さぶり落とせ」

ヴィクトルは既に敵の居場所を感知していたようだ。
力仕事は任せろとばかりに、ドラクマが張り切って廃屋を破壊し始めた。
崩壊した二階にいるのなら、あの窓の桟くらいしか身を潜める場所はあるまい。
それをドラクマも把握しているのだろう。その窓を残し、他の部分から崩壊させてゆく。
しかしドラクマの働きは恐れ入る。あれではまるで重機のようではないか。
何らかの魔術的処置で身体を鍛えた形跡はあるものの、ほとんど彼の実力だろう。
ラウテは彼の破壊音に合わせるようにリュートをかき鳴らし、新たな術式を展開する。
蜘蛛の糸、と呼ばれる捕縛式だ。網のように空間に張り巡らせ、動く相手を捕獲出来る。
魔法故に登録された者だけはすり抜ける事が出来るため、非常に有用な魔法だったりする。
仮に魔女が飛行魔法を(使うなら莫大な魔力が必要だが)使ったとしても、逃がさない処置である。
窓枠から落下して死なれるのも困る、という処置だったりもするのだが。

104 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/30(月) 05:39:50.56 0
魔女狩り達が城門を破り、廃屋へ踏み込んできた。
眼下に見える人影は三つ、酒場で私兵を屠ったのと同じ者達で間違いない。
甲冑姿の大男と、足の短いエルフと、銀髪紅眼の少女だ。
予定通り、リタリンは六発の火の玉を様々な軌道で撃ち放つ。
当たれば爆裂し、吹き飛ばし、遁走の為の隙を作り出す魔法だ。
少女がリュートをかき鳴らす。その波動が大気を伝わって空間の魔素を固定し、障壁をつくる。
酒場でエンチャントを解呪した音楽魔法の応用版だ。
返す刀で鳴らされた一音により弾き返された火の玉が四発、天井に着弾して破片がリタリンの方まで飛んできた。
残り二発の火の玉はエルフへと殺到。あろうことか彼はそれを『斬った』。
否、正確には剣圧と風魔法により極挟の真空をつくり、魔法の軌道を変えたのだ。
弾かれた魔法は鎧男の脇腹へと命中し、爆裂。

(やった――!?)

吹き飛ばされ瓦礫の山へ叩きつけられた大男は、今度こそ意識を失ったかのように見えた。
しかしほんの数秒で何事もなかったかのように起き上がる。
使い魔なんぞより、こいつらの方がよっぽど化物だ。

>「聞こえてんだろ、堕廃の魔女。降りてこいよ。降伏しろ。お前には生きる価値がある。
 殺すよりも、生かした方が金になる。お前だってそうだろ?」

階下でエルフが水音のしそうなくらいねっとりとした口調で投降を勧告する。
その提案は今のリタリンにとり非常に魅力的に思えたが、それが口車であると彼女は知っている。
生きる価値がなきゃ生きられない。そこに生はあっても自由はない。
価値の分だけ絞り尽くされて、なくなったら改めて殺される、それじゃただの家畜だ。

>「死ぬよりも、最悪な事なんてありゃしねえ。そうだろ?

とどのつまり、それは『死ぬ以外のすべての苦痛』を与える宣告に他ならなかった。
それこそ死んだほうがマシに思えるような――
冷や汗が頬をつたう。リタリンはそれを舌を伸ばして舐め取って、ゆっくりと嚥下した。
何事かエルフから指示をされた大男が鷹揚に了解を示して動き出す。
なにをするかと思えば、背負っていたハンマーで壁や柱を殴り始めたのだ。
城塞化されている廃屋の支えは堅牢で、ちょっとやそっとの打撃では倒壊することはない。
しかし、その衝撃は窓枠にしがみついているリタリンをダイレクトに揺さぶった。

「ひっ……!」

大男は何度も柱を殴りつける。
そのたびに両腕で窓枠を掴んでいるだけのリタリンは放り出されそうになる。
桟にかけていた足がすべり、踏み外し、腕だけで宙吊りになる。
そして金属のひしゃげるような、絶望の音が聞こえた。大男の槌が柱をついに破壊したのだ。
それにとどまらず、漆喰の壁は残らず粉砕され、窓も柱も木も鋼ものべつ幕なく解体されていく。
やがて、リタリンの潜む一角を残して、殆どの構造物が破壊され尽くしてしまった。

(絶対バレてる、居場所……!)

こうも都合よくリタリンの隠れた場所を残して更地にされれば、いくら戦闘勘に欠ける彼女でも気づく。
なんらかの探知式で、ステルス越しにリタリンの居所を把握しての凶行だろう。
少女がリュートをかき鳴らし、さらなる魔法を展開。
張り巡らされたのは魔力で構築された糸……設置型の捕縛式だ。
こうなってはもうここを動くことすら叶わない。退路を完全に断たれ、状況は詰みであった。
冷酷にして残虐なる三つの視線に晒され、魔女の心臓は早鐘のように脈打つ。こめかみが鼓動する。

「はぁーっ、はぁーっ、うう……」

意図せずして呼吸が大きくなってしまい、手で覆ってどうにかおさえつける。
この状況は膠着ではない。魔女狩り達の一人でも気まぐれを起こせば、たやすく魔女の命を奪い得る。
自分の命の残り残高が、あと五秒か十秒か……恐れのあまり歯の根が合わず、寒中のように息は凍えた。
投降というほんの僅かな仮初の安息に、おもわずすがりついてしまいそうになる。

105 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/30(月) 05:42:37.18 0
(だけど……)

仮にこの場で命はとられなくとも、リタリンは再犯、量刑は更に重いものとなるだろう。
良くて何年も懲役、悪ければ売買ルートを拷問で吐かされてそのまま絞首台へ直行もあり得る。
それでなくとも、4年前に捕縛された時は、本当に地獄だった。
囚兵として従軍させられ、辺境の開拓団に混じって危険な現生種との戦いの日々。
安全の確保された拠点の内側で眠れるのは正規兵だけで、日雇いの冒険者やリタリン達のような囚兵は危険な外側で夜を明かした。
闇の向こうからいつ敵が襲ってくるかも知れず、まともに眠れた夜はない。
食事も配給の乾燥食以外は危険な原生林をかき分けて自己調達しなければならず、渇きを凌ぐために泥水さえも啜った。
現住民族との抗争や、不潔な住環境、不衛生な食事による中毒……
一夜、一夜と日が登る度に仲間は減り、墓は増え、やがて生き残ってしまったことを後悔さえするようになる。
あの頃に比べれば、そして釈放後の今日までの日々を思えば、今こうして三名の魔女狩りに囲まれている現状など――

(――ピンチのうちにも入らない!)

殆ど強引な自己暗示だが、それでも覚悟は決まった。
震えはない。呼吸も安定している。心拍数は少しだけ高鳴っているが、諦める理由には程遠い。
三人の魔女狩り、先ほどの攻防ではエルフの曲げた魔法が鎧男に直撃していた。
連携が不完全、おそらくは街の酒場で結成した急ごしらえのパーティなのだ。
魔女狩りのような高報酬高難度のミッションは、こうした臨時の協定で頭数を確保することも珍しくない。
付け入るスキがあるとしたら、そこ。

リタリンは一度大きく息を吸って、深く深く肺の中身をすべて吐き出した。
唱えるのは城塞の呪文の一節。スペルの意味するところは『状況終了』。
城塞化が解除され、柱も壁ももとの木造建築のものへと再変換される。
結果発生するのは、屋敷の大部分を破壊されたことによる自然倒壊。
鋼の柱と鉄壁で辛うじて支えていた自重、木造の剛性では耐え切れない。
窓枠にしがみつくリタリンをくっつけたまま、残りの壁が倒れていく。
その真下にいるのは先程まで解体作業をしていた鎧の男だ。
彼の耐久力は確かに脅威だが、殴るのではなく『生き埋め』にされればどうだろう。

一方リタリンはステルス状態のまま二階の高さから空中に放り出された。
姿を隠しているとは言え、蜘蛛の糸に触れればその瞬間ステルスを剥がされ術者に居所が知れるだろう。
そして糸が巻きつき、捕縛……。だがリタリンは、敢えて糸のかかった場所へと飛び込んだ。
肩から糸に触れる。ステルスが解除される。自由落下する苔色の塊は糸に絡め取られて減速する。
しかし糸が捉えたのはリタリンの濃緑のローブのみ。鎖帷子を着込んだ中身は地面へと着地した。
蜘蛛の糸に引っかかり広がるローブをブラインドとして、エルフ目掛けて3つの布袋を投擲する。
手のひらサイズのそれは、普通に香りの良いハーブを詰めたいわゆるただのポプリ。
当たったところで意味はない。しかしエルフは警戒するはずだ。
堕廃の魔女と呼ばれた魔法使いが、ただの香草袋を投げつけてくるはずがないと。
楽師の少女が使った煙玉を見ているなら、なおのことその印象は強まる。
だからこのポプリは、エルフの対応力、集中力を使わせるための言わばデコイ。
本命は既に練り上げていた。翻るローブ越しにエルフを指差して、呪文を唱えた。

『形容する――"傀儡"と!』

リタリンの得意とする形容魔術は、対象が近くにありさえすれば杖や火の玉などで接触する必要はない。
術者から放たれる魔力の波動で対象の性質を『押し流し』、強引に書き換えるのだ。
いかにエルフが魔法を斬れようとも、城塞化を切って確保したリソースは強烈だ。回避にも防御にも限界がある。
形容したのは『傀儡』。しかし今のリタリンにエルフを傀儡人形の如く操る余裕はない。
ではどうなるか――糸の切れた操り人形のごとく、四肢が脱力して動かなくなるのだ。

振り向きながらリタリンは杖の機構を操作。先端の水晶球と柄をつなぐソケットが分離。
振り回せば遠心力で水晶球が鎖の尾を引きながら飛ぶ、棘なしのモーニングスター。

「っあああああああっ!!」

己を鼓舞する叫びを上げながら、堕廃の魔女は円を描くようにモーニングスターを振るった。
背後にいる魔笛の少女へ、振り向きざまに横殴りの一撃を見舞う。
完全な不意打ちだ。頭にヒットすれば意識を刈り飛ばし、腕に当たれば骨も砕けるリタリン窮地の一矢である。

106 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/30(月) 14:45:20.71 0
【俺だ。今回のターンに限り、投下順を後回しにしてもらいたい
 具体的にはラウテ嬢の後だ。彼女への直接攻撃がロールされている為、俺が先に動くのは……やりにくい
 ドラクマ、ラウテ嬢、俺という順番になるのか、そうでないのかは……悪いがそっちで決めてくれ】

107 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/30(月) 16:22:48.94 O
―――解体作業は順調。
現場でこういった肉体作業をすることは多々あったので、これくらいは全然苦にもならない。
それにしてもエルフの状況判断力には凄いものがあるとドラクマは密かに感心していた。

―――実はドラクマも密かに魔女の居所をだいたいは察知していたのだ。
スラム女特有の得も言えぬすえた匂いがしたからだ。
それは普通なら判らない程度の微香であり、他の匂いにかき消されてはいたのだが、ドラクマには匂った。
ハウンドドッグ並みの嗅覚を持つドラクマにとって嗅ぎ分けることじたいは可能なのだ。
では何故ドラクマは最初から魔女の居る場所を目指さなかったのかという疑問がわいてこよう。
簡単に言うと、誰にも指示されなかったからだ。
もうひとつ、匂いと魔女との関連性を疑わなかったせいでもある。
気分がハイになっていたが為に、細かな事にはいっさい気が回らなかったのだ。
なので当然、その瞬間を見逃した。

―――不意に金属の壁が木製へ変動。魔女が性質変化の魔法を解いたのだ。
よく見てさえいれば、その変化は顕著であった。
金属特有の光沢が失われ、弾性も変わり、硬度低下も引き起こったのだから。
この瞬間を察知し、逃げ出すだけの機知があればなんて事はなかったろう。既に周りの壁はほぼ取っ払ってあったのだから、避難場所はあった。
だが、ドラクマは逃げ出さなかった。
何故ならば超重騎士団に於いて、逃走という概念はいっさい無いからだ。
その場から逃れ出る事はあるっても、それはあくまで戦略的撤退の場合のみである。
作戦によりその場を退くか、或いは警護対象を庇う場合だ。
それを訓練で身体の隅から隅まで徹底的に叩き込まれていた。
だからこそ、超重騎士は死亡率が高かったのだ。ドラクマは落ちてくる瓦礫の山に対し、逃げ出さず果敢にもハンマーで攻撃を仕掛けた。
瓦礫の一端を天高く弾き飛ばす。
―――しかし、それになんの意味があろうか。
ドラクマの鎧姿は、たちまち落下物の雨に呑み込まれ、轟音と共に姿を消してしまう。
後に残るは、たくさんの塵や埃と、建物の瓦礫の堆積物の山だけだった。
【終劇】

―――長い間ありがとうございました。
ドラクマ先生の次回作に御期待下さい。

108 :名無しになりきれ:2015/11/30(月) 16:25:58.67 0
滑ってはるで

109 :名無しになりきれ:2015/11/30(月) 17:58:46.29 0
勝ったッ第三部完!!

110 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/30(月) 22:33:23.65 0
ラウテは油断していた。敵は間もなく二階から振り落とされ、その姿を露見させることだろう。
そうなればラウテの仕事は終わったも同じだ。二人が捕縛し、何処へなりとも連れて行けば良い。
だから気付かなかった。崩壊する建物がそのスピードを増したことに。
術式の展開であればラウテも気付いたであろうが、行われたのは術式の解除。
注意深く辺りを見ていたのなら普通の人間でも気付いたであろうが、ラウテは良く見ていなかった。
建物が崩壊することで、張り巡らされた糸が縺れ感知も難しくなる。
だから気付かなかった、魔女が既に地上へ降り立っていた事に。

ラウテが気にしていたのは、建物の崩壊の様子だった。
急激に崩れ始めたそれは、瞬く間にドラクマを巻き込んで堆積する。
舞い上がった埃で辺りは良く見えない。ドラクマは無事だろうか?
手にしていたリュートの音で辺りの埃を吹き飛ばそうとし、ようやく気付く。
形容魔法の気配、それがヴィクトルに放たれたこと。そして自らの身にも危険が迫っていることに。

>「っあああああああっ!!」

放たれたのは魔法の杖に仕込まれたモーニングスターのような一撃。
この手の武器は魔法使いより僧侶が好むとされている。
彼らは戒律により血を流す事を是としないためだ。代表的な武器はメイスだろう。
しかし刺突や斬撃ではないとしても、その威力が驚異的なのは知っての通りだ。
肉は断てずとも骨を砕き、当たり所が悪ければ致命的な一撃となる。
そしてこの瞬間、ラウテの身にもその一撃が迫っていた。

振り下ろされたそれは、しかしラウテの身に当たることはなかった。
それを止めたのは、空中に浮かぶ銀の輝き。ラウテの魔笛だ。
水晶球に当てるのではなく、その手前の鎖に当たることで威力を殺し、止めたのだ。
ラウテが振り返ったのは、まさに振り下ろされる瞬間だ。防御が間に合うはずはない。
それでは何故笛で攻撃を止めることが出来たのだろうか?

「…ありがとう、アムドゥスキアス。ラウテを守ってくれたのね」

そう、彼女の魔笛はただの道具ではない。悪魔が封印された超一級の魔道具だ。
悪魔が自らの意思を以って、持ち主を守ろうと働きかけることが可能なのだった。
ちなみに実際のフルートはかなり精密に作られていて脆いが、魔笛にその常識は当てはまらない。
ドワーフの槌の一撃でさえも、魔笛ならば耐えることが可能なのである。

かくして、魔女の放った渾身の一撃は儚くも止められた。しかし、それで終わりではない。
ラウテの判断は魔女のそれよりも早かった。ダガーを抜き放ち、相手の懐に飛び込む。
鋭い銀閃が走る。ラウテが狙ったのは魔女の左腕、杖を持つその手首だ。
零距離から放たれた一撃は、寸分違わず魔女の腕の腱を切断した。

「あなたの負けよ。…大人しく投降しないなら、ラウテも本気を出す」

再び距離を取ったラウテであったが、その両手にはダガーが構えられている。
音楽魔法とはあらゆる楽器を媒体として魔法を発動するシステムだ。
そしてそれは奏でられるのであれば、楽器である必要すらない。
彼女にとっての奥の手は、まだ出してはいないのだ。

【順番変更、受理しました。今回限りと言うことで、次からは元の順に戻します】

111 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/01(火) 22:33:54.20 0
>「イエッサー!」

大男が暴れ出す。
堕廃の魔女の居場所だけは崩さぬように残す、豪快かつ精密な破壊活動だった。
ふと、ヴィクトルの視線が少女へと落ちる。彼女は――くすくすと笑っていた。

「……歪んだガキは嫌いだぜ」

彼は舌打ちと共に小さく吐き捨てた。
理由は言うまでもなく、自分自身がその沿線上にいるからだ。

と、少女が笑うのをやめ、弦楽器を奏でる。
その音律がまるで虚空に記譜されるかのように、発光を帯びた蜘蛛の糸が床のやや上方に顕現された。

「……おい、だんまりか?悪いようにはしないと約束するぜ」

ヴィクトルもそれを受けて、魔女へ再び呼びかけを行う。
返答は――言葉ではなかった。
音だ。家屋が軋み、梁や柱がへし折れる悲鳴が屋内に響く。

「……まぁ、好きにしろ。どの道お前の運命は変わらねえ」

彼がそう呟いた直後、魔女が二階から飛び降りた。
彼女はそのまま捕縛術式に囚われ――しかしローブを脱ぎ捨てる事でそこから離脱。
ブラインドと化したローブ越しに小さな布袋をヴィクトルへと投擲する。

だが一流の魔女狩りの不意を突くにはあまりに緩やかな軌道。
細剣は目にも留まらぬ疾風のごとく布袋を切り裂く。

その直後だった。
崩落によって乱れた気流が落ち着き――ローブの向こう側の魔女が、自分に狙いを定めているとヴィクトルが気付いたのは。

>『形容する――"傀儡"と!』

魔女が呪文を唱え、魔力の波動が迸る。
彼は全身から力を失ったかのようにその場に跪いた。

>「っあああああああっ!!」

しかし魔女の奮闘もそこまで。
渾身の力で放ったモーニングスターの一撃は、魔笛の「計らい」により防がれる。
そのまま一瞬の内に彼女は腕の腱を切断され――その喉元には刃が添えられていた。

>「あなたの負けよ。…大人しく投降しないなら、ラウテも本気を出す」

刃は、少女のものではない。
彼女は魔女から距離を取っており、得物はダガーナイフだ。

「……どうした。幽霊でも見たような顔しやがって」

細く鋭いその刃は、紛れも無くヴィクトルの細剣だった。

彼の言葉と同時、魔女の背後に「あった」その場に跪くヴィクトルの姿が消えた。
ぱしゃり、と小さな水音を残して。

ヴィクトルは形容魔法を回避していた。
更にその際に、魔法によって形成した虚像をその場に残していたのだ。
大男の鎧に付与した隠密術――水を鏡面化させる魔法の応用だ。
その上で、自身は姿を隠し――あたかも形容魔法をまともに受けたかのように見せかけた。

112 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/01(火) 22:34:43.59 0
だがどのようにして彼は形成魔法を躱したのか。
答えは――非常に単純だ。

ヴィクトル・シャルフリヒターの身長は低い。
154センチメートル――14歳の少女と12センチしか変わらない。
だが体重は62キログラム――彼の低い身長にしては、非常に重い。
これは十分な栄養状態なら、170センチ弱の人間の適切な体重だ。

さりとて、彼の体型は決して肥満気味という訳ではない。むしろ細身ですらある。
つまり――彼は非常に高密度で、強靭な筋肉を有しているという事だ。

形容魔法を躱した術は、ただただ俊敏極まる跳躍だった。

「……さっきは説得の仕方が悪かったな。言い方を変えよう」

ヴィクトルは緩やかな歩調で魔女の側方から背後へと回りつつ、語り出す。

「お前に死ぬ自由はない。お前にある選択肢は俺に従うか……」

そして彼女の膝を蹴っ飛ばし、跪かせる。

「苦痛と共に全ての名誉を失って……その後で俺に従うかだ」

目線よりも下にまで落ちてきた彼女の左肩を抑え込む。
そして――白い肌が帷子もろとも削ぎ取られた。
しかし削ぎ取ったのは細剣ではない。

「こんな風にな」

ヴィクトルの口元が、血で濡れていた。
帷子の切れ端を、彼が吐き捨てる。
魔女の皮膚を削ぎ取ったのは、彼の歯だ。噛み千切ったのだ。

処刑人は、死刑囚をただ殺すだけの仕事ではない。
時には静謐で穏やかな死を与え、時には拷問によってあらゆる名誉を奪い去り、殺す。
その名誉を奪うという観点において、捕食という行為は極めて効果的だった。
拷問は人間の受けるものだが、捕食は最早その域にすらない。
苦痛だけでなく多大な生理的嫌悪感を与える術として非常に優秀だろう。

だが、だとしても、処刑人達が死刑囚を捕食しろなどと教育を受ける事は決してない。
ましてや彼が優れた筋骨格を持っていようと、帷子を噛み切るなど通常の人間には――無論エルフにも不可能だ。
その行為はヴィクトル固有の――「歪み」によるものだった。

「いいか、聞け。お前は金のなる木だ。
 以前捕縛された時は僻地開拓の最前線に駆り出されたそうだが、俺はそんな事はさせない」

ヴィクトルの声色は淡々としていたが、同時に偽りの気配もそこにはなかった。

「お前が望むなら、お前の人生を、多少はまともな道に戻してやったっていい」

ヴィクトルは、笑みを浮かべようとしていた。
冷徹な拷問吏の笑みではなく――穏やかな微笑みだ。
まるで、生まれた時から奴隷だった少年を救った、魔女狩りの男が浮かべるような、笑みを。

とは言え「それ」を完全に真似するには、彼はあまりに歪み過ぎていた。
ほんの一瞬だけ浮かんだ微笑みは、すぐに皮肉げで、険のある表情の中に溶けて消えた。

「俺はこの世の何もかもが嫌いだが……不幸な奴だけは、嫌いじゃない」

113 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/02(水) 03:28:42.16 0
鋭い円弧を描いて魔笛の少女へ迫る水晶。
しかし骨折必至の質量攻撃は少女の鼻先をかすめる軌道で小さな弧をつくり、引き返した。
ギャリィッ!と鋼の擦れ合う音と共に魔笛が鎖にぶち当たり、振り子を途中で摘むように錘の動きを止めたのである。
その挙動に誰より驚きを示しているのはほかならぬ少女であった。魔笛はひとりでに動き、少女を救ったのだ。

「そんな……!」

魔女は絶望に呻く。返答は銀の一閃。
少女が抜き放ったダガー、その鋭利な先端はモーニングスターを戻しきれないリタリンの左腕を切り裂いた。
手首に赤い線が走り、血が吹き出す……柄を握る手に力が入らず、魔女は杖を取り落とした。
出血はひどくはないが、左手の腱を切られた。もう武器を持つことは叶わない。

>「あなたの負けよ。…大人しく投降しないなら、ラウテも本気を出す」

距離をとりながら油断なく宣言する少女。
リタリンは左手首を抑えながら痛みに耐え、脂汗の浮かんだ双眸で魔笛の少女を睨めつけた。
とんでもなく手練ではあるが、まだ甘さがある。魔法使い相手に四肢をぶった斬って安心できることなどないのだ。
この喉笛を食いちぎられないかぎり、呪文は唱えられる。
大男は瓦礫の下、エルフはあと半刻は指先ひとつ動かせまい。残る敵は魔笛の少女ただ一人。
こいつさえどうにかできれば、この廃屋から逃げおおせる見込みだってあるのだ。
短縮詠唱――多大な集中力と威力の減衰を免れないものの、リタリンにだって奥の手はある。
気取られぬよう、静かに、普通の呼吸に上乗せして詠唱用の呼気を溜めていく……
その喉元に、白刃が突きつけられた。

「ぴょっ!?」

驚きのあまり呼気が漏れて変な声が出てしまった。
リタリンの白い喉に切っ先を向けているレイピア……その柄を握るのは、傀儡へと変えたはずのエルフだった。

>「……どうした。幽霊でも見たような顔しやがって」

そんな馬鹿な、と視線だけで背後を確認する。四肢を脱力し膝をつくエルフの姿は確かにある。
エルフが二人――その異質を把握する前に、跪いた方のエルフが溶けるように崩壊した。

(水魔法の、幻影……!)

だが、半端者とは言えリタリンの魔女としての眼は確かだ。
幻術、デコイ、それら見当識の欺瞞を引き起こす魔法を見抜く術もまた魔法使いの範疇。
確かに、形容魔法をかけた段階ではエルフは生身であったはず。
――つまり、エルフは魔法を見てから躱したのだ。

(どういう身体能力してるの……!!)

これで二対一。それも前後を抑えられている。
逃げようにも、完璧なタイミングで放たれた形容魔法を回避できるエルフの敏捷性から逃げ切れる気はしなかった。

>「……さっきは説得の仕方が悪かったな。言い方を変えよう」
>「お前に死ぬ自由はない。お前にある選択肢は俺に従うか……」
>「苦痛と共に全ての名誉を失って……その後で俺に従うかだ」

膝を後ろから蹴られ、支えを失って跪く。
瞬間、肩口に灼熱感。思わず悲鳴を上げて手で抑えると、鎖帷子に穴が空き肉がえぐり取られていた。
まるで狼にでも食らいつかれたかのように。

114 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/02(水) 03:29:22.67 0
>「こんな風にな」

エルフが何かを口から吐き出す。
埃っぽい廃屋の床に転がったのは、鎖帷子の切れ端と、リタリンの皮と肉。
エルフの口元が血に濡れていた。リタリンは文字通り肩口をエルフに『喰われた』のだ。

「〜〜〜〜〜〜ッッ!!」

痛みよりも驚愕、そして恐怖に思考が塗りつぶされた。
あり得ない、とかどういう歯をしてるのか、とか疑問と怖れで頭がいっぱいになる。
ただひとつだけ一貫しているのは、自分はこの狂人に敵うはずがないという絶対の事実であった。

>「いいか、聞け。お前は金のなる木だ。
 以前捕縛された時は僻地開拓の最前線に駆り出されたそうだが、俺はそんな事はさせない」
>「お前が望むなら、お前の人生を、多少はまともな道に戻してやったっていい」

それは。
最上の恐怖と、痛みと、そしてこれからもっと酷いことが起きるという予感。
そしてそれを取り除いてくれるかもしれないという至上の報酬。
世界最強の飴と鞭が、同時にリタリンに降ってきた。

>「俺はこの世の何もかもが嫌いだが……不幸な奴だけは、嫌いじゃない」

魔女狩りが嗤う。狂った笑み。しかしまるでたった今咲いたばかりの花のような、清廉な微笑み。
それはすぐにしかめっ面の中に溶け、魔女を見下ろす睥睨の視線に変わった。
リタリンは向こう一生分かあろうかという冷や汗と脂汗を流し切って、震える唇で呟いた。

「"堕廃の魔女"、リタリン・アサナギ・フェニデート。……貴方の元に降ります」

無事な方の右手で杖を置く。
魔女にとって己の名を、特にフルネームを相手に伝えることは最大級の降伏を示す。
前述の通り呪術には相手を名で縛るものが多く、本質に近い名前を知っていればいるほどその効力は強まる。
当局に剥奪されていたミドルネームは、彼女がどこの里のドルイドかを表すもの。
つまり、出身から家系、伝承する魔法の形質まで全て知ることが可能な名前だ。
『アサナギ』は、薬草学に長け様々なハーブ、ポーション、ドラッグに至るまでを継承する氏族である。
呪術師にフルネームを伝えれば、千里離れたところからリタリンの息の根を止めることすら可能。
故に魔女狩りは、対象となる魔女のフルネームを(拷問で)聞き出すことを成功条件としている。

そして己の生殺与奪の全てを差し出して――
リタリンは、投降した。

115 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/12/02(水) 12:57:07.69 O
―――一方その頃ドラクマは、分厚い瓦礫に埋もれ、全方位から圧されていた。
鋼のアーマーを着込んでいる為に直接潰されるという事態だけは避けられていたが、身動きはいっさいとれなかった。

(なぁに、これくらいなんてことないぜ。すぐ抜け出してやるさ)

―――はじめはそう、軽く考えていた。
だが、力を入れようにも全身が瓦礫にくまなく圧されている。
身体を動かすにはそれなりの溜めが必要だ。
だがここには溜めをつくるだけのスペースがない。
如何に常識を越えた筋肉を誇るとはいえ、筋肉に力を入れるにも呼吸というものが必要だ。
だが、ここでは肺が圧され、うまく呼吸ができない。

―――おまけに暗い。眠くなってきた。
極めつけは、圧されていたが為に全身の傷口という傷口から手酷い出血が始まっていた。
そのせいで、倦怠感と共に、急速に意識が遠のいていく。

(ククク。なんてこった……最高にハイな気分だぜ!)

―――ドラクマにはそれが逆に気持ち良かった。
ジャンキー特有のフラッシュバック現象も重なり、脳内が痒く熱くなってきた。
―――やがてドラクマは意識が徐々に薄れていき―――それにいっさい抗うのを辞めた。
【無】【闇】【死】

116 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/12/02(水) 20:10:01.52 O
【同僚の皆さんドラクマはこれで完全に死にました。蘇ったとしてもNPCでしょう。
年末はリアルが忙しいのでこれ以上参加するのは無理そうです。
短い間でしたがありがとうございました。
では、さようなら】

117 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/02(水) 20:17:16.90 0
お疲れ様、短い間だったが俺はアンタとの時間を楽しめたよ
また気が向いたら遊びに来てくれ

118 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/02(水) 21:12:43.62 0
【忙しい中参加して頂きありがとうございました。機会があればまたよろしくお願いします】

【順序は変わりましたが、今ターンではヴィクトルさん先にお願いします】

119 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/02(水) 21:16:37.38 0
【>>ドラクマさん  お疲れ様でした。
 またぜひご一緒したいと思います。ここで、あるいはどこかでお会いできたら嬉しいです。】

120 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/03(木) 04:30:25.83 0
>「"堕廃の魔女"、リタリン・アサナギ・フェニデート。……貴方の元に降ります」

「……それでいい」

ヴィクトルは小さく頷いた。

「お前は正しい選択をした。俺は魔女でも悪魔でもないからな。嘘は吐かない。
 約束通り……お前を金にして、ついでにお前の人生を少しだけましにしてやる」

そして魔女の右肩に手を翳す――治癒魔法が施される。
彼はエルフであり魔女狩りである――小規模な負傷程度なら魔法による治療が可能だった。

「今回、異端審問所に『密告』をしてきたのはこの街の裏側を牛耳るゴミ共だ。
 つまり冒険をするよりも、他人を食い物にした方が楽で稼げると気付いた賢い連中だ」

次にヴィクトルは手にした細剣で床を切り刻み始めた。

「だがコイツら『も』また別の連中によって異端審問所に密告されている。
 組織がでかくなって、金を稼いで、気が緩んだか。恨みすら残らないよう徹底する事を怠った」

精密な動作で刻み込まれた傷跡は、三日月と十字を重ね合わせたような模様を描いていた。

「とは言え、奴らがこの街のどこに居を構えているのかすら俺達は知らない。
 下調べから始めるんじゃ、手間も時間も掛かり過ぎる。そんな仕事は誰も受けようとしなかった」

『闇に紛れ眠れる信仰』を象徴する異端審問所の記章である。
異端審問所には元々、教会の聖堂騎士が人身御供のように出向していた過去がある。
穢れた戦いに敢えて身を投じる事で、その自己犠牲によって信仰を確立させる為に。

「つまり……お前はお誂え向きって訳だ」

何が言いたいのか分かるだろう、と尋ねるようにヴィクトルは魔女を見た。

「お前を餌にすれば、奴らの尻尾を掴める。街中の需要を掻っ攫っていった調合師だ。
 魔女狩りの玩具になって殺されるのを見過ごすのは勿体無いよな」

彼女がどんな表情をしていようとも、彼は悪辣な笑みを浮かべるだろう。

121 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/03(木) 04:33:55.43 0
「上手く頭だけ切り落とせりゃ、奴らの組織をまるごと掻っ攫ってやれるかもな。
 不労所得ってのは大事だぜ。お前にも一枚噛ませてやったっていいぜ、クソガキ。
 まぁ……具体的にどう釣り上げるかは、これから考える事になるが」

と、不意にヴィクトルは床に刻んだ異端審問所の記章を剣先で叩く。

「で、どこに刻んで欲しいんだ、これ」

そして――魔女を睨み上げるようにして、そう尋ねた。

「……あぁ、説明がまだだったな。お前には魔女狩りになってもらう。
 まともな人生を送るには職が必要だよな。
 実入りはいいし、横柄に振る舞っても誰にも咎められない、いい仕事だぜ」

それに、とヴィクトルは続ける。

「大抵の魔女は、死んだら何も喋れなくなる。
 お前が死んだら、あの火事はお前の仕業になる予定だった。
 ……お前も同じ事が出来るって訳だ。つまり」

一拍の間を置いて、彼は次の言葉を紡ぐ。

「四年前を、無かった事に出来る。お前程度の魔女が、
 もっと才能のある魔女の傀儡にされたとしても、それは罪でも恥でもない……
 俺の言っている意味が分かるな」

細剣の切先が、魔女に突き付けられる。
ヴィクトルの声音は、視線は、嗜虐の精神を宿してはいなかった。
平時の振る舞いからは想像が出来ないだろうほど真剣に、彼は魔女の今後を語っていた。

「もう一度聞くぞ。どこに刻んで欲しい」



【不労所得の獲得は書く事が少なすぎて悩んだ末の「こんなのも面白いんじゃないか」程度のものでしかない
 既に今後の展望があるならもちろん、無かったとしても、別に拾ってくれなくても構わないし
 仮に拾われたとしても俺が話を主導するつもりはない事を明言しておく】

122 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/03(木) 23:40:32.13 0
魔女はヴィクトルの不意打ちに敗れ、そして投降した。
それを見定めたラウテは、ダガーを鞘に収め振り返る。
彼女が気にしていたのは、他でもない。瓦礫に飲み込まれたドラクマだった。
ラウテの能力、及び召還出来る使い魔の中には、この瓦礫をどうにか出来る方法はない。
それでも何とかしようと、彼女は召還の笛の音を響かせた。
現れたのは、一頭の何の変哲もない大型犬。ラウテはその犬に語りかける。

「お願い、ドラクマのおじさんを探して。あなたなら分かるでしょ?」

犬は忠実にその命令に従い、瓦礫に登り匂いを嗅ぐ。
やがて何かを発見したのか犬は一声吠え、彼女の元へと戻ってきた。

「……そう、死んでるのね。ありがとう、もう帰りなさい」

犬は死臭には敏感だ。匂いだけで相手の生死を知るのは造作もない。
ドラクマはこの瓦礫の中で息を引き取ったのだ。今更どうする事も出来ないだろう。
仲間を失ったのは手痛い。しかし、冒険者たるもの何時何処で死んでもおかしくはないのだ。
埋まってはいるが、死体が残る死に方をしただけでも僥倖と言えよう。
ラウテはせめて安らかな死であるようにと小さく祈ると、それっきり瓦礫を振り返ることはなかった。

彼女が瓦礫を気にしている間に、ヴィクトルは驚いた事に魔女を……リタリンを異端審問官に勧誘していた。
彼女の魔法の腕前はまだ未熟に思えたが、判断力は悪くない。鍛え上げればそれなりに使えると見越したのだろう。
別に恨みを持つラウテではないため、彼女がこちら側に来ることは別に厭わない。
ドラクマは弱かったのだ。だからどうとも思わないラウテである。

「左腕、出して。今ならまだくっつく。痛いけど我慢してね」

そう短く告げたラウテは、笛を仕舞いリュートに持ち替えると、それを奏で始めた。
しかし、それでは切断された腱を修復するには至らない。だから彼女は「歌った」。
そもそも呪文詠唱は言葉、声によるものだ。最も原始的な音楽魔法は歌から生まれたものである。
言葉の羅列だけでなく歌に乗せる事で効果を倍加する。それが音楽魔法の真髄なのだ。
更にリュートの伴奏が付く事で、複雑な魔法陣を描くのと同等の効果も現れる。
ラウテの歌は、最早人間に出せる音域に留まらなかった。異様な音階を発声している。
それが彼女にとっての奥の手、最大級の音楽魔法だった。

123 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/03(木) 23:41:27.92 0
奏でられる音と共に、リタリンの傷口が開き、縮んだ腱が無理やり引き伸ばされる。
それはかなりの苦痛を伴うものだったが、ラウテが音楽魔法を止めることはなかった。
切断された腱が治癒され、傷口もだんだん塞がって来た頃には痛みもなくなるだろう。
最後の一節まで歌いきったラウテは、懐から軟膏と包帯を取り出し処置をした。
そもそもラウテはずっと一人旅をしてきたのだ。怪我をすることなど珍しくもない。
手早く傷の処置を終えた彼女は、魔力の限界を感じその場にしゃがみこんだ。
声による高度な治癒魔法はかなりの魔力を消耗する。音楽魔法が楽器を主体とするのはそのためだ。
だがラウテは若い。一休みもすれば魔力もすぐ回復することだろう。

>「上手く頭だけ切り落とせりゃ、奴らの組織をまるごと掻っ攫ってやれるかもな。
> 不労所得ってのは大事だぜ。お前にも一枚噛ませてやったっていいぜ、クソガキ。
> まぁ……具体的にどう釣り上げるかは、これから考える事になるが」

「…引渡しを偽装して、幹部を捕らえて吐かせる、じゃダメかな?
 リタリンが重大な情報を握っている事にすれば、多少なりともなんとかなる、かも?」

言葉に纏められる程簡単な作戦ではないが、組織を一つ潰すつもりなら徹底的にやる必要があるだろう。
もちろん参加する事にラウテは異存はない。どうせ乗りかかった船なのだから。
森などに好んで潜り込んではモンスターと戦う日々を暮らしてきたラウテである。
長期に渡る戦闘などは慣れっこだ。この程度の修羅場は幾度となく乗り越えている。
魔力こそ消耗しているが、戦いの道具に傷みはないしまだ戦える余地はあった。

「下っ端の幹部でも情報を吐かせて、少しでも上の連中を狙えるなら…なんとかならない?」

実のところラウテはあまり真面目に考えてはいなかった。基本頭脳労働は苦手なタチだ。
ついでに夜も更けて少し眠い。体を動かすか何か食べてないと、居眠りをしそうな気分だ。
そこでラウテは思い出し、持って来ていた荷物から三つの包みを取り出した。

「ふぁ…ところでシミットがあるけど、食べる? 酒場で包んで貰ったの」

シミットはドーナツ状のぱりっとしたパンだ。携帯食にはもってこいだろう。
激しい戦闘のあとにすぐ食事というのも如何なものかと思うが、彼女はまだ育ち盛りだ。
戦いで消耗したときは何かを食べるに限る。それがラウテの持論でもあった。

124 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/04(金) 04:42:07.37 0
>「お前は正しい選択をした。俺は魔女でも悪魔でもないからな。嘘は吐かない。
 約束通り……お前を金にして、ついでにお前の人生を少しだけましにしてやる」

膝を地につけたままの魔女に、魔女狩りは穏やかに言った。
食い千切られた肩に慈温を帯びた光が射し、痛みと共に傷口がすうっと消えていく。
治癒の魔法だ。

>「左腕、出して。今ならまだくっつく。痛いけど我慢してね」

同様に、切られた左の腱は斬った本人が治してくれた。音律による詠唱、音楽魔法。奏でるのは笛でも弦でもなく、少女自身の声だ。
聖歌隊の一糸乱れぬ斉唱のように静謐で、どこかこの世のものでないかのような悍ましさが共存する歌声。
悪魔――誰に言われるでもなく、ましてや治癒の魔法を受けているにもかかわらず、そんな印象が過ぎる。

「……っつう」

創傷の過程を逆廻しにするように、強烈な痛みと共に傷口が修復されていった。
しかし切断された腱を元通りにするのだからそれなりのリスクは承知の上。
瓦礫の下に埋もれた『三人目』のことを、忘れているわけではない。
軟膏と包帯による処置が終われば、負傷前と遜色なく杖を握れるようになった。

「……あ、ありがとう」

傷を負わされた張本人に言うのもどうかと思ったが、お礼は自然に口を出た。
それはきっと、詠唱を終えた途端人が変わったように眠そうな眼に戻った少女を見て、毒気を抜かれたからかもしれない。

>「今回、異端審問所に『密告』をしてきたのはこの街の裏側を牛耳るゴミ共だ。
 つまり冒険をするよりも、他人を食い物にした方が楽で稼げると気付いた賢い連中だ」

「ああ、やっぱりバレてたのね」

エルフの言は、リタリンの腑にストンと落ちた。
得意先のごろつき共からか、あるいは別の経路か、やはりリタリンという魔女の情報は漏れていた。
おおかた街で無遠慮にキメているところを見られたか、端金で顧客に売られたかのどちらかだ。
いくら用心深く立ちまわったところで、究極的には戸を立てられないのが人の口。
結局、リタリンが魔女狩りの標的になるのは時間の問題だったのだろう。
エルフは地面に何事か絵図を描きながら、今回の案件の前後関係を説明する。
リタリンと同じように、『商売敵』――この街の暗部も魔女狩りの対象になっていること。
そしてその組織を釣り出す餌として、リタリンが有用であるということ。

>「…引渡しを偽装して、幹部を捕らえて吐かせる、じゃダメかな?
 リタリンが重大な情報を握っている事にすれば、多少なりともなんとかなる、かも?」

魔笛の少女も乗り気のようで、具体的なプランを固める方向へ話を進めている。

「ちょ、ちょっと待って」

リタリンはいきなり反駁した。大事なことをまだ聞いてない。

「私の人生をまともにする方のプランは――?」

思わず身を乗り出すリタリンに、ずいと差し出される包みが一つ。
魔笛の少女が持ちだしたのは、輪っか状に焼き締められた硬いパンだ。
表面を覆うゴマが香ばしく、片手で立ち歩きながら喫食できるようになっている。
リタリンは開拓地にいた頃配給食として似たようなものを食べたことがある。
ろくに兵站の通らぬ未開の地で長く保存できるよう極限まで水分を抜いてあり、固くてふやかさないと食べられたものじゃない。
しかしろくな味付けもないなか綺麗とは言えない生水でふやかしたこれは、この世で最もまずいものの一つだとリタリンは回顧する。
生臭く、ぼそぼそとした食感で、噛むと渋く異臭のする液体がじわりと染み出すあの味……。
思い出すだけで病気になりそうだ。家畜でももっと良いものを食っている。ろくに食べられたものではなかった。
そんな思い出から差し出されたシミットを真っ青な顔で見ていたリタリンだったが、魔法の連発で消耗しているのは彼女とて同じ。
倒壊に巻き込まれて備蓄の食料もお釈迦になった手前の空腹には耐えかね、ままよとひとかじりしてびっくり。

125 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/04(金) 04:43:02.80 0
「美味しい」

焼きあげてからそう時間が経っていないのかまだ温かく、さっくりと歯が通りゴマの香りが溢れだす。
そもそも保存性をそこまで必要としない為か、中身はしっとりとしていて小麦の甘みとほんのりと塩気も感じる。
開拓地で口にしたアレと同じ食べ物だとはまるで信じられなかった。

>「で、どこに刻んで欲しいんだ、これ」

「ええ?」

シミットに舌鼓を打ったところにエルフがレイピアを手遊びしながら聞いてきた。
剣先が示しているのは先程から地面に刻んでいた図面だ。異端審問当局を示すエムブレム。それを図式化したものだった。

>「……あぁ、説明がまだだったな。お前には魔女狩りになってもらう。
 まともな人生を送るには職が必要だよな。
 実入りはいいし、横柄に振る舞っても誰にも咎められない、いい仕事だぜ」

「あの、私、魔女……」

魔女を狩る魔女など前代未聞だ。魔女というものは『同業者』である以上に『同胞』という意識が強い。
修行の制度が師弟関係に近い為魔女同士の間柄が緊密なのはもちろん理由の一つであるが、
何より異端審問という脅威に対して立ち向かうあるいは逃げ隠れるには固く団結する必要があったからだ。
だから魔女は絶対に他の魔女を売らない。拷問にも屈しない。
というより、拷問や自白魔法などで自ら情報を漏らさないように強固な封印を自身にかける。
これは魔法の専門家である魔女が全霊の才能を掛け歴史による洗練を経たもので、高位の魔女にすら解呪は不可能。
然るに、それだけの封印を『掛けざるを得ない』のが魔女同士の繋がりというものなのだ。

その禁を破り、魔女を狩る。前人未到の極悪非道、人非人の外道と謗られても言い訳の聞かぬ最低の背信行為だ。
少なくとも二度と魔女と名のつく者とは関われないし、噂が広がれば往来で呪い殺されても文句は言えまい。
そんな業を背負うだけの利が、果たしてあるのか――

>「大抵の魔女は、死んだら何も喋れなくなる。お前が死んだら、あの火事はお前の仕業になる予定だった。
 ……お前も同じ事が出来るって訳だ。つまり」
>「四年前を、無かった事に出来る。お前程度の魔女が、
 もっと才能のある魔女の傀儡にされたとしても、それは罪でも恥でもない……俺の言っている意味が分かるな」

四年前、人里をまるごと一つ廃人の巣窟に変えた、あの事件。
リタリンが『堕廃の魔女』の烙印を刻まれた過去を、もっと凶悪な別の魔女におっかぶせ、帳消しにできる。
かつて魔女であったという事実を消してしまえるのだ。
それは、この四年間リタリンが死ぬ思いをしてまで欲した、『普通の人の人生』を取り戻せることを意味する――!

>「もう一度聞くぞ。どこに刻んで欲しい」

再びの問いに、答えはもう決まっていた。

「ここに」

リタリンは鎖帷子の襟口をぐいと下げて、白い首筋を露出させた。
側面に刻まれているのは、四年前当局によって押された『堕廃の魔女』の烙印だ。
特殊な染料で洗っても消えず、簡単な魔法で服越しにでも存在を確認できるその刻印。
その上に、刻んで欲しいとリタリンは答えた。

「魔女でありながら、魔女を狩る者。その背信の戒めとして」

烙印の上に魔女狩りの紋章だ。誰が見たって裏切り者は一目瞭然。
それこそ、この先出会う人の全てから嫌悪され、後ろ指さされ石を投げられることすら甘んじて受け入れなければなるまい。
どこか別の場所に刻んで、烙印を隠してしまうことだってできるだろう。
しかしリタリンはそれを良しとしなかった。その先にある光を手にする為に、背けてはいけない真実だ。

「私は私の尻を拭うわ」

126 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/04(金) 04:43:29.33 0
さて、リタリンの首級を持って行くはいいが、相手の陣容について魔女狩り達は知らないことばかりだ。
だがリタリンはこの街に根を張ってもう一年になる。
堕廃の魔女は自堕落で臆病だが、臆病故に敵対する可能性のある者の調査は怠慢しなかった。

「この街の裏を取り仕切ってるのはオメルタっていう地上げ屋でね。
 元々は不動産を取り扱う商会の親分だったんだけど、妹を市長の嫁に出してから特権濫用でやりたい放題。
 強引な立ち退きからの土地転がしで種銭つくって、違法薬物から奴隷商まで法の外にあるものは片っ端からね。
 この街のお店は――あの酒場ももちろん――全部連中の傘下と思っていいわ」

と、ここまではリタリンでなくともこの街に長く住む者なら誰でも知っていることだ。
では、魔法という強大な力を持ちながらリタリンがずっと逃げ隠れしつつこそこそと営業しなければならなかったのは何故か。
――純粋に、連中が強いからである。
それは権力という意味であり、武力という意味であり、もっと単純化するならば、兵力だ。

「連中、護衛に冒険者をしこたま雇っているのよ。調べがついてるだけでも協会認定の乙種冒険者が十人弱。
 あとこれは未確定だけど、"甲種"までいるって話も聞いたことがあるわ」

冒険者協会は、正式認定(つまり会費を納め、仕事の優先的な斡旋を受けている『まっとうな冒険者』達)の格付けを行っている。
上から順に甲種、乙種、丙種とされたこのクラスは、仕事の実績や戦闘の実力などを加味して厳正に箔押しがされている。
つまり、戦力の指標として極めて実情に則した信頼できる格付けというわけだ。

駆け出しや実戦経験の少ない若手を丙種冒険者と言う。
これはごく普通の傭兵、王国の一般兵卒と同等の実力を持つ。
リタリンの雇った私兵、酒場のごろつき達もここにあたり、実際丙種認定を持つ者もいた。

熟練者、駆け出しが順当に実績を積んだ先にあるのが乙種冒険者というクラスだ。
正規訓練を受けた一個分隊並の実力を持ち、大型の魔獣を数人で討伐できるレベルである。
大規模な任務では指揮官を担うことも多く、一般的な冒険者の多くはこの乙種まで登って引退を迎える。

そして冒険者の中でも精鋭、一線級の実力者が甲種冒険者である。
このクラスになると英雄とも呼ばれ、村ひとつ救って伝説を残している者も少なくない。
王都の宮廷武官の門戸さえ開かれる、全ての冒険者が最後の極致として目指す高みだ。

いち地上げ屋の私兵にするには過剰なほどの戦力を、しかし彼らはものにしている。
オメルタがそれほどの立場と財力を持ち――この街の冒険者協会と癒着している何よりの証左だった。

「私をエサに釣り出すのは良いけど、喰らいつかれないようにねぇ」

それから、とリタリンは思い出したように言った。

「名前も教えてもらってないじゃない。
 あぁー安心して、呪いに使ったりしないから」

【職業:無職→魔女狩り】

127 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/06(日) 00:27:05.15 0
>「ここに」

二度目の問いへの答えはすぐに返ってきた。
魔女が差し出した、魔女の刻印が浮かぶ白い首筋に、ヴィクトルは小さく首肯。
細剣の切っ先を左手で包み込むようにして魔力を篭め――剣閃。
精緻を極める斬撃が魔女の首筋が走り――傷口から滲み出た血が魔女狩りの刻印を描き出す。

「リタリン・アサナギ・フェニデート。今この瞬間より、お前の存在は書き換わる」

水の魔法の応用。
それは性質的にはただ小規模な水を操るだけの単純な魔法。
たが、ヴィクトルは彼女の真名を知っている。
ゆえにその魔法は彼女という存在そのものに刻み込まれる。
本職の魔女であっても、最早その刻印を消し去る事は叶わない。

「次は、お前の番だ。お前の人生は……お前自身の手で書き換えろ」

ヴィクトルは細剣を鞘に納めつつ、そう言った。
静かな、だが真に迫る言葉――捨て切れない人間性。
より正確には何度捨てても何処からともなく湧いてくる感情。
ヴィクトルが表情を顰める――その感情が、彼は嫌いだった。
それは、歪み切れない、過去に囚われ続ける自分が存在している何よりの証左だからだ。

「……何してる。今のはさっさと俺の役に立てって意味だ」

自己嫌悪を他者への嫌悪に挿げ替えるように、ヴィクトルは魔女を睨んだ。

>「この街の裏を取り仕切ってるのはオメルタっていう地上げ屋でね。

「……なるほどな、嫌いなタイプだ」

ヴィクトルが吐き捨てた嫌悪からは平時の如き「装い」の雰囲気が薄れていた。
彼は生まれた時から奴隷だった。他人を食い物にするような悪党が、彼は心底嫌いだった。

「連中、護衛に冒険者をしこたま雇っているのよ。調べがついてるだけでも協会認定の乙種冒険者が十人弱。

だからどうした、と言わんばかりにヴィクトルは鼻で笑った。
地上げ屋がどれほどの兵力を有していようと、彼らは『守勢』だ。
利益を、その為の地盤を守らなくてはならない。
それは即ち、先ほどまでの堕廃の魔女と同じだ。
陣を敷き、そこに留まる者――ヴィクトルが最も得手とする獲物だ。。

> あとこれは未確定だけど、"甲種"までいるって話も聞いたことがあるわ」

「……なんだと?」

しかし魔女の口から「甲種」の存在が示唆された瞬間、彼の表情が一変した。

「……やりにくいな」

近くに倒れた柱の残骸に深く腰かけ、苦い表情で右手を顎に添える。
ヴィクトルはかつて一度、甲種の戦いを見た事がある。

死灰の魔女――魔法の深奥を極める為、不老不死の研究に没頭し、村一つを吸血鬼の巣窟と変えた魔法使い。
その征伐を請け負った時の事だ。
彼が魔女の潜伏しているとされる村に到着した時には、既に先客が暴れ回っていた。
ヴィクトルの眼をもってしても追い切れない、爆撃の如き高速剣。それを実現する体捌き。
切り裂かれようと灰と化して飛散、再生する吸血鬼を、灰未満にまで切り刻み無力化する精密性。
まさしく絵空事の中に出てくる英雄の如き戦闘を、ヴィクトルは目の当たりにした。

128 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/06(日) 00:28:34.97 0
甲種の中にも優劣があるとは言え、決して楽観視出来る相手ではなかった。

>「私をエサに釣り出すのは良いけど、喰らいつかれないようにねぇ」

「……そうだな。最悪の場合は、お前を生贄に何とか逃げる事にするさ」

魔女の揶揄めいた台詞を皮肉げに鼻で笑い飛ばし、ヴィクトルは軽口を叩いた。
まだ存在するかも分からない敵に、楽観視するのは言語道断だが、怯み過ぎるのも良くない。

奇しくも話を逸らすようなタイミングで、魔女がそういや、と声を発した。

>「名前も教えてもらってないじゃない。
 あぁー安心して、呪いに使ったりしないから」

「……ヴィクトルだ」

ヴィクトルは何の躊躇いもなく名を名乗った。
魔女を信頼しての選択ではない。
単にそれが、彼の本名ではないからだ。

「ヴィクトル・シャルフリヒター……まぁ、『グランドネーム』だがな」

しかし同時に、偽名という訳でもない。
魔女狩りは、かつては聖堂騎士達が人身御供として身を投じた組織。
彼らには不名誉な戦いに臨む前に、己の真名を教会に預ける習わしがあった。
魔女狩りに伴う穢れを浴びるのは「己ではない」名前である、とする為に。

教会に預けた名が返還されるのは、魔女狩りとしての生を終えた時だ。
浴び続けた穢れは仮の名前と共に葬り、神とこの世の為に尽くし続けた徳は己の真名の勲章とする。
そうする事で、聖堂騎士達は神の国へと召し上げられる。
誰しもがその事を信じていた訳ではないが――それでも建前が必要だったのだ。
神に尽くす筈だった人生を、非道に堕とすには、それなりの建前が。

『グランドネーム』とは地を這う為の名前であり――下界で生きる際の仮の名前、という意味だった。
もっとも、信心など持ち合わせていなくても仮名の使用は呪い対策に有効だ。
正式な儀式を介して与えられた二つ名は、それ自体が一つの形容魔法としても機能する。
故に現代の異端審問所にも、その風習は残されていた。

「……少なくとも、正面から仕掛けるのは無しだ。
 商談の時に、最強の護衛を引き連れてこない悪党はいない。俺は博打は嫌いだ」

ヴィクトルは立ち上がると同時にそう言った。

「だからまずは……」

そして、魔女を見る。

「やっぱりお前は処刑する事にするか」

129 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/06(日) 00:29:34.55 0
「……おい、そろそろ俺達は引き上げるぞ」

ふと、ヴィクトルが崩落した柱や屋根の下敷きになった大男へ声をかけた。
返事は、ない。

「……マジでくたばりやがったのか?」

やはり、返事はない。
ヴィクトルは小さく鼻を鳴らした。

「……すぐ死ぬ奴は嫌いだぜ。面白くねえ」



ヴィクトルは街の新聞社と公示人、演説家を用いて街中に噂を流させた。
街に混乱と怠惰を齎した魔女が捕縛され、その罪の重さから街の中央広場にて公開処刑にされる。
その無様な最期を衆目に晒すべく、処刑は翌日明朝に執行される、と。

公示人は識字率の高くない王国内で主に公報の流布を務める職。
演説家は政治家や企業の主張を広く民衆へ膾炙させる為の職業である。
つまり――新聞社も含め、街の支配を盤石にする為には絶対に押さえておくべき存在だ。
間違いなく地上げ屋の息が掛かっているとヴィクトルは踏んだ。

中央広場には街の消防隊に組み上げさせた仮説の処刑台。
そこに磔にされているのは――魔女ではない。
魔女を騙す事に失敗し、頭を射抜かれた冒険者の死体だ。
魔笛の少女がより適した魔物を召喚出来ると言うのなら、そっちになるかもしれないが。

目深にローブを着せてしまえば、暗がりでは容姿は確認出来ない。
水鏡の魔法を顔に被せて容姿を欺瞞する事も可能だ。
死臭も、ハーブ売りの魔女という事になっているのだ。ハーブで誤魔化してしまえばいい。

「人間、降って湧いた得には疑って掛かる……が、降って湧いた損は疑わない。
 遮二無二、形振り構わず潰しにかかってくる」

ヴィクトルは中央広場を、周囲の建物の屋根の上から見張っていた。

「まずは……善意の協力を募るとしよう」

130 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/06(日) 22:54:04.45 0
>「美味しい」

そのリタリンの声にラウテは微笑んだ。同じものを食べるというのは気分の良いものだ。
話の途中でもあったのか、性急に口に放り込んでしまうリタリンに対し、ラウテはのんびりとシミットを食べる。
傷も癒えお腹も満たされたリタリンは元気そうだ。敵だった相手とはいえ、勝負が付いてしまえば負の感情はない。
それに、これからヴィクトルが何をするつもりなのかは察していた。リタリンを「仲間」にするのだと。
人という存在そのものを憎みながらも、不幸な者に対して憎しみを持てないヴィクトルの性格を、ラウテは微笑ましく思う。
ラウテは困った人に手を差し伸べてやった経験はほとんどない。だが、その暖かさは知っている。
彼女の両親がそうであったように、寄り添う人というものは暖かいものなのだ。
その懐かしさを噛み締めながら、ラウテはシミットの最後の一口を放り込んだ。

>「この街の裏を取り仕切ってるのはオメルタっていう地上げ屋でね。
> 元々は不動産を取り扱う商会の親分だったんだけど、妹を市長の嫁に出してから特権濫用でやりたい放題。
> 強引な立ち退きからの土地転がしで種銭つくって、違法薬物から奴隷商まで法の外にあるものは片っ端からね。
> この街のお店は――あの酒場ももちろん――全部連中の傘下と思っていいわ」

「つまり、冒険者協会にも強い繋がりがある……ってこと?」

>「連中、護衛に冒険者をしこたま雇っているのよ。調べがついてるだけでも協会認定の乙種冒険者が十人弱。
> あとこれは未確定だけど、

131 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/06(日) 22:55:48.07 0
> あとこれは未確定だけど、"甲種"までいるって話も聞いたことがあるわ」

「甲種……一筋縄では勝てないね」

ラウテは幼く経験も浅いが、その実力を買われて乙種冒険者として登録されている。
乙種ともなると危険な仕事も多いが、それでも儲けは十分にあるため良い仕事になる。
多人数による大型魔獣の駆除など、バックアップを必要とする仕事を主に引き受けているラウテだ。
実力を積み、やがては巨大な魔獣を一人で狩れるようになるのが当面の目標だったりする。
正直なところ、ラウテの使役出来る魔獣はあまり役に立たないものが多い。
多人数による魔獣狩りでは抜け駆けする訳にも行かず、屈服の条件にもそぐわない。
魔獣はとにかく屈服させて契約を結ぶ必要があり、それはあまり人に見せたくもない。
なので今手元にいる魔獣は全て、ラウテが一人で狩れる程度の強さでしかないのだ。

>「名前も教えてもらってないじゃない。
> あぁー安心して、呪いに使ったりしないから」

「…ラウテ、ラウテ・パユだよ。よろしくリタリン」

それから夜を徹して、彼らは街の情報筋に偽の情報を流して行くことになった。
流すのは魔女の処刑が翌朝開かれるという事。
処刑というものは、案外それを見に来るギャラリーが多かったりする。
見ず知らずの他人が処刑される様を見て、一体何が楽しいのかラウテには分からない。
処刑をするなら自らが手を下すから楽しいのではないかと、彼女はそう考えていた。

132 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/06(日) 22:56:58.41 0
そして翌朝、街の中央広場にはたくさんの観衆が狙い通り集まっていた。
広場の一角には観覧席まで設けられ、そこを出入りする数人の人影も確認出来る。
そして広場の中央に据えられた処刑台に括り付けられた、リタリンの偽の死体。
昨晩リタリンに買われてラウテたちを襲撃したうちの一人である。
ラウテはそれが死体だと悟られぬよう、死体にある仕掛けを施していた。

……ゾンビ虫、それがラウテの使役した魔物だ。
生死を問わず人間の体に進入し、脳を食い荒らしてゾンビに変えてしまうのが特徴である。
ゾンビと化した人間は他の人間を襲うようになり、その過程でゾンビ虫は繁殖する。
ゾンビを倒すだけで簡単に使役出来る魔物のため、あまり役には立たないが大量に飼っている。
倒した魔物や魔獣はとにかく使役する、それがラウテならではの考え方だった。
ゾンビと言うだけあって、うめき声を上げながらのろのろと動く事しか出来ないが、縄で括られた状態なら疑われる心配も少ない。
ちなみに討伐手段はとにかく頭部を破壊すること。腕や足をいくら落とそうが意味はない。

ラウテは見晴らしの良い屋根の上で、ゾンビを操るために魔笛を奏でていた。
もちろん観衆には聞こえないよう、独特の調整を施した上でだ。
必要な命令を送り終えたラウテは、その横で広場を見下ろすヴィクトルに尋ねる。

「…処刑されるまでもがくようにしたよ。それで、これからどうするの?」

広場には人が集まり、騒ぎに乗じて観覧席を襲撃するのは容易いだろう。
だが、警備を破るのは難しいと思われる。下手をすれば指名手配を受ける恐れさえある。
殺るならば誰にも見つからないようにすべきだとラウテは思う。
否、おそらくヴィクトルは襲撃を狙っているのではないと感じた。
騒ぎに乗じて相手にこの処刑を潰させる気だろうか? 確かにリタリンは、彼らも欲している人材だ。
細かい作戦までは察することは出来ないが、おそらくヴィクトルは何かを狙っていると感じた。

とりあえずラウテは今回狙うべき相手、オメルタという人物を望遠鏡で観察する事にした。
眼下に見下ろすオメルタは、歳は50前だろうか。動きの鈍そうな小太りの男だ。
いかにも悪党という面構えに、ラウテは嫌悪感すら覚えた。
その周りには屈強な男たちが囲うように周囲を見張っている。
おそらく雇っている冒険者とは彼らに違いない。しかし、どの男も凡百に見える。

「甲種冒険者……いないみたいだね、隠れてるのかな?」

こんな騒がしい中だ、身を隠すだけなら容易いだろう。こちらも群集に紛れられたら見付けようもない。
優秀なSPは、周囲に悟られぬよう対象を守る事が出来ると聞く。相手もそうなのだろうか?

133 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/08(火) 04:54:00.34 0
>「……ヴィクトルだ」
>「…ラウテ、ラウテ・パユだよ。よろしくリタリン」

二人の同行者は、リタリンの要請にその名で答えた。
短足エルフがヴィクトル・シャルフリヒター。魔笛の少女がラウテ・パユ。
二人ともリタリンの出生圏とは別の命名則のようだった。王国は広い、異なる出生の者がチームを組むなど珍しくもない。

>「……少なくとも、正面から仕掛けるのは無しだ。
 商談の時に、最強の護衛を引き連れてこない悪党はいない。俺は博打は嫌いだ」

ウィクトルはリタリンから得た敵戦力の情報を勘案して、しばらくしかめっ面を継続。
やがて何かを決めたかのように立ち上がり、残りのシミットを咀嚼しているリタリンを見下ろして言った。

>「やっぱりお前は処刑する事にするか」

パンが喉に詰まって死ぬかと思った。


翌朝、街の中央広場には仮組みの処刑台が敷設されていた。
その上で磔刑に処されているのはもちろん捕縛された『堕廃の魔女』である。
苔色のローブに身を包み、力なく項垂れる魔女。杭を打ち付けられた掌の血も渇いている。
もはや生き延びることを諦めたのか、時折苦痛を訴えるように身動ぎしてうめき声を上げるばかりであった。

>「人間、降って湧いた得には疑って掛かる……が、降って湧いた損は疑わない。遮二無二、形振り構わず潰しにかかってくる」

「なんか……複雑な気持ちね。私もし降伏しなかったらああなってたの」

その様子を水晶越しに眺めながら、リタリンはおっかなびっくり呟いた。
ここは中央広場を一望できる民家の屋根の上。そばにはヴィクトルとラウテもいる。
ごろつき(禿)の死体をリタリンのものと偽って磔にし、釣餌としているわけだが、
あの無残な姿は、昨夜の自分が選択を間違ええいればかなり高確率でなり得た未来であることに今更ながら震えが来る。
死体は、ラウテの操る極小の使い魔によって最低限の動力を与えられ死に際の魔女を演じていた。

>「甲種冒険者……いないみたいだね、隠れてるのかな?」

「このまま全部終わるまで隠れてくれてればいいんだけどねぇ」

訝しげにつぶやくラウテに、魔女は冷や汗を流しながら答えた。状況はあまり良い方とは言えない。
オメルタの姿は見えども、その側で警護しているはずの甲種冒険者が見つからないのだ。
もちろん噂は噂に過ぎず、甲種なんてはなっから存在しないと高をくくってしまえるなら精神衛生上はよろしいだろう。
だがその楽観視が外れていた場合、この街の最強戦力から一方的に奇襲を食らうことにもなりかねず、そうなれば全滅は必至。
何より、あのオメルタがこんな街中まで出てきているのに最強の護衛を連れてこないわけがないというある種の信頼が、
見えざる甲種冒険者の存在に説得力を持たせている。

「この先何があっても、必ず誰かの眼はオメルタから離さないで」

索敵の魔法を使いたいところだったが、あいにくとリタリンは昨日の戦いで消耗しすぎた。
魔力を前借りするハーブの反動は、城塞化を解除したおかげで軽く収めることはできたが、
それでもあのクラスの魔法はもう使えないし、できる限り温存しておきたいところだ。
高位の実力者が本気で隠形した場合、通常の索敵魔法では見つからない可能性が高い。
今のリタリンにとって、そういう空振りが一番懐に響く痛手となった。

134 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/08(火) 04:54:46.45 0
と、広場の方で動きがあった。
観覧席の方から三人の男が処刑台へと歩いてきたのだ。
群衆は彼らの所属を知っているらしく、ざわつきながらも端に寄って道をつくった。

「その処刑、ちょっと待ってもらおう!」

三人の男のうち、先頭に立つ壮年の紳士がよく通る声で言った。

「私はオメルタ氏の代理人だ。魔女狩り担当者のこの場への出頭を望む」

代理人が掌を掲げて合図すると、後ろに控えていた二人が処刑台の壇上に上がった。
準備していた消防団の者達を、追い落とすようにして遠ざけていく。
二人の男は武装していた。オメルタの雇った冒険者だ。

「我々はこの街の自警権を市長より認可されている。これがその書状だ。
 貴殿らは誰の許可を得てこの魔女の処刑を執行する?すみやかに解散し、魔女の身柄を引き渡されたい!」

代理人は封蝋された羊皮紙巻を掲げて声を張り上げた。
拡声魔法でも使っているのだろう、盗聴魔法なしでもここまで声が届いてきた。
と、こっちは処刑台に仕掛けた盗聴魔法によるものだが、壇上で冒険者達が何事か喋っている。
髭面剣士風の男が腰に差した二振りのグラディウスを抜きながら言った。

「しちめんっどくせえなあ。代理人よぉ、ボスのお望みはこの苔女だけなんだろ。
 なら押し問答なんてしなくてもとっととこいつだけ連れて帰りゃあ良い。
 こんなへちょい櫓、俺とこいつなら10秒で更地にできるぜ」

眼鏡の魔導師風の男も手に持った長杖に氷結の魔素を纏わせながら頷く。

「本来なら夜半に強襲しても良いところをオメルタ氏の要請で朝まで待ったのです。
 これ以上この場に魔女を晒しておくのは得策とは思えませんが……?」

代理人は用心棒達の抗議に渋面しながらも、雇い主の意思を続行せんと魔女狩りを待ち続ける。
それでも、あと四半刻も魔女狩りが現れなければ堕廃の魔女を確保して引き上げるだろう。
待って、真っ向からの問答でも押し勝てる自信が彼らにはあり、それを裏付けるのが二人の用心棒だ。

リタリンは彼らを一年にわたる調査で知っている。
ついでに言えばオメルタはその武力を誇示すべく配下の戦力を喧伝してさえいる。
だから、ヴィクトルとラウテにもその詳細を教えるだろう。

髭面の方は、爆裂の魔法を封じた魔導兵装の使い手、"華翼"の二つ名を持つ双剣士。
眼鏡の方は、現象魔法を専門に修めた元従軍魔導師、"氷城"の異名を誇る魔法使い。

いずれも冒険者協会が正式に資格を与えた、乙種冒険者である。


【オメルタの代理人が用心棒二人を連れて魔女狩りに出頭命令】

135 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/10(木) 01:22:35.62 0
「……夜の間に奪いに来ると踏んでいたんだがな。
 なるほど、夜盗の真似事なんぞする必要はないって事か」

>「甲種冒険者……いないみたいだね、隠れてるのかな?」
>「このまま全部終わるまで隠れてくれてればいいんだけどねぇ」

「ふん、気に入らないぜ。狩人を気取りやがって……狩るのは、俺の役目だ」

>「この先何があっても、必ず誰かの眼はオメルタから離さないで」

「そう思うなら、お前が見ていろ。魔法ってのは受けるより躱した方が楽だからな。
 もしくは、射手を潰すか……だがその為には護衛対象への注意を薄める必要がある。
 お前が最適だ。なに、死出の旅路にはあの肉団子も連れさせてやるよ」

ヴィクトルは嘲笑混じりの語調でそう答え――しかし眼下の光景の変化に口を閉ざす。

>「その処刑、ちょっと待ってもらおう!」

声を張り上げたのは、身なりの整った壮年の紳士。
その後ろには双剣を携えた剣士と、服装から察するに魔術師であろう男。

ある程度熟練した戦闘者であれば、服装から相手が魔法使いかどうかを判断する事は可能だ。
理由は二つ――まず単純に彼らは軽い装備を好む。
そしてもう一つは、魔法の効力を万全の発揮するには服装にまで拘る必要があるからだ。
端的に例えるなら――礼拝の際に、ダブレットとブリーチーズを着用して臨む司祭はいない。

>「私はオメルタ氏の代理人だ。魔女狩り担当者のこの場への出頭を望む」
 「我々はこの街の自警権を市長より認可されている。これがその書状だ。
  貴殿らは誰の許可を得てこの魔女の処刑を執行する?すみやかに解散し、魔女の身柄を引き渡されたい!」

「……まぁ、悪くない流れだ。俺は行くぞ、好きに動け」

言いながら、ヴィクトルは水魔法により姿を隠す。
そして屋根伝いに少女と魔女から幾らかの距離を取り――広場へと跳躍。
その驚異的な瞬発力をもって仮組みの処刑台の上へと着地――そして姿を現した。

二人の乙種冒険者は怯まない。
地上げ屋の代理人だけが身と表情を硬直させ――しかしすぐに意気を取り戻す。
自分の無様が雇用主の名に泥を塗ると彼は知っていた。それに強気を保つ為の後ろ盾もある。

「貴殿が異端審問官か。呼びかけに応じてくれて何よりだ。早速、魔女の身柄を……」

「断る」

代理人の言葉が紡ぎ切られるのを待たずして、ヴィクトルは彼の提案を切り捨てた。
双剣士が静かに、だが素早く、腰の得物に手を添えた。

「おっと、早速その自警権とやらを行使するつもりか?」

機先を制するように、ヴィクトルが尋ねた。
彼ら冒険者は地上げ屋の代理人ではない。が、その意思の代行人だ。
例えば彼らが街の商店を一つ潰したとしたら、誰もがそれを地上げ屋の意思と疑わない。
彼らもそれを自覚している――故に僅かでも負い目の生じる「切り出し」は躊躇う。
ヴィクトルはそう予測し――実際そうなるように誘導した。

136 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/10(木) 01:31:48.28 0
「いいか、魔女の身柄は引き渡さない。今から予定通り、この場で処刑する。
 そう、コイツはもう死を待つだけの存在だ。
 で……この憐れむ価値もない大罪人を俺から引き離す事の、一体どこが自警なんだ?」

「……自警権は既存の行政のみではその機能を十全に保つ事が出来ないとされる状況下で、
 それを代行する為に与えられる権利だ。つまり処刑も。
 そもそもその者が死罪に相当するかを取り調べる事も、自警権の範疇だ」

代理人は即座に、力強い口調で反駁する。

「なら尚更問題はないな。俺は異端審問官だ。
 つまり異端審問所の許可を得て魔女の処刑を行う。お前の言う既存の行政って奴だ」

「言った筈だ。その既存の行政は、十全に機能を発揮出来ない、と。
 その魔女を殺して一体何になる?奴がばら撒いた問題が解決する訳ではない。
 部外者である貴殿はただ殺しが出来れば満足なのかもしれないが……」

「……つまり刑罰の内容が不服って訳か。……いいぜ、ならばコイツの処刑は取り止めだ」

代理人が、安堵の嘆息と共に口角を上げる。

「ありがたい。では早速……」

「一度、異端審問所へ連れ帰る事にしよう。
 そしてコイツの持つあらゆる技術を聞き出し、それを社会に還元する。
 勿論、その時はこの街に優先して技術提供するよう口添えしてやる。それで、構わないよな」

ヴィクトルが悪辣な笑みを浮かべた。

代理人は――言葉に詰まっている。
魔女狩りは彼の主張――行政の不全を受け入れてしまった。
受け入れた上で、改善案を提示した。
彼らの主張に相反しない――だが望みにはそぐわない改善案を。
論旨の袋小路へと誘い込まれたのだ。

ヴィクトルが、鼻を鳴らした。

「……不遜、だな。お前達がこの魔女を求める理由など、分かっているんだ」

先ほどから構えを解かない双剣士に加え、魔法使いも深く息を吸い込んだ。

「部外者の魔女狩りに先を越されたお前達の失態が、飼い主の顔に泥を塗ってしまうと恐れているんだろう?」

しかしヴィクトルはあえて「真実」とは異なる「思い込み」を述べた。

「だからせめて、少しでも面子を保てるよう、刑の執行くらいは自分達の手で執り行いたかった」

そうする事で、自分が地上げ屋との敵対を目論んでいる事を隠蔽する目論見だった。
同時に――これから始まる戦闘が、地上げ屋の意思によるものではないというお題目を与えたのだ。

「下らん茶番に付き合わせてくれた礼に、チャンスをやるよ。
 力を……お前達の存在が、決して飼い主の名誉を貶めるものではないと示すチャンスを」

そして――ヴィクトルは細剣を抜く。

「いや……もっと分かりやすく言ってやる」

その切っ先を、二人の冒険者に向ける。
両手の空いている魔法使いが、代理人の肩を掴み、自分達の後ろにまで下がらせた。

137 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/10(木) 01:32:29.05 0
「お前達は魔女狩りを、俺を舐めた――処刑の対象だ」

瞬間、双剣士が剣を抜いた。
そして大きく振り被り――刀身が爆裂。
橙色の爆炎が翼の如く広がり、双剣士の体が砲弾と化す――故に『華翼』。
しかしそこから放たれる斬撃は雷光のように鋭く――ヴィクトルの立つ処刑台が爆轟と共に粉砕される。

ヴィクトルはその脚力をもって後方へ跳躍――爆砕を回避。

「お、おい!そんな事をしたら……」

魔女への心配を口にしたのは代理人のみ――魔法使いも既に初手を打っていた。
宙空に、地面に、雪のように白い氷結の魔素が散布されていた。
感じるのは強い魔力――触れれば強烈な氷結の現象に見舞われる。

「解散しなさい!民衆よ!これよりこの場は……私の『城塞』となります」

だがまだ本領発揮には程遠いらしい――更なる魔素の構築に入っている。

「上手く躱したじゃねえか。だが……次もそう上手く避けられるか?」

氷結の魔素は華翼に対しては効果がないようだった。
何らかの対抗策を既に付与されているのだ。

対してヴィクトルは――明らかに動きあぐねていた。
剣身に魔法の炎を灯し、必要最低限の魔素だけを切り払ってはいる。
だがその状況で凌ぎ切れるほど、華翼の斬撃は鈍くはない。

138 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/10(木) 22:31:31.14 0
>「その処刑、ちょっと待ってもらおう!」

屋根の上で待ち疲れ始めた頃、ようやく眼下で動きがあった。
三人の男の姿、うち二人は武装が見られる。おそらく冒険者だろう。
"華翼"と"氷城"、立ち振る舞いから察するに、かなり出来る相手だ。

>「……まぁ、悪くない流れだ。俺は行くぞ、好きに動け」

「…援護はするよ、好きに暴れてきてね」

ラウテは魔笛とリュートをいつでも持ち替えられるように構えた。
援護時の基本姿勢……彼女ならではの戦闘スタイルだ。
眼下ではさっそくヴィクトルと代理人たちの言い争いが見られる。
その不穏な動きに、群集もざわめき始めた。
せっかくの処刑を邪魔された事に対し、義憤を感じる観客が多い様子だ。
まぁ、せっかくのショーを邪魔されては不満も募るだろう。
人は自分より不幸な人間を見ることを好む。処刑はその最たる例だろう。
ラウテは人間のそういう部分が好きだ。いい加減で自分勝手で、愛するに相応しい。

>「お前達は魔女狩りを、俺を舐めた――処刑の対象だ」

先に抜いたのはヴィクトル、だが攻撃は双剣の男のほうが早かった。
爆炎と共に突進し、処刑台が派手に粉砕され煙が上がる。
同時にもう一人の冒険者……魔法使いも動いていた。
雪のように見える実体魔力は、おそらく氷結の魔法の具現化だろう。

>「解散しなさい!民衆よ!これよりこの場は……私の『城塞』となります」

だが未だ群衆は状況を察していない。
むしろ戦闘が始まったのを見て、喜んですらいる様子だった。
人は群れになると頭が悪くなる。ラウテはそう考えていた。
群衆の一員である事に安心し、恐怖などの感情が麻痺してしまう。
だから彼らは逃げようともしない。巻き込まれるという想像力が働かないのだ。

「…馬鹿な人たち、死んだら使い魔の餌にしようかしら」

それだけ呟いて、ラウテは使い魔を呼び出すべく魔笛を吹き鳴らした。

139 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/10(木) 22:32:34.59 0
他に例えようもない不思議な音色が辺りに響き、処刑台の上空に影が生じた。
それは重鈍な質量を持って落下し、氷城の魔法使いに降り注ぐ。
突如として訪れたそれに、魔法使いは反応出来なかった。
一瞬にしてそれに飲み込まれ、溺れたかのようにもがき始める。

ラウテが召還したのは、一体のスライムだった。
その中でも彼女が選択したのは、マジックイータースライムと呼ばれるものだ。
マジックイータースライムは、その名の通り接触した者の魔力を喰らう。
決して致死性のものではない上、始末も簡単なため弱い魔物として見られがちだ。
スライムはその全種族において、単純な物理攻撃を無効化する。
その分魔法に弱い種族であるが、マジックイータースライムのみは魔法が効かない。
だが攻略は簡単だ。魔力を用いない単純な火による攻撃で、簡単に倒す事が出来る。
だが、火を起こす間もなく攻撃された場合はどうだろう……この状況のように。

魔法使いは、突如現れたスライムによって溺れていた。
本来動きの遅いスライムが、先手を取って襲うことはまずありえない。
だが召還された場合は別だ。今回のように上空から落とす事も簡単である。
飲み込まれた魔法使いは魔力を吸われ始める。風呂桶程の質量のスライムから逃げ出すのは困難だ。
得意な氷結魔法も、飲み込まれた状態では使うことは出来ない。

人間は極度の魔力不足に陥ると、非常に疲れた状態になり眩暈や失神などを引き起こす。
例外的に魔力を一切持たない人間も少数ながらいるが、大抵の人間は魔力不足によりそうなるのだ。
だが症状は一時的なもので、時間が経てば魔力も少しは回復し意識を取り戻す。
しかしその一時的な症状は、戦闘時においては致命的だ。氷城の魔法使いにとっても。
魔力を吸い尽くされた魔法使いは、やがて動く事が出来なくなり意識を失った。
本来その状態に陥った時点でスライムは対象を吐き出すのだが、ラウテの命令によってそれは行われない。
そのまま助け出されなければ、やがて魔法使いは溺れ死亡するだろう。

「ひとり倒せたよ。…援護、まだ必要?」

魔法によって声を飛ばし、ヴィクトルにそう尋ねるラウテ。
直接戦闘はあまり得意でないが、こういった支援系の魔法に特化しているのだ。
屋根の上に隠れていることすら気付かれなければ、彼女の独壇場だろう。

140 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/12(土) 08:12:41.42 0
処刑台での戦闘は激化の一途を辿っていた。
乙種冒険者、双剣士"華翼"の剣閃は苛烈にして疾速。
爆裂による推進力は間合いを彼の思うがままにコントロールし、加速された斬撃は鋼を紙のように断つ。
速度と精度を併せ持つヴィクトルをして守勢に回らざるをえない、正しくそれは一流の剣術だ。
そして、間断なく攻撃を加えながら華翼もまた、対峙する魔女狩りの業前に舌を巻いていた。

「かぁー……スイスイと水みてえに避けやがる。だがエルフの剣術じゃあねえな。
 人間に鍛えられたクチだろお前さん。太刀筋で読み読みだぜ」

華翼はキャリア十年の熟練した剣士。様々な戦場を渡り歩き、たくさんの剣術をその眼で見てきた。
だからわかる。魔女狩りの体捌きや握りからは、これまで華翼が見たどのエルフの術法とも異なるものがある。
そして不自然、不合理でさえある。エルフと人間は姿が似通っていても体格や筋肉のつき方が違う。
人間の剣術はヒトの体つきに最適化された術理であるが為に、エルフの身体で振るえばどこかで歪みが生まれる。
華翼にはそれを見抜く戦術眼があり、見逃さないだけの確かな地力があった。

「だけどもっと調子を上げられるだろ?全力出してるって風でもないもんな。
 乙種相手に余裕じゃねえか。それとも――なんか別のことでも考えてんのかぁ?」

文民である代理人とは違い、華翼には蓄積された経験と磨きぬかれた感性がある。
彼は魔女狩りの言葉の裏にある意思をおぼろげに嗅ぎとめていた。

「ま、ま、俺にゃ関係のない話だ。所詮は雇われ、敵を殺すのが仕事だからな。
 給料分だけ働いて――てめえを殺すぜ、短足野郎(ハーフリング)」

如何に魔女狩りが凄腕であっても、こちらは二人。依然として優位は変わらない。
相棒の"氷城"は魔法使いでありながら前線での支援も可能な現象系の魔導師だ。
彼らは言葉や遠話を用いずとも、経験によってアイコンタクトのみの連携を可能としている。
華翼は器用にも魔女狩りから視線を切らずに、援護の要請をするため氷城へ眼を向けた。
氷城は溺れていた。

相棒の身体を頭まで液状半透明のなにかが包んでいる。
魔物。スライムだ。色と形質からマジックイータースライムであることもすぐにわかった。
様々な場所で見ることのできるスライムだが、この種類は都市部で見かけることはほとんどない。
人間は対処を知っている為すぐに駆逐され、湿地や森の中で他の魔物に寄生している者が大多数だ。
つまり、こんなところに出現したこいつは間違いなく人為的に持ち込まれたというわけだ。

「召喚魔法か――!?」

テイムした使い魔を喚び出すタイプの召喚魔法ならマジックイータースライムを出現させることも可能。
しかし、見回せどもそれを果たしたと思しき術師の姿が確認できない。
魔女狩りが狙っていたのはこれか――

言葉とは裏腹に動揺なく、華翼は右に握った剣の切っ先を魔女狩りへと向ける。
爆裂による加速剣は間違いなく彼の主たる武器であるが、この剣にはもう一つ使いみちがある。
華翼の鍛え込まれた肉体を飛翔させる推進力は、敵へ向ければそのまま相手を焼き飛ばす炎の波濤となるのである。
間合いを自在に飛び回り、近・中両方の距離に対応可能なクロスレンジアタッカー。それが乙種冒険者"華翼"の本質だ。
そして敵へ爆裂を放つなら、今度は自分が吹き飛ばされないよう後方へも爆裂を放ち相殺する必要がある。
華翼の背後には、未だ陸に溺れる氷城。
双剣から放たれた爆圧が、魔女狩りと共に氷城を――その身に纏わりつくスライムを焼き飛ばした。
魔法の効かないマジックイーターだが、その原理は魔法の源となる魔素を消化吸収してしまうからだ。
すなわち『魔法』を無効化する能力……魔法により生じた『爆風という物理攻撃』は無効化できない。

「危ないところでした。やはり仲間がいましたか」

四散し焼け焦げたスライムの雨が降る中、氷城が呼吸を取り戻して立ち上がる。
べっとりと体組織の付着した眼鏡を拭い、着け直した時には頭上を覆う氷の傘が生成されていた。
ついでのように振るった腕先から冷気が迸り、処刑台の上が鏡面のように凍りつく。
たとえ先ほどの中距離爆裂を魔女狩りが防いでいたとしても、足元が氷付き身動きがとれなくなる。
よしんばそれさえ回避したところで、磨き上げられた足場は摩擦を失いろくに歩くこともできないだろう。
空中機動可能な華翼を除いては。

141 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/12(土) 08:13:40.99 0
――――――

>「ひとり倒せたよ。…援護、まだ必要?」

こともなげに言ってのけるラウテにリタリンは内心舌を巻くどころの話ではなかった。
ただでさえ魔力を消費する召喚魔法を、ここから遠く離れた処刑台の上で展開したのだ。
音の届く範囲を射程とできる音楽魔法とは言え、遠く魔力を飛ばすにはそれだけ注ぎ込む必要がある。
そして魔力量もさることながら、この距離から正確に相手の頭上に魔法を発動できる精密性も恐るべき。
前代未聞の『召喚狙撃』。文句なしの天才だ。この齢で乙種認定を受けるだけのことがある。

「いや……まだみたいよ」

だが敵もまた乙種、一筋縄で攻略できる相手ではない。
魔導師殺しにも思われたスライムの奇襲、しかし仲間の剣士の放った爆裂により窮地は脱された。
立ち上がり、氷結魔法での支援を行う氷城。
まるでなんの気なしに眼を遣ったかのように、眼鏡の向こうの双眸がこちらを見た。
目が合った。

「うっそ――」

リタリンのドルイドとしての感性が、空間に凝結していく魔素の動きを知覚した。
咄嗟に隣にいるラウテの胴を抱えて後ろ向きに跳躍する。
同時に杖を掲げ、魔法を発動。

「形容する――"断崖"と!」

瞬間、リタリンたちのいる屋根の上に巨大な氷山が『生えた』。
板葺きの屋根を突き破って、分厚くしかし透き通った氷が剣山のように形成される。
ぶつけるように唱えた形容魔法――"断崖"の持つ『空間の途絶』という性質により氷を逃れたリタリンとラウテ。
堕廃の魔女は肩で息をしながら、その息が吐く側から凍りついて真っ白になるのを同じくらい白い顔で見た。
魔法による狙撃は魔笛だけの専売特許ではない。
元従軍魔導師という経歴を持つ氷城は、支援よりもむしろ遠距離から圧倒的な魔法攻撃で殲滅する術こそが専門だ。

「なんでこっちの居所がバレてるの……!」

初撃を躱して安心している暇はない。リタリンはラウテを抱えたまま屋根の上を転げまわる。
そのあとを追うようにして小規模な氷山が次々と形成されていく。
敵の索敵範囲外から攻撃を仕掛けたはずだ。ヴィクトルもこことは別の場所から姿を表している。
考えて、思い至った。音楽魔法という体系の特質についてだ。
奏でた音を媒体に魔法を発動する特性上、音の届く範囲ならどこでも射程にできるのがその強みだ。
ではその弱みは?――『音』という媒体の性質として、空気中を伝わる動きが直線であることだ。
障害物などによって反射はするが、曲がるわけではない。経路をたどればかならず音源にたどり着く。
氷城ほどの優れた魔法使いであれば、魔法を逆探知して術者の居場所を特定するなど造作もないというわけだ。

142 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/12(土) 08:14:30.56 0
「ええい!」

思い切ってリタリンはラウテを抱えたまま屋根の上から飛び降りた。
飛び出しざまに杖先を振るい、鎖の尾を引いて水晶球が飛ぶ。
それはすぐそばの街路樹の枝に絡みつく。鎖の引き出し速度を調節しながらリタリンは地上へと降り立った。
ここからだと家が邪魔になって処刑台が見えない。相手の視線を切ることに成功した。

「仲間と二人でいる以上、初見殺しで倒しきるのは難しいわ。
 下手に攻撃すればもっと手痛い反撃が飛んでくるし……流石乙種、厄介ね」

ぼやきながらリタリンは懐から革袋を取り出した。
少量の火薬と針が入っており、衝撃によって爆発し針を撒き散らす爆弾だ。
そしてその鉄片は、リタリンの持ち歩いている吹き矢の矢であり、当然調合されたハーブ毒が塗ってある。
魔力を使わずとも攻撃できるようリタリンが日頃から準備しているアイテムだった。
その革袋を3つほど、手のひらの上で魔法をかける。

「形容する――"鷹狩"と」

3つの革袋が羽虫のような羽撃きの音をたてる。革の切れ端を羽代わりにして浮かび上がった。
まるで飼いならされた猛禽のようにリタリンの腕の上に一度整列すると、彼女の合図で空へと舞い上がる。

「行け!」

鷹狩の鷹となった爆弾達は羽音を立てながら屋根を超えて飛んで行く。
顔を出せば狙撃されるのは必定の為、リタリンは水晶球を覗き込んだ。
千里眼の魔法越しに見る処刑台は、既にそれまでの様相を完全に失っていた。
櫓は分厚い氷の壁に閉ざされ、地上に対しては無数の鋭利な氷柱が槍衾のように向いている。
3つの鷹爆弾は一度処刑場の上空まで飛ぶと、氷の上の敵魔導師めがけて急降下。
しかし処刑台は対空防御も完璧だった。一瞬で伸びた氷柱の槍が3つともを正確に居抜き、早贄のように縫い付けた。

まるでリタリンの使った城塞化だ。
しかし既存の構造物に縛られる城塞化に対し、氷の城塞にはその制限がない。
難攻不落の氷の城を、環境にとらわれず自在にかつ瞬間的に創造する、故に『氷城』。

そしてリタリンのものとは決定的にことなる点が氷の城塞にはある。
氷城のそれが持つ戦術上の目的は、『迎撃』ではなく『攻撃』だ。
魔導師が杖を振るうと、氷の城の上部を形成する氷柱の群れがまるでカタパルトのように発射された。
放物線を描いて撃ち放たれた無数の氷柱の向かう先は、民家の裏側、リタリンとラウテの居場所である。

「まっず、」

たったいま魔法を使ったばかりのリタリンには、それを塞ぐだけの魔力を練る余裕がない。
間髪入れずに、氷の群れは豪雨の如く降り注いだ。

143 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/12(土) 22:01:41.96 0
首筋目掛け迫る切っ先――上体を大きく後方へ逸らして躱す。
がら空きになった胴体へ間断ない二の太刀が襲い掛かる。
膝の力を抜き、殆ど後方へ倒れ込むかのように回避――今度こそ隙だらけ。

華翼が深く踏み込み、右の剣を振り被る――そこで僅かに、目を見張った。
ヴィクトルはコートに潜ませた余剰の瑞鉄で二振り目の細剣を作り出していた。
それを左手に逆手に持ち、杖のようにして体を支えていた。
両足と細剣、三点による支え――つまり斬撃を放つ為の体勢は十分。
疾風の如き斬撃は――しかし直前でそれを察知した華翼を捉えられなかった。

>「かぁー……スイスイと水みてえに避けやがる。だがエルフの剣術じゃあねえな。
  人間に鍛えられたクチだろお前さん。太刀筋で読み読みだぜ」

ヴィクトルが双眸を剣呑に研ぎ澄ます。
華翼の指摘は正鵠を射ていた。

エルフは本来長身で、手足の長い種族。
彼らの剣術はその長い手足と瞬発力をもって、正面から敵を切り伏せる。
その種族の気高さを映したかのような正剣だ。

それは、ヴィクトルには決して会得し得ない剣だった。
幼少期の栄養失調による彼のエルフらしからぬ矮躯は、力強い斬撃に適さない。

だが筋肉の機能という観点において、瞬発力と持久力は両立しない。
エルフの俊敏性に長けた筋肉は、小細工を弄し続け、敵を攪乱し、殺める事にも適さない。

不意を突き、極力剣戟を交えず敵を殺める。
どれほど流麗であっても、所詮は暗殺者の所業も同然。
そのような妖剣しか、ヴィクトルには残されていなかった。

>「だけどもっと調子を上げられるだろ?全力出してるって風でもないもんな。
  乙種相手に余裕じゃねえか。それとも――なんか別のことでも考えてんのかぁ?」

「あぁ、どの負かし方が一番お前にとって屈辱的か考えてるのさ」

>「ま、ま、俺にゃ関係のない話だ。所詮は雇われ、敵を殺すのが仕事だからな。
  給料分だけ働いて――てめえを殺すぜ、短足野郎(ハーフリング)」

「少なくとも、拷問の仕方は決まった。お前を爪先から順に輪切りにしてやる。
 安心しろよ。前にやった時は、臍の高さまでは殺さずに出来た。今度はもっと上手く――」

その言葉を、ヴィクトルが最後まで紡ぎ終える事無かった。
何故か――彼の目の前で、『氷城』が頭上から降ってきたスライムに飲み込まれたのだ。
それが魔笛の少女の援護である事はすぐに分かった。

>「ひとり倒せたよ。…援護、まだ必要?」

「あぁ、恐らくな」

高速の剣捌きをもって前方の氷結魔素を切り払いつつ、ヴィクトルは答えた。
そして切り開いた進路へ、渾身の力で飛び込もうとして――踏み留まる。
華翼の双剣、その内一振りの切っ先が己を捉えていた。
意図はすぐに読めた――それが正解である事を示すように、爆炎が花開く。

だが今更、跳躍寸前の姿勢は変えられない。
ヴィクトルは床を蹴った。ただし前方ではなく側方へ。
床を転げ回るように低く――爆炎が彼のすぐ頭上を舐め、月光を束ねたかのような金髪を焦がす。

144 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/12(土) 22:03:08.25 0
ヴィクトルは動きを止めない。
氷城も既に自由を取り戻している。
魔力の枯渇も――彼の足元には魔法薬の空き瓶が転がっている。
リタリンのハーブほど強力な代物ではないが、その分副作用も穏やかで――その有用性から相当高価なものだ。

自分へと振り翳される杖を目視し、ヴィクトルは四つん這いの姿勢から強く床を蹴った。
狙いは櫓の下――氷という戦場を大きく変化させる魔法を前に、櫓の上は狭すぎる。
だが氷城もまた、その事を理解している。

櫓の周囲を取り囲むように、氷の壁が形成され始める。
丁度、外へと逃げようとするヴィクトルを飲み込むように。

咄嗟に彼は瑞鉄の細剣を変形――戦鎚を形成。
重心の変化を用いて体を回転させ――氷壁を強打。
打ち砕けはしない――だが跳躍の勢いを殺すには十分な反作用が得られた。
そのまま氷壁を蹴り、再び櫓の上へ。

「はっ、むざむざ帰ってきちまったなぁ、おい」

そう言った華翼の表情は、笑っていない。
彼もまた、ヴィクトルが油断ならない相手だと理解している。

華翼が爆炎によって飛翔――背後の氷壁に剣を突き刺し、高度を維持。
そして相棒が攻撃を仕掛けるのを待つ。

「『白き眠り、凍れる帝国、黒塗りの月。如何なる栄華もいずれ避けられぬ氷の棺。
  未だ鮮やかなる過ぎ去りし日よ、我はその蓋を開かんとする者。
  映せ氷よ、過去の栄光――射手座の英雄【魔弾の射手】』」

氷城が唱える詠唱は、ただの現象魔法ではない。
氷という属性が持つ『終焉』や『保存』という性質を用い、
「過去という現象」を「氷という現象」で再現する――『想起』と呼ばれる高等技術だった。

無論、再現の精度には更にそこから個人の技量が問われてくる。
想起魔法を極めた者ともなれば、神話の時代の戦いすら再現可能だと言われている。
氷城は、流石にその域にまでは達していないようだ。

氷の彫像の姿を得た過去の英雄が想起される。
獲物は弓――かつては戦場を覆い尽くすほどの矢を一息で射放つと謳われた女弓手。
無数の氷矢を射掛けられれば、ヴィクトルの逃げ道は真上だけだ。
だがそこには――華翼が待ち構えている。
そうでなくとも、凍った足元で正確に真上に飛べなければ足を滑らせるだけだ。
そうなれば華翼が手を出すまでもなく詰みである。

想起魔法が発動すれば――そうなる筈だった。
それを阻んだのは、堕廃の魔女の援護爆撃だった。
接近する爆薬袋が対空砲火によって撃墜され――氷城は魔女と少女が逃れた方向へと視線を遣る。
そして氷柱による迫撃砲を叩き込む。

どの道、ヴィクトルは素早い動きを封じられている。
先に厄介な協力者を潰そうと判断したのだろう。
少女の不意打ちを一度食らってしまっている事が、彼にその判断をさせた。

(上出来だぜ、堕廃の)

そして、

「――『黄昏の中に在りし凍える不幸よ、形となりて願う』」

今度はヴィクトルが詠唱を始める番だった。

145 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/12(土) 22:03:23.64 0
「『汝の力、要塞を持って愚かなるものに罰を与えよ。我は願う。汝の力による制裁を』」

「なっ……!」

華翼も氷城も、動揺を隠せなかった。
エルフは魔法の才に長けた種族だ。
彼らは人間よりも遥かに上手く魔法を使う。
例えば城塞の魔法、あれは堕廃の魔女が用いたものなら八節の呪文を唱えて行使する。
だが一般的なエルフならば半分の四節で同等以上の効果を発現出来るだろう。
エルフの中でも才能ある者なら、一、二節で魔法を発動可能だ。

「ちぃ!」

華翼は氷城の再詠唱を待たずして壁を蹴った。
そして爆炎の翼を広げ、ヴィクトルへと斬りかかる――

「『城塞と化せ、我が封土』……なんてな」

――瞬間、閃光が爆ぜた。
何の事はない、暗所活動用の照明魔法を、最大出力で放っただけだ。
だがその効果は絶大だった。
瑞鉄の盾を用いて反射させ指向性を持たせた閃光は、華翼の視界を完全に塗り潰した。

だが――彼も凄腕の冒険者だ。
自身の失策を理解した瞬間、爆翼ですぐさま上方へと離脱を図った。
閃光による視界の喪失は、数秒で治る。最低限の急所を刃で防御しながら、華翼は待つ。

「畜生、ブラフかよ……だが魔法もろくに使えねえのか」

ヴィクトルは人間社会で育った、ハーフエルフだ。
森で暮らすエルフのように、幼い頃から魔法を生活の一部のように用いる環境で育っていない。
彼にも魔法の素養は人間以上にあったが、それは芽吹かぬまま彼は大人になってしまった。
今更劇的な魔法的成長は望めない。
彼は狩猟用、自活用の魔法しか使う事は出来ない。戦闘に用いる魔法も、それらの応用だ。
たった一つだけ、例外は存在するが。

「いよいよ、顔が整ってなけりゃエルフかどうか分かんねえなぁ、おい……」

ともあれ視界を取り戻した華翼は、安堵の溜息に皮肉を混ぜて眼下を見下ろす。
赤い色が見えた。血の色だ。自分の双剣で敵を斬り付けた感覚はない。

つまり――

「氷城!!」

華翼は意図せずして叫んでいた。
氷城は自分が築いた城壁に背を預け、座り込んでいた。
出血は――脚からだ。大腿を、動脈を切り裂かれている。

146 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/12(土) 22:05:09.57 0
ヴィクトルもまた、壁際にいた。氷城とは真逆の位置に。
彼の狙いは最初から氷城だったのだ。
華翼の視界を奪った瞬間、ヴィクトルは細剣を足元に突き刺し、支えとする。
その状態から前方へ倒れ――氷城目掛け滑り込んだのだ。
そしてすれ違いざまに斬撃――いち早く身を躱され腹部は捉え損ねたが、それでも動脈を切り裂いた。

動脈への深い刃傷は、基本的に致命傷となり得る。
出血を放置すれば五分足らずで死に至る上、勢いが激しい為止血も困難だ。

「……問題ない。止血は、出来てる」

だが氷城は氷結の使い手――傷口を凍らせ、強引に止血を成立させていた。

「……かなりいい狙いだったが、惜しかったな。これで、いよいよ詰みと言う訳だ」

「……そう思うなら、さっさとかかって来いよ。臆病者は嫌いだぜ」

ヴィクトルは挑発的な眼光で、細剣に付着した血液を指で拭き取り、舐めた。
お前は餌だ、と言わんばかりに。
自分が追い詰められているとは、意地でも認めるつもりはなかった。
追い詰められている自分――そんなものは奴隷時代の自分だけで十分だった。

147 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/14(月) 00:14:56.77 0
氷城に対して仕掛けたスライムの攻撃は、華翼による爆風で完全に無効化されてしまった。
しかしそれは読みの範疇である。必要なのは、氷城から魔力を奪う事だったのだから。
だが……スライムから救われた氷城は、こともなげにこちらに対して魔法を放ってきた。

「どうしてっ…!?」

リタリンに抱えられて氷の魔術をかわしながら、ラウテはそう歯噛みする。
あのスライムにあれだけの時間曝露すれば、並大抵の人間なら魔力を喪失するはず。
その答えはすぐに理解出来た。彼は薬品の力を借りて、魔力を一時的にブーストしたのだ。
ならば接近戦に持ち込むか……否、接近戦に強い華翼が居る以上それは愚策だ。
何とかして彼らの連携を絶つ必要があるだろう。そのためには、用意した仕掛けを使うしかない。

ラウテは地上に降りてすぐ、リタリンと別行動をとることにした。
二人一緒に居ては狙い撃ちされるからだ。路地裏に駆け、姿をくらます。
複雑に入り組んだ路地からの遠隔攻撃ならば、音も反響し先程のように反撃される恐れも少ない。
体力もなく防御も薄いラウテにとって、攻撃を直接されることは命取りになる。
基本姿勢は、とにかく相手に見つからないように行動する事、であるのだ。

ラウテは路地裏から、手にした魔笛を吹き鳴らす。曲目は彼女が「森の調べ」と呼ぶものだ。
音の届く範囲内のすべての植物を支配する曲であるが、ここは森ではない。
だが、曲に呼応して少しばかりの地鳴りが響き、森は出現した。
氷で覆われた処刑台が割れ、地面から木々が生えてゆく。
ラウテは処刑台を作り上げる時点で、その周囲に木々の種を撒いていたのだ。
種は大地の養分と周囲の魔力を吸い上げ、みるみる育った。
ラウテに支配された木々は彼女にとって耳目であり、手足でもある。
木には目はないが、魔笛の魔術により遠隔から擬似的にものが見えるようになる仕掛けだ。
弱いスライムではなく大地に根差した木々を取り除くことは、そうそう出来まい。
木々はその枝葉を勢いよく伸ばすと、敵に対し襲い掛かった。

どこからか響く笛の音、そして襲い掛かる木々。これらに対処するのは難しい。
木々は痛みを感じない。例え枝葉を凍らせ燃やされようと、その動きは止まらないのだ。
そのまま何も出来なければ、木々に自由を奪われ絞め殺されることだろう。
動物のように蠢く木々は、そのごつごつした根で大地まで支配する。
上からの枝葉に地上からの根、氷の城砦すら突き破り生えるそれは、まさに悪魔の所業だった。

物陰から演奏を続けているラウテだったが、しかし彼女も限界近くなっていた。
森を生成するだけの魔力量は莫大だ。おそらくこれ以上の生育は無理、枝や根を操るのが精一杯だろう。
魔力が尽きれば、あとは接近戦に持ち込むしかない。それはリスクを伴う行為だ。
彼女の剣技では、おそらくヴィクトルや華翼には遠く及ぶまい。
剣を以って戦うのではなく、あくまで魔法戦において有利にことを運ぶために剣を振るう。それがラウテのスタイルだ。
故に魔力が尽きてしまえば、万策尽きたも同じことなのだ。
だが、自在に動く木の魔法はそう簡単には破れまい。
また遮蔽物として活用すれば、ヴィクトルもまた戦いやすくなる事が見込めていた。

148 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/15(火) 14:42:37.58 0
上空から降り注ぐ氷柱の群れ。その無数の切っ先はすべてが鋭くリタリンを捉えている。
練り上げた魔力はもう品切れだ。防壁となる魔法は使えない。
足掻くようにバックステップで逃れようとするが、氷柱はそれに追従するように軌道を変えた。
当然といえば当然、遮蔽物の向こうへ曲射するならば何らかの誘導魔法は付与されていることだろう。
痛みと、そして訪れる死の予感にリタリンは瞑目する――

氷柱が着弾した。
破砕の音を以って凍てつく投槍が貫いたのは、しかし魔女の血肉ではなかった。
リタリンの手前、先ほどまで彼女がいた石畳に花弁八枚からなる氷柱の華が咲いていた。

「あれ」

誘導魔法が効いていれば、この氷柱は狙い過たずリタリンを穿っていたはずである。
しかし直前でそれが切れたのか、氷柱は一瞬前の標的の位置へと誤爆したのだ。
術者に何かがあった。それを確かめるべくリタリンは物陰へと隠れ、水晶に千里眼を投影した。
冷気の霧が漂う処刑台の上、切り結ぶ華翼とヴィクトルから少し離れた位置に氷城はいた。
脚を負傷し、樹のツタのようなもので拘束されている。

(この笛の音は……ラウテね)

おそらく誘導魔法を切ってあのツタからの防御に魔力を回しているのだろう。
氷城は確かに強力な魔法使いだが、単身でやれることには限界がある。
飽和攻撃に徹すれば、必ずどこかでほころびが出る。数の利がリタリンを救ったのだ。
現在氷城の意識はリタリンから外れている。こちらから仕掛けないかぎり追撃する余裕はないはずだ。
ここからは、魔女の戦い方で行く。

「『解錠(ロード)』」

ローブから引っ張りだした魔導書が、起動呪文により魔力光を帯びて宙に浮かぶ。
魔導書は様々な魔法を呪文という形で記録し実行する為の媒体だ。
これがなくとも魔法は使えるし、戦場でページを手繰る暇などないので現場肌の魔法使いは持たない者も多いが、
魔導書を使うことで己の専門としない魔法でも多種にわたって正確かつ効率よく実行できる為、
未熟な魔導師や一人で旅をする魔法使いにはほぼ必須のアイテムである。
白紙のページを地面に突き立つ氷柱へ向けて、リタリンは詠唱を始めた。

『千、百万、億千万の賽を振りし先の者よ。光、水、風、大地のすべてを識る者よ。
 汝が慧智を以ってその刃の輝きを示せ。汝が邪智を以って向かう者の名を示せ。
 ――既知と化せ、我が脅威!』

対象の魔法を走査し、詠唱された呪文を導き出す解析の魔法だ。
氷城ほどの熟達した魔導師であれば主力の魔法は当然詠唱破棄だろうが、元となった呪文は必ずある。
もともとは魔法研究に使われるもので戦闘に耐えうる解析速度は望めないが、攻撃の途切れた今がチャンスだ。
白紙の魔導書に自動で墨が入り、魔法言語で呪文が記述されていく。リタリンは素早くそれに眼を走らせる。

(現象系の第五階梯魔法……これなら!)

割り出した呪文を組み換え、欠落やノイズを補完し、新たな呪文へと書き換えていく。
氷城がリタリンを狙撃するために使った魔法が、『真逆の効果』となるような呪文へと。
魔力の通った氷柱の群れが、再びひとりでに浮き上がり、石畳を飛び出した。
天へ投げた礫が手元へ落ちるように、逆回しの放物線を描いて氷城のもとへと帰っていく。
この場合の"真逆"とはすなわち、民家越しに氷柱を放り飛ばした動きの逆転だ。

「自分の魔法、しっかり味わいなさいな」

魔女とは、魔法の知識を悪用し犯罪行為に使う者達の総称である。
本来人々の生活や発展を豊かにする為の魔法、その在り方を捻じ曲げてしまうのが魔女の魔法だ。
――魔法の違法改造。
深い造詣と高度な知識に基づくその技術は、戦いに用いれば相手の魔法をそのまま撃ち返すことが可能。
しかも魔力は書き換えに使う最低限で、あとは対象の魔力を再利用して発動させられる燃費の良さ。
懐具合にも優しいリタリンの切り札である。

149 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/15(火) 14:43:20.16 0
――――

「ほら、どうした手品はしまいか?
 もっと気合入れて逃げねえとただでさえ小せえタッパが半分になっちまうぞ!」

逃げる魔女狩り、追う華翼。
機動力において勝る華翼が魔女狩りを捉えかねているのは、この処刑台の狭さによるものであろう。
本来の氷城と華翼の連携とは、氷城のつくる銀盤の上に捉えた敵を華翼が上から仕留めるスタイルだ。
氷のフィールドに捉えさえすれば、相手は踏ん張りが効かずにろくに動くこともできないまま双剣の餌食となる。
場を形成するのに時間がかかる為確実に捉えられるわけではないが、逆に言えば一度捉えてしまえば必勝が確約される。
しかし今回の敵たる魔女狩りは、器用にもレイピアをストック代わりにして氷の上を滑走していた。
そうなると処刑台の狭さが仇をなす。壁を使えばブレーキも軌道の変更も思いのままだからだ。
篩の中に投じられた小石の如く、華翼にも劣らぬ速度で魔女狩りは飛び回っていた。

結果、不覚にも接近を許し、氷城が負傷した。
止血できたとは言え腿の傷は深く、強引な氷結による応急処置は体力を奪っていくばかり。
華翼もそれがわかっているから、早期に決着をつけるべく挑発を繰り返していた。
氷城は戒めのように傷口の激痛に耐えながら、戦況を洞察していた。

(先程のように時間を稼がれて支援魔法を食らうのも厄介だ。潰せるとことから早めに潰しておきましょうか)

屋根の上から召喚術で狙撃してきた敵の仲間は、氷結魔法で追い落としておいた。
民家の影に隠れられたが、氷の城塞に搭載された氷柱砲は魔力追尾型の誘導弾だ。
敵の攻撃があの空爆のような小規模なものであれば、十分競り勝つ力量差がある。
油断なく、氷上は氷柱砲を発動した。放物線を描いて致死の氷槍が宅地の裏へ雪崩れ込んでいく――

「むっぐ!?」

刹那、突如として足元から出現した森が、氷を割って氷城へと殺到した。
魔力を帯びた幹や枝は通常よりもずっと高速に、かつ強靭に伸びて氷城を縛り上げる。
彼は驚愕を得る暇もなく四肢を樹によって拘束されてしまった。

「おい氷城!」

「問題ない!」

不意を突かれて拘束されながらも、氷城は致命的な敗北を回避していた。
自身に纏わりつく樹の群れに氷結の魔素を流し、それが持つ終焉の性質で強制的に『枯れさせた』のだ。
無論、魔法によって生育された樹木はその程度で枯死するようなことはない。
だが、一流の魔法使いによる魔力は樹木のみずみずしい生命力と拮抗し、故に枯れはしないが成長も止まった。
あとは局所的に魔力を多く流して枯死させて、一本一本外していけば良い。

(処刑台に何か仕込んでいましたね――ですがこれで終わりです)

魔女狩りは拘束された氷城を狙うかもしれないが、それを見逃す華翼ではない。
狙いが絞られればそれだけ護りやすくなる。乙種相手に背中を見せるリスクは侵すまい。
華翼を支援する為に長杖を構えた瞬間、城塞の索敵警戒網が飛来する物体を捉えた。
そちらに意識を遣れば、向かってくるのは先程打ち込んだはずの氷柱の群れ。
民家を飛び越えていったのと寸分たがわぬ軌道の帰路を、駆け上って降ってきた。

「迎撃せよ」

即座に城塞の対空防御が発動し、氷柱の群れを氷の剣山が迎え撃つ。
氷の大質量がぶつかり合う破砕の音が、断続的に氷柱の数だけ鳴り響く。

150 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/15(火) 14:43:42.13 0
(射出魔法を改竄して送り返してきた……?無駄なことを!)

魔法の改造技術など別に珍しくもないが、戦場で使う者が少ないのには理由がある。
はっきり言って時間の無駄だからだ。
わざわざ手間と時間をかけて魔法を解析し改造を施して撃ち返すよりも、自分で砲撃魔法を唱え直したほうが遥かに早い。
なにせこちらは氷結魔法の専門家、自分に向けられた氷結魔法を無力化する方法などいくらでも知っている。
単純に、同じ魔法で迎え撃てば相殺できるのだ。だからそうした。
飛んできた氷の群れは、一つ残らず砕き尽くされた。

――氷城の名を持つ魔導師は、才能ある凄腕の冒険者だ。
そして実力と実績を持ち合わせる彼は、故に、持たざる者の考えを見通し損ねた。
相手の術者が魔法改造という手段を選んだのには、魔力不足を補う他にもう一つの意味があった。
同時にもう一つ、"自前の"魔法を使う必要があったからである。

砕き割られた氷の槍が処刑台の上に落ちていく。
その中に、『氷に形容』することでステルスされた物体が紛れ込んでいた。
革袋に火薬と針を詰めた、手製の爆弾である。
それは床面に落ちた衝撃で爆発し、パン!と小気味良い音を立てて中身をぶち撒けた。
ハーブから抽出した毒をたっぷり塗りつけた、小さな針が無数に氷城へ突き刺さった。

「――――ッ!?」

狩猟用の為か、皮膚吸収で即効性が高く調合された毒は即座に氷城を侵した。
本来ウサギや鴨を狙うものの為体重差で人間には致死ではないが、身体が麻痺して少しの間動けなくなる。
そして"少しの間"は、地面から生える森と氷城との拮抗を崩すには十分だった。
氷結の魔素が弱まり、水を得たかのように樹木が元気に踊り出す。
それはあっという間に氷城の身体を包み込み、頸動脈を圧迫して絞め落とした。
僅かに保たれていた枯死の属性が失われたことにより、木々の成長は加速、処刑台を大樹へと作り変えていく。
その影響は当然、華翼と魔女狩りの戦場にも及んだ。

「おっ、わっ!?」

鏡の如く凍てついていた銀盤が下から叩き割られ、分厚い根が張りだしていく。
無数に入った亀裂を突き破って、まさに森の如く魔法の樹が茂っていった。

「おいおいおい、てめーの実家にそっくりってわけかい」

ツタに絡め取られぬよう慎重に宙を舞いながら、華翼は表情を崩すことなく言った。
仲間の氷城がやられた以上、連携を最も強みとする彼らの戦力は見た目以上の低下を見せている。
それでもなお動揺を見せないのは、己の剣技への信頼と自信によるものか。
いずれにせよ、決着は近い。


【氷城:魔笛の森に囚われて失神】

151 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/17(木) 03:11:57.97 0
>「ほら、どうした手品はしまいか?
  もっと気合入れて逃げねえとただでさえ小せえタッパが半分になっちまうぞ!」

氷城を仕留め損ねたヴィクトルを仕留めんと、華翼が動く。
壁に刃を突き立て体を固定した状態で――もう一方の切っ先をヴィクトルへ。
爆炎が吠える。ヴィクトルは壁に背を預けた状態から体を両手で押し出しそれを回避。
華翼もまた壁を蹴り、跳躍――爆炎の連撃はしない。氷を過度に溶かしてしまう。
まともな足場を与えてしまう事は避けたかった。

爆炎を回避させ、動いた所を、有利な角度から斬り掛かる。
それだけで大抵の相手なら仕留める事が出来た。
必勝と呼んでもいい戦術だった。

だが今回は、勝手が違った。

ヴィクトル・シャルフリヒターは背が低い。
白兵戦において、背の低さは必ずしも不利な要素とは言えない。
低いという事は――即ち遠いという事だからだ。
自分の足元に転がる標的を渾身の力で斬り付ける事は、よほど技量の高い者であっても難しい。

つまり、ヴィクトルは「低さ」を利用した戦い方を知っている。

氷上に殆ど完全に背中を預けて、仰向けの体勢で彼は華翼と対峙。
擬似的に正面切っての戦いを成立させた。
更に氷の床を背にする事で、華翼は立ち回りに繊細さが求められるようになる。
刃が少しでも行き過ぎれば切っ先は床に食い込む。
斬撃の勢いが損なわれ、完全に停止せずとも盾による防御が可能になってしまうかもしれない。

故に飛翔は僅かにだが遅く、斬り込みは浅い。

首筋に迫る剣閃――長さを変えた細剣を床に突き刺し体勢を固定。
余剰の瑞鉄で二振り目の細剣を形成し、斬撃を放つ華翼の右腕を狙い切り払う。

だが華翼は爆翼を噴射――体を空中で急停止、細剣を空振らせる。
そのまま回転力を利用し、返す刃をヴィクトルの腹目掛けて薙ぐ。

受ければ致命傷――ヴィクトルは氷壁を蹴った。
細剣を床に突き刺した状態からそうする事で、体は細剣を支点に高速で反転。
華翼の斬撃は空を切り裂き――仕切り直しだ。

「……随分と芋臭え戦い方をするんだなぁ、エルフさんよ」

「剣をまともに当てられねえ奴ほど、言葉で俺を刺そうとする。生憎、その手の台詞は聞き飽きてるぜ」

ヴィクトルはそう言って鼻で笑う。
とは言えこの状況、一見すれば拮抗しているようにも見えるが、実際にはそうではない。
氷に接する面積を増やしているヴィクトルは、体温の失われていく速度が早い。
華翼はただヴィクトルの体力が消耗されていくのを待つだけでもいい筈だった。

だが彼がそれをしないのは――時間をかけるという戦術が、相棒にとっては上策ではないからだ。
氷城は機動力に欠け、魔力も薬品による補助があるとは言え万全でない。
彼はヴィクトルの協力者達にとって狙い目だった。
だから氷城が次の支援攻撃に晒される前にヴィクトルを仕留めたかった――が、遅かった。

不意に、前触れもなく処刑台を覆う氷がひび割れた。
氷に亀裂を走らせて、何かが飛び出そうとしている――樹木だ。
魔法によって急激に生育された樹木が氷の城塞を侵していた。
そして氷城が、その枝に絡め取られた。

152 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/17(木) 03:12:31.85 0
>「おい氷城!」

>「問題ない!」

思わず名を呼んだ相棒は、切迫しながらもそう答えた。
しかし――華翼も一流の冒険者だ。
それを鵜呑みにし、状況を楽観視はしない。

氷城が「問題ない」のは「少なくとも今は」である。
彼は氷結の魔素によって樹木の成長を押し留めている。
だが、ヴィクトルの協力者は二人いる。
何故それを彼が気付けたか――魔法の練度の差だ。
樹木を操る音楽魔法と召喚魔法と、火薬袋を操っていた魔法では、その技量に大きな差がある。
氷城は一人の魔法使いと拮抗した。だが敵はもう一人残っている。
突き崩されるのは――時間の問題だ。

そしてその瞬間は、すぐに訪れた。
打ち返された魔法を隠れ蓑にした火薬袋が氷城の間近で炸裂。
飛散した毒針が彼の心身を侵す。

氷結の魔素による効力が薄れた事によって、樹木の成長が加速する。

>「おっ、わっ!?」

床を完全に突き破り表出した樹木を、華翼は飛翔によって躱す。

>「おいおいおい、てめーの実家にそっくりってわけかい」

「……さぁな」

華翼が、ヴィクトルを見据えた。
爆翼によって滞空する華翼と、成長した樹木の枝を足場にするヴィクトル。
二人は同じ目線の高さにいた。

先に動いたのは華翼だ。
動きを止めれば自分も枝に捕まる――故に加速、ヴィクトルへ斬り掛かる。

対するヴィクトルは――枝の上から後方へと、身を投げた。
思いがけない行動に華翼の思考が一瞬止まる。
その真下から稲妻の如き刺突――ヴィクトルは両足の力で枝を挟み、体を保持していた。

華翼が息を呑み、爆翼で身を捻る。
だが完全に不意を突かれている。躱し切れない――左肩口が切り裂かれる。

「ぐっ……!」

灼熱感を伴う鋭い痛み――十全の斬撃は失われた。
華翼は即座に左の剣を逆手に構え直す。
刃の可動域を増やし、右手は爆翼の形成のみに専念するつもりだ。

「無駄な足掻きだな」

だがヴィクトルは既に自分の勝利を確信していた。
最早、華翼は十全な戦闘能力を失った。加えて戦場も自分に有利なように移り変わった。
ヴィクトルはエルフの俊敏性を活かしたゲリラ戦を仕掛けられる。
閃光の魔法や、瑞鉄の糸を併用すれば、いずれ華翼には隙が生じるだろう。
その瞬間が、勝利の時だ。

153 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/17(木) 03:12:58.57 0
しかし――それでは今ひとつだ、ともヴィクトルは考えている。
何故なら彼の目的は、彼らをただ倒す事ではないからだ。
情報源として確保し、地上げ屋への攻め口、甲種冒険者の情報を掴む――それがこの戦いの目的だ。

「……一つ、布石を巻いとくか」

ヴィクトルが小さく呟いた。
そして剣を自分の周囲四方へと振り回し――深く息を吸い込む。

『空より堕ちし微睡む少女よ、我が剣を見よ』

エルフの声音で歌うよりに唱えられるのは、紛れも無い呪文。

『此は道標。目覚め、使命を果たせ』

「……そのネタはもう、通じねえよ!」

華翼は迷わず猛進した。

魔法が使われるとしても、また閃光のような意識を逸らす類のもの。
それが放たれる前に斬り伏せる、と。

魔法が使えないと見せかける事がブラフだったとは思わない。
何故なら――そんなブラフを使う意味が無い。

エルフの才能をもって魔法を使えるなら、最初から使った方が断然有利だからだ。
ヴィクトルの剣技に第五階梯程度でも魔法が組み合わされたら、それだけで彼の強さは跳ね上がるだろう。
剣技で身を守りつつ、至近距離から魔法を叩き込む――恐らく華翼でも凌ぎ切れない。
その強さを捨ててまで、魔法を封印してそれをブラフにする意味は無い。

『汝は氷雪――奪いし者』

故に視界が純白に塗り潰された時、華翼は意識までもが真っ白に染め上げられた。

魔法による吹雪――体温、体の自由、視界を奪う豪雪が中央広場に吹き荒れていた。
その白幕を切り裂くように、ヴィクトルの細剣が迸る。
銀閃が華翼の四肢を、その腱を的確に切り裂く。

そしてとどめと言わんばかりに跳びかかり、瑞鉄の盾で顔面を殴り付けた。

華翼は強烈な勢いで樹木に叩き付けられ――気を失った。
これには気絶させるだけではなく、落下の方向を制御して墜落死をさせないという目的があった。

「ご苦労だったな、こっちも終わった。撤収するぞ。
 荷物運びに適した畜生はまだ召喚出来るか?魔笛の。
 出来ないなら……何やってる、堕廃の。お前が一人運べ」

広場には今もなお吹雪が渦巻いている。
つまり今なら、仮に甲種が存在したとしても、地上げ屋の警護に専念する必要があるという事だ。
故に情報源を連れ去る事が出来る。

また吹雪の魔法を用いたのはその為だけではない。
ヴィクトル・シャルフリヒターには奥の手がある。
吹雪の魔法はその本質とは程遠い――だが他人の眼にはそんな事は分からない。
自分は魔法が使えるのだと、まだ見ぬ甲種に見せつけておく。
それはいずれ訪れるだろう甲種との戦闘において、間違いなく一つの優位点となる。

154 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/17(木) 03:13:50.81 0
「――さて、どうしたものかな」

拉致した乙種二人を連れて、ヴィクトルは一度西区画のスラム街に戻ってきた。
彼らを悠々と拷問するには最適な場所だからだ。

「本当ならお前は、あらゆる人としての尊厳を奪い尽くしてから殺すつもりだったんだが。
 今は色々と聞きたい事があるんでな、手っ取り早くやらせてもらうぜ」

適当な廃屋の柱に縛り付けた華翼に細剣を突き付け、ヴィクトルはそう言った。
華翼が目を細める。彼はそれだけの言葉で、ヴィクトルの目的に察しがついたようだ。

「……なるほど、そういう魂胆か。だが無駄だぜ」

「依頼主を軽んじた冒険者は次の仕事にありつけない。死んだも同然。
 だから喋らない……なんて下らない虚勢を吐くなよ。
 死んだも同然と、本当に死ぬのは、全然違うんだぜ」

細剣の切っ先が喉に食い込む。
ほんの一寸、二寸ほど――命には届かない浅さ。
剣先を抜き、ヴィクトルは華翼の胸部に耳を当てる。
早鐘のように加速した鼓動が聞こえた。

「……なっ、全然違えだろ」

ヴィクトルは華翼を睨み上げ――顎で左を向くよう指図した。
左には――氷城がいる。
華翼と同じように縛り上げられ、猿轡を噛まされている。
胸部には血痕――肺を貫き、呼吸不全を起こさせているのだ。
見た目からは分からないが、肋骨も何本か折られている。
痛みと酸欠で集中力を奪い、魔法の発動を困難にする為の措置だ。

「だが……俺はこれ以上お前に危害を加えはしない。
 お前が喋らなければ、コイツを代わりに傷めつける。
 この男の背丈が俺よりも短くなる前に、俺が満足するだけの情報を吐け」

ヴィクトルは華翼に質問をしない。
彼は察しのいい男だ。既にヴィクトルの目的に気付いている。
それを果たす為に何を喋れば役に立つのか――彼自身に考えさせるのが最も効率的だ。

「ま、最初は指の爪くらいから始めてやるよ。だから取り返しの付く段階で喋った方がいいぜ。
 ちなみに……コイツが死んだら、次は外の通りから適当な奴を引っ張ってきて拷問する。
 お前が喋りたくなるまで何人だってお前の前で殺してやるぜ」

ヴィクトルは平然とした口調で、だが獰猛な笑みを浮かべてそう言った。
華翼は、察しのいい男だ。やはり今度も瞬時に理解した。
眼の前のこの魔女狩りは、見ず知らずの他人を不幸に陥れる事に何の抵抗感も抱かないと。

「待て!喋る!だからその手を止めろ!」

ヴィクトルはその制止が聞こえていないかのように、瑞鉄で細い針を作り出す。
爪を剥ぐ前に、まずは肉と爪の間に刺し込むのだ。
そうすれば二度、痛みを味わわせられる。

「――甲種だ!オメルタは護衛の一人に甲種を雇っている!」

「……つくづく、察しが良いな。いいぜ、続けろよ」

155 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/17(木) 03:15:24.41 0
ヴィクトルが悪辣な笑みと共に、華翼を振り返った。

「……ソイツは、『地走』と呼ばれてる。お前達も聞いた事があるんじゃないか。
 どんな攻撃も通用しない、絶対防御の魔法を扱う格闘士だ」

「……確かに聞いた事はある。が、具体的にはどんな術理なんだ?その絶対防御とやらは」

「……分からねえ。地走の戦い自体、一度しか見た事がないんだ。
 だがあの時は本当に、奴は何もしていなかった。
 ただ攻撃を待ち受けて……そのまま食らっていた。それでも微動だにしなかった」

ヴィクトルは、今度は返事をしない。
ただ視線を氷城へと向け直して――

「――奴は街中にヤクの工場を隠し持ってる!薬屋と、料理屋だ!
 安全を保証する代わりに既存の設備を利用して量産しているんだ!」

華翼が殆ど叫ぶようにそう言った。

「……なるほどな。つまりそれらを潰して回れば……地上げ屋は対応戦力を投入せざるを得ない。
 手薄になった地上げ屋を、地走を数で抑えて刺しても良し。
 戦力を削って地走に出ざるを得ない状況を作っても良し、か」

ヴィクトルが瑞鉄で作り出した拷問器具を、懐に収めた。

「……もう十分だろ。お前さんを散々小馬鹿にしたのはこの俺だぜ。
 殺すのは俺だけで十分だろ、ソイツは勘弁してやってくんねーか」

そして華翼を振り返る。

「何言ってんだお前、何も分かってないな」

鼻で笑う仕草を見せたヴィクトルに、華翼が強く歯噛みした。

「この、クズ……」

「俺はこの街のシマを貰い受けるつもりなんだぞ。
 その後でそこを管理するのに俺一人で出来る訳がないだろ。
 今の一言は聞かなかった事にしといてやるよ」

激昂に任せて吠えようとした華翼が、一転ぽかんと呆けた表情を浮かべた。
直後、ヴィクトルの打拳が彼の顎先を打ち抜き――気絶させる。

「お前達が餓死する前に地上げ屋が死ぬ事を祈っているんだな」

氷城にもそう言って、殴打――そして魔女と少女を振り返る。

「そういう訳だ。明日からこの街の薬屋と飯屋を片っ端から潰して回るぞ。
 ペースは……お前らに決めさせてやるよ。魔法使いってのは難儀な連中だからな。
 一気に攻めりゃ地上げ屋の戦力は混乱するだろう。じわじわ追い詰めれば、地走を誘い出して地上げ屋を暗殺出来るかもしれない」

好きに決めろ、とヴィクトルは続けた。

156 :地走 ◆0wOjk6u1BM :2015/12/17(木) 20:14:23.23 0
名前:『地走』カトリーヌ・パウレット・ドゥ・モンミライユ
年齢:25歳
性別:女
身長:186cm
体重:72kg
スリーサイズ:103-66-97
種族:人間
職業:貴族/暗殺者(格闘系)
性格:忠実で温厚な一方で、残虐で利己的な一面も持つ。
利き手:右
魔法:時空魔法
特技:踊り
武装1:手甲
武装2:毒針
武装3:チャクラム複数
武装4:細身のサーベル
防具:街娘風のドレスorフード付きの黄土色のローブ
他所持品:多くのハーブ、魔法道具
容姿の特徴・風貌:大柄で長身、黒髪の美女。瞳は青く光り、表情は目を瞑っているか笑っているように見える。
将来の夢(目標):全てから解放されること
簡単なキャラ解説:貴族出身の甲種冒険者。訳あってオメルタの下で雇われ、生活している。


【急ですが敵役として参加希望します。重要な役割ですが、やれるところまでやってみます。
よろしくお願いします。】

157 :地走 ◆0wOjk6u1BM :2015/12/17(木) 20:23:37.86 0
――過去の話。

少女は生まれながら目が見えなかった。

貴族の両親は、そんな少女を疎ましく思い、

少女の弟――跡取り息子が産まれると、完全に見捨てられた。

屋敷に政略の人質として送られ、

そこで少女は踊りと、ちょっとした武術を習った。

そのときだった。

少女が”力”を持ち、初めてこの世で必要とされたのは。

少女は歓喜した。

しかも。カトリーヌという名前のあった彼女は、

新たに”パウレット”という名前を得た。

そして、少女はハーブに魅せられ、

”瞳”を持った――

158 :地走 ◆0wOjk6u1BM :2015/12/17(木) 20:48:11.27 0
殺すこと。
ただ殺すことだけが私の仕事だった。
しかし――皮肉にも最近はそれが無い――つまり街が”浄化”されているということ。
オメルタ様はいつもそう話してくれる。

オメルタ様の屋敷で部屋を与えられ、過ごす毎日。
いつからだろうか?
光を見ることができるようになった私は、この世界で初めて”生”を受けてはや十年。
いつしか「甲種冒険者」と呼ばれるようになり、畏れられている。

「…わたしが」―ぼそぼそと言葉を紡ぐ。
「わたしが魔女…」
「私が魔女だ!あは、あははははは!」
独りになると、つい思い出し笑いをしてしまう。
そうだ、あの時新興宗教『魔女教会』の教徒達を殺したときの言葉だ。
我ながら良い台詞だった、と思い出し、思わずにやけてしまう。

教徒たちの槍の一撃は私の胸を貫かんとし、私はそれを甘んじて受け入れた。

”ゆっくりと、彼らの時間を、巻き戻しながら”…

私は唖然とする彼らの首を掴み、へし折り、その上で味方同士が殺し合うように
”配置替え”をしてあげた。
魔女を崇拝して魔女に殺されるなんて、馬鹿みたいじゃない。


にやにやとしていると、後ろからノックの音が響いた。
「入って」

そこに現れたのは自称「オメルタ様の代理人」であるアバットだった。
「地走! 見ていたのだろう? 奴らを殺せ、今すぐにだ」

私はアバットにゆっくりと近づいていった。
見れば見るほど貧弱な男…。
顔にはオメルタ様に縋る人間特有の”奢り”がありありとして見て取れる。

多分、彼には私の顔は静かな微笑みを湛えているように見えただろう。

159 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/17(木) 21:41:01.39 0
>>156
その敵役参加、俺は待ったをかける
理由は>>42を読んでくれ
ただし俺の心象はリタリンの時よりも拒否に傾いている

何故なら、重要な立ち位置に突然飛び込んでくるという自覚がありながら事前の相談が一切ない事
今回は序盤の、こう言っちゃ悪いが設定紹介、チュートリアル用のボス的立ち位置だったリタリンとは話が違う

アンタが迷子になれば、俺達は全員迷子の付き合いをしなきゃならない
アンタがやり過ぎれば、俺達は泣きながら自分の設定を曲げるか、打ちひしがれるしかない
そういう立ち位置のキャラに、全くの初対面ですけどやってみますなんて話が通ると思っているなら、それは甘えだ
だから俺には「やれるところまでやってみます」という言葉も、やれなかったら途中で諦めるかもしれないという「逃げ道」じみた前置きに見えてしまう

厳しい事を言うようだが、参加そのものは大歓迎だ
出来れば俺が懐疑主義の、疑り深いだけの嫌な奴だと、もっと他のロールで証明してもらいたい

160 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/17(木) 21:42:36.50 0
とは言ったが、俺は所詮ただの一参加者だ
ラウテが俺の待ったに待ったをかけるなら、それならそれで構わない

161 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/17(木) 23:21:00.48 0
ラウテは路地裏の荷物の影に身を潜め、ただひたすらに魔笛を奏でていた。
逃げる際にもちろんデコイは放った。魔力追尾型の魔法に対して用いられる簡単なものだ。
消費魔力が多くほんの一瞬相手の攻撃を逸らすだけだが、こんな路地裏だからこそ役に立つ。
ラウテに出来ることは、遠隔からとにかく味方を援護することだけだ。

ラウテは幼いが故に、まだ力も弱く体力も少ない。
ダガーを用いた剣技こそ使えるものの、それはあくまで相手を撹乱させるのが関の山だ。
人並み外れた魔力量による魔笛の術によるごり押し、それが彼女に出来る精一杯である。
植物を操る術は、魔笛の悪魔が持つもう一つのスキルだ。
植物の成長を操作し、自由に枝葉や根を動かす事が出来る、ただそれだけの術。
しかし故に応用が利き、まだ召還出来る生き物が少なかった頃のラウテは重宝していた。

ラウテの操る木々は氷城を捕らえ、その自由を奪う。
しかし敵も魔法使い、こちらの魔力を相殺する術を用いて、木の生長を阻害する。
拮抗した…むしろ氷城の優位に思えたが、リタリンの攻撃が、この拮抗を崩した。
毒の効果によるのだろう、少しではあるが麻痺の影響を受けた氷城は、術を中断せずには居られなかった。
たちまち元の勢いを取り戻し、圧倒的な力を持って処刑台を覆い尽くす。
木の幹に取り込まれた氷城は、その締め付けによりあっけなく意識を失った。
四肢の自由も利かないため、もう脱出することは出来ないだろう。

あとの作業は簡単なものだった。ヴィクトルに都合の良い足場を提供するだけだ。
華翼が成長した木々に触れれば、たちまちそれは彼を飲み込む触手と化す。
戦力が拮抗していれば、集中が乱れたほうが不利になるのは目に見えている。
対するヴィクトルは、十全な足場を得たことにより剣技が冴え渡る。
そこからの勝負は一方的なものだった。視界を覆う吹雪に見舞われた華翼は、あっという間に切り伏せられた。
意識を失った華翼に対し、念のため木の枝で拘束をしておく。そこまで仕上げて、ようやくラウテは一息吐いた。

広場は無残な状態だ。辛うじて原型が残ってはいるものの、最早本来の機能は取り戻せないだろう。
氷はやがて溶けるが、地面に根を張った木々を取り除くのは、おそらく苦労するだろう。
氷城が陣を張った時点で多くの聴衆は逃げていたため、人的被害は最小限に抑えられているのが救いだろうか。
もちろんラウテは人的被害や広場の損害など気にも留めていない。
それでも余剰魔力を回収するために、木々を枯らしただけでも違いはあるだろう。


>「ご苦労だったな、こっちも終わった。撤収するぞ。
> 荷物運びに適した畜生はまだ召喚出来るか?魔笛の。
> 出来ないなら……何やってる、堕廃の。お前が一人運べ」

「召還する。……よろしくね、さくら」

162 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/17(木) 23:22:02.65 0
召還したのは一頭の馬。彼女が旅の足に使っているもので、名をさくらと呼んでいる。
実のところ他の生き物にも名前を付けてはいたのだが、ある程度数が増えた時点で諦めたという経緯があったりする。
さくらはあまり質の良い馬とは言えないが、召還主に絶対の忠誠があるため非常に扱いやすい。
ただ人の髪の毛を食べ物と勘違いする癖があるため、あまり近づくのはお勧めしない。

さくらに二人の捕虜を乗せて、西区画のスラム街まで運んだ。
そこから先はヴィクトルの仕事だ。彼以上に尋問を得意とする者は居ない。
ラウテはその様子を隅の方で眺めつつ、途中で買ったお昼ご飯を食べていた。
これから拷問が始まるというのに全く意に介していない。ラウテはそういう性格だった。

彼らから聞き出した情報は二つ。ひとつはオメルタが甲種を一人雇っているという事。
地走という防御特化の格闘士だということ以外は不明だったが、それでも十分役に立つ情報だろう。
もうひとつは薬の工場が店舗として偽装され存在するということだ。
だとすれば、そこはオメルタにとってのアキレス腱となるだろう。潰そうとすれば向こうも黙ってはいられまい。
彼らがリタリンを欲したのは、その製薬技術を買ってのこと。薬は大切な財源なのだ。

>「そういう訳だ。明日からこの街の薬屋と飯屋を片っ端から潰して回るぞ。
> ペースは……お前らに決めさせてやるよ。魔法使いってのは難儀な連中だからな。
> 一気に攻めりゃ地上げ屋の戦力は混乱するだろう。じわじわ追い詰めれば、地走を誘い出して地上げ屋を暗殺出来るかもしれない」

「…分かったわ。薬を作っているなら、匂いで分かるのかな、リタリン?」

一夜明け、ラウテはすっかり回復していた。これなら十全に仕事を果たす事が出来るだろう。
匂いで分かるかも知れないと召還した犬を連れ、なるべく建屋が大きい店から狙って襲うことにした。
犬は便利だ。こちらの意図を正確に汲み、命令を忠実に果たしてくれる。
魔力によるパスを繋いでいるため、感覚を共有したり言葉に頼らず適切な指示も与えることも可能だ。
戦闘能力もそれなりに高いため、一般兵や丙種冒険者程度なら数匹の猛犬で対処も出来る。
魔獣と違い契約に手間もかからないため、ラウテは十数頭にも及ぶ野犬の群れを従えていた。
とは言え、さすがに街中で全部の犬を召還すると目立つことこの上ない。連れて歩くのはほんの三匹だけだ。
店主を襲い情報を訊き出す間、周辺を警戒してくれる犬が居るだけでも心強いだろう。



【新規敵役参加、私としては歓迎します。やる気も感じられますので】
【ただし重要な物語の担い手となるため、責任感を持った上で当たってください】
【もちろんこちらでも十分にサポートは致しますが、あくまで敵役は孤独なものです】
【責任も重く大変かとは思われますが、楽しんでやって行けるようよろしくお願いします】

163 :地走 ◆0wOjk6u1BM :2015/12/18(金) 12:57:04.97 0
殺意は無かった。
私は目が今でも決して人並みには見えない。しかし、生命の動きには敏感だ。
能力や魔力に関係なく、相手の考えを読むことはできる。
目を瞑っていても。

アバットは私が来ると、明らかに表情に狼狽の色を浮かべた。
”失敗した”それを誤魔化しているのだ。
そして、多くの殺しを成功させている私に怯えている。多くの人間がそうだ。

「…追い出されたくなければ、さっさとするんだな、雌犬」
彼は決して頭の悪い男ではない。むしろ巧妙な話術でオメルタ様に取り入ってきた。
しかし、今回ばかりは簡単に主人の赦しを得るのは困難だと悟っているのだろう。
私の前でそのような汚い言葉を吐くのだから。

屋敷の人間が雇われで居候で愛人の私に対し、「雌犬」やら「愛玩」やらと、
陰口を言っているのは知っていた。
悲しいことに、私には相手の言葉を知らなくても、心の動きが判る。

「…っ!」
私は虫の居所が悪かった。地面を思い切り踏み、唇を噛む。
その表情に気付いたか、アバットは私の方に振り向き、剣を抜いた。
彼の剣術は乙種冒険者並みと言われる。
その腕前があまり披露されないのは、オメルタ様のブレーンの一翼を担っているからだろう。

164 :地走 ◆0wOjk6u1BM :2015/12/18(金) 12:57:48.84 0
「何だその態度は?ワシによって今年何人が処刑されたか判っているのか?」
剣が抜かれ、完全に丸腰の私に向かって攻撃が繰り出される。
彼は私の武装の有無が服装で判る。私を使役してきたから。

―でも、この男にはそれでも私に傷を負わせることはできない。

私は剣の切っ先を凝視する。魔力がそこに凝縮され、
それはアバットの全身を駆け巡り、時間が撒き戻される。
その間に私は移動する。『地走』と呼ばれるのはその速度からオメルタ様が命名したものだ。
ダンサー特有のステップでその僅かな間隙にアバットを羽交い絞めにする。

「くっ…」
グキリ、という音とともにアバットの首が殴打され、彼は白目を剥いて倒れた。
腕力は鍛えられてはいるが、それを増幅するのは撒き戻した時間を”戻す”瞬間。
私の攻撃はその何倍にもなって相手へと致命傷を負わせる。
それが今までの敵をほぼ一撃必殺で葬ってきた理由だ。
武装した熟練の剣術家は、丸腰の女によっていとも簡単に一撃で倒された。

脈を確認する。まだ死んではいないようだ。
「お腹空いた…ふふ、吸ってあげる」
精神力吸収の魔法。これも私が得意としている。
逆に言えば時空魔法は大量の魔力を必要とするため、これとハーブの力が要る。
部屋一つ分程度なら、楽に射程に入れることはできる。
駆け出しの魔法使い程度なら全て吸い上げることができるだろう。

私はうつ伏せになったアバットの上にそのまま圧し掛かり、肩に唇を当て、
抱きつくようにして精神力吸収を行った。近いほど吸い上げる量も効率が良い。
まるで夢魔か、淫魔のようだ、と自分でも思う。

数分後、ミイラのような姿になったアバットがそこにはあった。
吸収魔法は魔力だけではなく、体力や気力をも奪う。丸一日は動けないだろう。
逆に私の肌は瑞々しくなり、艶が出て紅潮していく。
このおかげか、年齢の割には若く見られ、少女のような扱いを受けることも多い。

アバットを縛り上げ、とりあえずクローゼットの中に押し込むと、
武装してローブに着替える。
窓の外から広場を眺めると、どうやら一連の騒ぎが終わったようだ。
華翼と氷城の気配は消え、倒されたらしいことが判る。
上官でも部下でもないが、一応は組織を構成するオメルタ様の配下であることには変わりない。

先ほど広場を舞っていた三人の顔ははっきりと覚えた。
仲間を倒されたのに、興奮すら覚える。あいつらは私の獲物だ。それにしても…
「…あのエルフ、瞳から出る”光”が私みたい… 捕まえたら…」

 「全部、吸ってあげるから…!」

165 :地走 ◆0wOjk6u1BM :2015/12/18(金) 13:17:50.60 0
――光。

光のある生活は本当に楽しかった。
オメルタ様のお陰で私は光を得た。笑顔にもなることができた。

私は魔力と格闘技を使い、目立つことはなかったが人を殺し始めた。
全ては正しいことだと思った。
「魔女狩り」と「教会」、「異端審問」…こういった言葉の意味は深く考えなかった。
オメルタ様は私を救った。だからオメルタ様が正しいのだ。
この街もきっと、オメルタ様がもっと良い場所にしてくれる。

私は徐々にオメルタ様の下で頭角を現し始めた。
ある日、モンミライユ家の屋敷が魔物たちによって荒らされたということで、私は狩りに出された。
私がオメルタ様の直属で、一番多くの魔物を殺した。オメルタ様が現場に出てくるのは珍しいことだった。

父、母、弟の死体が発見された。
私には何の躊躇いもなかった。
「あなたに、家と財産を捧げます」
そして、モンミライユ家の傘下にあった店舗、酒場、施設が私の名義で
オメルタ様の手によって運営されるようになった。

私の待遇はさらに良くなった。
強さを認められ、ある日、ベッドで”「甲種冒険者」に推薦された”ことを伝えられた。
それがどういう意味を持つか、愚かな私にもわかった。
冒険者の頂点へと君臨するのだ。

最初は嫉妬からか、多くの冒険者から命を狙われた。
一人、また一人と殺していくうちに、そういった輩はいなくなっていった。
いや、オメルタ様の下に冒険者が増えたと言った方が良いだろうか。一緒に戦う仲間だ。

オメルタ様は優しい。
私が沢山の人を殺し、魔力消費の体への負担が大きくなると、薬を紹介してくれた。
元々はモンミライユ家の傘下にあった薬師が持っているものだ。
これを飲めば、あらゆる苦痛から解放されて、体中から魔力が溢れ出すようになる。
薬が切れると苦しくなるのが難点だが、今のところ薬師も私のものだ。
それは無限に手に入ると言っても過言ではない。

しかし、一度だけ恐ろしい、と感じたことがある。ある晩のことだ。
「オメルタ様、魔物はどこから来るのです?私の、かつて住んでいた屋敷を襲ったような」

オメルタ様は答の代わりに、沈黙を続けた。
その顔は、笑っているようにも、怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。

166 :地走 ◆0wOjk6u1BM :2015/12/18(金) 13:47:06.77 0
最近のオメルタ様は変わってしまった。
彼はまるで、何かに取り憑かれたかのよう。
以前のようにお互い、体に触れることもしばらくはなくなった。
男と女、父親と娘という関係では、もはやない。

オメルタ様に広場に現れた”偽魔女狩り”の討伐について聞くと、
「今はまだその時ではない」と一蹴された。
私は部屋に戻った。

無性に苛々していが、訓練の部屋に行くことは諦めた。
以前、腹の虫がおさまらず、一人の丙種雇われ冒険者を殺してしまったことがある。
自己鍛錬用の地下室で、私は屋敷の特注品である鍛錬の道具や拘束具を使い、
魔力解放と格闘技の訓練を続けた。
この力を”偽魔女狩り”を追い詰めるために使うことができないのが残念だった。
部屋に戻ると、料理が既に用意されていた。
いつも「だらしない体型」とオメルタ様に言われ食事制限を受けていたが、
今日は肉料理が多めだった。
旨みの溢れる羊のケバブ、スパイスがたっぷりのキョフテ、
そして、多種のハーブが利いたピデ。
普段は少食だが、今日は大人の二人前分ほどの料理を平らげた。

食後のことだった。
「うぅ、う”…」
来た、あの発作だ。少々、鍛錬に力を入れ過ぎたのだろうか。
壁に皹が入り、錘の鉄球が砕けたあの地下室を思い出す。
全身に痛みが走る。汗が止まらず、服を脱ぎ散らかし、床を転げまわる。
ようやく調合されたハーブを見つけると、それをチャイで急速に嚥下した。
「…はぁ、はぁ、はぁ」
精神が落ち着くと同時に昂ぶり、再び膨大な魔力が湧き上がってくる。

今日は水浴びに行くのは止めよう。
このテンションで、誰かを殺してしまいそうだ。
私はこのまま眠りにつくことにした。

さて、明日は何をしよう…?
夜風に当たっていると、無性に外に出たくなってきた。
ハーブも減ってきた。そうだ、明日は薬屋に行こう。買いに行くか…それとも

 いっそ、殺しちゃおうか…

>>160>>161ありがとうございます。凡そ、背景部分を含め自己紹介をしました。
また、タイミング等何かオーダーがあればご遠慮なくどうぞ。合わせます。】

167 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/20(日) 21:19:35.63 0
ヴィクトルが華翼に勝利するさまを、リタリンは水晶越しに見ていた。
広場に吹き荒れ視界を真っ白に染める吹雪、その寒波は民家越しにこちらまで届いてきそうですらある。

「使えるんじゃない、魔法……」

まあエルフだから使えても別におかしくないのだが、つまり昨晩の戦闘は彼にとって全然全力じゃなかったということだ。
どこまで隠し種を持っているのか、死力を尽くして今もスッカラカンのリタリンは信頼とげんなりを同じくらいヴィクトルに感じた。

>「ご苦労だったな、こっちも終わった。撤収するぞ。荷物運びに適した畜生はまだ召喚出来るか?魔笛の。
 出来ないなら……何やってる、堕廃の。お前が一人運べ」

「そういうのって男の人の仕事じゃ……や、なんでもありません」

肉体労働を指示された魔法使いは、抜けかけた腰を上げて広場を目指す。
途中合流したラウテが荷役に適した使い魔を召喚してくれたお陰で、とりあえずリタリンの腰は事なきを得た。
さて、ねぐらにしている西区のスラムまで戻ってきた三人は、早速戦利品の腑分けを開始する。
言い換えればすなわち、捕虜に対する拷問であった。
飴と鞭を下水で煮込んだような話術で華翼を翻弄するヴィクトル。
そうして引き出された情報は、ただでさえ低いリタリンの血圧を急降下させる事実ばかりであった。
敵方には甲種がいる。このまま裏で活動を続ければ、間違いなく敵対する相手だ。

>「そういう訳だ。明日からこの街の薬屋と飯屋を片っ端から潰して回るぞ。
 ペースは……お前らに決めさせてやるよ。魔法使いってのは難儀な連中だからな。
 一気に攻めりゃ地上げ屋の戦力は混乱するだろう。じわじわ追い詰めれば、地走を誘い出して地上げ屋を暗殺出来るかもしれない」

「十分な休養ののち、という前提で異論なし。だけどこれからはいっそう慎重に立ち回らなきゃだわ。
 乙種二人でも結構、いやかなり手ごわかったけれど、甲種は本当に強さの次元が違うから……」

かく言うリタリンも従軍時代、開拓地で甲種の戦闘を目の当たりにしたことがある。
もちろん危険な前線ではなく安全な基地の中からの魔法支援のみで、姿自体を見たわけではないが。
それでも、彼女たち囚兵の皮一枚から先を何Kmも一撃で焦土に変える出鱈目な火力と裏腹の精密性は、まさに異次元の実力を感じた。
後ろに甲種がいる、という心強さだけでも仲間の士気は段違いだった。
単なる一戦力としてだけでなく、戦いに携わる者達の一種のイコン、象徴性すら持つのが甲種という領域なのだ。
そんな、掛け値なし文字通りの英雄と敵対する。考えただけで絶望感と背徳感で震えが来る。

>「…分かったわ。薬を作っているなら、匂いで分かるのかな、リタリン?」

「普通の料理も側で作ってるなら油と香辛料でだいぶ誤魔化されてるだろうけど……犬が使えるなら、わかると思う。
 匂いのサンプルが必要なら、前に悪さしようと思って取り寄せたオメルタ製のがいくつかあるからこれを使って」

犬は単に鼻が良いだけでなく、数万にもなる匂いを正確に分別し、記憶し、嗅ぎ分けることが可能だ。
人間の鼻では誤魔化されてしまうような微細な匂いの違いでも特定することが可能だろう。
そしてこれはオメルタに対する明確なこちらのアドバンテージでもある。
向こうは魔女狩り達が犬を動員できることを知らないのだ。
どうやって薬の工場を特定しているのかわからない以上、対策のとりようがなく、こちらは常に裏をかける。

「常に先手を取り続けることを意識して行きましょう。
 間違っても地走と鉢合わせすることのないように、だけど相手の動向は押さえておく必要があるわ。
 一回向こうに空振らせて、残り香を犬に覚えさせられればぐっと距離をとりやすくなるんだけど……」

いずれにせよ、とるべき行動は決まった。薬屋、料理屋を襲いオメルタ達を撹乱する。
うまく地走が釣り出せたらこれをやり過ごし、相手の顔と匂い、できれば住居や行きつけの店などといった情報を手に入れる。
ここから先はただの討伐任務ではない。
敵方の通商破壊と情報戦を並行して構築していく、異種からなる二正面作戦だ。
一つでも判断をミスすれば、三人のボタンに掛け違えがあれば即座に首がリアルに飛ぶ断崖絶壁の電撃戦。

緊張感で吐きそうになりながら、リタリンは(主に弾除けとして)矢面に立ち、最初の標的の門戸を叩いた。
この街で一番大規模な大衆料理店――店名は『砂漠の海亀亭』。
半年くらい前に屋台を出店してから異様な速さで成長を遂げた、怪しさ満点の店である。

168 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/20(日) 21:20:48.87 0
【ちょっと時間がかかってしまいました、すみません】
>>166 ようこそ、歓迎します、よろしくお願いします】

169 : ◆77DMiRtfME :2015/12/20(日) 23:10:59.90 0
乙種冒険者『鋭鋒』はオメルタ配下の冒険者、用心棒のなかのひとりだ。
瑞鉄製の伸縮自在の長槍と、力の伝導を操る独特の武術を使い、二十代の若さで乙種にまで上り詰めた。
才能と伸びしろ、気力と賢明さを兼ね備えた乙種の中でも上位に位置する冒険者である。

一口に乙種と言っても、丙より上で甲未満となると実に幅が広い。
とりわけ『戦闘の実力』という意味では、キャリアも評価対象となる協会認定では実情を完璧に表わしているとは言い難い。
単に強いだけでは乙種にはなれないし、乙種だからといって単純に強いとは限らない、ということだ。

そういう意味では、つまり"乙種内腕っ節ランキング"的には、華翼と氷城はそれぞれ中の下ぐらいの立ち位置だった。
経験があり、高い連携の練度を持つが、彼らは二人で戦うことに慣れすぎた。
二人揃えば上位層も食えるほどの実力を発揮するものの、片方がやられると途端に勢いを削がれるのは致命的な弱点だ。
自分が拷問されることには耐えられても、相方が傷めつけられるのは我慢がならないという『情』も、戦闘者としては弱みになる。
それでは駄目だ。甲種の壁は超えられない。人間としての在りようさえも贄と捧げた武の化身には届かない。

乙種冒険者は実績と実力を兼ね備えた者に与えられる称号だが――
甲種冒険者は実績が霞むほどの常軌を逸した実力を以ってのみ至ることのできる極地なのだ。

『鋭鋒』は数ある自分の技術の中で、戦闘技術にこそ最も重き信頼を置いていた。
有り体に言うと、腕っ節には自身があった。
この街の協会を拠点に活動していた時、オメルタからの雇入れの打診を快諾したのは何もギャラが良かったからだけではない。
オメルタの傘下に甲種冒険者『地走』の存在を聞きつけたから、というのが本命の理由であった。

乙種と言っても層は厚い。上位陣ともなると甲種予備群と言って差し支えない実力者ばかりだ。
当然鋭鋒にもその手の自負はあって、甲種と認められない現状に不満ともどかしさを感じていた。
だから、実際に甲種を間近で観察して、彼らと自分とで何が違うのかを知ろうと思った。
あわよくば技も盗んで、その立ち位置を蹴落としてしまおうとさえ考えていた。

若い冒険者にありがちな気の逸り、身の程知らずの腕試し……。
鋭鋒がその他大勢のような悲惨な末路を今日まで辿ってこなかったのは、彼が自負に違わぬ実力者であったのがまず理由の一つ。
もう一つ、オメルタの近衛兼愛人として寵愛を受ける『地走』が、ろくに鋭鋒達の前に姿を現さなかったからである。
彼はずっとオメルタに仕えながら、一番の目的を果たせない歯がゆさに耐えていた。
状況が変わったのは、ここ一年ほどオメルタのシマでうろちょろしていた魔女が異端審問会に捕縛された日のことであった。

オメルタは代理人アバットに魔女の身柄の回収を命じた。
相手は神に正気まで捧げたと言われる悪名名高き異端審問会、荒事になることは容易に予想できた。
アバットの護衛についていった二人の同僚は、鋭鋒ほどではないがともに凄腕の冒険者。
自分が出る幕もないという失望めいた信頼は、しかし裏切られることとなる。
帰ってきたのはアバット一人だった。魔女はおろか、護衛二人さえも異端審問会に攫われたのだ。

仲間の身を案じる顔の裏で、鋭鋒は小躍りしたいほどに内心で快哉を叫んだ。
これで異端審問会は正式にオメルタと敵対した。
縄張りを荒らすネズミ程度の存在でしかなかった魔女は、最重要確保目標となった。
腰の重いオメルタも、もはや戦力を小出しにすることはあるまい。
ついに。ようやく。甲種の戦いが見れるのだ!

――――――

「姐さん、起きてますかい」

朝日も登り切った頃、『地走』の居室のドアをノックする人影がある。
頭に巻かれたターバンの下、肌は浅黒く日焼けし精悍で彫りの濃い顔立ちは荒野の民のもの。
鍛え込まれた肉体に袖なしジャケット一枚と軽装で、幅広の穂先を持つ長槍を背負っている。
オメルタ傘下の乙種冒険者・『鋭鋒』の二つ名を持つ若き気鋭の槍使いである。

「オメルタ様から姐さんとチーム組むように仰せつかいやした。
 ついでにアバット様も探してくるように言われてるんすけど、こっちに来ませんでしたかい」


【地走のサポート役として乙種『鋭鋒』が同行】

170 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/21(月) 21:54:27.44 0
>「十分な休養ののち、という前提で異論なし。だけどこれからはいっそう慎重に立ち回らなきゃだわ。
  乙種二人でも結構、いやかなり手ごわかったけれど、甲種は本当に強さの次元が違うから……」

「慎重に……そうだな、「お前は」そうしろ。お前なら人混みに身を隠すのはお手のものだろう」

形容魔法は性質を塗り潰す魔法だ。
即ちそれは人間に対して用いれば「個性」を隠匿する事が出来る。
あの広場での大立ち回りを見られていたとしてもなお、堕廃の魔女はその隠匿性が保たれている。
オメルタの支配下において丸一年も姿を見られずに済んでいたのも、その為だろう。

「クソガキ、お前もだ。お前なら姿を晒さなくても畜生共に目鼻の代わりをさせられるだろう」

ヴィクトルは指先に魔法の火を灯して、静かに笑った。

「教えてやるよ。魔女狩りってのはな、戦わない時が一番強いんだぜ」



そして翌日、ヴィクトルは街の北地区にある鐘塔にいた。
左手には瑞鉄の弓。そして右手には――鏃に灯火を帯びた矢が五本。
目的は言うまでもない――火計である。

北地区で営業されている大小二件の料理店と、三件の薬屋、全ての店舗へ。
殆ど一瞬間の内に、ヴィクトルの手によって火矢が射掛けられた。

二件の料理店の内、大きい方は、まさに今リタリンが訪れている店であった。
これもまた言うまでもない事だが――今回火計を用いる事は、彼女には知らされていない。
ただの嫌がらせ、だけではない。

何も知らされていないからこそ、彼女は心の底から、ただの「不幸にもそこに居合わせた被害者」になれる。

「さて……これで地上げ屋はどう動くか。そして……甲種も」

ヴィクトルの姿は、まだ鐘塔の上にあった。
火災への対応には地上げ屋の雇った冒険者が送られてくるだろう。
その動向を見守る場所として高所は好条件だった。

だが高所は周囲を見渡すには便利だが、一方で敵からの視認性も向上する。
その危険性が理解出来ない魔女狩りではない。

それでも彼には自分の魔女狩りとしての実力への強い信用があった。

絶大な火力と無制限の範囲魔法を用いる魔女を狩る者。
魔女狩りに求められる素養は、剣の腕でも、魔法の技能でもない。
逃げ延び、生き残る才能。
敵の認識外へと消え去り、やり過ごし、そして再び平然と敵へ挑んでいく能力。

一切の目的や拘りを放棄し、逃げに徹すれば、例え甲種であっても自分を捉え切れない。
ヴィクトルにはその自信ががあった。

171 :地走 ◆0wOjk6u1BM :2015/12/23(水) 17:55:44.50 0
――夢を見ていた。

オメルタ様に抱かれる夢。

。。いや、夢というよりも、幻、私の理想を妄想していただけなのかもしれない。
場所は勿論――ここ。私のお屋敷の、オメルタ様の部屋。
ここは私にとって、全てだった。

冒険者になんて、ならない方が良かったかもしれない。

人を殺すのは好き。甚振るのも好き。
相手の自由を奪い、自分のものにできるから。

でも、私にとって幸せだった頃は、”冒険者”としての私、”パウレット”になる前だ。
特に甲種冒険者になる前のことが、私にとっての理想。
甲種になった私は、屋敷の人間から一目置かれるとともに、よそよそしくされ、”モノ”とみなされた。

特にオメルタ様――!! あの方は甲種になってから私を手足のように扱うようになった。
愛情も徐々に薄れ、周囲の侍女の方が接しやすいかのようにも見えてしまう。

手を血で汚し、心臓を止めて行く度に、あの方はどんどん離れていくような、そんな感覚。

その時、足音が私の心を呼び覚ませた。いつもそうだ。
冒険者になってからは、殺すか殺されるかの世界に慣れすぎてしまっている。

その足音から相手の経験や力量が測れる。結構な使い手、男で、一人だ。

>「姐さん、起きてますかい」

「はぁーい」
私は薄手のドレス一枚のまま、扉を空けた。
まさか突然出てくるとは思わなかったようで、驚いたみたいだ。
「ちょっと待ってて」

早めに服を着替え、黄土色のローブ姿になる。
急用で呼ばれるのは決して少ないことではないが、折角の夢を端折られ、
気分は決して良くなかった。
鏡の前で顔を拭き、髪を梳かす。

「お待たせ。何の御用?」
後ろ手のポーズで腰を落とし、極力笑顔を作る。

>「オメルタ様から姐さんとチーム組むように仰せつかいやした。
 ついでにアバット様も探してくるように言われてるんすけど、こっちに来ませんでしたかい」

172 :地走 ◆0wOjk6u1BM :2015/12/23(水) 18:30:42.67 0
私は驚愕した。
どうしてオメルタ様が、私より先に、チームの片割れに先に情報を入れたのか?
もし来たのが女だったら、その場で激昂し、縊り殺していたかもしれない。

一瞬、目つきが変わったのを、この男に見られてしまっただろうか?
しかし、私は何とか作り笑いをして、感情を押し殺した。

「分かったわ。知っていると思うけれど、私は”地走”、よろしくね。
アバット…様?確か、「疲れたから寝る」と仰っていたと思うけど」

オメルタ様に「少女のようだ」と言われる笑顔で答える。
痕跡は消したが、部屋に入れれば臭いや気配で気付かれるかもしれない。
急いで部屋を出て、屋敷内を歩きながら話すことにした。

話題を切り替える。男は”鋭鋒”と名乗った。
「良い武器。ところで鋭鋒…あなた、ロクムは好き?
さっき部屋から持ってきたの。後ろに積んであったでしょ?」

ロクムはこの地域では古くから親しまれる、甘い菓子だ。
特に富裕層などでは、大皿に大量のロクムが、保存食のように置かれていたりもする。

「薔薇の香りが入ったロクム。これ私の大好物なの。一つあげる。
ゲームをしましょう♪ 赤と白、貴方ならどっちを選ぶ? どちらかが激辛」
ローブから保存食のロクムを二つ手に取り、鋭鋒の前に差し出し、選ばせる。
体を捩って上目遣いに鋭鋒の瞳を見た。

困惑しながら赤いロクムを取った鋭鋒。続いて私は残った白いロクムを自分の口許へと寄せた。
「さ、一緒に食べましょ! せーの、で噛むの」

――その一瞬。ロクムを口に落とす瞬間、私はロクムの落ちる時間を巻き戻し、
袖口に潜ませたもう一つのロクムとすり替える。
マジックを趣味でやっていたけれど、それの応用版。相手は全く気付かない。
私はこれを、人殺しのギャンブルに使ったことがある。

「ん、おいし♪」
辛さに悶絶し驚く鋭鋒に、私は手拭いと、隠していたもう一つのロクムを見せる。

 「もしこれに、猛毒が入ってたとしたら――?」

鋭鋒の顔を覗き込む。今度はしっかりと眼を見据えて。
”怯え”の色が走った、と私は思った。
よし、今日はちょっと街でデート、ウィンドウショッピングでもしましょう。
お金もあるし、彼から色々と聞き出すチャンス――。

そしてもしオメルタ様の許に新しい女がいることが判ったら……


 ”一刻も早く殺さなくてはならない。”
 ”一刻も早く殺さなくてはならない。”

なるべくオメルタ様がいそうな場所を通り、屋敷の外へと向かったが、
残念ながら彼の姿を拝むことができなかった。
私は鋭鋒と二人で、街へと向かっていた。
とりあえずは一番懇意にしている薬屋のある、北側へ。

173 :地走 ◆0wOjk6u1BM :2015/12/23(水) 19:16:32.80 0
街への一歩を踏み出した時、周囲で声が上がった。
火事だ!火事があったようだ!!魔女狩りの仕業だ!

振り返ると、既に屋敷にも通報が行われているようで、街の警護が門番と何やら話している。
「鋭鋒、念のため屋敷に行って、放火魔を始末する冒険者を手配しておいて」

何で俺が、という顔をする鋭鋒も、ちょっと不機嫌そうな顔をするとすぐに動いてくれた。
結構可愛いところあるじゃない。こういう男は嫌いじゃない。
それに、悔しいことに、私よりも下手な腕利きの乙種が話した方が門番はずっと話を聞く。
悲しいことに私は籠の中の鳥。所詮は世間知らずという目で見られている。

「ありがと。後で一緒にお茶しましょ。奢ってあげる」
いやそんなのは良い、と言う鋭鋒の手を引いて、二人は街の北区画へと向かった。
逃げ惑う人々や野次馬が走り回る街へと突入する。
この格好なら、ちょっとした冒険者の二人組としか思われないだろう。

目的地の薬屋は燃えていた。
たった一人の店主である、初老の男は、私も何度かオメルタ様と一緒に会ったことがある。
ここなら”アレ”が手に入る。
今ここで焼かれる訳にはいかない。崩れ落ちる屋根の木片が店主に当たるのを弾く。
「おじさん、水、私たちも手伝うから」
おじさんの指す方向を見ると、すっかり枯れた防火用水が見える。普段から井戸を使って補充していなかったようだ。
「これだけあれば、いけるわ」

「はぁっ…」
桶に4分の1も溜まらないほどの深さの水だったが、私はそれを素早く掬い、最大限の力で屋根の上に放った。
水は薬屋の狭い店舗を取り囲むようにして残る。手伝う鋭鋒もそれには驚いている。
格闘技と時空魔法の応用。放たれた水は水龍となり、炎へと縦横無尽に襲い掛かる。
他の二人の力もあって、あっという間に火は消し止められた。

鋭鋒は「何でこんなに必死なのか」という顔をしているけれど、気にしないことにした。
隠れていた火事場泥棒が逃げ出すのが見えた。目標はここだったみたい。
ほんのコンマ秒のこと、私は毒針を取り出すと、そいつの急所を狙い仕留めた。

ありがとう、と例を言ったり、その男とは付き合ってるのかを聞くおじさんの話は、
私の耳には殆ど聞こえていなかったと思う。
「ねえおじさん、”ロクム・イシュテ”はどこにあるの?」
”ロクム・イシュテ”とはアレの隠語。鋭鋒は勿論、お菓子のことだと思って首を傾げる。

鋭鋒を置き、私は案内されて薬屋の奥に向かった。
アレの束がおじさんの手から取り出された。全財産?結構な量じゃない。
私は無言で、おじさんの首の骨を砕くと、死んだのを確認して、全部を懐に入れた。
これだけあればどれぐらい持つかな?
倒れている火事場泥棒を片手で担ぎ、毒針を抜くとナイフを持たせておじさんの胸に刺した格好にする。

「うん、大丈夫、行きましょ。おじさんから薬草、もらっちゃった。
元気だから、後は大丈夫だって」
有無を言わせない目で、次の目的地である『砂漠の海亀亭』に向かう。

その建物も消化が行われていたが、まだ火の手が残っていた。
あそこはオメルタ様と一緒に料理を食べた思い出がある。できれば潰れないでほしい。

鐘塔のある方向が騒がしくなっている。放火魔が追いたてられているのかな?
もし”魔女狩り”だったら、ついでに可愛がってあげよう。
私はロクムを噛みながら、舌舐めずりをした。

174 : ◆0wOjk6u1BM :2015/12/23(水) 19:26:10.85 0
【と、ここまで書きましたが、これで”地走”を引退させていただこうと思っています。
理由は第一に急遽、年末以降が忙しくなったので時間が取れそうにないこと。
それと第二に、人数が四人になり、タイミングの関係でプレイヤー同士が息を合わせるのを
阻害しているのではないか、と体感したことです。勿論、今後私のペースが遅くなることの危惧もあります。
なるべく早い方が良いと思ったので、丁度合流できそうなあたりまで書かせていただきました。
ヴィクトルさん、ラウテさん、リタリンさん、応援やアドバイスありがとうございました。
申し訳ありませんがこれにて”地走”をNPCとし、失礼させていただきます。】

175 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/23(水) 20:33:53.02 0
さようなら。俺の目に狂いは無かったようで嬉しいよ
……これは決して、GMとして公平性を保とうとしたラウテを責める言葉ではないと明言しておくがな

まぁ、気を改めて
これからのレス順についてなんだが、まずはもう一度俺のターンとして
それから従来通りラウテ、リタリンと続ける形にしてもらいたい

まぁ、もう年末だ
これまでより少しばかり長い時間をもらう事になるかもしれないが、いいだろうか

176 :名無しになりきれ:2015/12/23(水) 21:05:16.63 0
ひくわー

177 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/26(土) 18:59:30.79 0
次の順番は希望によりヴィクトルさんとのことでしたが、いつ頃投下可能でしょうか?
予定日が分かるのでしたら言って頂けるとありがたいです。

178 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/26(土) 19:55:38.60 0
あー、すまない
俺としては一応、GMの許可を待っているつもりでいたんだ
完全にすれ違いが生じていたな。重ねてすまないと思っている
遅くともあと3日でレスを都合しよう

179 :シャビ ◆n/2dLlMtSI :2015/12/26(土) 21:01:18.28 0
名前:シャビ・ティムレ(シャビ&ボンズのシャビ)
年齢:23
性別:男
身長:171cm
体重:53kg
種族:人間
職業:盗賊
性格:シャビ&ボンズのどちらかというと慎重な方
利き手:左
魔法:使えない
特技:ジャグリング
武装1:シミター
武装2:ソードブレイカー
武装3:投げナイフ
武装4:煙玉
防具:レザージャケット、ターバン
他所持品:色んな偽造品
容姿の特徴・風貌:色黒で細身。相方のボンズとは対照的
将来の夢(目標):一発当てて金持ちになる
簡単なキャラ解説:街のスラムに住みついている盗賊の一人。雑魚。

【雑魚キャラで盛り立て役です】
【一般ピーポーの一員として盛り立てる役なので、ターンやストーリーの本筋から外してください】
【適当なタイミングで殺してくれても結構です】

180 :シャビ ◆n/2dLlMtSI :2015/12/26(土) 21:11:15.61 0
おう
俺だ

ん?俺だって言われても分かんねーか?
シャビ&ボンズのシャビだよ。
スピードのシャビ、パワーのボンズって言われてんだ。
シャビ&ボンズの細い方、酒好きな方、甘党の方とも言われてる。
まぁ結構ここらじゃ鳴らしてるコンビだ。

昨日は結構なカセギだったぜ。
中央広場近くの宝石屋の裏口から大量の宝石、ゲットしたぜ。
気付かれちゃいなかったが、ボンズの奴がコケちまって、宝石の一部を落としたが、
何とか持ち帰ったって訳よ。

この北区画にゃ1週間ぐらい前から住んでる。
丁度良い空家が見つかったんでね。俺ら2人で住んでんだ。

お、外が騒がしくなってきたみてぇだぞ。
おい、ボンズ、ちょっと行ってみようぜ?

火事だって?
あーちょっと待ってくれ。俺は武器の手入れがあるから。
お前は良いよなーそのぶっとい剣だけでよ。

あぁ、分かってる。
火事場泥棒って奴だろ?勿論いくぜ。稼げる時に稼がなきゃな。

そんな感じで俺たちが表に出ると、結構な騒ぎって訳よ。
見た感じだけでも5軒は燃えてたんじゃねえかな。

181 :シャビ ◆n/2dLlMtSI :2015/12/26(土) 21:47:43.54 0
俺らは基本殺しはしねえ。いざって時だけだ。
中央区画では俺はジャグリングでたまに路銀を稼いでたんだぜ。ナイフの腕前もついでに上げられる。
ただ、ボンズの奴が何もできねえって拗ねやがる。
おっと、話が反れちまったな。

で、最初に見たのは薬屋だ。
薬屋ってのは嫌なもんだな。燃えるとやべぇ臭いがしやがる。
薬屋の親父は必死に消そうとするのに、全く消えやがらねえ。チャンスだ。

ボンズが俺に合図を送る。俺はもっと慎重にいけよ、って言っといたぜ。
なんせアイツは見た目によらず調子に乗りやがる。
俺は見張りで、ボンズは盗める範囲のものを盗み出した。手馴れたもんだぜ。親父は消すのに手一杯だ。

すると向こうから二人組がきやがった。片方は筋肉質の男で丁度自分を一回り大きくしたような風貌だ。
でかい槍持ってやがる。冒険者だろう。こりゃやばそうだ。
もう一人は気味が悪い。背が高いローブの人物だ。男か女かは分からんが、歩き方や体の線から女に見えなくもない。

戻れ、と俺はボンズに行った。奴はだいぶ奥に行ってやがる。まあ、大丈夫だろうが。
さっきの二人組は薬屋を助けに行った。どうやらローブの方は女みてえだな。
俺らと当業者とは思えねえ、何をおっぱじめるつもりだ?

おわっ、と声に出ちまうところだった。
魔法だ。防火用の水で魔法を出しやがった。
女が必死になっていて、男の方はそれを神妙な顔で見てやがる。
体の線ではっきり女だと分かったぜ。そのときだ。

ぐおっ、っていう何かを潰すような唸り声がしたと思ったら、女がこっちの方向を一瞬だけ見てたんだ。
青くて恐ろしい目だった。すぐ店の方を向いたが、その瞬間ボンズがまさか死ぬとは思わねえだろ!
あれが原因なのか?それとも煙の中毒なのか?振り向いただけで人を殺すような奴がいるのか?
人間なのか?そもそもあの女は…?俺はそのまま立ちすくんで動けなかった。

182 :シャビ ◆n/2dLlMtSI :2015/12/26(土) 21:48:21.46 0
突然、店のテントから人間が現れた。あのフードの女が、ボンズを引きずり込んで、
いや待てよ?!持ち上げたぞ?片手で。俺の倍近くの体重のある、あのパワーのボンズをだ。
ただただ俺は、自分の命が助かって欲しいと願ってたんだ。情けねえ。

事が終わったらしく、男と女が連れ立っていった。
俺はボンズが入れられた店の中を覗いてみた。信じられるか?

そこで見たのは、ボンズがあの薬屋の親父を投げナイフで刺したまま倒れてる姿だったんだよ。
有り得ねえ!!
マジこんなの有り得ねえって!俺ぁマジックで生計立ててたこともあったが、
こんなのってアリかよ?
ボンズだったら普通にでかい剣で相手を仕留めるはずだろ?
しかも脈がねえ。二人とも死んでやがる。
これでシャビ&ボンズも解散かよ。え?
やっぱりあそこでさっさと戻っときゃ殺されずに済んだんだよ。

で、俺はどうしたって?
勿論逃げたさ。ボンズの形見の腕輪と、とりえあず薬屋の金目のモノを持ってな。
俺が疑われるに決まってる。

とりあえず確実に言えることは一つだ。
あの二人は自警団なんかじゃねえ。もっとやべえ何かだ。
あいつらを付けるしかねえ。そして隙があればボンズの仇を取ってやる。
俺はこの街の誇り高い盗賊だぜ。

右側には鐘塔。騒がしくなってきやがった。
放火魔よ、本当は感謝する立場だったんだぜ。
だがよ、ダチが一人やられちゃ、元も子もねえ。
せめてアンタは無事に逃げてくれ、と、自警団に追い回されてるらしい放火魔に言いてえ。

さて、次の火事場は『海亀亭』か。あそこはオメルタのヤローのショバだ。
あっちの連中がたんまりいるだろうぜ。
男と女が連れ立って歩いてやがる。あいつらやっぱ、デキてんだろうな。
ぶっ殺してやりてえが、かなわねえ。我慢だ。

ボンズの腕輪を俺の腕に通してみたが、やっぱあいつ、デブだったんだなあ。
涙が出そうだぜ。
おう、まだまだ倒れる訳にはいかねえ。
シャビ&ボンズはこれからだぜ、ボンズよぉ。

183 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/28(月) 04:18:38.45 0
火災の通報を受けて、北地区に冒険者が集まってくる。
ヴィクトルはその様を高所から観察していた。
火災の際に冒険者達が緊急の依頼という体で現場に駆け付ける事は珍しくない。
だが――「消火活動もろくに進んでいないのに放火魔を見つけ出そうと駆けずり回る冒険者」は、極めて珍しい。

「間抜けだな……お前達じゃなく、お前達に指示を出した人間が、だが」

ヴィクトルが弓に矢を数本まとめて番え、引き絞る。
そして上空へと放つ――風の魔法により「道」を用意された征矢が地上へと降り注ぐ。
それらを察知し身を守る事は、放火魔を探す事に集中する冒険者達には出来なかった。

作戦と人員の関係上、華翼達と戦う際には矢面に立ったが――ヴィクトルも本来はこういう戦いを主体としていた。
魔女狩りの敵は魔女――人の形をした怪物なのだ。
故に必然、己は無傷、敵は一方的に殺められる戦法こそが至上という価値観に辿り着く。

だが――どれほど手を尽くしても、魔女狩り達がその戦法を一貫出来る事は少ない。
魔女の魔法は無軌道、無規則と称しても過言ではないほどに優れている。
例えば――立ち上る煙に時間停止を施し、それを踏み台に「地を走る」かの如く一瞬で鐘塔の頂上に至る。

その程度の芸当は、真の『魔法』を持つ者ならば容易い事なのだ。

「うふふ、隙だらけ」

鐘塔の上で弓を構えるヴィクトルに地走の前蹴りが迫り――その首から上を吹き飛ばした。

頭部を失ったヴィクトルが――ぱしゃりと、水音を立てて弾けた。
水鏡による鏡像だ。
戦闘の勘や魔法の素養がある者ならば、魔法による欺瞞を見破る事は難しくない。

だがそれは十全な判断力が発揮出来る状態ならば、だ。
先入観や思い込みを抱えた状態では、本来見破れる筈の幻惑に掛かる事もある。
例えば「矢は上から射掛けられた」と考えている状態で鐘塔の上の鏡像を見れば――それが下手人の姿だと、思い込んでしまうだろう。
薬物による症状か生来のものか、精神の均衡の乱れた地走には、覿面だった。

「……なんだ?今のは」

自分の鏡像に攻撃を仕掛ける地走の姿を、ヴィクトルは別の建物の屋根から見ていた。
地走が虚空を踏み抜き、空へと駆け上がる瞬間を。

「高練度の飛翔魔法……いや、だとしたらあんな動作は不要だ。
 風魔法によって固化させた空気を足場にしたのか……?」

まずは敵の「強み」を暴く必要がある。
ヴィクトルの呟きは風の魔法によって堕廃の魔女と魔笛の少女にも通じていた。

「……もう少し、動かせてみるか」

ヴィクトルは弓矢を構え、鐘塔に一旦足を乗せた地走を射る。
雷光の如く閃く征矢は音もなく地走へと迫り――その鏃が彼女の皮膚に届く。
瞬間、矢の動きが静止した。

地走が体表の極一部のみに時間停止を施したのだ。
鏃の先端が皮膚に触れ、それにより生じた僅かな痛みを感じた瞬間に。
それは超人的な反応速度と時空魔法の才が成す――絶対防御。

「……どうなってやがる」

地走は飢えた狼の如き俊敏性でヴィクトルへと振り向く。
同時に射掛けられた矢を掴み――彼へと投げ返した。
時間の加速によって驚異的な速力を秘めた尖矢は一瞬にも満たない間にヴィクトルを貫く。

184 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/28(月) 04:19:43.25 0
「だが……やりやすい相手だな。獣のような奴だ。そして……俺は狩人だ」

そのヴィクトルも――やはり微かな水音を立てて弾けて消えた。

ヴィクトルの実像は、そのすぐ隣にあった。
水鏡の魔法による――風景との同化。
これもやはり、地走が気付けなかったのは心理誘導――虚像との併用が理由だった。

しかし――それも気付くまでの時間が多少長くなる程度の効果しか望めない。
ヴィクトルはすぐに逃走を開始した。
屋根の上から飛び降り民衆に紛れながら、東地区へと逃げる。

スラム街化した西地区の真向かいに位置する東地区は、
住宅街と、北地区のものよりも小規模な商店の散在する大衆地区だ。
高低差のある建物がある。人混みもある。

逃走経路としても、観測地点としてもお誂え向きだ。

「まずは……甲種を丸裸にしてやらないとな」



【遅くなってすまなかった。地走の操作に関しては華翼、氷城と同等でいいと思う】

185 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/28(月) 20:03:58.68 0
ラウテたちが捜索としてまず辿り着いたのは『砂漠の海亀亭』という比較的大きな飲食店だった。
オメルタの息のかかった店だという噂もあり、とりあえず最も怪しい店だろう。
店内に入店したのはリタリンと一匹の犬のみ。ラウテと二匹の犬は店の裏手で待機していた。
ラウテはその手に魔笛を握り締め、入店した犬とリンクを繋いでいた。
視力も低く色彩も曖昧な犬の視点はあまり役に立たないが、その分匂いとして膨大な情報が流れてくる。
昼食の時間にはまだ早く、店内は比較的空いていたがそれなりに賑わっているようだ。
犬には目的のハーブの匂いは覚えさせている。騒がしい厨房から漂う匂いから識別することは可能だろう。

リタリンの連れている犬が、早速一声吠えた。ビンゴ、という合図である。
しかし、漂うのはハーブの匂いだけではなかった。犬は続け様に、連続して三回吠える。
異常事態、の合図だ。その意味はすぐに分かる、店の裏手から煙が流れ出したのだった。
店の裏手で待機していたラウテはすぐ気付く。火災が発生したのだ。

「リタリン、火事よ。それも魔力を感じる…」

急いでリタリンに声を飛ばす。これは只事ではないと感じたのだ。
しかしこんな店に火を掛けるのは何者か、どういう理由が考えられるのか。
このタイミングで事故や愉快犯による放火は考えづらい。私たちの行動と何かリンクしているはずだ。
次に思い付いたのは、あのヴィクトルの仕業という可能性だった。
彼のやり口ならその可能性は高い。地走を炙り出す作戦かも知れない。
ならば…と、ラウテは一つ目蝙蝠を召喚し、周囲を空から偵察させた。
……間違いない。火の手はこの北地区で計五箇所、同時に燃えている。
こんな楽しい作戦を、ラウテたちに相談もなしにするなんて心外だ。ラウテはそう微笑んだ。

火の手はあっという間に燃え広がり、店を覆い尽くすに至る。
この地区で五箇所も燃えているのだ。消防隊の到着も間に合わないだろう。
大規模な火災から街を守る方法は二つある。
一つは、魔法の行使による力技の消火活動。しかしこれには確かな人材が必要になる。
もう一つの方法は、周囲の建物を破壊して延焼を防ぐ破壊消火と呼ばれる方法だ。
この方法は最小限の被害で延焼を防ぐという発想から成る。
大規模な魔法を行使せずとも延焼を防ぐという目的は果たされるため、昔から多用される傾向にある。
つまり消火活動はその建物より、周囲の建物の破壊に集中する。だからこそ出来ることがあった。

「リタリン、今なら気付かれずに店主を確保出来る…やれる?」

火事の最中、その店主はというと奥の金庫から現金や書類を持ち出そうとしていた。
命よりお金が大切に感じるのかどうかは知らないが、少なくとも捕らえるのは容易いだろう。
火事から逃げ延びようとしていると偽装すれば、人一人抱えている事など不自然ではあるまい。
それに今ならば、打ち合わせどおり裏口の安全は確保出来ていた。
しかし……。

「…冒険者が近付いてる。男が一人、槍みたいなものを持ってる。殺すのは難しいかも」

男は紛れもなく鋭鋒だった。名前などラウテたちが知る由もないが。
雰囲気から察するに男は乙種でも上位の実力者、先の二人の力を凌ぐだろう。
正面から当たるのは得策ではないと考えたラウテは、撤退を進言した。

186 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/28(月) 20:09:00.16 0
【>シャビさん】
【参加は構いませんが、今のタイミングだと活躍するのが難しいかも知れません】
【今のターンは言わばボス戦に挑む最中ですから、少々合わせるのが難しいかと】
【うまく話を合わせられそうでしたら良いのですが、空気をしっかりと読む事をお願いします】

187 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/29(火) 05:27:42.12 0
>>179
投下が遅くなってしまった事への焦りから、挨拶を忘れてしまっていた。すまない
よろしく、アンタを歓迎するぜ
今んとこ(これは先の出来事で少しナーバスになっているだけで深い意味はないんだが)アンタの立ち回りはかなり好みだ
同僚として絡みに行くのは俺には少し難易度が高いが、どうか楽しんでくれ

188 :シャビ ◆n/2dLlMtSI :2015/12/31(木) 12:00:38.39 0
おう
俺だ

シャビ&ボンズのシャビってんだ。

さっきローブの女に相棒を殺られた。
しかも薬屋の殺人犯に仕立てられたってもんだ。たまったもんじゃねえ。

海亀亭に着いたぜ。つってもだいぶ離れた場所で様子見してるんだけどな。
と、ローブの女が動いた、ってか消えた。物凄い速さだぜ。

その先には先客がいるようだな。地味な女と小さいガキだ。
同じような犬を三匹も連れてやがる。
どうやらローブの相方の男がそれに気付いて構えたようだ。
ここでドンパチ始まるようだな。

ん?俺の姿が犬に見つかったのか?犬の一匹がこっちを見てやがる。

鐘楼の方を見ると、ローブの女が放火魔らしいエルフ風の男と一戦交えてるじゃねえか。
物凄いスピードだ。周りの連中がどんどん脱落していくぞ。死んでる奴もいそうだな。

おう
ここで会ったが百年目だぜ…
丁度女が回し蹴りをした瞬間、こっちにケツを向けた。今がチャンスだ…

俺は投げナイフを掴むと、女のケツ目掛けて渾身の力で投げた。
ケツに刺さりはしなくても、これで隙が出て奴が怯めば、放火魔側にも勝ち目はあんだろ。なぁ?

あれ?頭の、眉のあたりが痛ぇ… 何だこれ。
女が一瞬こっちを振り返ったのは見えたが、何事も無かったかのように戦ってやがる。
そのうち、ここを離れてどっかに行っちまいやがった。

そろそろ海亀亭の方に行かねえと… あれ?体が動きやがらねえ。
毒か?あぁ、何か体が痛ぇ! 苦しいぞこれ… 俺、倒れてるみてえだ。

おう
ボンズよう、俺、どうやらお前のところに行けそうだぜ?
なぁボンズ。俺ら、良いコンビだったよなぁ?
あの世に行ったらまた、シャビ&ボンズ、やろうぜ。大金持ちになんだよ。

あぁ、死にたくねぇよ…!でもこれ、死ぬんだぜ…
おう…

【シャビ死亡
楽しかったぜ】

189 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/31(木) 19:55:39.12 0
オメルタ傘下の乙種冒険者『鋭鋒』は随所から火の手の上がる街を駆けずり回っていた。
これだけ走り回って額に汗の一つもかいていないのは日頃の鍛錬の賜物であるが、
額の下の双眸は、怪訝と驚きと釈然としなさ、多種の感情によって複雑に歪んでいた。

やっとその実力を見ることができると期待していた甲種『地走』。
しかし彼女は最初に訪れた薬屋の安否を一人で確認した後、鋭鋒を置いて疾走していってしまった。
向かう先は先ほど高所から弓を降らせてきた狙撃手だ。居所が知れれば近づいて殴りに行くのはまあわかる。
しかし地走のサポート、言ってみればお目付け兼小間使いとしてつけられた鋭鋒は、地走から目を離すわけにはいかないのだ。

「しっかしすげえ魔法だな。あれが『地走』の時空歪曲……」

立ち上る煙を『停止』させ、それを足場にして地走は空を疾走する。
試しに鋭鋒も登ってみようとしたが、地走が使ったそばから解除されていくらしくすっ転んでしまった。
話には聞いていたが、改めて目の当たりにするととんでもない高位魔法だ。
魔法の心得のない鋭鋒には専門的なことはわからないが、十三階梯は余裕で超過する禁呪の領域であろう。
あんなものをまるで呼吸でもするみたいに乱発できる出鱈目な魔力、まさに甲種の面目躍如といったところか。

とまれかくまれ、こうなってしまっては地走を追いかける手段はない。
それよりも『砂漠の海亀亭』の方を押さえて、それから合流した方がスムーズにことが運ぶだろう。
狙撃手の人着は鋭鋒も確認した。先の処刑台で乙種二人を制した魔女狩りだ。紛れも無い掛け値なしの凄腕である。
それでもなお、甲種には敵わないだろうという確信めいた予感があった。
ただの地上げ屋に過ぎなかったオメルタを、フロンティアラインの支配者にまで躍進させた礎の一つ。
数々の利権渦巻くこの街で、これまで何度も訪れた抗争、戦闘、小競り合い……
そのすべてに勝利してきたのが地走であり、甲種冒険者なのだ。

鋭鋒が『砂漠の海亀亭』にたどり着いた時、既に消火活動はヤマを超えていた。
近隣住民の手によって延焼防止に周囲の建物が崩されていく。
その中で、破壊消火の音頭をとっていた自治班長に鋭鋒は声をかけた。
オメルタが支配するこの街のこと、この班長も当然オメルタ傘下の人間で、鋭鋒とも顔見知りだった。

「状況はどんな感じだい?」

「おお、ボスの所のあんちゃんか。今ちょうどぐるっと周囲の建屋を潰したところさ。
 他のところも順調だって聞いてる、あとは消防隊が来るのが先か、燃え尽きるのが先かって所だな」

水源が限られているこの街において、破壊消火は非常に有効な消火手段だ。
しかし消火と言っても直接火を消すわけではないので、たった今燃え盛る大衆食堂自体に手出しをすることはできないのだ。

「そりゃ良かった。ここの店主は?」

「それがな、店員を脱出させた後に家財を取りに行くって中に残っちまって。
 俺たちゃ止めたんだがな。命あっての物種だろうに、なんだってこんな……」

班長は心底気の毒そうに言った。
彼には、そして鋭鋒も知る由のないことだが、ここはオメルタの薬物精製所も兼ねている。
家財はともかく上納分の薬物だけでも確保しておかないと自分に明日はないと店主も理解しているのだろう。

「他になんか変わったことはあったかい」

魔女狩りに関する情報が何かないか、確認するつもりで鋭鋒は尋ねた。
班長がそういえば、と手を打つ。

「逃げてきた客の誰かが、まだもう一人客が店内に残ってるって言ってたな。
 非常時で曖昧な情報だし、火勢がこんなだからまだ確認はとれてないんだが……。
 苔みたいなローブを着た、肌の白い陰気な女だって話だ」

――――――

190 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/31(木) 19:56:14.60 0
時は少し遡り、まだ無事な『海亀亭』のテーブルの一角。
リタリンはいつものローブを着て給仕の到着を待っていた。
隣にはラウテから借り受けた犬が行儀よく座っていて、撫でようとしたリタリンの左手をべろべろと舐める。
これまで犬と言えばスラムで人の吐瀉物を貪るギラついた眼の汚い野良犬ぐらいしか見たことがなかったので、
純粋に好奇心と好意をこちらに抱いてくれる飼い犬とのふれあいは温かいものをリタリンの胸にもたらした。
その犬が、厨房からの匂いを嗅ぎとって、小さくひと吠えした。

「みつけた?」

ご褒美の干し肉を小さく割いて与え、ついでに自分も咀嚼する。
ここの油と香辛料の匂いは、空腹の身には辛すぎる。
さて、早速店主を押さえるべく立ち上がる、すると犬が更にもう三回鋭く吠えた。

>「リタリン、火事よ。それも魔力を感じる…」

店の裏手で待機していたラウテから遠話が入った。
ぎょっとして見回せば、天井のあたりが黒く煤けて煙が漏れ始めていた。
屋根の上で何かが燃えているのだ。

「えっ、えっ、どうしよう。魔力?誰かが火をつけたの?」

混乱収まらぬままに通行人の一人が店に飛び込み、火事だと客達に伝える。
昼前でさほど客入りがあるわけではないのが幸いしたのか、急ぎつつもパニックとはならず避難が開始された。
リタリンは他の客に先を譲りながら、気を落ち着かせようと深呼吸して、噎せた。
煙に巻かれた犬は薄情にもリタリンを置いて逃げ出してしまった。

「ごほっ、ごほっ……う、なんかいやな予感が……」

屋根からの出火だとすれば厨房の火の不始末が原因ではない。完全に不審火だ。
そして出火元の位置関係的に、火種は上から投げ込まれる形で、通行人には見えない距離から置かれたことになる。
そんな芸当ができる人間には心当たりなど一つしかないのだが――これ以上考えるのはやめよう。胃が保たない。

>「リタリン、今なら気付かれずに店主を確保出来る…やれる?」

「やってみるわ。裏口をお願い」

火は完全に建物全体に回っており、既にすぐそばの柱まで燃え始めていた。
じきに火のついた天板が降ってくるようになるだろう。そうなる前に脱出しなければ。
気休めにテーブルに置かれた水差しの中身を被り、湿気ったローブで頭を覆いながらバックヤードへ向かう。
果たして、『海亀亭』の店主はそこにいた。一心不乱に何かをかき集めて鞄にしまっている。
火は裏にも回ってきており、取りこぼしと思しき粉が焼けて異臭が漂っていた。

「ごめんなさい」

こちらを見ようともしない店主の後ろ頭目掛けて、杖を振り下ろした。
水晶球と頭蓋骨の激突してごちんと音を立て、店主は昏倒して膨れた鞄の上に沈む。
気絶させてから、しまったと思った。男一人を抱えて店から脱出するなんて到底ムリだ。
だからといって薬だけもらって店主を見捨てるわけにはいかないし……

>「…冒険者が近付いてる。男が一人、槍みたいなものを持ってる。殺すのは難しいかも」

ラウテから注意喚起の遠話が飛んできた。
弾かれるように振り向く。その瞬間、焼け焦げてもろくなった壁が爆ぜるようにぶち破られた。
瓦礫を蹴り飛ばしながら一つの人影が入ってくる。
背が高く、がっしりとした体型の男。手には長槍を持っていて、この石突で壁を破ったのだろう。
浅黒く焼けた肌、彫りの深い精悍な顔つき、頭に巻いたターバン。
リタリンはこの男についても一年の調査で知っていた。オメルタ傘下の用心棒だ。
槍使いの乙種冒険者、『鋭鋒』の異名を持つ手練である。

191 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/31(木) 19:56:35.58 0
「――――ッ!!」

「おい大丈夫か!?」

鋭鋒はリタリンと、その後ろで倒れる店主を見て気付けのように叫んだ。
燃え盛る床面を震脚めいた踏み込みでかき消し、何もないかのように歩いてくる。
彼は店主の首に指をあてて脈を確かめたあと、その巨体を軽々と担ぎあげた。

「悪い、そこのパンパンの鞄を持ってきてくれ。大事なものみたいだからな」

生きた心地がしなかったリタリンだが、そこでようやく状況を理解した。
自分は鋭鋒に、店主を助ける為に飛び込んだ善意の市民だと思われているのだ。
よく考えればあの処刑台には身代わりを立てたし、オメルタ側はリタリンの顔を知らないのである。
トレードマークのローブも、深緑はドルイドの民族色なのでそう珍しいものではない。
リタリンもラウテも遠距離から遮蔽物越しに魔法戦を繰り広げていた為、索敵した氷城しか人着を知る者はいない。
つまり、あの場で直接戦闘したヴィクトル以外は面が割れていないのだ。

『ごめん、オメルタの手下と接敵したわ。乙種の槍使い、"鋭鋒"って男……。
 でもこっちの顔はバレてないから、火事の巻き込まれ被害者と思われてるみたい』

声には出さず、遠話でラウテとヴィクトルに連絡を入れる。
ラウテは裏口で待機中、やろうと思えば挟み撃ちも可能だ。
しかし、この段階で顔の知られていないアドバンテージを捨ててしまって良いものか……。
思案していると、店主の身体を自分に固定し終えた鋭鋒が相好を崩して言った。

「大丈夫だ、俺がちゃんと外まで送ってってやるから。しかし迷惑な話だぜ、昨日の処刑台の大立ち回りを見たか?
 この火事、あの魔女狩り野郎が火ィ着けて回ってるんだよ。……どうした?顔色が余計に悪くなってんぞ」

(何考えてるのあの短足〜〜〜〜ッ!)

鋭鋒は、おそらく何も考えずにリタリンを安心させようとして、あるいは魔女狩りの陰口のつもりで言ったのだろう。
しかしそれを聞いたリタリンのただでさえ白い顔が、もはや病的なレベルにまで青くなった。
まさかとは思っていたが、しかしそれでもあの悪魔のような男に最後の良心を期待してしまった。
いくらなんでも仲間が今まさにいる店に、予告もなしに火を放つなどしないだろうと、僅かな願望に縋っていた。
おかげでこちらは煙にまかれて顔は煤だらけ、一張羅のローブもボロボロになってしまった。
その件で文句の一つも垂れたくなったが、ヴィクトルはヴィクトルで取り込み中のようだ。

「さっき確認したけど、この先に裏口があるわ。そっちから出ましょう」

鋭鋒に頼まれた通り、膨らんだ店主の鞄を担ぎ上げながらリタリンは脱出路を示した。
裏口はまだ火に巻かれていない為、そこの使用を提案することは不自然には映らない。
扉を開けた先にはラウテが待機しているはずだ。

『これから槍使いと一緒に裏口から出るわ。適当に話を合わせて』

ラウテが合流するのを鋭鋒に不審がられない為に、適当なカバーストーリーが必要だ。
このレベルの冒険者を相手に下手に隠れて尾行するよりは、無害を装って近づいてしまうほうが安全だろう。
奇襲するのは、ヴィクトルと合流してからでもいいのだ。
燃え盛る店内から、店主を担いだ鋭鋒を伴って、リタリンは裏口から脱出した。


【鋭鋒に対し無害を装い、店主と薬を確保して裏口から脱出】

192 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/31(木) 19:57:57.90 0
>>188
【ご挨拶が遅れてすみません!すごく好きなスタイルなので是非またご一緒させてください!】

193 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/03(日) 03:59:08.68 0
人混みに紛れ、ヴィクトルは水鏡の魔法を纏う。
どこにでもいるような庶民の姿に変装――同時に手近な通行人の衣服に火を点ける。

結果――大混乱が起こる。
人の波に紛れてヴィクトルは細い路地へと身を隠す。
そして背景へと同化し――跳躍。屋上の縁に指を掛ける。
そのまま上方の様子を伺う。

地走は別の屋上から地を見下ろし、しかし動きあぐねていた。
逃げ惑う群衆から水鏡を纏ったヴィクトル一人を見つけ出すのは困難だ。
まさしく干し草の山から一本の針を見つけ出すかの如く至難。
その干し草の山の中に、針があるとは限らないのであれば、尚更に。

(……これで仕切り直しだな。さて、それじゃもう一度「使わせて」みるか)

瞬間、地走が背後を振り返った。
ヴィクトルの位置から、彼女の背後に投げナイフが迫り、しかし傷を負わせる事なく静止したのが見えた。

(……誰の仕業だ?いや……奴らが誰に恨まれていても不思議じゃないか……なんにせよ、好都合だ)

ヴィクトルは屋根の上に登り、矢を弓に番える。
そしてその鏃に火を灯してから、風魔法による軌道を欺瞞を用い、地走へと射掛けた。
火矢は薄紫の軌跡を描きながら地走へと迫り――今度は彼女の直前、空中で静止する。

(……なんだ?今のは……さっきと、何かが違う)

その現象にヴィクトルは微かな違和感を覚え――しかし違和感以上には至らない。

>『これから槍使いと一緒に裏口から出るわ。適当に話を合わせて』

(初戦はこんなもんか。とりあえず……一度距離を取るか)

ヴィクトルは思考を切り替え、その場を離脱。
ただし最後にもう一度火矢を、十数本、今度は街の中央区の上空へと放ってから。
中央区は公共の施設と、極一部の上流階級が住む別荘区がある。

(まぁ、どれが地上げ屋の屋敷かなんて、俺はまだ知らないんだけどな。
だが……お前には、そんな事は分からない。
それに……お前は強い。だから――他の弱い奴らが信用出来ない、だろ?)

地走は強い。その気になれば、富も名声も思うがままに得られるだろう。
それでも地上げ屋の飼い犬に甘んじているのは、強い、強すぎる忠誠心があるからだ。
だからこそ、彼女は可能性を捨て切れない。
地上げ屋の屋敷に火が放たれ、飼い主の身に危険が及ぶ可能性を。

またヴィクトルには知り得ない事だが、地走は先ほど自身のお目付け役である鋭峰を置き去りにしてしまっている。
この事も、ヴィクトルにとっては功を奏していた。

(正直な所、もう少し探りを入れておきたかったがな。
次からは、向こうも対策を講じてくるだろう。きっとやりにくくなる。
せめて……堕廃のが釣り上げた奴は、削っておくか)

中央区へと疾駆する地走の背が見えなくなってから、ヴィクトルは深く息を吐く。
それからこめかみを伝う緊張による汗を拭い、改めて深呼吸した。

194 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/03(日) 04:44:12.33 0
『……よう、さっきは災難だったな。だが怪我の功名か、なかなかいい状況になったじゃないか』

風魔法による遠話で魔女と魔笛の少女に声を飛ばす。

『ソイツはここで始末しておきたい。店主の方も、少し気になる事がある。確保したい所だな』

ヴィクトルは地上へ飛び降り、路地を駆け抜け『海亀亭』を目指す。
最後に地走を見た地点から十分に離れてから再度屋上へ。
そして鋭峰を視認出来る位置まで移動、弓に矢を番え――射掛ける。

視界外からの征矢を、鋭峰はいとも容易く――槍すら用いずに素手で弾いた。
直後に槍を抜き放った彼は、棒高跳びの要領で屋上へ、一瞬の内に昇り詰める。
そして――そのまま動かない。

(出来るな、コイツ。実力があり……判断もいい)

鋭峰はヴィクトルを追わないし、仕掛けない。
彼は目の前の魔女狩りが、所謂邪道的な戦いを得手とする事を知っている。
一度は逃走を果たした魔女狩りがここへ戻ってきたという事は、何か明確な目的があるからだという事も。

だから負わず、攻めない。
この場にはまだ消防隊が到着していない。
つまり――遅かれ早かれ、鋭峰とヴィクトルは他者から目視される。
そうすれば、増援が――地走が再びこの場へ現れるのも時間の問題だ。
仕掛けるのはそれからでいい。
彼は与えられた役目に、地走の援助に忠実だった。

その上で、位置取りも絶妙だ。
細剣の間合いでは、屋根から屋根へ飛び移らないと仕掛けられない位置に立っている。
ヴィクトルの方から攻めようにも、不利な勝負をする羽目になる。

(こういう奴は………やりにくい。ただ強いだけの奴よりも、遥かに)

ヴィクトルは、動きあぐねていた。
それでも瑞鉄で二振り目の細剣を作り、一振りは切っ先を鋭峰へ。
もう一振りを振り被り、地上の魔女と少女へ投擲可能な構えを取る。

鋭峰が二人に、人を呼べと命じる事を牽制しているのだ。
もしそうなれば、二人がそれに応じないのは不自然だ。警戒される。
だが応じられれば今度はヴィクトルが不利な状況に立たされる。

どう転んでも損な状況になってしまう。
ヴィクトルは、それを嫌った。

つまり――状況の打開を望んでいる、という事だ。

195 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/01/04(月) 01:55:32.47 0
>『ごめん、オメルタの手下と接敵したわ。乙種の槍使い、

196 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/01/04(月) 01:57:14.22 0
>『ごめん、オメルタの手下と接敵したわ。乙種の槍使い、"鋭鋒"って男……。
> でもこっちの顔はバレてないから、火事の巻き込まれ被害者と思われてるみたい』

それを聞いてからのラウテの行動は非常に素早かった。
まず、召喚していた犬たちを撤収させ、魔力を回収する。そして、次なる召喚へ移った。
圧縮した高速詠唱のように、速く複雑で奇怪な旋律。それはこれまでのどの召喚よりおぞましいもの。
暫くの『呪文』の後その場に召喚されたのは、巨大な漆黒の不定形生物だった。
以前召喚したスライムに似ていなくもないが、その体からは出鱈目に触手や目玉が生成されては消えている。

「お願いショゴス、あとで餌はあげるから言う事を聞いて」

瘴気を噴出していたその生き物……ショゴスは、それを聞くと大人しくなり、テケリ・リと一声啼いた。
とある魔術師が召喚に成功し、扱いきれず村ひとつを地図から消した化け物だ。詳しい出自は不明である。
村が襲われた時点で討伐隊が組まれ、乙種魔法使いと壁役が十人がかりで討伐に成功した、とされている。
その十人のひとりだったラウテが、仲間たちを出し抜いて契約を行い、辛うじて使役に成功したものだ。
元は鉄道車両ほども大きかった体も戦闘で消耗し、現在のところ大人三人分程度のサイズになっている。
正式な契約とは些か勝手が違ったためか、また知性を持っているため命令をほとんど聞かないのが難点だが、戦闘能力は恐ろしく高い。
基本的に物理属性の攻撃のほとんどを無効化する上、魔法耐性もそこそこ強い。
更に、欠片でも残っていればそこから再生するという強靭な生命力まで備えている。
人工的な生命体である可能性が高いとラウテは考えているが、誰が何のために作ったのかは謎である。
記録に残っているのは、召喚した魔術師はそれをショゴスと呼んでいた、という事だけだ。

出て来た鋭鋒に気取られないよう、近くの民家の屋根裏に姿を隠すよう命令する。
するとショゴスは、その体躯からは想像出来ないような跳躍で屋根裏へと消えた。

>『これから槍使いと一緒に裏口から出るわ。適当に話を合わせて』

>『……よう、さっきは災難だったな。だが怪我の功名か、なかなかいい状況になったじゃないか』
>『ソイツはここで始末しておきたい。店主の方も、少し気になる事がある。確保したい所だな』

手にしていた魔笛を鞘へと戻し、ついでに自分の鼻をぶん殴る。
裏口から出て来た二人が目にしたのは、その目に涙を溜めた少女の姿だった。

「お姉ちゃん! 心配したんだからね! ラウテの心臓がどうにかなりそうだったんだから…」

そう言ってリタリンに飛び付くラウテ。もちろん全ては演技である。
それを微笑ましく見守っていた鋭鋒だったが、瞬間自身に向けられた脅威に気付き、腕を振るう。
叩き落されたのは一本の矢。間違いなくヴィクトルのものだ。ラウテは小さく悲鳴を上げてみせた。
射掛けられた鋭鋒は、ヴィクトルのいる屋根へと跳ね上がる。都合良く、ショゴスの潜んでいる民家だ。
睨み合う両者…その足元で、化け物は息を潜め出番を待ちわびている。

合図をする必要すらなかった。動きを止めた獲物を察して、屋根を突き破り襲い掛かるショゴス。
その姿は醜悪の一言で表すには禍々し過ぎた。無数の牙と触手に覆われたそれを表現する言葉は見つからない。
完全な不意打ちだったが、鋭鋒は強く跳躍することでその牙から逃れる。
しかし同時にショゴスは触手を伸ばし、鋭鋒の足を掴んで屋根へと叩き付けた。
鋭鋒は槍で屋根を突き通し威力を軽減させていたが、ある程度のダメージは負っているだろう。

『その子、こっちにも襲ってくるから気をつけてね』

今更ながら、そう二人にだけ聞こえるよう声を飛ばしたラウテだった。

197 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/01/06(水) 23:49:24.19 0
この街で起きた、オメルタ傘下を含む複数の店舗での同時多発火災。
その調査にやってきた雇われの冒険者・鋭鋒は、救助に踏み込んだ店内で店主と共に取り残された1人の女性客と出会う。
彼女の協力を得つつ、火の手の回っていない裏口から脱出したところから今回の物語は始まる――

>「お姉ちゃん! 心配したんだからね! ラウテの心臓がどうにかなりそうだったんだから…」

裏口から出た途端1人の少女が飛び出して、共に脱出した苔色ローブの女性客に抱きついた。
二人はどうやら姉妹で、火災に巻き込まれた姉のもとへ妹が駆けつけたところのようだ。

「あ、ご、ごめんね、心配かけちゃって……」

姉の方、苔女はなんとも言い難い微妙な表情をしていたが、怖ず怖ずといった具合に少女の肩を抱き返す。
なんだろう、あまり姉妹仲が良くないのだろうか。しかし他人の家庭事情に首を突っ込むことはない。
とにかく姉妹が無事に再会できたことを部外者ながら喜んでおこう――ほっと一息ついたその瞬間。
ビュオ!と微かな風切り音を耳が捉えた。

脊髄反射ではなく思考を経由した上で腕が動いた。
羽撃きに近い速度で右手が閃き、指二本の間に飛来する矢の軸を捉える。
そのまま指先の動きだけで軌道を逸らし、明後日の方向へと弾き返した。

「伏せろ!」

未だ抱き合う姉妹に鋭く警告し、自身は抜き放った槍を用いた跳躍で手近な民家の屋根に上がる。
今の狙撃は明らかに自分を狙っていた。だからまず射線に身を晒すことで的を絞らせ、周囲への誤射を防ぐ。
鋭鋒自身に矢を射掛けられる分については問題じゃないという絶対の自信を裏付けとした動きだ。

「出やがったな、魔女狩り。おいおいおい姐さんを撒いたのか?マジかよ」

鋭鋒の立つ民家から、路地を挟んだ向かいの屋根の一つの人影があった。
たった今射撃したばかりの弓をしまい、ふた振りのレイピアを諸手に構えるその姿。
間違いない、処刑台で華翼を圧倒して見せた魔女狩りのエルフ男だ。
地走が追跡していたはずだが、彼女の姿は見える範囲にない。まさか甲種に追われて振り切ったと言うのだろうか。

(どうなっていやがる……一連の火事から何かが変だ)

処刑台で不覚をとって以来、敵に先手をとられ続けている。
華翼と氷城が捕虜になっている以上ある程度は情報が漏れることも覚悟はしていたが、
オメルタの切り札・地走を動員してもなお魔女狩りを捉えることができていない。
甲種冒険者に対する絶対の信頼が、そのままこの現状への不審へと裏返る。
つまりそれは、鋭鋒を取り巻くこの状況のすべてが魔女狩りの罠なのではないか、という疑念だ。
例えばそう、火災現場に現れたこの苔ローブの女も本当に偶然巻き込まれたのか……?
そんな疑心暗鬼に突き動かされ、魔女狩りへの牽制を続けながら苔女を見る。
鋭鋒は幾多もの戦場で生き残ってきた手練だ。
アイコンタクトで無言の連携が成り立つのと同じように、目を見ればその人物の敵意や悪意の所在を推し量ることができる。

(……あ、シロだこの女、めちゃくちゃすげえ顔で魔女狩り睨んでる)

唇を噛み締め眼を見開き、全力で魔女狩りを睨めつけていた。おおよそ仲間に向けるような表情ではない。
完全に火災に巻き込んでくれたはた迷惑な魔女狩りに向ける怒りに染まった目だった。
まあ命に関わる窮地を脱した途端、妹共々人質のようにレイピアを向けられているのだから納得だ。
目撃者は始末するつもりなのか、これではこの姉妹に増援を呼ぶよう伝えることもできない。
逃げ出した彼女達に、魔女狩りが後ろから射掛けることなど容易に想像できてしまう。

「異端審問会が既得権益の保持に必死、って風じゃねえよな。魔女を処刑したいだけなら、秘密裏にやりゃ良かった。
 裏で誰が糸引いてる?本国の軍部か、枢機院か……飯屋焼き払って教会でもおっ立てるつもりかよ」

言うまでもなく、鋭鋒には魔女狩りが単独でオメルタファミリーに喧嘩を売っているなどという発想はなかった。
フロンティアラインつまり開拓拠点でもあるこの街は伸びしろのある利権が地下資源の如く豊富に眠っている。
オメルタが手にしたものもその一つであるし、宗教家達にとっても裸足の人々に靴を売るようなものだろう。
開拓民に好き勝手やらせておいて、十分育ったらうまみのあるところだけ収穫する、ありふれたやり口だ。

198 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/01/06(水) 23:49:53.39 0
(この膠着も奴の段取りだとしたら、ちっとやべえな)

増援を期待できるのは鋭鋒だけではないということだ。
地走の消息のわからぬいま、下手に時間を稼がれて魔女狩りの仲間が駆けつけても面白く無い。
打って出るべきか?しかしこちらに踏み出させる罠の可能性も高い。
一撃で魔女狩りを仕留める自信はあるが、敵の狡猾さにおいては油断は絶対にできない。
伸るか反るか、永遠のようにも思われたにらみ合いは、突如の闖入者によって破られることとなる。
鋭鋒の足元、下の民家から屋根を突き破って巨大な何かが飛び出してきたのだ。
それは、本当に"何か"としか言い表しようのない、生き物に対する冒涜さえ感じる魔物だった。
ゲル状の不定形な体躯に、寄せては返す波の如く目玉や触手が浮き沈みしている。
その無数の目玉の一つが鋭鋒を捉え、無数の触手を伸ばしてきた。

「何だこいつ……!」

対する鋭鋒の判断は素早く、即座に跳躍することで宙へ逃れる。
だがそれは失敗だった。追従するように音もなく迫る触手により、鋭鋒は下方向へとつかみ落とされる。

「がっ……」

屋根へと頭から叩きつけられた。瞬間的に槍を着地点へ突き立て、衝撃を『伝導』させる。
鋭鋒のぶち当たった箇所から放射状に亀裂が走り、代わりに鋭鋒自身へと向かう威力が軽減された。
しかし完全なる不意を打たれた上に頭へのダメージは無視できるレベルではない。
ぐらつく視界の中、それでも彼が反撃できたのは適切なダメージコントロールが出来ていたのと、あとは超人的な反射神経の賜物だ。
鋭鋒を掴んでいた触手が一瞬で細切れになり、不定形の土手っ腹にも大きな風穴が一つ空いていた。
彼の持つ長槍は瑞鉄で出来ており自在に伸縮が可能、叩きつけられる一瞬のうちに無数の刺突を浴びせていた。

「召喚狙撃……魔女狩りの増援か!」

昨日の処刑台で見たマジックイータースライムのように、距離無視で魔物を召喚してきた。
やはりと言うべきか、魔女狩りもまた増援を待っていたのだ。
こいつはマジックイーターと違って魔力吸収はしないようだが、こちらの刺突が効いた様子もない。
物理攻撃を無効化するタイプだ。

「クソ……おい逃げろ、巻き込まれるぞッ!」

眼下で妹と共にオロオロしていた苔女に声をかける。
もともと白い顔が死人みたいに青ざめていて、やはり巻き込まれてしまっただけの一般人だと確信する。
彼女が妹を引っ張って路地の向こうに消えるのを待たずして、不定形の魔物が再び襲いかかってきた。

「お前の相手なんかしてる場合じゃねえっての!」

今度はバックステップで触手の範囲から難なく逃れるが、依然として魔女狩りはこちらと対峙しているのだ。
鋭鋒からの牽制も活きているらしく迂闊に攻めてはこないが、こちらは都合2つの敵に同時に注意を払わなければならない。
魔女狩りほどの手練を相手に、またこの厄介な魔物を相手に、それは骨の折れる話であった。

(方針は決まりだ……時間を稼いで姐さんを待つ。あわよくばどっちか仕留める!)

化物は見たところ無差別に破壊を繰り返している。下手に逃げまわって行動範囲を広げれば被害が拡大することは必至だ。
そして魔女狩りはそれを厭わない。街を護る側の都合などお構いなしだ。だからまずはその思惑から切り崩す。
鋭鋒は踵を返し、屋根から屋根へと飛び移っての移動を開始した。向かう先は、レイピアふた振りを掲げた魔女狩りだ。
奴の弓であれば真正面から撃たれても躱すか払うかできる。受け流せば背後の化物に当って足止めになる。
魔法で攻撃してくるとしても、仲間の使い魔である化物への誤爆を考えて広範囲の攻撃は難しいだろう。
そうやって近づき、接近戦に持ち込めば、リーチに分のある槍で遠間から攻撃できる。
疾走しながら、槍を抱えて走る動きからまったくのノーモーションで鋭鋒は槍を魔女狩りめがけて伸ばした。
カメレオンの舌よりも素早く伸張する瑞鉄の槍は、所見で躱すのは難しいだろう。

【ショゴスをトレインしつつヴィクトルへ肉迫。同士討ちを恐れて行動の選択肢を狭める構え】

199 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/10(日) 03:33:48.47 0
>「異端審問会が既得権益の保持に必死、って風じゃねえよな。魔女を処刑したいだけなら、秘密裏にやりゃ良かった。
  裏で誰が糸引いてる?本国の軍部か、枢機院か……飯屋焼き払って教会でもおっ立てるつもりかよ」

「俺の目的が知りたいのか?俺は弱い者いじめをする奴が嫌いなのさ。それを金儲けにする奴はもっと嫌いだ」

鋭鋒の問いにヴィクトルが答える。
小馬鹿にするような口調と共に、口元には嘲笑を浮かべながら。
たった今述べた言葉が彼の本心だとは、とても思えないだろう素振りを、彼は意図して行っていた。

その直後だった。
魔笛の少女が召喚した名状しがたき何者かが、鋭鋒へと襲いかかったのは。
迫る無数の触手を跳躍して躱した彼を、しかし「何か」は逃がさない。
死体の喉から溢れる血液の如く更に長く伸びた触手が、鋭鋒の足を掴む。
そして
先程まで立っていた屋根に、今度は頭から引き戻された。

>「がっ……」

まともに受ければ頚椎が折れて死に至る攻撃――しかし鋭鋒はそれを凌いでいた。
自分の体に下方向への加速が完全に掛かる前に、自身を掴む触手を切断。
更に「何か」の土手っ腹を貫いていた。

凄まじい槍捌きだった。その斬撃の速度はヴィクトルのそれに勝るとも劣らない。
「体が完全に地から離れ、踏ん張りの利かない状態で放った」にも関わらず、だ。
「武人」としての素質は、鋭峰の方が数段上だ。

>「お前の相手なんかしてる場合じゃねえっての!」

鋭峰の槍を受けて、しかし「何か」はまるで怯んだ様子を見せなかった。
腹部に穿たれた風穴もいつのまにか塞がっている。
そして今もなお執拗に鋭峰へと付き纏っている。

だが、彼は乙種の中でも上位の、戦闘技能に長けた冒険者。
その状況下でも致命的な隙を一切見せない。
位置取りや、回避の動きに攻撃の予備動作を織り交ぜる事で、ヴィクトルに対して不利な状況を作らない。

『……今の内に、その店主を運ばせろ。確保しときゃ何かしら聞き出せるだろ』

ヴィクトルに出来るのは、眼下の二人にそう指示する事くらいだった。
それほどまでに、彼と鋭峰の、真っ向勝負における実力差は大きかった。

と、不意に鋭峰が大きく動く。
彼は「何か」を槍の柄で自分の後方へと大きく投げ飛ばすと同時に、ヴィクトルに対して距離を詰めてきた。

「来るか……!」

彼我の距離は殆ど一瞬で半分まで縮まった。
同士討ちを恐れて、と言うのは理由としては軽微だ。
ヴィクトルは同士討ちする事など厭わない。される事への警戒はあったが。
だが距離を一瞬で詰められた最大の理由は――単純に鋭峰の跳躍が鋭かったからだ。

そして、半分未満にまでなった両者の距離は――既に鋭峰の間合いよりも短い。
放たれるのは疾走した状態から上体から腰にかけての捻転を用いた、予備動作のない刺突。
今度は地に足の着いた、万全の状態からの一撃。

瑞鉄による伸張と共に繰り出された突きは――ヴィクトルの眼にも殆ど閃光のようにしか映らない。
それでも彼は辛うじて鋭峰の刺突に反応していた。
「何か」を切り刻み、貫いた槍撃が、彼に最大級の警戒心を抱かせていた。

200 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/10(日) 03:38:18.40 0
首元へと迫る幅広の穂先を細剣二本を交差させ受ける。
だが受け止められるほど鋭峰の突きは微温くない。
故に、受け流す。槍の柄の下の潜り込むように踏み込み、穂先を押し上げ、いなした。
そのまま更に一歩前進。右の細剣は槍を制する為に掲げたまま、左の細剣を横に薙ぐ。
狙いは槍を保持する右手の指。

だが剣先が鋭峰に至るよりも早く、ヴィクトルの体に重い衝撃が走り、鋭峰から大きく突き放される。
石突である。穂先を押し上げられた事を利用して、石突を用いた下からの殴打で彼を殴り飛ばしたのだ。
距離は再び槍の間合いに――更に鋭峰の体勢は既に穂先を左に大きく振り被った状態にある。
流星の如き横薙ぎ――防御は間に合わない。

ヴィクトルは瞬時にそう悟り――渾身の力をもって前方へ跳躍。
穂先による斬撃ではなく、柄による打撃を受けることを選んだ。

「ぐあっ……」

ヴィクトルはまたも大きく殴り飛ばされ、屋根の上に倒れ込む。
即座に膝立ちの状態まで体勢を立て直すが――鋭峰は既に開いた距離を再び埋めている。

「そう焦んなよ」

だがヴィクトルは柄による打撃を受けた瞬間、既に瑞鉄で盾を形成していた。
それを用いて打撃の直撃による肋骨の骨折を免れ――直後に、閃光が迸る。
華翼戦にて用いた照明魔法による目眩まし。

つまり――既に種が割れているという事だ。
鋭峰は自分の左腕を掲げ、閃光の直視を回避。
更に槍の掴みを、左手だけを逆手に持ち替えていた。

するとどうなるか――左腕で眼を庇う体勢から、即座に刺突を放つ事が可能なのだ。
目眩ましを免れた鋭峰の双眸に、細剣を振り被るヴィクトルの姿が映り――

「っ、こっちじゃねえな!」

――鋭峰はそれが水鏡による鏡像だと見抜いた。
そして即座に、上体を前方へ倒しながら跳躍。
左に前進を回転させる事で、前方へ放つ筈だった突きの軌道を強引に修正。
自身の頭上、やや後方へ。

閃光を放つと同時に高く跳躍し、鋭峰の後方から斬撃を仕掛けていたヴィクトルを、遠心力を帯びた刺突が捉えた。
空中で攻撃を受けたヴィクトルは再三、先ほどよりも更に大きく吹っ飛ばされる。

水鏡の魔法は華翼との戦いには使っていない。
鋭峰は完全初見で、ヴィクトルの欺瞞を看破したのだ。

彼は「冒険者」としては乙種だが――「戦士」としては、その肩書き以上に優秀だった。

「……つくづく、やりにくいな」

ヴィクトルは、まだ戦闘不能にはなっていない。
瑞鉄の帷子はその性質上、常に一定の形状を保とうとし続ける。
刺突の威力に耐え切れず破られはしたが――深手には至っていない。

ヴィクトル自身も、手傷は機動力を落とす。
それは魔女との戦闘において致命的――故に、吹っ飛ばされた直後には既に治癒魔法を使い始めていた。
既に止血は完了している。

201 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/10(日) 03:46:51.33 0
(思った以上に、かなり出来るな……ここで始末するのは諦めるか。
 店主の確保が完了したら、さっさと撤退して……)

不意に、ヴィクトルの視界外から無数の影が迫る。
目視せずとも感じられる不穏な気配を、細剣の閃きが断ち切った。

『……何のつもりだ?』

ヴィクトルが問う。
脅し付けるような、まさしく拷問者と言った声色だった。

>『その子、こっちにも襲ってくるから気をつけてね』

しかしラウテの返答を聞くと、彼は更に不快そうに双眸を細めた。
それから深く、ゆっくりと、何度か頷く。

『……あぁ、なるほど。つまりこの挽肉のなり損ないはこう言いたい訳だ。
 「俺の方が食いやすそうだ」って。そういう事だろ?なぁクソガキ』

直後、鋭峰が動いた。
「何か」の行動は完全に予想外で、今もなおその理由や目的は分かっていない。
だがいずれにせよ真っ向勝負ならば自分が優勢なのは間違いないのだ。
ならばヴィクトルを挟んで「何か」の反対側に回り込むように動けばいい。
それなら先ほどの仲間割れが罠だとしてもヴィクトルを盾のように立ち回れる。
そしてもし本当に仲間割れが起きているなら、挟撃を仕掛ける事が出来る。
まさしく最適解と言える動きだった。

故に、ヴィクトルはその動きを完全に読んでいた。
そして後方へ――鋭峰との間に「何か」を挟む位置へと跳躍。
仲間割れが起きているとは言え、鋭峰も「何か」と結託するような動きは出来ない。
不確定要素が強すぎる。彼にとってヴィクトルは、所詮は真っ向勝負さえすれば勝てる相手なのだ。
だからこそ、待つ。一時的にだが「何か」との一対一が成立する。

「俺は「食い物」じゃねえ。テメェだ。俺が「食う側」なんだよ」

「何か」が無数の触手をヴィクトルへと伸ばす。
彼はそれを切り裂かず――刀身の腹でいなし、弧を描き、一つに纏め上げる。
そしてそれらを左手で掴み取り――半ばから噛み千切った。

「何か」が、ヴィクトルから飛び退いた。
半分になった触手群を引き戻し――しかし「噛み跡」が消えていない。
魔女の刻印は刻まれた部位の皮膚を削ぎ落とそうとも消し去る事は出来ないが、
まさしくそれと同じように、ヴィクトルの噛み跡には「何か」の再生能力が及んでいなかった。

それはヴィクトルの「切り札」の片鱗だった。
処刑台での戦いで使った吹雪の魔法も同じく片鱗ではあったが――今回は更に、本質に近い。

「……出来れば「コイツ」は隠しておきたかったんだがな」

ヴィクトルは心底忌々しいと言った声音で呟く。

「まぁ……お前が死ねば何の問題もないか」

そして直後、左手に魔力を集中。手のひら大の水球を作り出し――それが炸裂。
周囲に局所的な濃霧を作り出した。

白く塗り潰された戦場に、鋭峰が顔を顰めた。
状況は一転、魔女狩りが有利――言うまでもなく、この戦場は彼が作り出したのだ。
だが、だからと言って安直に離脱を図るのは下策――それは魔女狩りにとって容易に予測出来る隙だ。

202 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/10(日) 03:47:38.94 0
と、鋭峰の背後で靴底が石材を躙る音。
瞬時に振り返り――細剣を構えるヴィクトルを視認。
だがそれは水鏡による鏡像。

鋭峰は欺瞞を一瞬で看破し――その鏡像を貫いて、細剣の切っ先が彼に襲いかかった。
鏡像の真後ろにヴィクトル自身も潜んでいたのだ。

鋭峰は不意を突かれ、しかし驚異的な反応速度で後方へと飛び退く。
切っ先は――鋭峰の胸部を浅く切り裂いた。

退いた彼に追い迫るように、剣閃が濃霧を切り裂く。
鋭峰は牽制の刺突を数本放つが――手応えはない。
直後、低い姿勢から懐に潜り込むヴィクトルの――鏡像。
だが先ほど不意を突かれた事が鋭峰の強気な判断を阻んだ。

もう一歩後退して――彼の右足を鋭い痛みが襲った。
罠だ。瑞鉄で形成した拷問用の小さな杭が、その先端を上向きに足元に固定されていた。
痛みを感じた瞬間に反射的に足を上げた為、踏み抜く事はなかったが――精神的な拘束は更に強まった。

更に――濃霧の中からまるで投網のように、無数の触手が鋭峰に迫る。
「何か」には知性がある。
再生の困難な傷を負わせる魔女狩りと、濃霧の中での戦いに不慣れな鋭峰。
狙うべき獲物がどちらなのか、再び判断を下したのだ。

しかし――それでも鋭峰は攻め落とされない。
鏡像の欺瞞があり、足元に罠があり、無数の触手が襲い来るのならば。
鏡像を全て斬り伏せた上で奇襲にも反応し、一歩も動かず、さらに全ての触手も切り払えばいい。
召喚狙撃も、更なる搦め手も、全て対応すればいい。

彼には、それを可能とするだけの実力がある。

(……来るなら来いよ、魔女狩り)

視界外の濃霧の僅かな揺らぎさえも的確に知覚出来るほどに、鋭峰は集中していた。

「――よし、退くぞ。じきに甲種が帰ってくるだろう。その前に完全に撤退する」

その時ヴィクトルは既に地上に降り、魔女と少女に合流していた。

「初日はこんなもんだろう。明日も何かしら勝負は仕掛けるが……ひとまず、ご苦労だったな」

203 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/10(日) 03:52:17.79 0
「――上納している薬は「二種類」か。依存性の強い多幸薬と……命じられるままに製造していたもう一つ。
 堕廃の、どういう類の物なのか、お前なら分かるか?」

ごく一般的な拷問の第一行程が完了するよりも早く、拉致された店主は情報を吐くだろう。
二つ目の薬物の性質は、もし判明させられるなら甲種との戦いにおいて非常に有用な情報となる。

しかし――敵も、地上げ屋も無能の集団ではない。
陥れられれば、対策を取る。

翌日、街の人通りは激減していた。
地上げ屋が市長に働きかけ、厳重な「外出禁止令」を布いたのだ。
外出が許可されるのは基本的に家長のみ、それも日の出から日没までの間に限る。

加えて、街中には「協会から正式な依頼を受けた」、
つまり地上げ屋の飼い犬ではない冒険者が哨戒を行っている。
練度はまちまちだが――数は大幅に増えている。

「……面倒だな。この手の作戦は時間を掛けられれば勝手に綻びていくもんだが。
 ただ待つのは、面倒だ。さて、どうしたもんか」

西地区の高所から街を見下ろすヴィクトルは、一度下へと降りて魔女と少女へ視線を向けた。

「この状況、俺よりもお前たちの方がやりにくいだろう。どう動くか、決めさせてやるよ。
 特に希望がないなら……そうだな、明日はとりあえず地上げ屋の屋敷でも燃やすか。
 甲種の動きはもっと観察しておくべきだ」

204 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/01/11(月) 21:28:30.83 0
ショゴスはただひたすらに暴れていた。二人の男のうち片方は、被害が増大する事を懸念しているのを察したからだ。
足場を崩す事で自らの領域を確保し、そこへ誘い込む。あらゆる地形を踏破出来るショゴスならではの作戦だ。
半壊した屋根の上で、時々距離を詰めては御しやすい方の獲物を狙っている。
見たところ二人の男の戦力は拮抗し、こちらにも警戒をしているため手出しが難しい。

最初に狙った男が隙を見せないため、ショゴスは標的をエルフのほうに変えていた。
その巨体から想像出来ないほどの素早さで跳躍し、狙いを定め触手を伸ばす。
しかしエルフを捕まえるはずだった触手は、いとも簡単に「噛み千切られた」。
素早く触手を引っ込めて再生する……が、何故かその傷は簡単には閉じない。
ショゴスは明らかに怯んだ。おそらく何らかの魔力干渉を受けたのだろう。

一度撤退して様子を見ると、いつの間にか周囲は濃霧に覆われていた。
ショゴスは眼を作るのを止め、代わりに全身に柔毛を生やす。
空気の流れを敏感に感じ取れるそれは、視界の利かない状態では非常に役に立つ。
そうやって周囲を探る事で、ショゴスは狩りを行うのだ。
先程再生の追いつかない怪我を負わされたエルフを狙うのは得策ではない。
もう片方の槍の男の方は、この霧で動きを制限されている様子だった。
どちらを狙うかは決まっている。ショゴスは狙いを変えて投網のように触手を放つ。
槍の男は何らかの理由でその場から動くことはしなかった。代わりにその槍を振るい、全ての触手を叩き落す。
槍の男とショゴスは、停滞し睨み合いの戦況と成った。

そんな様子を感覚共有で探っていたラウテだったが、当のヴィクトルがこちらに現れたのは素直に驚いた。
濃霧で撹乱している間に、隙を見て離脱したのだ。全く食えない男である。

>「――よし、退くぞ。じきに甲種が帰ってくるだろう。その前に完全に撤退する」

「…じゃあ、あと五分だけショゴスに戦わせれば良いのね? 時間稼ぎは出来るわ」

>「初日はこんなもんだろう。明日も何かしら勝負は仕掛けるが……ひとまず、ご苦労だったな」

「お疲れ様。さくらは召喚しておいたから、この店主はこっちで運ぶわ…」

馬に店主を担ぎ上げ、一同はその場から素早く撤収した。
火事騒ぎで野次馬も多いため、人ごみに紛れるのは実に簡単な事だった。
そもそもこちらの正体を知らない鋭鋒では、人ごみから見つけ出すのは不可能だろう。

205 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/01/11(月) 21:29:40.11 0
ラウテたちが潜んでいる西区の廃墟では、縛られた店主が今まさに拷問を受けようとされていた。
召喚させていたショゴスは、空間転移でこちらに呼び戻し現在はここにいる。
ショゴスは腹を空かせているのだ。餌を与える必要がある。
数多居る彼女の召喚獣の中でも、このショゴスだけは異常に食欲旺盛だ。
そして何より厄介なのが、ショゴスが特に好むのは人肉であること。
今までもスラムで何人か攫っては、餌にすることがあったりする。
ショゴスは縛られている店主の脚に、今すぐにでも喰らい付きそうな様子を見せていた。

「この子の餌になりたくなかったら、質問にはちゃんと答えてね?」

異形の怪物に睨みつけられている店主は、既に発狂寸前である。
食われて死ぬよりも精神が崩壊するほうが早いだろう。

「まずひとつめ、オメルタの屋敷はどこか……知ってるよね?」

「ちっ、中央区の五丁目、丸い屋根の屋敷だ! 頼む、放してくれ!」

ぞぶり、と音がした。ショゴスが店主のつま先を食い千切ったのだ。
絶叫を上げもがき苦しむ店主。その様子をラウテは嬉しそうに見つめていた。

「余計な事を言ったり叫んだりすると、この子が次は膝まで食べちゃうからね?」

「わ、分かった。だから頼む、足の治療を! 血が出て死んでしまうっ!」

「人間はこの程度では死なないわ。次の質問、この二種類の薬の効能は?」

「片方は気持ち良くなるヤクだ! もう片方は知らない、本当に知らないんだ! ギャァアアアアッ!!」

片足を膝まで失った店主は絶叫を上げる。
だがラウテが「静かに」と言った瞬間、店主は血が滲むほど歯を食いしばって叫ぶのを止めた。

「いい子ね。止血は必要?」

「た、頼む! 死にたくない!」

「だったら薬の効能を答えて。この出血だと死ぬかも知れないわ」

「知らない! 頼む、血を止めてくれ!」

ラウテは手に取った松明を、店主の傷に何の躊躇いもなく押し付けた。
今度は悲鳴はしなかった。ただ、苦痛にもがくのみだ。

「ヴィクトル、この人本当に何も知らないみたいだけど……もう食べさせて良い?」

もちろん拷問が終わり次第、彼はショゴスの餌となる事が確定している。
それまで引き出せるだけの情報を引き出すことが出来れば、多少の成果は望めるだろう。

206 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/01/13(水) 15:48:38.92 0
濃霧の中、対峙する魔女狩りの動向に鋭鋒は研ぎ澄ました神経を傾けていた。
彼を乙種上位たる実力の礎は、その間合い自在なる槍術の他にもうひとつある。
荒野の民に秘伝として継承される、力の伝導を操る『流し』と呼ばれる武術だ。
もとは敵の攻撃を受け流す技術だったものが何代にもわたって磨き抜かれ洗練を重ねた結果、
炎の熱が鉄鍋に広がるように、波紋が水面を伝わるように、様々な力を伝導させる術へと昇華を果たした。

この技術を極めた鋭鋒にとって、地面や壁は単なる足場や遮蔽物ではない。
鍋底に触れればその向こうの熱源がわかるように、水面の航跡を見れば船の場所がわかるように。
その床にかかる重量、その壁に触れる風、あらゆる触覚を鋭鋒へと流し『伝える』感覚器だ。
全方位に張り巡らされた鋭利過敏な感覚の刃、眼には見えない第二の穂先――故に『鋭鋒』。
極度の集中を完成させた今の彼ならば、半径10メートル以内に落ちる木の葉の形さえ正確にわかるだろう。

(いかに霧が濃かろうが、そいつは『眼』に対する誤魔化しだ。肌で感じられる俺には意味がねえ)

そして彼の間合いに立ち入る者があれば、脊髄反射の速度域で槍が貫きに奔るだろう。
無論、デコイの対策も万全だ。あの化物も含め、敵意をもった生き物の接近に関する感度を上げてある。
視界を塞いだと安心して近づけばそれが魔女狩りの最期だ。

「いつでも来い……!」

挑発ではなく本心で、鋭鋒はそう言った。
十秒、二十秒と張り詰めた弓のような緊迫に満ちた時間が過ぎる――
ふっ、と音もなく背後に着地する気配。
刹那、弾かれるように鋭鋒は槍を手繰り、振り向きざまの一閃!
背後の人影が風巻く音とともに貫かれる。切り裂かれた大気が巻き戻り風を起こし、霧が晴れた。

「……?」

霧の向こうで槍の先にいたのは、魔女狩りではなかった。
踊り子風の露出の多いドレスに身を包んだ、すらりとした肢体の美女。
彼女は少しだけ驚いたように眉を上げて、それから愉快そうに零した。

「あらあら?」

「姐さん、なんでこんなところに」

背後に現れた気配の主は、魔女狩りを追っていたはずの同僚、甲種冒険者『地走』だった。
困惑しながら槍を戻すと、瑞鉄製の穂先がまるで花弁のように4つに分かたれ拉げていた。
おそらく破壊の源は、地走の指先で力なくぶら下がっているチャクラムだ。
言葉を失っている鋭鋒を感情なく睥睨して、地走はため息混じりに言った。

「やっと見つけたと思ったのに。逃げられちゃったみたい」

はっとして鋭鋒があたりを見回すと、濃霧は既に消え去っていた。
そして消えたのは霧だけではない。魔女狩りも、店主も、あの巻き込まれ姉妹すら、覚めた白昼夢のように消滅していた。

「あーっ!?霧自体がデコイかよ……!!」

濃霧に乗じて襲い来ると見せかけての撤退。初めからこうするつもりでなければこんなに早く逃げ切れはしまい。
おそらく撒いてきた地走が追いついてくることを見越して早期撤退を決めていたのだろう。
結果として地走も鋭鋒も魔女狩りと直接交戦したにもかかわらず彼を殺せず、どころか店主さえも拉致されてしまった。
なんのことはない、奇襲から撤収まで、徹頭徹尾魔女狩りのペースに載せられていたということだ。

「つか姐さん、霧の中で人着確認せずに攻撃したんすか?俺じゃなかったら死んでますぜ」

「んー、なぁに?」

「いや、何でもねえっす……」

――――――

207 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/01/13(水) 15:49:47.75 0
>「初日はこんなもんだろう。明日も何かしら勝負は仕掛けるが……ひとまず、ご苦労だったな」

鋭鋒との戦闘を早々に切り上げて戻ってきたヴィクトルを、リタリンは半眼で迎え入れた。
ラウテが馬を召喚するまでの間店主の肩を支えながら、恨めしそうに情感をたっぷり込めて言う。

「なんで火をつけるの黙ってたの……」

ヴィクトルは涼しい顔でこれを無視。
煤だらけの濡れ鼠、苔色のローブに本当に苔が生えそうなリタリンはもう黙ってついていくしかない。
そうして彼らは、西区の暫定アジトへと帰投した。

人払いを済ませた路地裏には、拉致してきた店主の叫び声が響き渡っていた。
先に捕獲した乙種二人組がドン引きした眼で見る中、情報を引き出す為の拷問が行われているのだ。
今回の主な拷問吏はラウテだ。彼女は喜々とした表情で魔物に店主を襲わせる。

>「片方は気持ち良くなるヤクだ! もう片方は知らない、本当に知らないんだ! ギャァアアアアッ!!」
>「――上納している薬は「二種類」か。依存性の強い多幸薬と……命じられるままに製造していたもう一つ。
 堕廃の、どういう類の物なのか、お前なら分かるか?」

「解析して成分を確かめればどういう効能かはわかると思う。ちょっと時間をちょうだい」

店主が鞄に詰めていた薬をいくつか受け取ると、リタリンは別室へと引っ込むことにした。
今をもってなお、嬉しそうなラウテの声と店主の苦痛と絶望に満ちた叫びが入り混じり、とてもじゃないが集中できない。

>「ヴィクトル、この人本当に何も知らないみたいだけど……もう食べさせて良い?」

もう助からないことが確定していても、なお助命を求めて足掻き続ける人質の姿は見るに耐えなかった。
リタリンとて私欲の為に薬物をバラ撒いていたわけだから人のことは言えたもんじゃないが、それにしたって残虐が過ぎる。
これ以上ここにいたら体調を崩しそうだったので、分析の必要性は良い口実になった。
監禁部屋を後にしようとするリタリンに、拷問の様子を見ていた華翼が呟くように言った。

「……地獄に堕ちるぞ、お前ら」
「じゃあせめて、そっちの飼い主が同じところに堕ちないよう祈っててあげて」

いつの間にか『お前ら』とあの残虐魔人二人と一絡げにされていることに軽くショックを受けながら、リタリンは部屋を出た。
解析には半日ほどかかるだろう。それまでに拷問が終わっているといいが。

翌日、街からは昨日までの活気が嘘のように消え去っていた。
オメルタ組による外出規制だ。おかげで人混みに紛れて動きまわるプランは使えなくなった。
スラムの人間に金を渡して買ってこさせた食事を食べながら、これからの方針について話し合う。

>「……面倒だな。この手の作戦は時間を掛けられれば勝手に綻びていくもんだが。
 ただ待つのは、面倒だ。さて、どうしたもんか」

「向こうもなりふり構わなくなってきたものね」

甲種を出動させたにも関わらず魔女狩りを捉えることができなかったという事実は、オメルタ側にも看過できないものなのだろう。
依然として魔女狩りの仲間については顔も人数も戦力すら分かっていないのだ。
畢竟、対応としては不確定要素を排し戦力を際限なく増強していく他なくなっていく。
街にはいま、新たに雇われた冒険者の一団が猟犬のように放たれ歩哨を行っていた。

>「この状況、俺よりもお前たちの方がやりにくいだろう。どう動くか、決めさせてやるよ。
 特に希望がないなら……そうだな、明日はとりあえず地上げ屋の屋敷でも燃やすか。甲種の動きはもっと観察しておくべきだ」

「また火をつけるの……!?」

偵察から戻ってきたヴィクトルが、主導権をこちらに寄越す。
そんなものはいと渡されても扱いに困るわけだが、この男にその辺の気遣いなど求めるだけ無駄であろう。
リタリンは鶏肉と煮込んでバターを垂らした麦粥に匙を突っ込んで、傍にある魔導書を手繰り寄せた。
開かれたページの上で薬が魔力光に包まれて浮いており、白紙だった羊皮紙に墨字が刻まれている。

208 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/01/13(水) 15:51:17.42 0
「その前に、例の鹵獲できた二種類の薬の解析結果が出たわ。
 片方は情報通り、多幸感を増幅させるいわゆる気持ちよくなる薬。使った時の実例はこんな感じ」

リタリンが指さした先では、乙種二人組が縛られたまま壁に身を預けて放心していた。
ラリっている。眼には焦点が合っておらず、膝ががくがくと震えていた。

「うひゃあ、真っ暗なのにお星様が見えるぜぇぇ。パンツ履いたままおしっこするの気持ち良いなあああ。
 ああはああはあは……ああ?なんだこの虫!ああ!虫が!虫が沢山這い上がってくる!これが幻覚症状ってやつか!!」

「まあ虫は普通にこの廃屋に湧いてるやつよ。幻覚見るような中毒にならない程度に量抑えてあるから安心して。
 こんな感じに品性をジワジワ破壊していく私のハーブより強力な薬で、量が増えると依存性も凄いことになるわ。
 うまく使えば捕虜をこっちの手駒に仕立てあげることもできるかもだわ」

華翼の反応を見るに、どうやらオメルタは自前の兵隊にはこの薬を使っていないらしい。
丙種程度であればともかく乙種以上は戦闘職である以上に技能職だ。品性と人格を破壊するこの薬とは相性が悪い。
逆に言えば、こっちが敵の捕虜に使う分には制限なく使って洗脳できるということだ。

「もうひとつは……これは正直試しで使う気にはなれなかったわ。
 この薬は使用者の魔力、身体能力、五感などを多角的に向上させる、いわゆる戦闘力強化薬。
 それだけなら私のハーブでも似たようなことができるけど、問題はその『上げ幅』ね」

アサナギの里で薬作りのノウハウを学んだリタリンは、製薬のセオリーというものを知っている。
人体に用いる薬とは『通常とは異なる生理作用を起こす物質』であり、その本質は毒と表裏一体だ。
では毒と薬とを区別する要素とは何なのか。それは有害な効果を抑えるリミッターの有無である。
薬は症状に合わせて適切に使用しなければかえって身体の害となることは周知の事実だ。
だから効き過ぎないように、過剰な効果を相殺するような薬を混ぜておく。
熱さましの薬に体温を維持する薬を合わせたり、消化薬に胃薬を合わせて処方するといった具合にだ。
薬を身体に入れるというのは肉体にとって不自然な状態であり、その影響は少ないほうが良い。

「この強化薬には、薬作りに絶対必要な制御物質が含まれていないの。
 服用すればするほど、その量に比例して戦闘能力は際限なく上がっていく、まさに『超人を作る薬』、『英雄霊薬(エリクシル)』。
 だけど副作用は寿命を縮めるなんて生易しいものじゃない。どんな人間でも即死するほどの負担がかかるはずよ」

209 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/01/13(水) 15:51:44.20 0
それだけならただの自殺用の毒に過ぎないが、問題はその効果にある。
常人なら耐え切れない薬の副作用に、『超人』なら耐えてしまう。
尋常ならざる痛みと苦しさ、幻覚などに苛まれながら、それでも薬の効果が切れるまでは死ぬこともできない。
リタリンは頬を滑り落ちてきた冷や汗を舐めた。この薬は強化薬としても出来損ないの役立たずだ。
こんなものを量産して、オメルタは一体なにを企んでいるというのか。
本国相手に戦争でもおっぱじめるつもりなのか。

「これの使用者がオメルタ陣営にいるとしたら、かなり危険だわ。
 甲種クラスの化物が二人も三人も出てきたらこの街ぐらい軽く消し飛んでもおかしくないもの」

どういう形でこの霊薬が流通しているのかは不明だが、オメルタを相手取るなら向こうにこれを保たせておくのはまずい。

「屋敷に忍び込みましょう。薬の在り処をつきとめて破壊、可能なら奪取。
 幸いこっちには顔の割れてないフリーの乙種冒険者がいるし、警備として紛れ込めないかな」

ラウテは今のところ鋭鋒にしか顔を見られていない。
それに彼女は様々な街の協会で冒険者として実績を積んできた正真正銘の正式な乙種だ。
オメルタと深く癒着している協会が、腕っこきの冒険者を求められて派遣したとしても不自然はない。
傘下でない冒険者が多く出歩いている現状なら、疑いの眼をかけられることなく潜入できるはずだ。
屋敷に入るのに符牒や証書がいるなら、適当な冒険者を拉致して吐かせれば良い。

「ラウテ、遠隔召喚はどのくらいの距離までいける?
 屋敷のど真ん中にショゴスを召喚して、撹乱したところに犬で薬品庫を探知。
 甲種がうまくショゴスに釣り出されてくれれば一番ありがたいんだけど……」

オメルタ最強戦力であれば、その警護箇所はオメルタ本人か最も大切な財産かの二択になるだろう。
こればかりは運になるが、あとはこちらでどれくらいコントロールできるかが分け目となる。
一方的に情報を持っているというアドバンテージを使いきって望まなければ明日はないだろう。

冷めてしまった麦粥を流し込みながら、リタリンは提案した。


【提案:ショゴスを屋敷の中から召喚して撹乱。協会手配の冒険者を装って潜入】

210 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/17(日) 05:31:39.75 0
>「ヴィクトル、この人本当に何も知らないみたいだけど……もう食べさせて良い?」

「……いや、ステイだ」

ヴィクトルは細剣を「何か」に突きつけて牽制、店主を見る。

「一つ、確認したい。これは決して強制ではないが……もし、俺達がこの街の支配権を得たとして。
 また同じ薬を、今度は俺達の為に作れと言ったら、お前はどうする?」

店主の眼に、希望の光が浮かび上がった。

「やる!やるよ!薬なら幾らでも作る!だから助けてくれ!」

縋り付くような返答――ヴィクトルの双眸が、わずかに細った。

「……そうか。やってくれるか」

そして――「何か」に突きつけられた細剣が引っ込められた。

「なら、駄目だ。お前みたいな奴が俺は嫌いだ」

捕食が、始まった。

>「……地獄に堕ちるぞ、お前ら」
>「じゃあせめて、そっちの飼い主が同じところに堕ちないよう祈っててあげて」

「心配ご無用だな。もし神様とやらがいるのなら……ソイツは俺に負い目がある筈だ」

自嘲気味に、忌々しいものを吐き捨てるかのように、ヴィクトルは答えた。
そしてそのまま部屋の隅に転がる家具の残骸を枕側に寝転んで、目を閉じた。



「……そうだな、明日はとりあえず地上げ屋の屋敷でも燃やすか。
 甲種の動きはもっと観察しておくべきだ」

>「また火をつけるの……!?」

「そりゃそうだろ。エルフってのは木と水と風を愛するもんだが……
 如何せん、奴らは俺の敵を殺してくれないからな。
 その点、火はいいぜ。何もかもを消し去ってくれる」

愕然と共に零れた魔女の問に対して、ヴィクトルは事もなげにそう言った。

「で、希望がないなら俺はさっさと火を点けに行くぜ。今回は、点け方も少し工夫する」

>「その前に、例の鹵獲できた二種類の薬の解析結果が出たわ。
 片方は情報通り、多幸感を増幅させるいわゆる気持ちよくなる薬。使った時の実例はこんな感じ」

リタリンが指差す先には、華翼と氷城――どちらも眼の焦点を失い、涎を垂らしている。
明らかに、薬効によって正気を失っているようだった。

>「まあ虫は普通にこの廃屋に湧いてるやつよ。幻覚見るような中毒にならない程度に量抑えてあるから安心して。
 こんな感じに品性をジワジワ破壊していく私のハーブより強力な薬で、量が増えると依存性も凄いことになるわ。
 うまく使えば捕虜をこっちの手駒に仕立てあげることもできるかもだわ」

「……俺は品のない人間は嫌いだ。品のないやり方もな」

ヴィクトルは言葉少なに、だが強い否定を声に込めて答えた。
放火が品性のあるやり方かと言えば間違いなくそうではないが、要するに「するな」と言いたいのだ。

211 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/17(日) 05:32:29.83 0
彼は生まれながらの奴隷――エルフの気品を持って生まれる事を許されなかった存在。
その事が彼の態度に関係しているのは明白だった。

感傷ではない、ただ自分を奴隷として扱った連中と同類になるのが不快なだけだ。
彼は自分にそう言い聞かせながら、捕虜二人から視線を外した。

>「もうひとつは……これは正直試しで使う気にはなれなかったわ。
 この薬は使用者の魔力、身体能力、五感などを多角的に向上させる、いわゆる戦闘力強化薬。」

魔女が解析した二つ目の薬品の効用を、ヴィクトルは神妙な表情で聞いていた。
そして全ての説明が終わってから、今度は顎下に手を添えて、視線を床へ。
露骨に二人からの干渉を避けるように、一層深く思索を始めた。

>「ラウテ、遠隔召喚はどのくらいの距離までいける?
 屋敷のど真ん中にショゴスを召喚して、撹乱したところに犬で薬品庫を探知。
 甲種がうまくショゴスに釣り出されてくれれば一番ありがたいんだけど……」

「良いプランだ。俺は……今回は裏方だな。撹乱と戦力の誘導は出来る限りやってやる」

顔を上げてそう言ったヴィクトルは、そのまま魔女へと視線を向ける。

「三つ、聞きたい事がある」

人差し指を立てて、彼は続ける。

「まず一つ。その薬は普通の人間が普通に服用すれば、
 効果が切れた瞬間、即死するような反動が訪れる。この認識に間違いはないか?」

中指が立てられる。

「もしその認識に間違いがないなら……それを服用し続ければどうなる?
 例えば……仮に一回の処方に適切な量があるとしてだ。まずその量を服用し、
 それから暫く時間を置いて、追加で少量服用すれば……」

ヴィクトルは問いを述べながら細剣で床に図解を記す。
彼が言ったような摂取法を取れば、まず最初に服用した分の効力が失われる。
それによって反動のように負担が訪れるが――体にはまだ追加で摂取した分の効果が、僅かにだが残っている。

「これなら、薬の反動を限りなく先延ばしに出来るんじゃないか?」

そして堕廃の魔女がそれを肯定しようとも、否定しようとも、ヴィクトルは三つ目の問いを発する。

「その薬には制御物質が含まれていないと言ったな。だが……
 もう一つの、多幸薬を、制御物質として使用する事は……可能か?」

超人薬はその効力が続いている間も、副作用に襲われる。
ヴィクトルが言った服用法も、並みの人間では最初の服用分の効果が切れた時点で、
僅かな超人効果では耐えられないだろう反動により死んでしまうだろう。だが――

「――元から人並み外れた素養のある者が、更に僅かとは言え超人化の恩恵を得た状態で、
 更に痛みを初めとした諸々の副作用を無視出来るような精神状態にあったとして。
 ソイツが超人薬の副作用を先延ばしにし続ける事は可能だと思うか?」

無論、魔女の答えが最終的に否定のままであったとしても、ヴィクトルの行動指針は変わらない。
地上げ屋の屋敷を攻め、薬物の貯蔵庫を破壊するのは間違いなく必要だ。

ただ、魔女の答えが肯定であるのなら――彼はもう一つ、問いを付け加えるだろう。

「もう一つ、質問が増えた――その薬には、依存性があると思うか?」

212 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/17(日) 05:34:42.38 0
 


そうして、ヴィクトルは西地区から移動を開始する。
哨戒の人数は多いが――「どこにいるかも分からない者」を意識的に探し続けられる者は、少ない。
水鏡の魔法による隠密と風魔法による消音を併用し、表通りを避けて中央区を目指す。
また水鏡の魔法は単に鏡面として使えば周囲の索敵も可能になる。
秘密裏に移動する事は容易だった。

ヴィクトルは監視の薄い屋上へと登り、弓矢を構える。
ただし番える矢は――瑞鉄で形成したものだ。
それは細く長い糸によって腰に差した細剣と繋がっていた。

彼はそれを遠くに見える哨戒兵へと射掛ける。
狙いは極めて正確に――首筋を掠め、頸動脈を切り裂くように。

哨戒の首から大量の血が噴き出た事を確認すると、ヴィクトルは瑞鉄を操作。
糸で繋がった矢を回収する。
結果として――まるで不可視の何者かに「近距離から」首を切り裂かれたようにしか見えない死体が残る。

つまり警備の偏りが生じる――その隙に、彼は中央区にまで潜り込んだ。
そして適当な、背の高い建物の屋上を目指す。
彼の筋力なら、石材の僅かな隙間に指をかけて登攀する事は容易だ。

屋上に到達して、ヴィクトルは中央区を見渡す。
五丁目、丸い屋根の館――地上げ屋の屋敷はすぐに見つける事が出来た。
三階建ての、広大な敷地を有する邸宅だ。

彼は再び弓矢を構える。
今度はただの矢に、火を灯したものだ。
それが十三本、二度に分けて地上げ屋の屋敷へと放たれる。

屋敷に火の手が上がる――だがそれが大きく燃え広がる事はない。
この街を牛耳る裏社会の支配者の本拠地なのだ。
魔法による消火が可能なほどの手練が、常駐していない訳はない。

「だが……十三箇所の火元を同時に潰す事は出来ないだろ。「優先順位」を見せてくれよ」

まず三階から、窓から漏れる煙が途絶え始めた。
ほぼ同時に一階も――しかし消火のペースは三階の方が早い。
そして――不意に三階の火の手が瞬く間に消失した。
龍の如く迸る水の波濤が、屋敷の外からも容易に視認出来た。

「……まさしく、炙り出しって奴だな」

やはり甲種――地走には飼い主ですら制御し難い忠誠心がある。
ヴィクトルはそう確信した。同時に、彼女が浅慮である、とも。

「さて……ここからどう動いたものかな」

暫しの思案――ひとまず場所を変え、多くの退路を取れる地点まで移動。
そして再び地上げ屋の屋敷へと火矢を射掛ける。

あくまでも遊撃的な攻勢であると見せかける為だ。
つまり、まさかこの隙に屋敷に侵入を目論む仲間がいるなどとは、決して予測すらさせない為に。

213 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/01/18(月) 22:00:02.21 0
結局店主は、そのはらわたが食い破られ心臓に牙が届くまで、痛みと恐怖を味わう事となった。
人間って案外死なないものね、とラウテは微笑む。彼女とショゴスは、人の死というものを熟知していた。
最終的に店主の頭まで丸呑みしたショゴスは、満足して床で丸くなる。それを見届けたラウテは、召還を解除した。
操作のほとんど利かないショゴスの召還はなるべく控えたいところだ。扱いどころが難しいのである。

ふと見ると、リタリンとヴィクトルは先ほど手に入れた薬の効果について意見交換を交わしていた。
ラウテは薬にはあまり興味はない。ただ、ある種の薬草は良く売れるため、その種は十分に確保している。
魔力をわずかに消費して種から薬草を育てれば、それを売るだけで十分に元は取れる。
そんな経緯から、ラウテは薬には興味はないが種類についてはある程度の知識はあった。
まぁ、どんな薬草が需要があるのかという程度なのだが。
リタリンの言う気持ちよくなる薬については、少々見覚えがあった気がする。
非正規ルートに限り高値で売買される薬草のひとつだ。花が綺麗なのを覚えている。
もう片方には全く覚えがなかったが、とりあえずあまり売れる代物ではないと覚えておこう。

話は明日の作戦について語られていた。戦力が街中に分散した今こそ、オメルタの屋敷を狙う好機だ。
無論、屋敷は雇われの冒険者などに守りを固められていることだろう。しかし、その程度は烏合の衆だと思われる。

>「ラウテ、遠隔召喚はどのくらいの距離までいける?
 屋敷のど真ん中にショゴスを召喚して、撹乱したところに犬で薬品庫を探知。
 甲種がうまくショゴスに釣り出されてくれれば一番ありがたいんだけど……」

「…障害物がなければ百メートル程度。今回は建物内だから、その半分が限界だと思うわ」

壁が厚く複雑な構造をした建造物であれば、その効果範囲は三十メートルといったところだろう。
要するに、ある程度の音量で音が届きさえすればどこでも召還は可能なのだ。
もちろん警戒されないために、人の耳では捉えられない音域などを駆使する事も出来る。
そもそも音楽魔法などと言うどマイナーな魔法体系など、普通の人間は知りもしないだろうが。

「ショゴスは撹乱にしか使えないし、私にもほとんど操作が出来ないこと、覚えておいてね」

と、念のため釘を刺す。ショゴスは十分な餌を捕食出来るまで、召還解除すらまともに応じてはくれない。
まぁ屋敷の使用人でも捕食してくれれば、おとなしく言うことを聞いてくれるだろう。

「ラウテは冒険者協会のツテで、派遣された冒険者として潜り込むわ。
 幸いにもラウテの顔はまだ誰にも見られていない……だから問題ないはずよ」

214 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/01/18(月) 22:00:40.16 0
翌朝、まだ明けて日の暗いうちからラウテは動き出した。
徐々に日は明けている。少しだけ肌寒く、乾燥した空気の流れが感じられた。
昨晩のうちに協会に話をつけ、本日から屋敷周辺を哨戒する任務に充てられている。
街中の哨戒で冒険者のほとんどが駆り出されているらしい。大したものだ。
主に大通りに沿って複数の冒険者が配置されているのを確認する事が出来る。
ラウテは協会から借り受けた認識票を首からぶら下げているため、全く問題なく大通りを歩く事が出来た。

目指す屋敷にはすぐにたどり着いた。見通せないほど長い塀と、呆れるほど広い周辺道路がその屋敷の規模を物語っている。
いかにも歴史を感じさせる邸宅だが、同時に堅牢さも伺えた。まるでちょっとした砦のようだ。
正面から屋敷に入り警備主任から大体の配置を聞き出すと、ラウテはそのまま配置に付いた。
ちょうど屋敷の庭園の哨戒任務だ、ここならば人目を気にせず魔笛を扱える。
ラウテは周辺を確認してから魔笛を取り出し、人間には聞こえない音域で高らかに吹き鳴らした。
音楽魔法の基礎のひとつ、ソナーの魔法だ。音の反射で周囲の状況を探る事が出来る。
反響を十分に聞き取ってから、ラウテはそろそろ配置に付いているであろう二人に声を飛ばす。

「この屋敷、地下があるわ。たぶん倉庫もそこ…屋敷を燃やしても燃え残るかな?」

まぁ屋敷が全壊してしまえば、掘り出すのは容易ではない。ただのジョークである。
しばらく哨戒しているフリをして歩いていると、風切音と共に屋敷に火矢が射掛けられた。
屋敷は一気に混乱に陥った。屋敷の外を哨戒していた連中も駆け込んで、とにかく消火活動に充てられる。
その背中を、召還したショゴスが襲い掛かった。

食い千切られる訳ではない。丸呑みにされ、ゴリゴリと噛み砕く音が響く。
消火活動のため布陣も揃わぬ烏合の衆だ。あっという間にショゴスに蹂躙された。
その冒涜的な外見から、ショゴスを見ただけで恐怖に絶叫する者すらいる。
それでも冒険者を名乗るのかと、ラウテは少し残念に思う。全く根性のない連中ばかりだ。
ラウテは回復魔法で援護する様子を見せながら、混乱のデバフの音色を奏でていた。
魔法陣を用いる訳でもない、呪文も唱えない、先述の通りどマイナーな魔法だ。
どんな音色がどんな効果を表すのかを知る者は、まず居ないはずである。
混乱と恐怖により、そこは阿鼻叫喚の地獄と化していた。これだけ騒ぎになれば、侵入も容易だろう。

215 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/01/21(木) 05:05:54.41 0
>「…障害物がなければ百メートル程度。今回は建物内だから、その半分が限界だと思うわ」

リタリンの問いに、ラウテはそう答えた。
音楽魔法は音を媒介にする為、遮蔽物の影響を受けやすい。
処刑台での戦闘では開けた広場への召喚だったから距離をとれたが、今回はそうもいかないだろう。
ピンポイントでショゴスを落とすには、やはり現地で内側から召喚する必要がある。

>「ショゴスは撹乱にしか使えないし、私にもほとんど操作が出来ないこと、覚えておいてね」

「ほとんど無差別破壊だったものね……」

鋭鋒だけでなくヴィクトルに襲いかかった時にはあの性悪エルフをそのまま食べちゃってくれないかとぼやっと祈ったりもしたが、
甲種も絡む大一番でアンコントローラブルな手札を切るのはギャンブル要素が強すぎる。
早い段階でショゴスに暴れさせて、一気にこちらの有利に持ち込むのがベターであろう。

>「良いプランだ。俺は……今回は裏方だな。撹乱と戦力の誘導は出来る限りやってやる」

黙って何事か考えていたヴィクトルが、それでも話はちゃんと聞いていたらしく顔を上げた。

>「三つ、聞きたい事がある」
>「まず一つ。その薬は普通の人間が普通に服用すれば、
 効果が切れた瞬間、即死するような反動が訪れる。この認識に間違いはないか?」

「ないわ。どれだけ鍛えていようが、薬理の作用する内臓は鍛錬しようがないもの」

>「もしその認識に間違いがないなら……それを服用し続ければどうなる?
 例えば……仮に一回の処方に適切な量があるとしてだ。まずその量を服用し、
 それから暫く時間を置いて、追加で少量服用すれば……」
>「これなら、薬の反動を限りなく先延ばしに出来るんじゃないか?」

「うーん、理論上は可能だと思うけれど……」

リタリンは顎に手をやって考え込んだ。考えもしないというか、考えたくもなかったことだ。
確かに超人効果が残っていれば、反動による即死は避けられるだろう。
しかしそれは、確定してしまった死をひたすら後回しにし続けることに他ならない。
補給が切れればその時点で即死だし、反動を耐えられてもそれは死なないというだけで地獄の苦しみには違いない。
まず間違いなく、即死した方が楽だと気付いて薬を飲むのをやめるだろう。

「可能だけど、やる人間はいないと思うわ。よほど常軌を逸していなければ――」

>「その薬には制御物質が含まれていないと言ったな。だが……
 もう一つの、多幸薬を、制御物質として使用する事は……可能か?」

「あ……」

そこでようやく、リタリンもある発想に思い至った。
即死の反動を超人薬で、副作用の苦痛を多幸薬で押さえ込む二重の制御機構――!

「確かに、それなら超人化の無期延長にも現実味が出てくるわ。
 補給物資が増えることになるから兵站の維持は大変になるけど、個人の私兵なら無視できるレベル。
 まさか、オメルタ傘下にそれをやってる人間がいる……?」

>「もう一つ、質問が増えた――その薬には、依存性があると思うか?」

依存性、という言葉の原義からは少し逸れるが、補給が途絶えればアウトであることには変わらない。
ヴィクトルの言いたいことがピタリとわかってしまって、そんな発想に染まりつつある自分に寒気すら感じる。

「……そういうことね」

きっとここに鏡があったら、目の前のエルフと同じ顔をしていただろう。方針はこれで決定だ。

216 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/01/21(木) 05:06:25.08 0
――――――

「始まったみたいね」

オメルタの屋敷からの索敵範囲外に確保したセーフハウスに、三人のうちリタリンだけが留まっていた。
ここは街の外縁から中央に来た低所得者が逗留するための安宿で、サービスが劣悪な代わりに干渉もない。
当然オメルタ傘下ではない場所を選んでいる。出納帳がないので前払いになるが、記録に残らない為足もつきにくい。

リタリンのように戦闘力の維持に多くの補給物資が必要な魔法使いは、こうした拠点の確保も重要な仕事だ。
西区の本拠点から夜間の間にラウテに頼んで必要な道具の一式を亜空間輸送してもらっておいた。
薬草の数々、大玉水晶、魔法陣の描かれたキャンバス、魔導書が数冊。
そして、捕虜として拘束している乙種冒険者、華翼と氷城のコンビも連れて来ていた。
彼らに人質としての意味はない。純粋に、リタリンにとっての『補給物資』なのだ。

>「この屋敷、地下があるわ。たぶん倉庫もそこ…屋敷を燃やしても燃え残るかな?」

「ついでに甲種も生き埋めになってくれるといいんだけどねぇ」

千里眼の魔法を映し出す水晶の向こうでは、屋敷から13箇所にわたって火の手が上がっていた。
先行して潜り込んでいたラウテが遠隔召喚を発動、ショゴスが屋敷中央部に生み出され、さらなる混乱が巻き起こる。
隠密機動を得手とするヴィクトル、冒険者としてのアンダーカバーを持つラウテとは違い、
高い索敵技術をもつ場所へリタリンはこっそりと忍びこむということができない。だから撹乱を待っていた。
リタリンが真正面から突き進んだとしても、敵の要撃が間に合わないほどの撹乱を。

「そろそろ私も混ざろうかな」

杖先で床を突く。先端には蝋石が仕込まれており、地面に筆記できるようになっている。
安宿の埃の浮いた木床に直接描く形で、乙種二人を囲むような円を描いた。
幾何学模様で装飾された魔法円は、これもまた蝋石によって引かれた線によりキャンバスの魔法陣とバイパスされている。

「何するつもりだ」

薬が抜けて正気を取り戻した華翼がこちらを睨んで言った。
氷城は魔法の専門家らしく既に見当がついたようで、なお黙っているのは彼らに危害を加えるものではないからだ。

「魔力を借りるのよ。私の自前じゃすぐ空になっちゃうから」

キャンバスの魔法陣に用意した薬品を垂らしながらリタリンは答えた。
これもまた魔女の技術だ。通常は術者の魔力を使用する魔法を、動力源が他者となるよう『改造』したのだ。
魔法陣と薬液が反応して極彩色の煙が立ち込める、染まった大気を胸いっぱいに吸い込んで魔女は詠唱を始めた。

『礫の王、賽の帝、光溢れる地へと導かれし星の脈。
 大地を裂き、海を割り、断崖の向こうより我が呼び声に答えよ。
 汝の力、汝の名、汝の躯を借りてその剣を深く深く深く荒野へと突き立てん。
 ――――貌なき征伐の軍勢よ、我が覇道に君臨せよ!』

召喚魔法。宿の前の街道に空間の歪が発生し、闇を可視化したかのような澱と共に影が染み出してくる。
産み落とされた影は厚みを持ち、輪郭を得て、色彩を纏った。
それは甲冑を纏った騎士に近い形状をしていた。暗褐色の鎧は身動ぎの度に骨の鳴るような薄気味悪い音を立てる。
痩せ型で、背が2mちかくあり、分厚い片手持ちの戦斧を装備している。最も奇妙なのはその頭部だ。
まるで大男の首から上をもぎ取って、代わりに滑空砲を溶接したかのような異形の相貌だった。

217 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/01/21(木) 05:06:39.29 0
リタリンが召喚可能な使い魔の中で指折りの戦闘能力を持つ異貌の怪人『バントライン』。
戦斧よる白兵戦で黒狼を上回るほか、頭部の散弾砲による至近砲撃は対人戦闘で無類の凶悪さを発揮する。
そして何より特筆すべきは、この使い魔は5体で一個分隊を組んでの運用が可能という点だ。
その分消費魔力も従軍魔導師が小隊規模で必要になるレベルだが、今回に限っては使い捨ての『予備』がある。
魔力を無理やり吸い取られた華翼と氷城は汗だくになりながら肩で息をしている。気絶しないだけ大したものだ。

「さあ、行きましょうか」

計5体のバントラインを従えて――と言っても最後尾だが――リタリンは進軍を始めた。
いつもの苔色のローブは動きやすいよう裾を絞り、顔面をすっぽり覆うような革製のマスクを付けている。
このマスクは両眼と口の部分だけが空いていて、目の部分は板水晶で保護されている。
口の部分は濾過の魔法を施した缶を取り付けてあり、瘴気や煙幕の中でも活動可能な仕様だ。
かつて彼女が開拓団にいた頃、毒煙を吐く原生魔獣と戦うために自作した防毒マスクである。
これはリタリンの素性と顔がバレないようにするのと同時に、用法通りの使い方も想定している。
すなわち、毒煙による撹乱戦術だ。

『"魔女"から"魔女狩り"へ。屋敷正面に使い魔5体を送るわ、自律駆動だから誤射に気をつけて』

遠話は便利な魔法だが、相手に高度な魔法使いがいれば傍受の可能性を捨てきれない。
よって交信は最低限、個人を特定できるような名前や言葉は使わないのがセオリーだ。

『"魔女"から"獣使い"へ。甲種の所在を教えて、鉢合わせしないで倉庫へ行けるルートの指示も欲しいわ』

音響索敵が可能で屋敷の内側を把握しているラウテの道案内は必須だ。
屋敷を破壊してしまうのも良いが、薬の所在は確認してから潰したい。
やはり地下には行く必要があるとリタリンは考える。ヴィクトルの援護下であればスニーキングは不可能ではないだろう。
あとはリタリンが、現地でどれだけ見つからずに行動できるかだ。

屋敷の正門が見えてきた。火の手はそこかしこで上がっているが、当然ながら正面の警護は固い。
5体のバントラインはそれぞれ戦斧を振り上げながら突撃し、正門を守る冒険者の集団と激突した。
リタリンはその突進に合わせて走りながら、懐から革袋を取り出し着火して放り投げる。
煙の尾を引きながら放物線を描いた革袋は、空中で爆発して毒々しい色の煙幕を形成した。

痺れ毒だが、毒性は弱い。代わりに皮膚に付くと無視できないレベルで痛みが走る。
そしてこの煙の最も重要なところは、痛みにより『これが毒煙である』と強烈に印象づけることだ。
加えてバントラインによる攻勢は、正門を真正面から破る戦闘だと疑う余地なく思わせる。
――その全てが囮であり、リタリンがこっそり滑り込む為のデコイと煙幕であるとは考えつくはずもない。

『形容する――白煙と』

形容魔法を自身に使い、煙幕に紛れるようにステルスするリタリン。
彼女は地を這うようにしながら白兵戦闘のさなかをくぐり抜け、一人正門を突破することに成功した。

『こちら"魔女"。第一段階クリア』

正門入ってすぐの茂みの中に飛び込んで隠れると、屋敷の中からまた複数の冒険者が飛び出した。
バントラインが予想以上に奮戦しており、増援に呼ばれて駆けつけたのだ。
ばたばたと駆けていく彼らをやり過ごしてから、リタリンは注意深く索敵しながら屋敷の中へと入った。
ラウテと合流しても良いが、それぞれが地下を目指した方が早いかもしれない。

――――――

218 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/01/21(木) 05:07:32.69 0
屋敷は混乱の渦中にあった。昨日からちょっかいかけてきている魔女狩りがついに屋敷に火を放った。
そこまでは想定内であり、鎮火もスムーズに行ったのだが……のっぴきならない事態が起きた。
突如屋敷の中央に出現した化物が、周囲を破壊し冒険者達を捕食し始めたのだ。
どれだけ攻撃を加えても即時に再生し、反撃は瞬く間に敵対者の命を奪った。

「報告!例の化物は止まらず、屋敷を南方向に食い荒らしながら移動しています!!」

オメルタ子飼いの乙種冒険者・鋭鋒は詰め所に飛び込んできた丙種の報告を脂汗混じりに聞いた。
彼はオメルタより冒険者達の実質的な指揮官を任じられており、指示の必要があった。

「クソ、何人殺られた?」

「死体が確認できてるだけで6名、いずれも冒険者です」

「やっぱあの化物かよ。あいつはダメだ、丙種じゃ何人いたってかないっこねえよ、乙種を回せ」

「いえ、それが……殺された6人の中には乙種の『明鏡』様も含まれていまして」

「なにィ!?あいつ殺られたのかよ、何やってんだ乙種!」

明鏡は乙種の中でも手練の水魔法使いだった。
それが丙種と連携しても手も足も出ずに殺されたとなると、いよいよ拙い事態である。

「報告!屋敷正門に戦闘用の軍用召喚獣と思しき一団が出現、正門警備隊と交戦しています!
 敵の数は5体ですが戦闘力が高く、増援の要請が届いています」

「次から次へと……!屋敷内の警備用員に通達、『喝破』と『焔月』を増援に回せ。
 軍用召喚獣で丙種と拮抗してるってことは、突破目的じゃなく何らかの時間稼ぎの可能性がある。
 誘いに乗るな、こっちの戦力を一気に引き上げてカタをつけろ」

「隊長!化物は!」

「俺が出る」

鋭鋒は傍に立てかけていた槍を手にした。
指揮官が動くわけにはいかないのは定石であるが、あまりにもたくさんの攻撃に晒され続けている。
件の化物は鋭鋒であれば戦闘経験もあるし、あの触手にもそう簡単には捕まらない。
直接戦闘であれば彼こそが適任と言えた。傍の女性冒険者が止めようとするが、彼の意志が固かった。

「指揮は『紅雀』、お前が引き継げ。あと姐さん――『地走』を探して居場所を俺に遠話しろ」

地走は、火を放たれた時点で部屋を飛び出してどこかへ行ってしまった。
屋敷内ではお目付けの任が解かれているとは言え、彼女も有事の際には鋭鋒の指揮下にいるべき戦闘員だ。
居所を把握し、必要であれば移動を命じなければならない……あとでどんな仕返しが待っているとしても。

「行くぞお前ら、オメルタファミリーに売られた喧嘩だ、高く買ってやろうじゃねえか」

応、と配下の冒険者たちが応答して散開し、鋭鋒もまた詰め所を出た。
疾風の如く廊下を疾走し、化物の進路へと回りこむ形で立ちはだかる。

「一日ぶりだなクソ化物。俺が遊んでやるよ」

瞬間、鋭鋒の腕から先が消えた。槍の輝きだけが尾を引く鋼の嵐となり、化物の触手を片っ端から粉微塵にしていく。
再生するからどうしたと言わんばかりの圧倒的な攻撃力の飽和によって、化物を押し返し始めた。

【リタリン:召喚獣『バントライン』で正門を攻撃、隙間を縫って屋敷内への潜入に成功。
      ラウテに索敵を頼みながら屋敷の地下倉庫を目指す。甲種への切り札として秘策アリ】

【オメルタ:鋭鋒が指揮をとって魔女狩りの攻撃及びショゴスに対処。ショゴスと鋭鋒が対決中
      地走は指揮を抜けてどこかを護りに行ってしまった】

219 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/24(日) 01:03:12.00 0
連絡が遅れてしまってすまない
実は先日からインフルエンザで寝込んでいた為、レスを殆ど書けていない
順番は従来通りで構わないんだが、少しばかり……具体的にどれほどという指定はないんだが、時間をもらいたい

220 : ◆uUre4dQFyk :2016/01/24(日) 01:10:08.94 0
>>219
承知しました、お大事になさってください。
目安として一週間程度、停滞させましょう。

221 :リタリン:2016/01/24(日) 01:40:08.20 0
異論なしです

222 :名無しになりきれ:2016/01/24(日) 01:50:50.97 0
一週間はいらないだろ
熱が下がれば待機期間、逆にレスを書く絶好の機会が訪れる
普通に仕事してる人間なら、だが

223 :名無しになりきれ:2016/01/24(日) 10:52:57.03 0
参加者でもない奴が口出すなカス

224 :名無しになりきれ:2016/01/24(日) 13:35:14.17 0
インフルの経験ある奴は分かるだろ
体調良いのに外に出られないし仕事にも行けない期間があるんだよ
読書とかネトゲ、物書きに最適だろ

225 :名無しになりきれ:2016/01/27(水) 19:36:35.61 0
知るか関係ねーわヴォケ!
インフルなんて予防接種できちんと対策出来たはずだろーが!
俺なんて毎年打ってるから一度もなったことないわ!
体調管理出来ない甘えタレはさっさと弾いて続きせんかいな!

226 :名無しになりきれ:2016/01/27(水) 20:13:12.92 0
参加者でもない奴が口出すなカス

227 :名無しになりきれ:2016/01/29(金) 18:00:16.44 0
いつまで待たせんだよ糞雑魚

228 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/29(金) 21:45:22.93 0
>『"魔女"から"魔女狩り"へ。屋敷正面に使い魔5体を送るわ、自律駆動だから誤射に気をつけて』

「……おっと、考えたな。そう言っておけば一発くらいなら俺に撃ち込んでも言い訳が利く」

ヴィクトルは皮肉を返しつつ、地上げ屋の屋敷を見下ろす。
敵の兵隊はまだヴィクトルを見つけ出す事すら出来ていなかった。
魔女の召喚した使い魔や、少女の召喚した「何か」、また火災への対応が重なっている為だ。

「さて、こちらは……引き続き嫌がらせをしてやるか」

ヴィクトルは火矢を再び弓に番え、今度は三階に集中して射掛けていく。
火の手はすぐに潰されていくが――火を放つ労力に比べ、火災を消す労力は遥かに大きい。
消火が殆ど一人の手によって行われているのなら、尚更だ。

妄執すら感じられるほどの過剰な防衛。
ヴィクトルは三階に地上げ屋が――そして『地走』がいる事を確信していた。

と、ヴィクトルは新たに数本の矢を手に取る。
鏃に纏わせたのは灯火ではなく――魔法によって形成された水球だ。
それらも、やはり射掛ける先は地上げ屋の屋敷で――直後、三階の内部に膨大な白煙が生じた。
矢に纏わせた水魔法による濃霧が屋内に打ち込まれたのだ。

「さぁ……警戒しろ。お前の飼い主が襲われるかもしれないぞ」

無論、地走という甲種が防衛しているであろう三階に忍び込むという選択は下策だ。
例え隠密行動を得手としていたとしても、リスクが高すぎる。
そんな事は地上げ屋の陣営も、地走も理解しているだろう。

だがそれでも、万が一があるかもしれない――そう思わせる事さえ出来れば、ヴィクトルの策は成功しているも同然なのだ。
その万が一の可能性を、地走はその強い忠誠心故に捨て切る事も、他人に任せる事も出来ない。

(今回の目的は破壊工作だ。
 最も警戒するべき甲種の意識は既に三階に釘付けになっている筈。
 後は侵入して、さっさと地下の倉庫に火を放ち、撤退するだけ……)

そう判断し、ヴィクトルは瑞鉄を操作――拷問用の杭と糸と矢を作り出す。
三つは独立しているのではなく、一つに繋がっていた。
そしてまず杭を足元に打ち込み、続けて矢を地上げ屋の屋敷の屋根に打ち込む。

そうする事で、ヴィクトルの現在地から地上げ屋の屋敷まで、糸の道が繋がった。
後は拷問用の鉤爪を瑞鉄で形成し、糸に引っ掛ければ――上空から悠々と、屋敷へ入る事が出来る。

そしてヴィクトルは糸の道による滑空を始めた。
姿は既に水鏡の魔法により隠匿してある。
一定以上の実力者には看破も可能な水鏡の魔法だが、今、屋敷は混乱の渦中にある。
様々な攻撃への対応に追われる中、「そこにいない者」を探し出すのは極めて困難だ。

「――オメルタファミリーを見くびりすぎじゃあないか?え?」

だがその「極めて困難」を、容易に成し遂げる者がいた。
地上から二階の高さにまで跳躍し、更に壁を蹴り、跳び上がる男。
その視線は――確かにヴィクトルを捉えていた。そして斬撃が彼を襲う。

ヴィクトルは殺気に反応し、咄嗟に身を捩る――糸の道から身を投げ出して回避。

着地を果たし、首元を左手で撫でる。
魔女狩りのコートの襟が、大きく切り裂かれていた。
もし反応が僅かにでも遅れれば、死に至る傷を受けていた。

229 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/29(金) 21:46:28.81 0
「……見くびられるのは、それ相応の理由があるからだぜ」

「そうかい。だが奇遇だな。
 オメルタファミリーがこの街で君臨し、恐れられているのも――」

言葉を紡ぎ終えるよりも速く、男は踏み込みを始めていた。
同時に右腕が鋭くしなる――剣を振るう動作。しかしその右手の中に、刃はない。
ヴィクトルはその光景に一瞬怯み――しかし動揺による動作のミスは起こさない。

風魔法による気流の把握から、斬撃が確かに存在する事は感じ取れていた。
故に腕の振りから不可視の剣身の軌跡を読み――瑞鉄の盾による防御を行う。

鮮血が、屋敷の庭に飛び散った。

「――それ相応の理由があるんだ。お分かり頂けたか?」

ヴィクトルは斬撃を防ぎ損ねていた。
肩口から胸にかけて、致命傷ではないが、決して浅くない刃傷が刻まれている。
殆ど無意識の内に治癒の魔法を発動して、出血を止める。

「……あぁ、よく分かったぜ」

そして――ヴィクトルは不敵に笑った。

「お前のその下らん手品の種がな」

瞬間、男――『焔月』が動いた。
再び不可視の剣による斬撃――今度は、ヴィクトルは盾ではなく細剣を構えていた。
狙いは斬撃を放つ焔月の右手――見えざる刃の根本。

金属音が響き、焔月の斬り付ける動作が止まった。

「ただの曲刀だ」

ヴィクトルは鼻で笑い――焔月が刃を切り返す。
だが種が割れてしまえば、不可視の斬撃は不可視足り得ない。
ヴィクトルは再び細剣を振るう。
今度は、斬撃を止めるのではなく、焔月の手を切り落とす軌跡で。

今度は焔月が、笑みを――堪え切れず綻びたような笑みを浮かべた。

ヴィクトルの斬撃が、不可視の金属に阻まれた。
しかし感覚的に何が起きているのかは理解出来た。
細剣のハンドガードに剣を誘い込まれ、捕らえられてしまった時の感覚だ。

剣の自由が利かない。
ヴィクトルの細剣を捕らえたまま、焔月は距離を詰める。
その左手には――やはり不可視の、しかし確かに存在する何らかの武器。
構えと動作からして恐らくは短刀――腹部を抉られれば命に関わる。

ヴィクトルは――咄嗟に瑞鉄を操作。
細剣をコートの内側の帷子と同化させて回収――右手の自由を取り戻し、その場から飛び退いた。

「……瑞鉄か」

「おいおいおい、心外だな。これはれっきとした俺の技術だ」

焔月は炎魔法の使い手だった。
炎は金属を鍛造し、またその熱気は時に見えるものを見えなくする。
彼が操る武器は鍛造によって形を変え、熱によって姿を消す――まるで月のように。故に『焔月』。

230 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/29(金) 21:47:01.61 0
「言っとくが、あのケチな召喚獣の援護は期待するなよ。
 喝破のオッサンの怒鳴り声はアイツらの砲撃なんかよりずっと強力だ」

「――そりゃ、厄介だな」

忌々しげにヴィクトルは呟き、そして心中の中で言葉を続ける。
だが予定通りだ、と。

先ほどヴィクトルは三階への直接侵入を試みた。
甲種がいるであろう領域に、あえて侵入する素振りを見せた。
そうする事で自分が「本命」で、その目的が「地上げ屋の暗殺」だと強調したのだ。

ヴィクトルが水魔法を発動――爆発的な勢いで濃霧が周囲に発生する。
逃亡の為だ。既に敵の一人に「目的地は三階」であるかのような動きを見せている。
後は逃げ出しても、勝手に敵が三階への警戒を強めてくれる。

そう判断し、ヴィクトルは悠々と濃霧の中で身を翻し――

『無駄だ。まやかしとはいずれ暴かれるもの――喝ッ!』

どこからともなく聞こえてきた声と同時、彼の身を隠す濃霧が一瞬で吹き飛んだ。
彼の視線の先には、男が立っていた。
修行僧の如き様相の、禿頭の強面の男。

「『喝破』のオッサン?召喚獣の方はどうしたんだよ」

「数を減らし、丙種に任せた。紅雀からの指示だ。……その男を逃がすなとな」

喝破と呼ばれた男はそう言うと、一度深く息を吸い込んだ。

「では、やるぞ焔月。『悪党に枷を繋いでやるとしよう――喝ッ!』」

喝破が言葉を紡ぐと、不可思議な現象が起こった。
宙空に魔力ではない、何らかの「力」が浮き上がったのだ。
そしてそれは、最後の掛け声と共に矢の如くヴィクトルへと飛来する。

ヴィクトルはそれを跳躍により回避――「力」は背後の庭木に命中する。
直後――その庭木が軋みを上げながら、独りでに、ゆっくりと、へし折れた。
威力による破壊、といった体ではなかった。
まるで――年老いた木が、自重に耐え切れず崩れ落ちるかのような光景だった。

「……なるほど、なんとなく分かった」

喝破の放ったその「力」は、彼の故郷では「言霊」と呼ばれるものだった。
彼は言葉が秘める力を具象化し、操る事が出来るのだ。
とは言え、それは決して言葉通りの現象を起こせるといった便利な技術体系ではない。
自分に都合がいいだけの言葉に「力」など宿らない。
力を引き出すには、術者が心からそう断言出来る「真実性」が必要なのだ――故に『喝破』。

231 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/01/29(金) 21:49:53.96 0
(状況は……クソッタレだな。だが……まだ「最悪」じゃない)

ヴィクトルは焔月、喝破の両方に警戒をしつつ、考える。

(だから……俺はもっと、追い詰められる必要がある)

例えば、今この瞬間に地下室への放火が成功したとして。
それで保管されている薬品を全焼させられるだろうか。
答えは、恐らく否――ヴィクトル達の狙いが保管庫だと悟った瞬間、地上げ屋は甲種に全力の消火を指示するだろう。

それでは超人薬の貯蔵分は残ってしまう。
だから――もっと追い詰められる必要があるのだ。
もっともっと追いつめられて、この状況から逃げ切れる訳がないと思わせる必要が。

そして、甲種を誘い出すのだ。

今はまだ甲種に動き回られては困る。
魔女と少女の行動に支障が生じる可能性がある。

だがヴィクトルが逃亡出来ないほどにまで追い詰められたなら、その瞬間、甲種は動く。
彼女自身の判断か、指揮官か、地上げ屋の指示かは分からないが、間違いなく動く。
そうなるようにヴィクトル自身が仕向ける。

そうなれば――最早、地下保管庫に放たれた火を即座に消し止める術は地上げ屋達にはない。

ただし、この作戦には重大な欠陥がある。
なにせヴィクトルは殆ど詰みの状況にまで追い込まれてから、更に甲種まで誘い出して、その窮地から逃げ延びなければならないのだ。

232 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/02/01(月) 23:18:30.67 0
時刻は未だ朝方、オメルタ邸は煙に包まれ混迷している様子が伺えた。
ラウテが召還したショゴスに加え、リタリンが送り込んだバントラインへの対応のため情報が交錯しているのだ。
本来指揮官であるはずの焔月や喝破らの姿が見えないことも、その影響のひとつだろう。
ショゴスは数名の丙種冒険者を捕食する事で、その体積は減るどころか増えてさえいた。

囲んで殴ると言う戦法が通じないと察した冒険者たちは、包囲を広げ安全な距離からの射撃を基本とした戦法へと切り替え始める。
しばらくはその戦法が効果的であると思われていたが、状況は一変する。
十分に距離を空けていたはずの冒険者たちが、攻撃を受け倒れ始めたのだ。
最初は何が起きたのか分からなかった。しかしよく見ると、倒れた冒険者の体には深々と「牙」が突き刺さっていたのである。
ショゴスは闇雲に暴れていた訳ではない。周囲の状況を把握し、学習する事の出来る生き物なのだ。
体内に生成した牙を射撃の弾として扱うことを、この状況から学習したのだ。
全方向に収縮できる筋肉のような構造を持つショゴスにとって、体をそのように変化させること自体は難しくない。
しかし、優れた知性を持たずして、きわめて効率的な自己進化を促すことは不可能であろう。

遠距離攻撃を学習したショゴスの周囲では、被害が広がる一方だった。
倒れた冒険者は捕食され、新たな弾薬の材料として吸収されていく。
臆病な冒険者たちはその場を離脱し、数名の冒険者と鋭鋒のみが残されていた。
鋭鋒はその卓越した槍捌きで、ショゴスの復元速度を上回る攻撃を与える事が出来る。
そう思われていたが、攻撃が射撃に移行した現在、両者の戦力が拮抗したのだ。
たった今思いついたとは思えないほどに、ショゴスの放つ牙の弾丸の速度は速い。
否、明らかにそのスピードは進化し続けていた。より効率的な射撃を模索しているのだ。
不定形故に射撃モーションも存在せず、射撃精度と弾速は放たれるたびに上がってゆく。
鋭鋒がそれを見切れなくなるのも、時間の問題であろう。

「獣使いから魔女へ…そのまま真っ直ぐ…15秒後に二時方向から敵影、隠れて」

ラウテは騒ぎに乗じて身を隠し、ソナーを用いてリタリンの誘導援護を行っていた。
窓から侵入したそこは屋敷の二階に位置する客間のひとつ。周囲の状況を探るには絶好の位置取りだ。
人払いの魔法は感知される恐れがあるため、あえてそれは使用しない。
壁は頑丈な石造りであったが、床は木製で音を通しやすい。
床を通じて十分に敵を察知する事が出来たのは幸いであった。
屋敷の地下へと至る通路は隠蔽されていたが、音を頼りに入り口を見つけるのは容易いことだ。
一階の厨房の床板に偽装された入り口は、おそらく知る者は少ないのだろう。
この混乱の最中では見張りの者もおらず、辿り着ければ侵入は容易だと思われた。

リタリンを誘導する一方で、ラウテは同時にヴィクトルの動向もまた窺っていた。
状況は劣勢、しかし援護を要求しないのは彼なりの策があってのことだと察せられた。
彼はおそらく、甲種を釣る事が目的なのだろう。彼なりのこちらへの援護なのだ。
ならばこちらは予定の任務をこなすのみ。ラウテは物陰に身を隠したまま魔笛を奏で続ける。

ソナーの魔法は音を媒体に周囲を探知する魔法だが、息が途切れればその効果は失われる。
しかしその音色は途切れることはない。ラウテは既に十分ほど、その音を保ち続けていた。
循環呼吸法、と言うものがある。実際に存在する楽器の奏法の名称だ。
鼻で息継ぎをしながら、同時に口は息を吐き続けるという離れ業を成す奏法である。
熟練した奏者のみが奏でることが出来るというそれを、ラウテは若年にしてマスターしていたのだ。
途切れぬ音は屋敷中を駆け巡り、数十メートルに及ぶ範囲を手に取るように彼女に伝える。
魔笛を奏でている最中は身動きがほとんど取れないのが欠点だが、身を隠していれば安全だろう。
もちろんソナーの魔法は自身の周囲も探知しているため、この環境において完璧に近い安全を確保していた。

233 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/02/04(木) 17:35:21.55 0
屋敷中央二階での化物との戦闘は、既に惨状という形容を違和感なく使える状態となっていた。
捕食された丙種冒険者は10人を超え、生きている者も大半が負傷して撤退を余儀なくされている。
そんな中、指揮官兼筆頭冒険者である鋭鋒はほとんど一人で化物の矢面に立ち進行を食い止めていた。

「負傷者多数!救護を回せ!」「痛え、痛えよ……」
「庭園にて『魔女狩り』と思しき侵入者を捕捉、焔月様と喝破様が交戦を開始しました!」

矢継ぎ早に耳へ入ってくる報告、要請、うめき声を頭の片隅で処理しながら、鋭鋒はひたすらに槍を打ち続ける。
そうする他に化物の触手を防ぐ方法がないからだ。
しかもこの不定形の魔獣は、鋭鋒と拮抗しながら他の冒険者への攻撃も同時にこなしていた。
それを可能としているのは、触手の合間に撃ち込んでくる小型の砲弾だ。
犠牲者達の肉と骨によって形成されたそれは、丙種冒険者の防御を撃ち抜くほどの威力をもっている。

「攻撃魔法の手を緩めるな!少しでも穴が空いたら突き崩されるぞ!」

現在、こちらの陣形は鋭鋒を中心として丙種の魔術師達を扇状に配置している。
攻撃魔法による十字砲火を効率よく行い、火力を集中させるための差配だ。
鋭鋒が触手を穿ち落とし、その隙に丙種達が魔法の爆炎で本体に攻撃を加える――
その方法でいっときは化物を押し返すことに成功していたが、時間が経つにつれ戦況は覆り始めた。
化物がこちらの攻撃に対応し始めたのだ。恐るべき学習能力である。

「クソ……火力が足りねえ……!おい『紅雀』、一階か三階にいる乙種を増援に寄越せ!
 誰かいるだろ、『黒鉄』か『礫塵』が良い、あいつらの攻撃力なら――」

遠話で『紅雀』に指示を出した、その一瞬の隙をついて、化物の射出した弾丸が槍衾を潜り抜けた。
羽虫の羽撃きに似た音と共に擦過していった弾丸が、鋭鋒の首筋を食いちぎった。
鮮血が噴き出し、槍を抱えたまま膝をつく。すぐに部下の丙種が治癒魔法をかけるが、鋭鋒の攻撃速度は目に見えて低下する。
化物との戦力差が、決定的になり始めた――。

(持ちこたえられるのか……増援が来るまで……?)

紅雀にはああ言ったが、他の警備要員は警備の必要があるからそこに居るのだ。
防衛ラインに穴を空けてこちらへの増援を工面することは簡単ではないだろう。
すぐさま都合をつけて駆けつけてくれるなんて期待はできまい。
再編成には時間が必要なはずだ。それまでに、鋭鋒達が全滅すればアウトである。

転移魔法でどこかへ飛ばそうにも、こんな街のど真ん中からどこへ飛ばしたってその先での被害は甚大だ。
街の守護というオメルタファミリーの(建前上とは言え)第一義に大きく反してしまう。
少なくとも鋭鋒の個人的な主義としてそういう民間の犠牲は出したくなかった。

鋭鋒の治療をサポートすべく丙種達が前に出る。
ギリギリで多重障壁の呪文斉唱が間に合ったらしく、戦場である二階通路の狭さも手伝ってなんとか化物を閉じ込めることに成功した。
しかしこれも焼け石に水だ。高度な障壁魔法は長くは保たないし、それより先に化物は対応して破りにかかるだろう。

時間にしてほんの数十秒ほどの限られた安息の中、鋭鋒は治癒魔法の光に包まれながら逡巡していた。
あと数十秒で増援が駆けつけることは不可能だ。負傷した首は治るだろうが、それは振り出しに戻っただけで好転ではない。
むしろこちらの丙種戦力は目減りし、敵の攻撃力が上がっている以上全滅するのは時間の問題、単なる数十秒の延命に過ぎなかった。
この数十秒で打開の策を見つけられなければ、彼らに生き残る術はない――

234 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/02/04(木) 17:35:57.89 0
「早く運びだせ!引火するぞ!」

障壁のおかげで動けるようになった屋敷の使用人達が手近な部屋からいくつかの壺を持ちだしてきた。
料理や化粧、薬の調合など生活用途に使われる油壺だ。
屋敷に火を放たれているいま、化物によって壺が破壊されれば延焼を免れない為、今のうちに運び出そうとしているのだ。

「待て、そいつをこっちに寄越せ。お前らはさっさと逃げろ」

丙種達に油壷を持たせ、再び鋭鋒は立ち上がる。槍を携えて化物へと吶喊する。
応じるように、ついに障壁が破られ化物が侵攻を再開する。
戦闘開始時と同じ状況、鋭鋒はまたしても一人で槍衾を形成し、化物と拮抗を始めた。
敵の攻撃力が上がっているいま、この拮抗もすぐに覆されるだろう。だから鋭鋒は決着をつけにいく。

「今だ、やれ!」

丙種達が水魔法の応用、流体制御魔法で油壷の中身を化物めがけて撃ち放つ。
迎撃の触手が奔るが、ここぞとばかりに鋭鋒が槍の回転速度を上げて撃ち落とす。
継戦重視の巡航速度から短期決戦の最高速へと己の中のギアを切り替えたのだ。鋭鋒の槍捌きはまだまだ先がある。
瞬く間に体積の大部分をぶち抜かれた化物が、降ってきた大量の油によってずぶ濡れになる。
瞬間、鋭鋒が大きくバックステップ。入れ替わるように投じられた魔法の火の玉が化物に着弾。
ごお、と空気の巻き込む音と共に油へと引火し、化物が燃え上がり始めた。

死体を利用する魔法というのは古今東西普遍的に存在している。
死者の肉体から情報を抜き取るネクラファジーのような魔獣や、死体を自律駆動させるゾンビ化の魔術などがそうだ。
戦略的に大きな意味のあるこれらの魔法には、当然ながらそれを行使させない対抗策というものがある。
もっとも簡単で効果的な対抗策とは――火葬である。

化物は殺された丙種達の肉体を取り込んで成長していた。
だから鋭鋒はまずその化物内部にある犠牲者達の遺体を直接火葬することで、化物の身体を維持できないようにしたのだ。
そして基本的なことだが火がついている間継続的に化物はダメージをうけることになる。
火力不足はこれで補えるという寸法だ。
守護すべき屋敷に火を放つ結果となってしまったが――まあその責めは魔女狩りに負わせればいいだけの話だ。

「一気に押し込むぞ、続け!」

魔女狩りよろしく火攻めの助勢を受け、敗北に傾き始めた戦況は更に覆り始めた。

――――――

235 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/02/04(木) 17:37:07.74 0
>「獣使いから魔女へ…そのまま真っ直ぐ…15秒後に二時方向から敵影、隠れて」

『了解。――形容する、"灯火"と』

屋敷一階にてスニーキングしているリタリンは、ラウテからの的確な指示によってかなり奥まで入り込んでいた。
廊下の灯火に形容することでステルスし、歩哨をやり過ごす。
下手に戦闘すれば遠話ですぐに仲間を呼ばれかねないので、交戦はおろか不意打ちを狙えてもスルーが基本だ。

『魔女から獣使いへ、姿が見えないけどどこから遠話してきてるの』

ソナーによる指示が可能ということはそう離れた場所にはいないはずだ。
リタリン一人では万が一見つかった時に本当に無力なのでできれば位置を把握しておきたいが、
下手に居場所を遠話に乗せて傍受されてもそれはそれでやりきれない。
と、順調に屋敷を進んでいたリタリンは曲がり角の手前で脚を止めた。

『獣使いへ。まずいことになったわ。この先に乙種冒険者がいる――あれは確か、"礫塵"』

リタリンは千里眼の応用で物陰から視野を広げて角の先を見ることができる。
視界の先には、大型の鎧を着込んだ人影が立っていた。
ドラクマと同じ超重騎士団の重装鎧だ。彼のものとの違いは、色がカーキ色なのと兜の形状が怪魚を模しているところ。
元騎士のヘヴィアーマーで、術式戦槌による圧倒的な打撃力で全てを瓦礫と砂塵に変えてしまう――故に『礫塵』。
典型的なパワータイプのように見えて、砂礫を巻き上げ鎧の迷彩色でステルスまでこなすという技巧派でもある。
その乙種冒険者が、倉庫までの通路に立ちふさがっていた。迂回するにはあまりにも遠すぎる。

『鉢合わせになるわ。丙種ぐらいならごまかせても、乙種をやり過ごすのは無理――交戦するしかないわね』

幸い礫塵はまだこちらに気づいていない。
不意打ちで一撃食らわせて、ラウテの援護を受けつつ戦えば倒しきれなくても道を拓くぐらいはできるはずだ。
そして地下倉庫にたどり着くのは別にリタリンでなくとも良い。
ラウテが迂回してこっそり厨房まで行き、倉庫の扉を開くかたちでも作戦は成功なのだ。

『魔女から獣使いへ。仕掛けるわ、援護して』

リタリンは杖で床に魔法陣を描く。
奇襲にあたって高階梯の詠唱をしている暇はないので、短い文節でも最大限の効果を発揮するよう陣で補助をするのだ。
礫塵は左右をゆっくりと見回しているが動きはない。鎧を着込んで歩哨するだけでも体力は消耗する。立哨への切り替えは賢い選択だ。
不意打ちは効果が薄いかもしれないが、いずれにせよこれがリタリンにできる最大の戦略だ。

『――雷槌よ、奔れ』

最短にして最速の現象系第一階梯雷撃魔法。地面を這うように奔る紫電の一条。
それが魔法陣の効力により四条に増加し、それぞれが有機的な軌道をとってリタリンの手から離れた。
飛燕のごとき疾さで通路の角を曲がり、礫塵めがけて疾走する――

『奔れ、奔れ、奔れ、奔れ!』

立て続けに第一階梯を4連続詠唱。それぞれが魔法陣で四倍されて計16の紫電となって奔っていく。
それを追うように同時にリタリンは走り出す。
礫塵の前に飛び出した瞬間、先行していた雷撃が礫塵によって砕かれた床に阻まれるのを見た。
魚を模した兜の向こうの眼光がリタリンを捉える――

『爆炎よ、穿て!』

現象系第一階梯の火焔魔法が兜目掛けて炸裂した。
礫塵はまるで堪えた様子もなく、僅かに後退しただけで悠々と雷撃の中を歩き始める。
やはりリタリン程度の現象魔法では目眩まし程度にしかならない。
捕まえられるのは時間の問題であった。


【倉庫手前にて乙種『礫塵』と交戦。劣勢】

236 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/02/06(土) 07:05:04.93 0
>『鉢合わせになるわ。丙種ぐらいならごまかせても、乙種をやり過ごすのは無理――交戦するしかないわね』

「……何をモタモタしてやがる。マジで俺を死なせるつもりか?」

切迫した報告を寄越す魔女にヴィクトルは悪態を吐き――直後、焔月が動いた。
不可視の得物を携えての踏み込み。
ヴィクトルは目を見開き、腕の振りからその軌跡の予測を試みる。

袈裟懸けの斬撃――だが直刀か曲刀かで斬撃の軌道は大きく変わる。
読み切れない。故に彼は後方に大きく飛び退く。
つまり地から足が離れる時間が、戦闘の最中としては長くなる。

遠間からの攻撃の的だ。

『お前は強者ではないな。逃げ回るのは、いつだって弱者だ――喝ッ!!』

放たれた言霊がヴィクトルへと迫る。
着地し、再び身を躱す余裕はない。
だがこの手の魔法の類を防御するのもまた下策だ。
魔法や魔術とは、物理的に防御して防げるものばかりではない。

故に、ヴィクトルは自ら転んだ。
着地の瞬間に脚部を脱力し、後方に倒れ込む事で言霊を回避。
だがこの展開は決して好ましいとは言えない。

双剣を武器とする華翼には「低さ」を利用した戦いが出来た。
しかし焔月は武器を作り直せる。
長物を使われれば、地に倒れ込んだ状態の相手に、一方的に攻撃が可能だ。

焔月が両腕を左右に大きく広げた。
そして縦と横、異なる軌道で同時に振り下ろす。

「さぁ、どっちが当たりか分かるかな――!」

気流で軌道を読んでいては対応は間に合わない。
不可視の一撃が自分に届くまでの一瞬にも満たない時間の中で、ヴィクトルは思考する。
思考し――決断した。
右の細剣を用いて横薙ぎの軌道に対して防御を行い――左手にも、細剣を作り出す。
そして振り下ろしの軌道に対して――見えない、曲刀の刃を弾くように、振り抜いた。

金属音が、二つ響いた。

「――どっちも当たりだ」

読みは通った。
もしどちらかに渾身の力を込められていたら、細剣では防ぎ切れなかった。
ヴィクトルの額に、冷たい汗がほんの僅かにだが、滲んでいた。

だがそれを拭っている時間はない。
斬撃を弾かれ、焔月の上体は開いている。
起き上がりざまの刺突一閃で心の臓を貫ける。

ヴィクトルは横薙ぎの斬撃を凌いだ右手を支えに体を起こし――鮮血が庭の芝生に飛び散る。

「『――言葉とは時に鋭く、人に突き刺さるものだ』」

ヴィクトルの左腕に、矢の形を得た言霊が突き刺さっていた。
刺突は放てず――焔月が体勢を立て直した。
ヴィクトルはすぐさまその場から離脱する。

237 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/02/06(土) 07:06:26.90 0
「……命拾いしたな」

「お前がな。俺は喝破のオッサンが援護してくれるって分かってるからな。
 何度だってギャンブルが出来るって訳だ。
 お前さん、なかなか鋭い読みをしているみたいだが――何回、正解を引けるかな?」

焔月が両腕を、演者めいた動作で広げてみせる。
その前腕の半ばから指先にかけてが、不意に消えた。
見えなくなったのだ。不可視の得物と同じように。

「これならどうだ?さっきの読みも、俺の「握り」を見て曲刀だと読んだんだろ?
 いやマジで見事な読みだったと思うぜ。残念ながら……次はないけどな」

挑発的な、遊び半分のような口調――だがヴィクトルは眉一つ動かさない。

(……時間稼ぎだな。俺を仕留める事よりも、底を見せず、攻めあぐねさせる事が狙いか。
 つまり……増援の予定があるって訳だ。そいつは結構なんだが……。
 堕廃の奴め。俺が甲種を釣り上げるまでに保管庫に辿り着けるんだろうな)

地走は、精神の均衡を保てていない。
だからこそ御しやすくもあり――しかし同時に読み切れない。
ヴィクトルは彼女を誘き寄せる為の手段を考えている。
だが、それを用いるよりも早く、地走が衝動的に自分を始末しに来る可能性は常に否定出来ないのだ。

もし保管庫破壊の準備が整う前に地走が釣れてしまったら、ヴィクトルは極めて危険な状況に陥る。
堕廃の魔女と魔笛の少女の援護を得られないまま、甲種と、至近距離で遭遇する事になるのだから。

(……なんにせよ、一度状況を変えるか)

ヴィクトルは水魔法を行使――右手に構える細剣の周囲に水球が現れた。
細剣が虚空を切る。
水滴が周囲に飛散し――それらは空中で薄く広がり、水鏡と化す。

鏡面が周囲の風景を映し――その全てにヴィクトルの姿があった。
濃霧の魔法は先ほど、喝破の言霊により一瞬で掻き消された。
故に、欺瞞の方法を複数の、分離した水鏡を用いるように変えたのだ。

水鏡に身を隠し、ヴィクトルは左腕の矢傷を見た。
言霊の矢は未だ消えず残っている。
左腕は、神経が断たれているのか上手く動かない。

処置が必要だった。
だがその矢は何らかの術による産物。直接触れるのは下策だ。
故にまず、細剣を矢傷に割り込むように腕に突き刺す。
そして傷口を広げ、そのまま剣先を用いて矢を引き抜き、放り捨てた。
治癒魔法によって傷口が塞がれていく。

焔月と喝破は、動きあぐねていた。
二人で背中を預け合い、周囲を警戒している。
水鏡の領域から脱出するのも、それらを破壊するのも、不意を突かれるリスクを伴う。

彼らの判断は間違っていない。
しかしその表情は硬い――この状況で、ヴィクトルは逃げようと思えば楽に逃げられると分かっているからだ。
逃がさない為には、不利な勝負に挑むしかない。

鏡面の影から飛び出したヴィクトルが喝破に迫る。
焔月が咄嗟にそれを切り払い――しかし水鏡による囮だ。容易く弾け、水飛沫が飛び散る。
やや遅れて、血飛沫がその後を追った。

焔月と喝破、両者の腕と胸部に、お返しと言わんばかりの矢が突き刺さっていた。

238 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/02/06(土) 07:07:28.45 0
鏡面越しにヴィクトルが射掛けたものだ。
矢は瑞鉄で出来ていて、すぐに持ち主の手元に戻った。
それに伴って付いてきた二人の血液が、ヴィクトルの手に付着し――彼はそれを無言で舐め取った。

『……魔女狩りから魔女へ。こちらは敵の妨害を受け作戦が滞っている。
 状況を脱し、再度陽動を行え。援護してやる』

無論、この作戦の本命は魔女と少女にこそあり、陽動はヴィクトルの方だ。
彼の言葉の殆どは、単に盗聴の可能性がある遠話で、それを悟られぬ為の偽装。
唯一の真実は――これから援護を行う事。
魔女の姿も、敵の姿も見えない、屋敷の外から中へ、援護を行う。それだけだ。

ヴィクトルが気流に意識を集中する。
焔月と喝破は不意打ちの脅威を強く意識させてある。
水鏡に身を隠した彼を探し回れはしない。

窓の位置、屋敷の構造、堕廃の魔女と――礫塵の位置。
その全てを風が教えてくれるような感覚。

風を読む時、ヴィクトルは奇妙な気分になる。
心地良くもあり――酷く不快でもある気分に。
「エルフの血を引くだけの何か」としてしか生まれられなかった自分が、
まるで本物のエルフであるかのような、そんな気分に。

彼は矢を手に取り、矢羽を僅かに千切ってから、弓に番えた。
そして弓を目一杯引き絞り――解き放つ。

疾風の如く、征矢が翔ける。
風魔法により構築された「道」を駆け抜け――屋敷の窓を突き破り、屋内へ。
窓があった。つまり風の道は作れていない。

しかし、矢は窓を突き破った直後、更にその軌道を僅かに変化させた。
千切れた矢羽が正常ではない空気抵抗を生み、ぶれが生じたのだ。

『……あぁ、そうだ。一つ言い忘れた。頭下げとけよ』

矢は魔女のローブのフードを僅かに揺らし、そして――礫塵に。

「……本物のエルフなら、仕留めてたのかもな」

受け止められていた。
狙い過たず、比較的装甲の薄い面頬の隙間を貫く軌道を取っていた征矢が、鋼鉄の五指に掴み取られ、へし折られた。

だが――礫塵は気付けない。
自分のへし折った矢が『薄い水膜を纏っていた』事に、面頬越しの視界と鋼鉄に包まれた指では気付けない。

瞬間生じた濃霧が、礫塵の視界を完全に奪い取った。

239 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/02/10(水) 00:41:23.31 0
【遅くなってしまい申し訳ありません。ちょっとした怪我のため遅れております】
【明日、もしくは明後日くらいになりそうな感じです】

240 :リタリン:2016/02/10(水) 06:37:29.32 0
【了解です、ご自愛ください】

241 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/02/10(水) 22:50:27.87 0
>『魔女から獣使いへ、姿が見えないけどどこから遠話してきてるの』

『魔女へ。大丈夫よ、全部見えてるし。それにここは安全だから』

しばらく屋敷にいる間に、屋敷の壁の特性を生かし反響を効率化させる術も把握した。
屋敷全体……は少々広過ぎるが、概ねの構造と人の有無を把握することは出来る。
ショゴスによる撹乱は十分な功績をあげている。このまま様子を見るだけでも大丈夫だろう。

そう思っていたが、状況は悪いほうに転がるものだ。
ソナーの魔法で大柄な人物の存在を確認すると同時に、リタリンから遠話が飛んでくる。

>『獣使いへ。まずいことになったわ。この先に乙種冒険者がいる――あれは確か、"礫塵"』

ソナーで把握出来るのは、体格や服装の構成材料までだ。
おそらくはとびきりの重装甲を纏った大男、それで乙種ならかなりのつわものだろう。

>『鉢合わせになるわ。丙種ぐらいならごまかせても、乙種をやり過ごすのは無理――交戦するしかないわね』

リタリンが向かう先の道を塞いでいるのなら、おそらく地下倉庫の存在は確実だ。
突破するだけの価値があるだろうということは、容易に想像出来た。
しかし、ここに来ての乙種の敵……リタリン一人なら破るのは容易ではないだろう。
援護の必要があると思われるが、ここから届かせられる音魔法では威力が伴わない。
召還のリソースのほとんどをショゴスに費やしている今、ラウテに出来ることは少なかった。

>『魔女から獣使いへ。仕掛けるわ、援護して』

『了解、一分待って。そっちに駆けつけることにする』

そう遠話で伝えるとほぼ同時。
ラウテはソナーを止め大きく息を吸い込むと、鋭く大きな音を発した。
範囲を限定した凝縮された音波は、足元の床に作用しそれを崩壊させる。
崩壊音波と呼ぶそれは、接触している素材を音波により崩壊せしめる、強力な魔法だ。
床を崩壊させ穴を開けたラウテはそのまま落下し、一階の部屋のひとつに軽やかに着地する。
そこからリタリンの居る位置まではすぐだ。ラウテはそこまでひた走る。

242 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/02/10(水) 22:51:04.97 0
そしてちょうど一分、ラウテはリタリンに追いつく形で合流した。
そもそも何故ラウテが屋敷に潜入し地下倉庫の破壊に向かわないのか。それはラウテが援護に特化しているが故である。
身を隠し敵を撹乱させ、戦闘は召還獣に任せることで場を支配する。それがラウテの基本スタイルだ。
もちろん直接戦闘も可能ではあるが、それはあくまで撹乱の手段のひとつだったりする訳で。
魔法を放ち、それでも効果がないことに愕然とするリタリンに、後ろからそっと声を掛ける。

「援護は任せて、とにかく最大火力で」

ラウテは小さな音で複雑な旋律を奏で、床の魔法陣と自らの間にパスを繋ぐ。
他の体系の魔法と音魔法は、それほど相性が良い訳ではない。しかしラウテにはそれが出来た。
魔法音楽に特化し、優れた魔法作成能力を持つが故に、大抵の魔法を読み取り音楽に組み込めるのだ。
単音では埒が明かないと判断したラウテは、楽器をリュートに持ち替え、更に奏でる。
繋いだパスから魔力を注ぎ込み、リタリンの魔法を強化しているのだ。
人並み外れた魔力を持つが故に出来る力技。にも拘らず繊細に魔法を制御している。

一通りの作業を終えたラウテは、武装を双剣に持ち替える。
ちょうど時を同じくして、ヴィクトルの遠話が飛ぶ。

>『……魔女狩りから魔女へ。こちらは敵の妨害を受け作戦が滞っている。
 状況を脱し、再度陽動を行え。援護してやる』

もちろん作戦というのはフェイクだ。本命はリタリンそのものである。
そしてラウテの目的もまた、リタリンを地下倉庫に導く事なのだから。

ヴィクトルの矢が礫塵に掴み取られた瞬間、ラウテは駆け出していた。
双剣を構え、低い姿勢で礫塵の懐へ潜り込むように近づく。
同時に濃い霧が発生したのを確認したラウテは、走りながら歌っていた。
それは楽器を用いない声によるソナー。濃霧の中でも正確に相手の位置を捉えているのだ。
まるで踊るような足取りで敵の背後に回り込んだラウテは、首筋の鎧の隙間めがけて、剣を繰り出す。
しかしそれは鎧に阻まれる。攻撃を察知した礫塵が、わずかに動く事で狙いを逸らしたのだ。
振り向きざまにいい加減に放たれる鉄槌の一撃を、ラウテはバク転で距離をとり回避する。
軽い双剣では、礫塵の防御を貫くことは非常に難しい。だがしかし、魔法なら可能だ。
こちらを振り向いた礫塵の背後で、詠唱を終えたリタリンの魔法が放たれる。

243 :名無しになりきれ:2016/02/12(金) 00:35:29.35 0
雑魚は一掃しないと
キリがなくなるぞ

244 :リタリン:2016/02/15(月) 20:41:13.55 0
【すみません!一両日中には投下します!】

245 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/02/16(火) 21:59:57.03 0
重装の甲冑騎士、礫塵が雷撃の林の中を疾駆する。
その先にいるのは防毒マスク姿の魔女、リタリンだ。
彼女は礫塵の圧倒的な防御力、突破力に小さく悲鳴を漏らしながら、健気にも自身の杖を構えて対峙を選んだ。

「……!」

礫塵は無言、しかし裂帛の気合は呼気というかたちで表に出る。
一瞬肉体が鎧越しにも膨張したかのような錯覚とともに、振りかぶった術式戦槌をまっすぐに打ち下ろした。
彼の得物は魔法による加速を施した華翼と同種の魔導兵装だが、華翼のそれが機動力重視であるのに対し、こちらは威力に全振りだ。
その加速度と超質量、超硬度によってあらゆる物体を砕き尽くす。
その一撃には指向性のある大量の魔素が伴う為に、この戦槌は魔法さえも砕くことができる。
ドラクマがタフさを頼りに魔法を受け切って殴り合いで勝つスタイルなら、礫塵は魔法ごと相手を叩き潰す超攻撃的防御戦型である。
いずれにせよ、リタリンにとって相性が悪いことには変わるまい。

(バントラインを一体でも連れてくるんだったわ……!)

正門の陽動に当てているバントラインは、本来こういった重装甲の相手をする為の戦術要素だ。
潜入任務においてはあの巨体はむしろ邪魔になると踏んで置いてきたのが裏目に出たかもしれない。
当然だが、新たに召喚する余裕などあるはずもない。

『形容する――"泥沼"と!』

向かってくる礫塵の足元へ向かって形容魔法を放つ。
床が液状化し、泥のようにうねって礫塵の脚部甲冑を絡めとる。
鎧武者はそれを面頬の奥の相貌で一瞥すると、打ち下ろし軌道にあった戦槌のグリップを巧妙に握り替えた。
加速ののった鉄塊の軌道が僅かに変更され、リタリンの頭蓋ではなく足元の泥と化した床へと叩きつけられた。
パギィン!と金属質のなにかが爆ぜ割れる音と共に形容魔法が打ち砕かれ、床のエンチャントが解除される。
この巨体で恐ろしくアドリブが効く。やはり乙種の名は伊達ではない。
生まれた隙にリタリンは矮躯を必死にねじ込んで、なんとかバックステップで距離をとった。
もう後はない。廊下は狭く、逃げるスペースは有限だ。
――しかしそれでも、戦況はジリ貧ではない。

>「援護は任せて、とにかく最大火力で」

要請していた援護に応え、ラウテがリタリンの背後から合流した。
これで二対一。たとえ相手が乙種であろうが、このラウテもまた正式な乙種冒険者。
一回りも年齢の違う少女の頼もしさにリタリンはもう泣きそうだ。

「詠唱するわ。時間をちょうだい」

ラウテはその短いやり取りで完全に意図を理解したらしく、魔法の音律を奏で始める。
魔法陣への魔力供給を確認、魔女の魔法を強化する支援魔法だ。
驚く無かれこの魔笛の少女は、この若さで魔女の専門分野を理解し、使いこなし始めているのだ。

>『……魔女狩りから魔女へ。こちらは敵の妨害を受け作戦が滞っている。
 状況を脱し、再度陽動を行え。援護してやる』

そこへヴィクトルから遠話が飛んできた。
陽動。彼は意図的に遠話に虚実を織り交ぜている。
それはつまり、傍聴者の存在を示唆するような『敵の妨害』を受けているということだ。
そんな中で何が嘘で何が真実なのか判別する根拠は示されていないが、彼が何をするつもりなのかはわかっていた。
あの男は、やると言ったことはやる男だ。――たとえそれがどれだけはた迷惑な副次被害を産もうとも。

>『……あぁ、そうだ。一つ言い忘れた。頭下げとけよ』
「もう慣れたけれどね!」

リタリンは半ばやけくそ気味に膝を曲げた。
瞬間、窓を突き破って入ってきた矢が意味不明な軌道をとってリタリンの頭上を刈った。
冷たいものが背中を駆け下りていく感覚に身震いしながら見上げると、礫塵へ向けて鋭い曲線を描く矢羽の尾が見えた。
甲冑騎士は危なげなくそれを掴みとる。曲軌道で速度が下がっていたとはいえ、信じられない反射神経だ。

246 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/02/17(水) 00:53:12.56 0
「ダメじゃない!」

リタリンはヒステリックに叫んだ。
しかしそれは、彼女がヴィクトルの意図を完璧に理解していたが為の、礫塵に対する精一杯のブラフだった。
本命は矢による刺突ではなく――矢にエンチャントされた水魔法だ。
礫塵によって矢がへし折られた瞬間、仕込まれた魔法が発動、水が濃霧となって礫塵の周囲一体を白く染め上げた。

そして連携できていたのはリタリンだけではない。
ラウテもまた、矢が掴み取られた時点でその手の武器を双剣に持ち替え疾走を開始していた。
礫塵にはそれが、失敗した狙撃のフォローに動いたように見えただろう。
だが真実は違う。何故なら彼女は歌っている。濃霧の中でも敵の位置を把握できるソナーの魔法だ。
彼女の言った援護という言葉にも嘘はない。だからリタリンは、間髪入れずに詠唱を開始できた。

『燦然の空、十二の柱、四方千里を染め上げる霜の平野。
 銘は氷雪、その神威を以って万象一切の時を止めよ』

文節五つ、第五階梯現象系氷魔法。
第五階梯はいわゆる中位魔法で、魔法使い系職であればそう苦労せずに唱えられる程度のものだ。
詠唱破棄の使えないリタリンが戦闘中に使える魔法としては最大級。
これでも礫塵ほどの実力者であれば大したダメージもなく耐え切ることができるだろう。
だが、今は加えてラウテの魔力供給がある。その彼女はソナーで霧の中へと切り込み、礫塵へと飛びかかる。
放たれた剣閃は浅い、しかし急所狙いの一撃は礫塵に警戒させるには十分だった。
甲冑武者が術式戦槌を少女へ向けて振り回す。霧の向こうのその背中へ、リタリンも魔法の照準が合った。

『――凍てつけ!』

凝集された氷結魔素による投射攻撃。
疾風の速さで殺到する魔力の波濤が、廊下の壁や床を凍りつかせながら礫塵へと迫る。

しかし礫塵もまた乙種冒険者。こちらに魔法使いがいるという意味を読んでいた。
ラウテへ向かって振り抜いた戦槌、その勢いを殺さずに右足を軸に一回転。
十分な加速が乗ったまま周回してきた術式戦槌が、リタリン肝煎りの魔法攻撃を迎撃する。
あの戦槌には魔法を破壊する効力がある。どれだけ健気に詠唱した魔法であろうと、ディスペルされれば意味を失う。
鎧の向こうの双眸が、己が勝利への確信に輝いた。

――しかし!
完璧な軌道でもって出迎えたはずの戦槌は、攻撃魔法を穿つことなく空振った。
氷結の魔法は礫塵の位置まで届かなかった。何故ならリタリンの魔法は、初めから礫塵など狙っちゃいなかったからだ。
魔法の対象となったのは、礫塵ではなくその周囲の『濃霧』。
あの性悪エルフが性懲りもなく放り込んできた嫌がらせの水魔法、それが生み出した濃霧へと氷結魔法を放ったのだ。

霧とは、密度こそ低いものの空間に偏在する水の集合体である。
水であるからには、当然凍る。それが強化された魔法による影響力であれば抗いようがない。
リタリンの魔法は礫塵の周囲を色濃く覆っていた霧へと作用し、一瞬で凝結させた――その渦中にいる礫塵ごと。
氷城のように氷柱の塊の中に閉じ込めることはできなくとも、鎧の関節や隙間を強靭な氷で覆うことはできる。
そしてこの重装甲、一旦駆動性を失われてしまえば、それは最早鎧ではなくただの鋼の棺桶だ。
ヴィクトルの水魔法、ラウテの魔力援護、そしてリタリンの氷結魔法が歯車のごとくピタリと噛み合った結果。
関節を固められ身動きの取れなくなった礫塵はそのまま屋敷の壁めがけて倒れこんだ。
脚も固まっているので起き上がることすらできないだろう。
リタリンは鎧の隙間から杖先を差し込み、初級の雷撃魔法を流して礫塵を失神させた。

「終わったわ……ご苦労さま。先へ進みましょう」

礫塵がここで歩哨をしていたということは、この先に重要な物資があることは間違いない。
急激な魔力の使用に肩で息をしながら、リタリンはラウテへ先を促した。


【礫塵撃破】

247 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/02/21(日) 05:54:32.76 0
ヴィクトル・シャルフリヒターは風を読む。
濃霧に満たされた廊下の中で、交錯する疾風と暴風――礫塵と魔笛の少女。
その外側から紡がれる空気の震え――堕廃の魔女の詠唱。

そして――その震動が終わると同時、刹那の内に静止する気流。
濃霧の動きも、暴風の如き気配も、最早感じ取れなかった。

「……使えるな、アイツ」

ヴィクトルは小さく呟き――その手は既に弓に矢を番え、引き絞っていた。
水鏡の鏡像で取り囲んだ焔月と喝破に、状況を改善する隙は与えない。
射掛けられる無数の矢は、少しずつ、だが確実に二人を追い詰めていた。

喝破の操る言霊は強力な術だが――その発動には言葉を伴う必要がある。
ヴィクトルの放つ征矢は彼が一呼吸を終えるよりもずっと短い時間で、彼を貫ける。
初撃で胸部――肺を射抜かれていれば尚更、被弾を堪えて言葉を連ねる事も困難だった。

そしてそんな喝破を庇わざるを得ない焔月も、徐々に消耗を強いられていった。
だが彼とて乙種の冒険者――ただ一方的に嬲られているばかりではない。

『――其は尾を喰む蛇。森羅の起こり、万象の終焉』

射掛けられる矢の雨を、致命の物のみを弾きながら焔月が声を紡ぐ。

『全を巡り、遍く一の姿を得し者よ。汝に求めしは灰と塵。
 一を零に。零を全に。全てをその輪廻の裡へ』

彼は優れた白兵戦術の使い手だが、その基盤となっているのは高度な炎魔法の技量だ。
時間稼ぎや魔力の消耗と言った「戦闘における不純物」を考慮しなければ、
近接戦闘を行いながらの魔法行使が彼には可能だった。

『喰らい尽くし、虚無を齎せ――【燃える世界】』

大振りの斬撃と共に放たれた炎の魔素が、彼の周囲を焼き払った。
周囲に張り巡らされた水鏡が一瞬間の内に蒸発する。

(晴れた!あの野郎は――)

焔月が周囲を見回そうとして――その体を、四肢の関節を、疾風の如き尖矢が貫いた。
矢は、屋敷の窓――彼らのすぐ傍にあった一階の窓から射掛けられていた。

展開された水鏡を打破するべく、炎魔法の使い手が取り得る最良の手段は明白だ。
周囲を焼き尽くす大魔法――だが、それも無制限に使える訳ではない。
彼は地上げ屋とその屋敷の警護に雇われた冒険者だ。

その彼が、屋敷を巻き込み、火災を招き、主人に危険の及びかねない魔法の使い方を出来る訳がない。
詠唱が聞こえた時点で、水鏡の欺瞞に身を隠しながら屋敷の窓に飛び込む判断をする事は、ヴィクトルにとって困難ではなかった。

「なかなかいいザマじゃないか。飼い犬風情にはかなりお似合いの姿だぜ」

芝生に倒れ伏す焔月と喝破を見下しながら、ヴィクトルは再び屋敷の外へ出た。

「だが――今の判断は最悪だったな。まったく、何の意味もないぜ」

彼は嘲笑を浮かべながら――屋敷の三階を見上げた。

「考えてもみろよ。お前達が負けたら……一体誰が代わりに俺を止めるんだ?」

そして細剣を自身の眼前に立てるように構え――口を開く。

248 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/02/21(日) 05:57:12.08 0
『其は天上の神。全の象徴。分け隔てなき施す者』

焔月の表情が、強張った。

『慈悲を示せ。愛を以って与えよ。無慈悲なまでの施しを。
 草木に灯りを。大地に温もりを。闇に黄金の如き輝きを。
 その施しで全てを押し潰せ』

エルフが剣を掲げた。
切っ先の向く先は――屋敷の三階。

『熱を満たし、光を与えよ――【爆ぜる世界】』

詠唱完了と共に放たれた火球が、屋敷の外壁に触れた瞬間、炸裂した。
強烈な爆風と熱波が拡散し――『城塞』の魔法により高度な堅牢化を施された外壁が、容易く砕け、溶け落ちる。

屋敷の三階の内装が、外からでも確認出来るほどの大穴が穿たれていた。
もし「壁のすぐ裏側に誰かがいたのなら、絶命は免れなかった」だろう。

それは、地走には我慢ならない事だろう。
自分の一切与り知らない状況から、運が悪ければ飼い主の命を奪っていた爆撃が放たれたのだ。

「さぁ、『キレて』きやがれ、甲種……!」

故に、地走は間違いなく激怒する。
そして――爆撃を仕掛けた外敵を始末しに来る。
最早それを、自分以外の、信用ならない部下達に任せはしない。

ヴィクトルは確信していた。


そして――穿たれた大穴から、悪鬼の如き形相の地走が、彼を見下ろした。


死神の鎌を首に掛けられたかのような悪寒。
それを感じた時には、ヴィクトルは既に水鏡の魔法を行使していた。
己の姿を隠匿し、更に周囲には無数の鏡像を展開、加えて濃霧を張る事で幻惑の看破を阻害。

同時にその場から飛び退き――直後、地走の飛び蹴りが、彼が一瞬前にいた地点を抉った。
ヴィクトルがやや緊張混じりの、皮肉げな笑みを浮かべた。
所詮は獣だ、と。

後はこのまま付かず離れずの距離で牽制を仕掛け、屋敷から引き離せばいい。
魔法に長けた乙種が二人、鎮火に適性がある乙種が一人、既に無力化出来ている。
地走さえ誘き寄せれば、地下保管庫の消火はすぐには行えないだろう。
そうなれば――後は地上げ屋の陥落も時間の問題だ。

その未来予想図を打ち砕くように、地走が、姿を隠したヴィクトルの方を見た。
不可視の相手を闇雲に探している動きではない。
彼女は確信を持ってヴィクトルを睨み――そして、踏み込んだ。

鋼鉄の刃とすら見紛う貫手を――ヴィクトルは深く屈み込んで躱した。
地走はヴィクトルよりもずっと背が高い。つまり視点も高いという事だ。
濃霧の中、地に伏して姿を隠したヴィクトルを見つけ出すのは――少なくとも先ほどよりかは難しい。

ヴィクトルは地走に対する見くびりを捨て、気配を殺して地に伏せ続ける。
周囲には鏡像だけでなく鏡面そのものや、中身の無い不可視の水鏡を展開。
欺瞞に欺瞞を重ね、発見される恐れを少しでも低減させる。

249 : ◆xAR6oa9/33KJ :2016/02/21(日) 05:59:05.41 0
(……どうなってんだ。昨日よりも……更に動きが……感覚も、鋭くなってやがる)

そして地走の変貌に対して思索を始め――答えはすぐに見当が付いた。

(そうか……「過剰摂取」させやがったな。甲種が薬の正体を知っているにせよ、
 いないにせよ、口実は幾らでも用意出来る……!あのキレっぷりも、「悪酔い」混じりって訳だ……!)

「自分が地上げ屋の立場である」と仮定して考えれば、すぐに分かる事だった。

(逃げ切れる……か?)

考えて――今度もやはり答えはすぐに出た。

逃げ切るのは極めて困難だ。
完全に気配を殺している今でこそ発見されていない。
が、地走は欺瞞の目もくれずに周囲の様子を伺っている。

動けば、見つかる――ヴィクトルは確信していた。

ならば、どうするのか。
答えは、単純明快。

それでも、動くしかない。
魔女と少女はもう放火を済ませた頃合いだろう。
二人の援護を受け、地走を屋敷から引き離し、地下保管庫を完全に破壊する。
作戦に変更はない。

ヴィクトルは立ち上がり、屋敷の塀へと脱兎の如く駆け出した。

その不可視の背中を、地走はやはり正確に見据えた。

『――離脱する。援護しろ』



(……アイツの魔法、何かがおかしかった)

焔月は四肢を射抜かれ動けない状態のまま、思考していた。

(あんな魔法が使えるなら……なんで戦闘中に使わなかった?
 階梯を幾つか落としゃ、エルフなら詠唱短縮か……完全破棄して魔法が使えるだろうに)

彼は首を左右に振る。

(それだけじゃない……アイツが使ったあの魔法は……俺の、俺が使える最大の爆炎魔法だ……
 偶然、なのか……?戦闘中、一度も戦闘用の魔法を使わなかったアイツが、
 唯一使った魔法が俺の、最大魔法……何かが、おかしい……)

だが、その疑問が解に至る事はない。
そして失血による失神寸前である彼は――その疑問を誰かに伝える事さえ、出来はしない。

250 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/02/24(水) 21:27:47.37 0
ヴィクトルら一行が作戦を開始して未だ一刻も経たず……オメルタ邸の周辺は騒ぎに気付き始めていた。
立ち上る煙と戦いの声や音……邸宅の外からでも分かるそれらは、住民らに不安を与えている。
ここは高級邸宅地、それなりに地位のある者ばかりが住んでいるのだから、安全は必須だ。
宅地の広さ故に火事が起きても延焼の危険は少ないが、何らかの形で被害が及ぶ可能性はある。
しかし付近の住民らが下した結論は「関わらないこと」だった。
何せ相手はあのオメルタの屋敷だ。警備も厚く、この街で最も安全な場所のひとつである。
もし何か騒ぎがあったとしても、すぐに鎮圧されるのは目に見えているのだ。
煙が上がっていると言っても大した様子はないし、消防を呼ぶ必要はないだろう。そう考えたのだ。
リスクを避けるには関わらないことが一番である……彼らにとって、それは唯一の答えだった。

さて、その騒ぎの只中、最も中心に位置しているのは暴れるショゴスとバントラインたちだ。
ショゴスの胃が満たされているせいだろうか、それとも単に不味そうなのか、ショゴスはバントラインに手を出さない。
むしろショゴスは率先して、バントラインたちの行動を手助けするような動きすら見せている。
と言うのも、ショゴスはこの状況に飽き始めていたのだ。餌は豊富だし遊び相手もいるが、刺激が少ないのだ。
だったら状況を転がして騒ぎを大きくし、より快適に捕食と殺戮を行えるようにする。そう考えたのだった。
ショゴスの主人から、ここで可能な限り時間を稼ぐように言われていた事は覚えている。
だがその命令はどうでも良い。必要なのは殺戮を楽しむ事だけだ。それがショゴスの思考の全てであった。

そんな騒ぎのおかげで比較的安全に建物一階を探索出来ているラウテとリタリンだったが、ラウテはひとつの疑問を感じていた。

「さっきの大男、何故殺さなかったの?」

リタリンにそう問い掛ける。少しでも魔力を消耗するより、刃物でも鎧の隙間に突っ込めばいい話だ。
そういう部分を、ラウテは合理的ではないと感じる。逆に人の命を奪うことに疑問を感じないのだ。

ラウテは生まれたときから、魔笛と契約することを定められていた。
彼女の実家は代々魔笛を奉り、それを守り操ることを生業としている。
一族の中でも秀でた才能を持っていたラウテは、当然のように魔笛に選ばれた。
彼女が教わったのは、魔笛の扱い方と音楽魔法、そして人の殺し方だった。
魔笛アムドゥスキアスは人の魂を餌とする。それを扱うためには、贄を用意する必要があったのだ。
故にラウテは、人を殺すことにためらいを、禁忌を覚えない。
弱い者は餌となり、強く生きねば食い殺される生活を当たり前として過ごしてきた。
だから彼女は人を殺す。魔笛が喜ぶように、出来るだけ残虐に。

急ぎながらも言葉を交わしていた二人だったが、すぐにお目当ての厨房に到着した。
安全を確認し厨房に侵入した二人は、すぐに床に作られた扉を発見する。
一見ただの床下収納……しかしその先に広い空洞があることは、ラウテの魔法で感知済みだ。
案の定、扉には大きな南京錠がかけられている。物理的に破壊するか、開錠の魔法を使う必要があるだろう。
ラウテの扱う魔法体系に、開錠のスペルは存在していない。そこでラウテは迷うことなく、その錠前に短剣を振り下ろした。

251 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2016/02/24(水) 21:28:42.72 0
「リタリン、ちょっと離れててね」

叩き付けた短剣を足で押さえ、空いた両手で笛を吹き鳴らす。
先ほども使った、崩壊音波の魔法を短剣に対し使ったのだ。
接触している物体にしか作用させられない上に、楽器を扱うのに両手が塞がってしまうという、使いどころの難しい魔法だ。
それでも簡単に床に穴を開けてしまうほどの音波は、南京錠を破壊するのには十分だった。
南京錠はあっけなく砕け、地下への扉は開放された。後は中を確認して火を放てば良いだけだろう。

「ラウテはここで見張る。その間に中をお願い」

入り口はひとつしかない。そこを押さえられてはならないし、火を放つならリタリンのほうが適任だろう。
ラウテは改めて笛を吹き鳴らし、周囲の状況を音波と一つ目蝙蝠で探り始める。
相変わらず人の気配は二階に集まっているようだ。三階にも人影は確認出来るが、脅威にはならないはずだ。
問題は建物の外、戦闘を繰り広げているヴィクトルとその相手たちだ。
ここからだと多少距離があるため巻き込まれる心配はないが、問題は戦っているヴィクトルだ。
気配から察するに、あの地走もまた戦闘に参加したものと思われる。
そう察知してすぐ、遠話がヴィクトルから飛んできた。

>『――離脱する。援護しろ』

『了解、こちらもすぐに「靴紐が解ける」わ』

あらかじめ決めておいた暗号だ。倉庫の破壊を示している。
しかし援護か……と、ラウテは暫し思案する。
ショゴスを動かすために、リソースを割き過ぎているのだ。今は大したものは呼べない。
思案の後、彼女は笛を鳴らす。すると、邸宅の上空に黒雲が垂れ込め始めた。
否、それは雲ではなく鴉や鳩の群れだ。上空を旋回し、ひとつの意思ある生き物のように蠢いている。

ヒッチコックの「鳥」という映画をご存知だろうか? 鳥が人間を襲うと言う、パニック映画の傑作である。
人々は謎の鳥の凶行に恐怖し、逃げ惑う事しか出来ない。鳥が恐ろしいのではない、群れと言うのが恐ろしいのだ。
そんな映画さながらのように、鳥たちは「獲物」を睨み付け、群れと言う生き物として行動する。
狙いが定まった鳥たちは、まっすぐに人間たちに向かって落下し始めた。
その嘴で、爪で、攻撃を繰り返す。大したダメージにはならないが、邪魔くらいにはなるはずだ。
支配された鳥たちは、攻撃を受けても怯んだりはしない。効果があるとすれば、動物が本能的に忌避する炎くらいだろうか。

252 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/03/02(水) 21:01:09.27 0
「うまくいってるみたいね、陽動」

オメルタ屋敷の瀟洒なインテリアを指でなぞりながら、リタリンは窓の外の喧騒を垣間見た。
彼女達は現在、屋敷一階の厨房を探して歩き回っている最中だ。
はじめに撃破した礫塵を除いて、立哨などは配置されていなかった。
それは一階の警備人員を割かねばならないほどに庭での戦闘が激化しているという証左に他ならない。
最低限の要員として残されていた礫塵さえ突破すれば彼女達が自由に動き回れるだけの空白地帯がそこには生まれていた。
とはいえ、悠長に時間をかけて探していられるわけではない。
庭では依然としてヴィクトルが戦っているのだ、こちらに援護を寄越す余裕があるとはいえ、それは永久保証ではない。
甲種が出てくる前に撤退できるならそれに越したことはないのだ。

>「さっきの大男、何故殺さなかったの?」

共に廊下を歩きながら、ふとラウテがそんなことを聞いてきた。
リタリンは心の底から何を言ってるのか理解できないといった顔をして、それをすぐに消した。
魔笛の少女が本心からそう訪ねていることに気付いたからだ。

「殺す理由がないでしょ」

リタリンは短くそう答えた。これも本心だった。
リタリンにとって、敵というのは長らく巨大な恐怖の塊だった。
開拓地時代は馬よりも大きく狼より凶暴な原生魔獣や、言葉の通じぬ残虐な風習を持つ現住部族と戦ってきた。
もっぱらリタリンの役目は魔法を用いた後方支援で、直接対峙して打破することは稀ではあったが――
むしろそれ故に、開拓地で彼らに遭遇すること、彼らの間合いに接近することは死を意味していた。
貧弱な魔法使いであるリタリンには、戦うことはおろか逃げ切ることさえ絶望的だったからだ。

そして戦えば、彼らを殺すしかなかった。
言葉が通じなければ分かり合うこともできないし、分かり合えなければ共存することもできない。
目が合えばそれは相手を殺すか相手に殺されるときで、コミュニケーションは言葉ではなく剣と魔法の炎だった。
内地に戻ってこれた時、そこでの諍いに巻き込まれた時、話すことができるというのはなんと素晴らしいことかと痛感した。
今でもそう思っているし、現に二度目の魔女狩りで生き残れたのも交渉の余地がヴィクトルにあったからだ。

分かり合おうという意志を無視して殺される絶望を、リタリンは理解できる。
分かり合える可能性が少しでもあるならば、それを完全に無くしてしまいたくはない。
故に、リタリンは殺さない。もちろん完全に無力化できているという前提はあるが。
では殺さなきゃ無力化できない、作戦に支障が出るとなった時、リタリンは相手を殺せるのだろうか……?
とまれかくまれ、結局のところ、理由は一言に帰結する。

「私は殺されたくないの。だから殺さない。自分がやられて嫌なことは他人にもしない、これって大事なことよ」

そこまで言って、なんだか説教臭くなりそうで、やめた。
偉そうにラウテに説教できるほど自分が出来た人間じゃないという自覚はもちろんある。
だけどそれ以上に、どんなに言葉を尽くしたって、この少女にはおそらく、自分の想いは響かないという確信めいた諦念があった。

ラウテ・パユ。魔笛の奏者。百千もの魔獣を従える魔性を持つ少女。
彼女は利発で、仲間であるリタリンやヴィクトルに好意的だし協力的だ。
しかしその反面、自分と深く関わりあわない他者に対しては驚くほどに酷薄で、残虐だった。
砂漠の海亀亭で拉致してきた店主を酸鼻極まる拷問の末に殺し、化物の餌にしてしまった昨日の夜、リタリンは真に彼女に恐怖した。
もっと言えば、あの化物に食わせる為にスラムから何人か攫ってきて殺していることも知っていた。

殺すなとは言えなかった。それはラウテの無機質な殺意が自分に向かうことを恐れてのことではない。
おそらくラウテは、純粋に単純に『必要だから』人を殺しているのだ。
若年の自覚があるリタリンをして一回りほども年下の、まだあどけなさを残すこの少女に、殺人の必要を迫らせる"何か"が恐ろしい。
そして必要にかられての殺人を、なんの感動もなく事務的にこなしてのける少女の変質が怖かった。

253 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/03/02(水) 21:01:30.76 0
青い顔で話を打ち切ったリタリンと、その後に続くラウテは、やがて目当ての厨房を探り当てた。
誰もいなかった。当たり前だ、この非常時に火の気のある場所にとどまる者などいるはずもない。
そして、ラウテの探知魔法に導かれるまま床の扉を発見した。
酒瓶などの湿気に強い食材を温度の低い床下に保存する為の収納口、しかし不釣り合いな空洞が探知されている。
不自然なほど厳重に施錠されているのも怪しい。

「少し時間かかるけど、解錠魔法を使うわ」

リタリンが魔導書のページを手繰るのを、ラウテの小さな手が制した。

>「リタリン、ちょっと離れててね」

返事をするより速く、彼女は短剣を錠前へと叩きつけた。
足で押さえつけながら、魔笛でなにやら音楽を奏でると――突き立てられた短剣の先で錠前が爆ぜ割れた。
魔力視では特別な魔法は検知できなかった……もっとなにか別の物理的な現象だ。
さすが魔笛、できることの幅が広い。
二人がかりで分厚い扉を開けると、案の定地下への階段が出てきた。

>「ラウテはここで見張る。その間に中をお願い」

「了解、行くわ」

リタリンは注意深く一歩ずつ階段を降りる。
地下は薄ら寒く埃っぽかったが、階段の中央にだけは埃が積もっていない。
毎日のようにここへ出入りしている人間がいるのだ。数年に一度開くか開かないかの床下収納にはありえない。
そしてそんなペースで搬入搬出がされているのに、不必要なほど厳重な施錠が必要な物品と言ったらもう答えはすぐそこだ。

「やっぱり……こちら魔女、『ガラスの靴に履き替えた』わ」

地下室は広く、棚がところせましと林立していた。
それぞれの棚の日付を書いたラベルの下には、この街にあるいくつかの大きな薬屋や料理店の名前が記されている。
その中には砂漠の海亀亭の名前もあった。リタリンは棚を一つ一つ回って、それぞれの名前を素早く手帳に書き写した。
手近な棚の中の革袋を破り、出てきた錠剤と持ち込んだサンプルを照合。
間違いない、これが『超人の薬』そのものだ。

>『――離脱する。援護しろ』

と、ヴィクトルからの遠話が耳に響く。
あの皮肉屋がなんの冗句も交えずに短文で連絡してきた、それだけ差し迫った事態ということだ。
甲種と接敵した、と考えて良いだろう。

>『了解、こちらもすぐに「靴紐が解ける」わ』

ラウテが遠話を返す。もう工作する余裕はない、一刻も早く撤退を開始しなければ。
リタリンは杖で簡易の魔法陣を描き、ラウテからの魔力供給を受けながら呪文の詠唱を始めた。

『北に灰。南に幻想。西の黒き森。東に在るは鉄の都。
 四方より来たる灯火の群れ、八方の敵の直上を照らせ。
 昏き帳を貫き穿ち、緋色の原野を朱色の血潮で覆い尽くさん。
 ――赫き竜よ、己が尾を喰み灰燼と化せ』

第八階梯炎魔法。
リタリンの描いた陣を中心に緋色の輝きが地下室へ満ち、色濃い陰影が輪郭を得始める。
影の中から滲みだすように生まれたのは、夕日にも似た赤々と輝く一匹の竜。
その鱗の一つ一つが燃え盛る炎、空気中の塵が引火してその劫火の体躯を何倍にも膨れ上がらせる。

254 :リタリン ◆77DMiRtfME :2016/03/02(水) 21:02:26.53 0
上位魔法は現象そのものがひとつの生き物のように振る舞うほどの存在密度を獲得する。
出来損ないの魔女であるリタリンには到底使いこなせるはずもない高等呪文が、ラウテの力を借りた今なら可能なのだ。
緋色の竜は己の為すべきことが初めからわかっているかのように、片っ端から棚を食い荒らして灰燼へと変えていく。
リタリンは間違って自分も燃やされないように急いで地下室の階段を上がった。

「安置でじっくり詠唱できて外部魔力ありならこんなところね。もう私にも制御は無理、全部燃やし尽くすまで止まらないわ」

行きましょう、リタリンは先を促した。
先と言うのは無論、戦闘中のヴィクトルの離脱支援だ。
既にラウテは先行して使い魔による援護を行っているらしかった。
リタリンも防毒マスクを脱ぎ捨ててローブの裾を掴みなりふり構わず走りだす。

『こちら魔女。わたしに一案あるわ、どうにかして一撃くれてやれるような隙をつくって。
 確証はまだないけれど、うまく行けば甲種を完全に足止めできると思う』

遠話でヴィクトルとラウテへ向けて声を通しながら、リタリンは手近な窓へと齧りついた。
悲鳴や喧騒とは別の、鈍く太い音が断続的に上から響いている。
見上げればそこには、何百、何千羽からなる鳥の群れがあった。
ラウテの使役する使い魔(鳥)の集団だ。

「庭園に出ましょう、あの短足を援護しなくちゃ」

聞こえないようにボソっと溜飲を下しながら、リタリンは舞い落ちる羽毛に紛れるようにして身を屈め移動する。
壁をうまく使いながら、戦闘の起きている場所からの視線を防ぎつつ、その近くまでやってきた。
一案あるとは言ったが、それは地走相手に『リタリンが』接近して攻撃できるような隙がないと成り立たない。
言うまでもなく鈍足で、紛れも無く貧弱な魔女の成り損ないの彼女が、ヴィクトルですら手を焼く化物に直接攻撃を仕掛ける。
たとえ保身をかなぐり捨てた捨て身の吶喊をしたって触れる前に骨にされるだろう。
自分で言うのもなんだがとてつもない無理難題だ。
だから、リタリン自身も動く。己のプランが少しでも現実味を帯びるように。

「バントライン、『プランB』発動」

正門で戦っていた軍用召喚獣バントラインの5頭分隊は、既にその数を1頭にまで減らされていた。
乙種冒険者喝破の参戦はもとより、丙種達の統率のとれた戦術により1頭また1頭と仕留められ、魔素の粒子へと還元されていく。
召喚獣の死というのは、肉体を構成する魔素が形を保てないほどに流出することによって起こる。
密度を失った魔素は空気中に霧散して再び集合することはできず、故に召喚獣は生身の生き物と同じように負傷によって消滅する。
徹底された集団戦術――バントラインのそれよりも遥かに高度な連携により、最後の1頭が全身に槍や剣を突き立てられて昏倒した。
各所の傷から流出する魔素を止められず、その存在密度が急速に希薄となり崩壊していく――召喚獣の死である。

丙種冒険者達が勝鬨の雄叫びを上げる。彼らは見事に正門を守り切ったのだ。
だが、その先の事象は彼ら一介の冒険者達の常識には存在しなかった。
この5頭の異貌なる召喚獣を生み出し、操っていたのが魔女であることなど、知る由もなかったのだ。

召喚主、リタリンは魔女である。
――当然、その召喚獣には違法な改造が施してある。
自分が逃げる時間稼ぎの為に手持ちの召喚獣は軒並み継戦能力を限界まで引き上げていた。
具体的には、崩壊し霧散した魔素を再び掻き集めて新たに召喚獣を再構成できるような機構の搭載だ。
無論、苛烈な戦闘による消耗を考慮すれば、倒されたバントラインをそっくりそのまま元に戻すなどということは望めまい。
回収率はせいぜいが二割程度――5頭のバントライン全ての残留魔素を寄せ集めて、ようやく1頭を復活させられるぐらいだ。

そして、その復活の1頭が、今まさにリタリンの傍へと再構成されていた。
2mを越す巨体に分厚い手斧、何より頭部を大口径の滑空砲へと換装した……異貌の怪人。
怪人は音もなく庭園へと降り立つと、巨躯に見合わぬ速度で滑るように疾走した。
走り、跳び、角を曲がり、ヴィクトルと地走が鎬を散らし合う戦場へと闖入する。

『――言い忘れてたけど、頭下げてたほうが良いと思うわ』

巧妙にステルスを続けているヴィクトルごと、地走の背中へ向けてバントラインの散弾砲が火を吹いた。

【地下倉庫に放火を完了、倒されたバントラインの魔素を寄せ集めて一体都合し、地走へと攻撃を仕掛ける】

255 :名無しになりきれ:2016/03/04(金) 01:51:43.49 0
少しずつ世界観崩壊してるな

256 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 18:41:28.44 0
◆◇◆ 重 要 告 知 ◆◇◆


なりきりネタ板TOPの板ルールに

http://tamae.2ch.net/charaneta2/
>この板はキャラクターになりきり、レスのやり取りを行うための掲示板です。
>なりきり形式ではない創作の投稿は創作発表板でどうぞ。


創作の投稿は創作発表板向けとルールが明記されました。
なりきり行為より創作の意味合いが強いTRPGはこの板ではなく創作発表板向けのスレということになります。
従って板のルールに沿い、今後は創作発表板に場を移してお願いします。


創作発表板
http://hayabusa6.2ch.net/mitemite/

257 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:14:50.74 0
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     ,  /^レ|  kィぅ卞z, 乂|  /ト|、 |
     ,   { rハ  |弋シ    リ/Jイ_ | `/i |
     /   ヽr- ヘ ! """     辷癶,| / リ  今日は何食べたい?
    ,      |:! ヘ       、"" /ル
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  |  |   人∧       |    ー丶ヽ: : ハ    l  ィニL;;--ュ、
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258 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:15:20.14 0
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262 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:18:08.09 0
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      ,'   | i  |/  レ  トハ/イハ.|   |
     ,  /^レ|  kィぅ卞z, 乂|  /ト|、 |
     ,   { rハ  |弋シ    リ/Jイ_ | `/i |
     /   ヽr- ヘ ! """     辷癶,| / リ  今日は何食べたい?
    ,      |:! ヘ       、"" /ル
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  //     i |/     ヽヽ    .ィ=y = 、         __
 イ     |/      ',ヘ __ γ/_j__r  ヽ、      .|[]|
  i  i     ! |         l  ^ ≧-ュ: : :≧、   丶    |::::|
  |  |   人∧       |    ー丶ヽ: : ハ    l  ィニL;;--ュ、
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  | i .| i i | ト; : |     |   \     }: :∧ノ       /)
  |ハ ! | |ハ | ヾ|     |      ヽ    j://          -く
.  ヽ! | | .リ丶 l     l      ゝ ィ '´     _ ┬┬- ´
.   ヾ j 人ヾ   l     l      >´     ィ ´   | |
        ヽ丶 !      ', > "        / ′    | |
         \ヘl     l       イ ハ /      | |
            ∧             / j: : Y       | |
               ,      _ .ィ   /: : :ハ     | |
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        T:::::/   ;:::/.::::/.::::::i:::::::::i:::::l::::::::i:::::::::::::::::八ハ  ?三ミ::::::::{
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263 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:18:40.54 0
        /           \
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      ,'   | i  |/  レ  トハ/イハ.|   |
     ,  /^レ|  kィぅ卞z, 乂|  /ト|、 |
     ,   { rハ  |弋シ    リ/Jイ_ | `/i |
     /   ヽr- ヘ ! """     辷癶,| / リ  今日は何食べたい?
    ,      |:! ヘ       、"" /ル
   /    | l \   r‐ ァ   /
   /      |:i 」>-\   _ -‐'
  //     i |/     ヽヽ    .ィ=y = 、         __
 イ     |/      ',ヘ __ γ/_j__r  ヽ、      .|[]|
  i  i     ! |         l  ^ ≧-ュ: : :≧、   丶    |::::|
  |  |   人∧       |    ー丶ヽ: : ハ    l  ィニL;;--ュ、
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  |ハ ! | |ハ | ヾ|     |      ヽ    j://          -く
.  ヽ! | | .リ丶 l     l      ゝ ィ '´     _ ┬┬- ´
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        ヽ丶 !      ', > "        / ′    | |
         \ヘl     l       イ ハ /      | |
            ∧             / j: : Y       | |
               ,      _ .ィ   /: : :ハ     | |
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264 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:19:09.59 0
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     ,  /^レ|  kィぅ卞z, 乂|  /ト|、 |
     ,   { rハ  |弋シ    リ/Jイ_ | `/i |
     /   ヽr- ヘ ! """     辷癶,| / リ  今日は何食べたい?
    ,      |:! ヘ       、"" /ル
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  //     i |/     ヽヽ    .ィ=y = 、         __
 イ     |/      ',ヘ __ γ/_j__r  ヽ、      .|[]|
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  |  |   人∧       |    ー丶ヽ: : ハ    l  ィニL;;--ュ、
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  |ハ ! | |ハ | ヾ|     |      ヽ    j://          -く
.  ヽ! | | .リ丶 l     l      ゝ ィ '´     _ ┬┬- ´
.   ヾ j 人ヾ   l     l      >´     ィ ´   | |
        ヽ丶 !      ', > "        / ′    | |
         \ヘl     l       イ ハ /      | |
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265 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:19:39.41 0
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266 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:20:06.77 0
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      ,'   | i  |/  レ  トハ/イハ.|   |
     ,  /^レ|  kィぅ卞z, 乂|  /ト|、 |
     ,   { rハ  |弋シ    リ/Jイ_ | `/i |
     /   ヽr- ヘ ! """     辷癶,| / リ  今日は何食べたい?
    ,      |:! ヘ       、"" /ル
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   /      |:i 」>-\   _ -‐'
  //     i |/     ヽヽ    .ィ=y = 、         __
 イ     |/      ',ヘ __ γ/_j__r  ヽ、      .|[]|
  i  i     ! |         l  ^ ≧-ュ: : :≧、   丶    |::::|
  |  |   人∧       |    ー丶ヽ: : ハ    l  ィニL;;--ュ、
  |  | i i { |丶,!     | 丶     `ヘ: : }  /     -‐ 〈
  | i .| i i | ト; : |     |   \     }: :∧ノ       /)
  |ハ ! | |ハ | ヾ|     |      ヽ    j://          -く
.  ヽ! | | .リ丶 l     l      ゝ ィ '´     _ ┬┬- ´
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        ヽ丶 !      ', > "        / ′    | |
         \ヘl     l       イ ハ /      | |
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               ,      _ .ィ   /: : :ハ     | |
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.        〈 : : : : : /T}: : : : : : : : :ヘ  ̄ >ー=ュ、ヽ__   ノ_
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267 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:20:37.17 0
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     /   ヽr- ヘ ! """     辷癶,| / リ  今日は何食べたい?
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  |ハ ! | |ハ | ヾ|     |      ヽ    j://          -く
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268 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:21:04.23 0
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269 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:21:06.22 0
終了スレ関係者様御用達スレ・4©2ch.net
http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1456249720/

270 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:21:32.71 0
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  //     i |/     ヽヽ    .ィ=y = 、         __
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  i  i     ! |         l  ^ ≧-ュ: : :≧、   丶    |::::|
  |  |   人∧       |    ー丶ヽ: : ハ    l  ィニL;;--ュ、
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  | i .| i i | ト; : |     |   \     }: :∧ノ       /)
  |ハ ! | |ハ | ヾ|     |      ヽ    j://          -く
.  ヽ! | | .リ丶 l     l      ゝ ィ '´     _ ┬┬- ´
.   ヾ j 人ヾ   l     l      >´     ィ ´   | |
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271 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:22:02.33 0
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      ,'   | i  |/  レ  トハ/イハ.|   |
     ,  /^レ|  kィぅ卞z, 乂|  /ト|、 |
     ,   { rハ  |弋シ    リ/Jイ_ | `/i |
     /   ヽr- ヘ ! """     辷癶,| / リ  今日は何食べたい?
    ,      |:! ヘ       、"" /ル
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 イ     |/      ',ヘ __ γ/_j__r  ヽ、      .|[]|
  i  i     ! |         l  ^ ≧-ュ: : :≧、   丶    |::::|
  |  |   人∧       |    ー丶ヽ: : ハ    l  ィニL;;--ュ、
  |  | i i { |丶,!     | 丶     `ヘ: : }  /     -‐ 〈
  | i .| i i | ト; : |     |   \     }: :∧ノ       /)
  |ハ ! | |ハ | ヾ|     |      ヽ    j://          -く
.  ヽ! | | .リ丶 l     l      ゝ ィ '´     _ ┬┬- ´
.   ヾ j 人ヾ   l     l      >´     ィ ´   | |
        ヽ丶 !      ', > "        / ′    | |
         \ヘl     l       イ ハ /      | |
            ∧             / j: : Y       | |
               ,      _ .ィ   /: : :ハ     | |
             __   ヽ  _<__  _ .イニニ∧  ィ =| ト 、
         /: : : ≧、T/: : : : : : K: : : : :_===-ヽ {      }
.        〈 : : : : : /T}: : : : : : : : :ヘ  ̄ >ー=ュ、ヽ__   ノ_
         !: : : : : {: : ヾ: : : : : : : : ハ      ー┐ ≦: ̄ : : : ニニ=--─ュ、
         L: : : : イT  ヘヾ ニニ''"_. .--ュ、  !_ノ {  ̄1 人 T ^ヘ丿  ̄─-
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      .ィ: : :/  V            \: : : : /
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272 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:22:32.12 0
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     ,  /^レ|  kィぅ卞z, 乂|  /ト|、 |
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     /   ヽr- ヘ ! """     辷癶,| / リ  今日は何食べたい?
    ,      |:! ヘ       、"" /ル
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  |ハ ! | |ハ | ヾ|     |      ヽ    j://          -く
.  ヽ! | | .リ丶 l     l      ゝ ィ '´     _ ┬┬- ´
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        ヽ丶 !      ', > "        / ′    | |
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273 :名無しになりきれ:2016/03/06(日) 19:23:00.53 0
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